「マーチャンダイジングの知識(第二版)」の文献案内の2回目です。


○ 商品分類と品揃え

高い能力を持たない小売店舗は、「取扱商品数を増やして売上高を増やそうとする傾向があります」「ライフスタイル提案の無い商品構成は、異業種商品の寄せ集めでしかありません」。一方で、「セブンイレブンの取扱品目2500のうち、その7割が毎年入れ替わります」。

ニーズの共通性による関連購入の促進が、(取引単位の)客単価を決定します。クロスMDでも、「従来の商品構成に新しい商品を追加することが多くために、商品構成が膨張しやすく、商品の回転率が悪化します」。

単品管理は、「POSシステムが普及し、販売量、売上高、在庫回転などが把握され、これに流通経費のデータを加えて単品レベルの原価計算を行い、単品レベルの利益を明らかにします」。しかし、厳密な原価計算が難しいことと、単品の管理では収益が改善し難いことから、カテゴリー管理へ管理単位の重点は移っています。

「カテゴリーとは、相互に代替的であると購買者が認識している商品のグループである」「カテゴリー・マネジメントとは、メーカーと小売業者が協力して、カテゴリーを管理するプロセスである」カテゴリー・マネジメント社ジェリー・シン

製配販のコラボレーションを前提として、商品の構成と導入、販売促進、自動補充などの仕事を、カテゴリーレベルで行うという考え方が基礎にあります。

「カテゴリー・マネージャーは、商品構成を行い、価格をつけ、陳列をし、販売促進と商品補充、新製品の導入を行って、カテゴリー全体の売上と利益に責任を負う」「バイヤーや売場の責任者がそのアシスタントなって、仕入や店頭販売、ISM、ISPを担当します」。


○ 売場構成と商品陳列

販売方法(業態)は、商品陳列の方法によって分類されます。
・オープン・ディスプレイ
 − チェックアウトが集中方式=セルフサービス
 − チェックアウトが分散方式=セルフセレクション
・ショーケース・ディスプレイ=対面販売

日本の小売に最も影響を与えたのは、「流通経済研究所が浦和市と大船市のSMで、1983年に約2000人の購買者に対し、来店時の購入計画を聞いた後、実際に購入した物を突き合せる調査」でした。そして、その結果「総購入に対する計画購入(事前指名商品の購買)は15%」を流研のスタッフが正当に扱わなかったために、日本の小売の能力をさらに低下させることになりました。「85%が衝動買い」という間違った認識を流布してしまいました。この認識はさらに場当たり的なMDを促進してしまったのです。

ISMとは「商品が店頭で売れるようにする活動」です。そして、「一般に、店舗内滞留時間と店内導線が長いと、非計画購入は増加します」、などが知られています。前提として、売場の「視認性を高めて、売場に立ち止まってもらう」が条件です。

関連販売の入門であるクロス・マーチャンダイジングは、例えば「マヨネーズを調味料売場と野菜売場の両方に分散陳列する」ことです。この分散陳列によって、商品補充やPOSデータ分析なども難しくなります。分散陳列する場合には、[商品×売場]で購買を把握する必要があります。

=最適陳列量(所与の補充OPを与件とする収益最大の陳列量)=
・最適可条件
(Σ購買量×1個当り粗利益)→ MAX
・制約条件
陳列量=1日購買量の平均+(1日購買量の標準偏差×2)/ 1日補充回数
*補充時間間隔を一定とする
陳列フェイス幅=陳列量×1フェイス幅×1個当りフェイス数
Σ陳列フェイス幅<総フェイス幅

「[品目別純利益/単位面積当たり投資額]が全ての売場について均等になるように、品目別の面積配賦を考える」「良い売場に強い商品を配置する方が、全体としての売上増加に寄与します」。

プラノグラム(棚割り)は、収益最大の陳列を目指すものですが、「一度計画した棚割りは、市場の変化に硬直的である」「棚割りは、商品補充の都度、少しずつ崩れていく」ことに留意する必要があります。

現在は、自動的に棚割りを作成する以下のようなソフトも登場しています。

=スペースマン(ニールセン)の各モジュールの機能=
・Spaceman Suite
アナリティカルマーチャンダイジング自動化ツール
・Spaceman Application Builder
分析機能を盛り込んだカスタマイズ機能
・Spaceman Professional
カテゴリー・ビジュアルマーチャンダイジング・プランを開発する為の分析メソッド
・Spaceman Professional
生産性を高めるための、マーチャンダイジングの総合的なツール
・Spaceman Stock Planner
棚レイアウトを再現し、棚在庫と消費者需要のバランスを取る補充モデル
・Spaceman Merchandiser
プラノグラムオペレーション(棚割作成)とバーコードスキャニングによるデータ収集機能を備えたマーチャンダイジングシステム
・Spaceman Viewer
ビジュアルマーチャンダイジング参照ツール

スペース・アロケーション/スペース・マネジメントは、「ニーズ距離の短い商品を近接して配置して関連購入を促す」ことがポイントになります。


○ 販売計画と販促活動(ISP)

「MD戦略と無関係に、無計画に実施され、効果測定は行われない、のが現状」です。