2010年に発表されたNECの誉田直美氏の論文「ソフトウェア品質保証のありかた」を読んでみました。大変面白い内容を含んでいます。

《品質改善の視点》

「品質会計(Quality Accounting System)とは、「品質」が作り込まれたことを、根拠をもって説明するソフトウェア品質管理手法」だそうです。

品質会計を特徴づける技法は、以下のようなものがあるそうです。

・上工程品質会計

上工程(設計〜製造)用のバグ目標管理技法。バグの摘出工程と作りこみ工程の両面からバグを目標管理する。

・テスト工程品質会計

テスト工程用のバグ目標管理技法。テスト開始時に残存する、プログラム全体の総バグ数を目標管理する。

・回帰型バグ予測モデル

開発開始時に、今回の開発で作り込むであろう総バグ数を予測するためのバグ予測技法。

・品質判定表

開発途中に発生する変化を考慮して、バグ目標値を見直すバグ目標値見直し技法。上工程品質判定表とテスト工程品質判定表がある。

・バグ傾向分析

摘出したバグをさまざまな観点から整理することにより、バグの摘出傾向に偏りがないかを分析する技法。

・バグ分析

バグ1件ごとに真因を分析することにより、開発上の細かい抜け・漏れを発見し、その抜け・漏れに対して、集中的なレビューやテストにより残存するバグを摘出する技法。

・バグ収束判定

テスト度合いに対する累積摘出バグ数の推移により、バグ収束を判定する技法。

《品質保証の機能》

本質保証は以下の機能を持ちます。

プロセス評価
プロジェクトのプロセス実施状況を評価

プロダクト評価
プロジェクトから出力される成果物を評価

コンサルテーション
プロジェクト状況を客観的に分析し、プロジェクトへ助言

プロセス改善
組織のソフトウェアプロセスを改善

出荷判定
出荷判定をする(出荷停止権限を保有)

出荷後のトラブル対応
出荷後の客先トラブル対応


「ソフトウェア品質保証において重要と思うこと」は・・・
 1) 成果が出るまで改善し続ける
 2) ぶれない軸足
 3) 品質を作りこんだことを説明できる
としています。

そして、「技術にせよ管理手法にせよ、単独でソフトウェアの生産性や品質を飛躍的に改善するものはない」ことに注意を喚起しています。

最後に、誉田氏は、「王道はない.しかし,道はある」という言葉をF.ブルックス「人月の神話」より引用されています。