「天文学入門」 2005年 岩波ジュニア文庫

引っ越したら「星めら」が近くなりまする( ← 落語づいてます)。夏ともなりゃあ、狭山湖の畔にテントを張って望遠鏡を覗いて夜長を過ごそおって魂胆だ。さあ、お立会い! ← 立ち会ってどうすんだ?まずは、子供向けの本で、お勉強でありんすえ〜。

ブックオフで百円。実に価値ある百円です。解説は丁寧、図版は豊富。あ〜こりゃこりゃ ← いつまでやってんだ!

古代の宇宙観を、「太陽の通り道に沿って星座をつくりました」と説明してくれます。そうか!しょっぱなから、目から鱗です。

● 私たちはどこから来たのだろう

我々の命の起源について、「どこまで過去へと遡ることができるでしょうか」「ご先祖を辿っていくのは難しい…」。お見事です。物理学の基本。未来の予測は論理的には易しいのに対して、過去の推定は極めて困難という原則を平明に解説するあたり、のっけっから、著者の深い学識に感心しました。

「類人化石のほとんどがアフリカで発見されることから、私たち人類はアフリカで誕生し、世界へ広がっていったとみることができます」。先祖を辿るということと、祖先を識別することの違いをサラリと語ります。約27億年前にシアノバクテリアが光合成を始めます。その結果、「18億年前からオゾン層が形成され、紫外線から身を守ることができるようになって、生物は陸上で生活できるようになったのです」「約5億年前、オゾン層の形成が終わり、現在とほぼ同じ大気組成になりました」。まず、植物が陸上に進出し、節足動物が上陸。虫を食物とする両生類が繁栄します。そして、約2億年前、恐竜と哺乳類が登場し、約6500年前に恐竜の絶滅によって哺乳類が台頭した歴史を平易に解説します。

「地球にも数多くの微惑星が接近し、落下して大量の水を供給したと考えられます。しかも、微惑星は熱による変性を受けていないため、生命の材料となる有機物質が壊れずに、水とともに地球に供給されたことを意味します」「地球が冷えた後に、地球外から生命の材料がもたらされたことは間違いないでしょう」。

「星間雲の中には、アルコールやアルデヒドなどの、いわゆる有機物が発見されています」。また、「隕石の中にアミノ酸が見つかっています」

● 太陽系の世界とわたしたちの地球

さて、生禿は天体の分野は全くの門外漢なので、池上さんじゃあるまいし「そうだったのか」ということばかりです。

太陽に近い4つの惑星は、「岩石と鉄を主成分とする金属でできている惑星で、半径が小さく平均密度が大きい」。「金星の表面は厚い(二酸化炭素の)大気におおわれている」「火星は、(2004年に火星に着陸したローバの分析によれば)少なくとも過去には液体の水が存在した」。

外側の4つの惑星は、「半径が大きく、平均密度が小さく、個体の地表を持ちません」「惑星のまわりに環が存在する、多数の衛星を持つ」「水素やヘリウムが主体の巨大ガス惑星(木星、土星)と、氷と岩石からなり、厚い大気を持つ氷惑星(天王星、海王星)」「木星の質量は、太陽系の全惑星の質量の約4分の3に相当し…、木星が今の数十倍の質量を持つガスでできていたら、中心部で水素核融合が始まり、太陽と同じ恒星になっていたと考えられます」「木星は自転周期が大変速く、大気は激しく渦を巻きながら赤道に平行に流れ、しま模様をつくります」。

「1979年に木星に接近した探査機ボイジャーによって、衛星イオの噴火活動などが発見されました」。「2005年、探査機カッシーニから分離されたホイヘンスが、土星の衛星タイタンに着陸しました。衛星の中では唯一、濃い大気を持っています。大気の成分は主に窒素です。地表には、液体のメタンが流れる川や、氷も存在しているようです」。

太陽系は、46億年前、「まず、分子雲の主成分である水素ガスとちりが回転運動をしながら、平べったい円盤状になりました」「ちりは惑星の岩石のもとになります」「ちりの円盤は微惑星になり、微惑星は衝突を繰り返しながら成長します」「誕生直後の惑星は、微惑星の衝突によって膨大な熱が発生したため、その成分のほとんどが溶けた状態になったと考えられています、重い元素は惑星の中心部に沈み、軽い元素は表層部に浮き上がってきて、惑星の内部構造が作られました」。

地球環境は、「十分な量の水分が地球に供給され、水分が地球表面に保持され(質量〜重力)、水が地球表面に液体となっている(太陽との距離〜温度)」。「エウロパなどの木星型惑星の衛星の地下深くに、海が広がっているという可能性はあります。エウロパは太陽からは遠いのですが、木星のすぐ近くを回っているため、木星が及ぼす重力(潮汐力)の作用によって内部が暖まり、表面の氷が中では融けて、液体の水になっていると考えられています」。

こういう基礎知識無しでは、ニュースも理解できないわけです。

● 進化する星ぼしと元素の起源

「星間雲の中でガスの濃い部分ができ」「次第に収縮していき」「収縮によって生じる熱で温度が上昇し、赤外線を放射する原始星が誕生します」。

「太陽はX線も放射します。光球を取り囲むコロナと呼ばれる領域は、数百万Kもの高温となっており、X線放射するのです。太陽の表面からは、電子や原子核がばらばらになった状態(プラズマ状態)で飛び出しています(太陽風)。地球は磁石であり、磁気圏と呼ばれるバリアーが太陽風の侵入を防いでいます。パラズマ(架電粒子)は磁力線に沿って進むため、太陽風は地球の磁気圏に沿って地球の北極・南極に侵入し、地球の大気を発光させます(オーロラ)」。

「大質量の星は、質量の小さい星より中心部が高温高圧の状態になっています。そのため、ヘリウムによる核融合反応によって生じた炭素、酸素までもが核融合します。恒星の中心では、より重い元素が作られます。最も重い星では、最終的に中心に鉄が作られると考えられています」。

「鉄ができた後の重い星の中心では何も燃えません。重い元素は崩壊していきます。星は収縮を始めます。中心部が原子核と同じぐらい超高密度になったところで収縮は止まり、外側は跳ね返されて、一気に星全体を吹き飛ばす大爆発が起こります(超新星爆発)。鉄より重い元素の多くは、この超新星爆発という超高温高圧状態で作られ、宇宙全体にまき散らされるのです」。「星が作られ、超新星爆発が起こり、また星が作られ…、という循環を繰り返すことにより、少しづつ、炭素・酸素などの元素が宇宙に放出されていきました」。

● 宇宙のはじまりと現在、未来

宇宙は火の玉の状態から膨張したとする、ガモフのビッグバン宇宙論(仮説)が、宗教としては信じられています。

この本では、「インフレーションと呼ばれる急激な宇宙膨張があったことは確かだと考えられています」「更にその前はというと、まだ何もわかっていません。宇宙は「無」から始まった、宇宙とともに「時間」も作られたと考える人もいます。あなたはどう考えますか」と、問いかけて終わっています。

逃げているようですが、これが適切な締め括りなのかも知れません。