日本は、極端な人手余りと人材不足に陥っています。

求人情報を出すと募集人数の何十倍と言う応募者が集まります。特に、中高年では、50倍以上も珍しくはないようです。

一方で、企業が必要としている人材をヘッドハンティングしようとすると、求める人材はなかなか居ません。人材市場の相場は上がり続けます。結果として、年俸1千万円では話にもならないということも珍しくありません。

相場を吊り上げているのは、韓国や中国からのスカウト。中国なら50万元(為替レートで換算すれば約618万円)は当たり前ですが、これは中国人のホワイトカラーの10倍以上になります。「中国で暮す」ことを前提とすれば、豊かな生活が送れます。

また、サムスンなど韓国企業では、研究開発の時間を短縮する為に、研究開発チームを「丸ごと」スカウトするという荒業も敢行するといいます。ですから、「職場環境が変わらない(?)」転職というのも出てきているようです。

中国企業でも韓国企業でも、海外からスカウトした人材は、ノウハウの吸収を終えれば「使い捨て」が常識。しかし、日本人に限らず、多くの人々が生活の安定を望みます。ですから、最近のスカウトは、身分の保証と安定した報酬を提示することも増えているようです。

日本が、人材の狩場になり、物造り技術系の人材を中心にスカウト市場が活性化してしまったのは「身から出た錆」です。コスト削減から利益を絞り出すことに熱中して技術革新を忘れた、という指摘がどれだけ当たっているかは生禿には評価できませんが、「日本の企業で作れないから韓国の企業で作る」という技術者が居たことは確かです。

月収20万円と200万円も、「人件費の最小化」や「収益源泉となる新製品を開発し得る有能な人材の確保」という特定の視点では、経済合理な結論です。

でも「フツー」に考えて「変」ですよね。月収20万円で働かされてる人も、200万円貰って強いプレッシャーを受けている人も、「不幸」ではないかと感じるのが「フツー」です。「フツー」に考えて「幸福」でない人が作るものは、人を幸せにできません。結果として、それは、会社の長期-高収益を実現する源泉にはなりません。

アダムスミスが言うように、「市場」は倫理感に支えられています。市場に倫理が欠落する時、市場は機能不全に陥ります。日本はアメリカの金融市場原理主義を影響を受けて、産業までも獣化していきます。アメリカでは、あまりの獣化への反省に基づいて「正社員-終身雇用」に回帰しているというのに。当たり前のことですが、安心して暮らせる(収入が安定的に確保されている)ことが、消費支出の基盤になります。消費されなければ、生産されたものは、経済価値を生み出しません。

何でこんな当たり前のことが解らないのか?!当然です!当たり前のことだからです。人間は、当たり前でない、奇手妙手が大好きです。束の間の快楽の為に、人生を棒に振る。ごく普通のことです。