「中国経済の正体」 門倉貴史 2010年 日経文庫

 日経文庫の中国物。ブックオフで百円なら通勤本にピッタリと思い手に取りました。軽く読めて、それなりに役に立つ。10年前の本なので、筆者=多くの評論家の見方の歪が理解できました。特に、中国と米国が「戦争しない」というノー天気な予想にはちょっとウンザリかな。確かに中米は経済面で繋がっていて、戦争するのはお互いに損。だから戦争はしないというのは世界の現実を理解していないと言わざるを得ない。 以下はこの本の要約と引用です。*印は私が付加したものです。


《はじめに》

 中国の外貨準備高は世界最大の二兆四千億ドルに達する。他国からも資金の貸し手として頼りにされるようになった。

 世界的に金余りの状況下、中国に多額のリスク・マネーが流入しており、不動産や株式の資産市場にはバブルの懸念がある。金融当局が金融引締めに乗り出せば、不動産バブルは崩壊する(*恒大集団の債務危機が発生しました)。

 利益を得られる特権層は、共産党の幹部とコネのある企業や個人。

 中国の所得格差の是正は進まない。

《1. 中国経済最前線 なぜ中国経済は最強と言えるのか》

 中国は、輸出主導の経済成長から内需主導の経済成長へと変貌しつつある。沿岸部の中産階級が旺盛な消費活動を行っている。中産階級が台頭しつつある国で、個人消費刺激策をとれば、消費の浮揚効果は大きなものになる。中国が米国を抜いて、新車販売台数で世界一位になった。「家電下郷」を実施すると、薄型テレビをはじめとするデジタル家電の需要が急増した。「建材下郷」「情報下郷」も実施され、携帯電話の普及も進んでいる。

 景気刺激効果は、政策立案から執行までのスピードが重要。中国の場合は、用地取得の交渉などが無い。

 中国ではブランド品の偽物が氾濫しているので、海外旅行時に高額品の買い物をする。

《2. G2時代の米中関係》

 1980年ではG7のGDPが世界全体の51%を占めていた。09年には、40%に低下した。G20のGDPは世界の80%を占める。しかし、参加国が増えれば、有事以外では協調的な政策を決めづらい。

 中国は労働力の安さを武器に、輸出を増やし、巨額の貿易黒字を計上してきた。外貨は米国国債で保有し、世界最大の米国国際保有国になった。中国が米国国際を大量に売れば、米国経済は大混乱する。中動くにとっても、外貨準備の資産価値が目減りしてしまい、また人民元が上昇し、リスクは大きい。米中の経済関係は、離れようとしても離れられない関係になっている。

 中国の輸出金額が、ドイツを抜いて世界最大になった。米中の貿易摩擦は激しくなっている。

 軍事面の米中対立も深刻になっている。中国国内では、ナショナリズムが台頭している。中国が米国に譲歩することは少なくなっていく。

 中国は、エネルギー確保を狙いとして、孤立するイランへの投資を増やしている。

《3. 地球温暖化問題と中国経済》

 世界経済が多極化し、統一した解決策をまとめることは難しくなる。COP15は、利害の対立を浮き彫りにした。

 経済成長を維持していくには、電力供給の確保が不可欠。中国では原発の建設が急増している。水力発電や太陽光発電の開発にも力を入れている。スマートグリッドの基本インフラも整備する。

 中国は、世界の中でも砂漠化の問題が深刻化している。特に、内モンゴル自治区の砂漠化が激しい。家畜を乱放牧すると、草木の芽が食べ尽くされてしまう。砂漠化の影響は、黄砂の襲来となって日本にも影響を与えている。大気汚染も深刻だ。

《4. 人口ボーナスと中国経済》

 人口ボーナスは、総人口に占める15〜64歳(生産年齢人口)の割合が上昇することによって、経済が成長する効果。人口オーナスはその逆。インドの生産年齢人口がピークに達するのは2040年前後。

 中国は、急激な少子高齢化に直面する。国民一人一人が豊かになる前に、十分な社会保障システムが整備される前に、国全体が老いていくと、中国経済は危機に直面する。

 中国の一人っ子政策は、毛沢東の大躍進が失敗に終わり大量の餓死者を出したことによる。一般的に出生率が急低下すると、その直後の反動で出生率が急上昇する。当時の中国には、増加した人口を食べさせる余裕は無かった。

 一人っ子世代の未婚率と離婚率が高まっている。我侭に育った小皇帝は、夫婦生活を維持できない。結婚した夫婦の三分の一が離婚する。子供をつくっても、祖父母に預ける親が増えている。離婚後の経済負担を恐れて結婚を躊躇する男性が増えている。

 雇用のミスマッチ。大学を出てホワイトカラーになりたくても、ブルーカラーの仕事しかない。とりあえず海外に留学する者も少なくない。失業者となり貧困生活者になる者も多い。

《5. 中国の経済統計は信用できるか》

 中国の地下経済は大きく、「黒社会」の資金源にもなっている。黒社会の拡大は、格差の拡大により、社会の底辺にいる人間が富を得ようとすれば、歪んだ=非合法な手段になることを示している。

 07年に中国の国家統計局が、貿易黒字の70%は、輸出に対する還付金を得ようとした虚偽によるものだと発表した。

 失業統計も雇用の実態を反映していない。失業率は、中国政府とつながりのある企業に登録している人だけを集計している。中国の失業率は10%前後と推定されている。

 GDPの実績が公務員の給与に反映されることから、各地域のGDPは水増しして政府に報告されている。消費電力は、経済活動に比例する。電力消費の動きからの推定値は、中国の経済成長率が公式発表をかなり下回っている。

 世界の投資マネーが中国に集中している。株価や不動産の価格上昇は虚構。このバブルが崩壊すれば、世界中の投資家が大損するだろう。

《6. 日本は中国とどう付き合っていくのか》

 中国政府が、突然に外資系企業を自国の市場から締め出すことがあり得る。

 日中両国民の互への悪感情。何らかのきっかけで反日感情が高まる危険がある。

 深刻化している汚職腐敗は、一党独裁の下では解消されない。

 軍事大国化する中国が、中華思想による世界制覇≒一帯一路を推進すれば … 。武器輸出を見返りとして、資源外交が展開されている。ロシアから輸入した武器をノックダウンして/国産化して、従来ロシアから武器を買っていた国に武器を輸出している。

 東シナ海などの資源を巡る日中両国のせめぎあいが広がっている。

 日中友好は互の利益が一致する場合に限られ、真の友好関係を築くのは困難とみられる。日本は、インドやASEAN諸国との良好な関係を築いていくことになろう。