マスマーケティングは、顧客の生も声を聞くことを忘れてしまいました。お客様が何を求めているか、を知ることがマーケティングの出発点であった筈なのに。勿論、一見客の受注受付のオペレーターにお客様のニーズは解りません。

お客様との対話。口で言うほど簡単にできるものではありません。例えば、お客様へのアフターサービス考えてみましょう。

多くの場合、応対は階層化され、カスタマーセンターで一次受付した後に、該当部署に転送されます。お客様のニーズを把握するのはそれぞれの専門部署です。それぞれの機能部門は、自らの専門職的な動機がありますから、お客様のニーズの把握は歪ます。それを責めるのは見当違いです。

専門機能部門のお客様ニーズ把握を、一次受付を行ったカスタマーセンターが検証/牽制する。そういう体制と手順を確立しないと、会社の「お客様離れ」は、どんどん進みます。

そういった牽制を有効にするには、カスタマーセンターはインハウスでなければなりません(インハウスでも全てを社内で整えなければならない訳ではありません)。

お客様の声をフィードバックする。それが、本当にお客様の生の声に忠実であるのかないのか。それを検証する制度を持たなければ、「お客様の声」を騙(かた)る、実に都合の良い情報発信となってしまいます。それは、本人たちに自覚されないが故に、問題の根は深いと言わざるを得ません。

お客様の声を伝えるには、カスタマーセンターがどのように位置づけられているかを実態として見詰め直す必要があります。殆どの場合、組織上は、マーケティング戦略部門の管理者(取締役)の直下に位置づけられていなければ不可能でしょう。経営トップが顧客志向の場合には、製品横断的な品質管理部門と同列の位置づけ、或いは、社長室などが統括することで実現することもあります。

カスタマーセンターは手段です。では、何の為の?

顧客満足を高める。多くの企業が、目的として挙げますが、この「顧客」が何を指し示しているのかが問題です。

それが、アクセスしたお客様への応対によって顧客満足を獲得せよ、ということであれば、欠陥製品を垂れ流しても顧客接点で巧く誤魔化して丸め込めと言っているのと同じです。

逆に、「顧客」を、声を挙げないお客様も含む「顧客集合=(部分)市場」と定義するなら、製品を含む、お客様との全ての接点プロセスに対して、もの申さねばなりません。個別のお客様への応対ではなく、市場への対応が求められているからです。

お客様の声を、誰が、どうやってフィードバックするのかも問題です。カスタマーセンターの人間がそれを行うのは「生」感はあっても、戦略性はありません。少なくとも、マーケティング戦略担当か、製品横断的なプロダクト戦略担当でなければなりません。

コールセンターの課題は、必ずしも「戦略的」ではありません。業務を標準化し、経費を抑える。センターの第一義的な課題は、コスト能率であり、コスト削減です。それ自体は間違ってはいないのです。

カスタマーセンターという一つの顧客接点部門は、戦略部門に情報を提供する立場ではありますが、戦略を発信する部門ではありません。顧客情報を統合/整理して戦略を立案する部門が、カスタマーセンターとどのような組織上の位置関係にあるのかが重要なのです。

カスタマーセンターという顧客接点は、例えば、折り紙の折り方を口頭説明だけで伝える技能が求められます。この技能の延長上にマーケティング戦略はありません。プローピング(顧客の状況やニーズを把握する質問能力)でも同様です。

「聞く−話す」カスタマーセンター(顧客接点)の役割と、戦略部門との位置関係。それが、お客様の声をどう扱うかを決めるのです。