B2CとB2Bに分けて、販売企画のための分析についてまとめてみました。

○ B2C 〜 遷移購買による購買商品の流れの分析

 以前にも、遷移購買を分析して購買の流れを予測する考え方をご紹介しましたが、今回は、できるだけ分かり易く、販促企画を考えるところまでをご紹介しましょう。

 お客様の購買には「筋道」があります。これに気づいたのは、随分前のこと。ナイキの直営ショップの購買履歴を分析していた時のことです。最初に「シューズ」を買って下さったお客様は、その後に様々な商品(品目)を買って下さいます。一方で、最初にウェア、特にTシャツなど街着をお買い上げのお客様は、その後の購買が少ないことに気づきました。明らかに顧客経済価値(お客様の生涯価値)が最大になる「筋道」というのがあり、バスケットで言えば、[シューズ → その他のギア → ウェア → キャップ]というのが典型です。

 一般に、その店舗で最初に買った品目によって、その後の購買がの広がりをある程度推定できる訳です。そして、それを買ったらそれ以降様々な品目に購買が広がっていく品目を「捕客商品(品目)」と呼ぶことにしましょう。「捕客商品」でお客様を獲得することができれば、その後の購買を期待でき、「お客様を獲得した」と言えのです。

 例えば、商品Aが捕客商品(品目)だとします。遷移購買を見ると[A → E,B,C,D…]というように購買品目が広がっていることが確認されます。そして、平均幾つの品目に購買が遷移したかを「捕客指標」と名付けました。商品領域によって差はありますが、通常は、購買日以降90日の「捕客指標」2以上の商品を「捕客商品」とします。

 逆に、「保客商品」は、反復購買率が高く、多くの商品から購買が遷移してくる品目です。具体的に言えば、商品Eの3か月以内の反復購買率が60%以上で、遷移購買が[A,F,G,H,… → E]のように、多くの(その商品以外の)品目からその商品に遷移する傾向のあるもの。購買日前90日の「保客指標」が1.5以上の商品を「保客商品」とします。つまり、様々な購買の筋道を通るにしても、やがては、多くのお客様が、この商品の購買に辿り着き、しかも、その後継続的に購買されるのが保客商品です。

 上記のような、[捕客商品(品目)〜保客商品(品目)]の流れを要約したものが、「購買筋道要約表」です。「購買筋道要約表」は、捕客商品Aで捕客した○○という属性を持つお客様は、保客商品Eで保客する筋道が最も有効だ(「保客指標」が最も高い)というような関係をまとめたものです。これにより、購買客を捕客商品別に分け、其々に有効な保客商品を推奨するプランを考えれば、全てのお客様からの収益を最大化する販促企画になります。

購買筋道
 この表では、[商品A → 商品E]への(30日以内の)遷移率が0.65です。そして、商品Aから各商品への遷移率を合計したものが捕客指標になります。

 また、保客商品Eの(30日以内の)反復購買率は0.74。[捕客商品A→保客商品E]の筋道の保客率は0.48になります。[商品A→商品E]の遷移購買率が0.65で、Eの反復が0.74ですから、[商品A→商品E→商品E]の筋道保客率は、0.65×0.74=0.48になります。

 [購買筋道×顧客属性]がきめ細かく細分化されてくると、この販促は限りなく“One to One”の販促に近づいていきます。現在、欧米のマーケティングの主流となっている[市場細分化〜個客販促]です。


○ B2B 〜 必須陳列商品と、重点陳列商品、拡大陳列商品の識別

 仕入商品からのクラスター分析によって、取引先を分類します。通常、この目的のためのクラスター分析には、最も一般的な手法である「k-Means」法を用います。分析結果として、まず、一般に、多くの品目を仕入れるグループの取引規模は大きいという傾向があることを確認します。次に、殆どのグループが仕入れている品目は、[メーカー〜仕入先]関係の中で、必須の品目と識別されます。また、多くのグループが仕入れている品目は、重点品目です。

 必須品目の中心となっている商品は、(季節商品の場合は、その販売期間では)必ず品揃えしなければならない商品です。必須陳列商品を仕入れて頂けない取引先との関係(取引ランク)を再考すべきです。また、重点品目の中心商品は、取引先属性に関わらず、最優先で取り扱いを確保すべきものです。

 仕入先属性に応じて取扱いが偏っているのが拡大陳列商品です。まず、適合する仕入先グループでは、重点陳列商品に次ぐ拡売すべき商品になります。また、現在、取扱いが低い仕入先グループでは、注力して頂ける売り方の工夫が必要です。重点陳列商品にも、取引先属性によって若干の偏りはありますが、意図的に、全ての取引先で扱うべきものと位置付けます。また、需要(販売数量)の伸びの大きな品目に属する中心商品も、重点陳列商品に指定します(需要の伸びは、365日移動和によって評価します)。

 営業担当者やフィールドスタッフは、商品陳列(売り得る可能性の獲得)によって評価されます。評価ポイントは、[必須陳列商品 > 重点陳列商品 > 拡大陳列商品]の順に大きくなります。現在は、取りこぼしの無い販売活動が重視されます。「売り難い商品を売る」ことは、営業マンとしての技術の向上に繋がりますが、それに注力することは必ずしも収益の向上には結びつきません。ですから、必須・重点陳列商品(定番商品)の品揃えが完了したら、拡大陳列商品の扱い拡大に取り組むようにインセンティブを与えます。

 必須陳列商品、重点陳列商品の選択は、3つの基準で行います。当該品目の中で、1)販売数量の大きなもの、2)他の商品が品切れした場合に代替性の高いもの(品切れ代替性)、3)品目の売上の8割以上をカバーする、の3つです。定番商品で安定した売上を確保することが、最優先されます。