「アフォーダンス入門」 佐々木正人 2008年 講談社学術文庫

佐々木氏は、「ダーウィンの進化論は「変化(進化)には目的も方向もない」と主張している」「行為に目的があるなどと考えるのは、過ちである」「無目的無方向に変化している」としています。さらに、「原因と結果のようなことを探してはいけない」と理論物理学の知見も動員しています。
そして、「わかりやすい説明を信用しない」と警告を発しています。生きていることに目的も意味も無いという厳然たる事実は、ゴータマ・シダールタが紀元前6世紀に指摘したとおりです。

知能とは、「行為だけが知っている意味」だそうで、ギブソンの造語であるアフォーダンスは、「環境にあって行為が発見している意味」だとしています。アフォードとは「与える、提供する」で、環境が動物に提供するものであり、動物の行為の資源(リソース)になる」そうです。
つまり、「行為は「環境」で行われ、行為の意味は環境に実在している」とのことです。

意味を求める無意味さから出発しながら、環境と行為の「間」に「意味」を見出そうとする。しかもその「意味」なるものを持ち出すまでもなく、無目的で無意味な実在でありにも拘らす、です。「わかりやすい説明を信用しない」と言いながら、最初から矛盾を孕んで「わかりにくい説明」を、何としても「行為の意味」を求めて止まない人々に気休めとして与えようとするのが、アフォーダンスなのでしょう。

この本を読んで、人間の「性(さが)」、生きていることに意味を見出そうとする「業(ごう)」の深さに空恐ろしさを感じざるを得ませんでした。