「カリスマに学ぶマーケティング」 ジョセフ・ボイエット&ジミー・ボイエット 2004年 日経新聞社

大学のマーケティング講座の内容で、抜け漏れが無いか確認する為に読んでみました。でも、この手のお手軽な「これ一冊で全てわかる」って奴は、殆ど何の役にも立たないことを再確認しました。

とは言え、近頃のマーケティングで一応注目しておくべき点について、沢山の本からグル達の『明言』と『迷言』を集める手間が省けました。ありがとう御座いました。


マーケティングとは
「マーケティングとはセリングではない」フィリップ・コトラー
「マーケティングの目的はセリングを無用のものにすることだ」ピーター・ドラッカー

マーケティング環境の変化
「顧客の時間の減少 − 新しい現実の中で最も重大なもの」フレッド・ウィアセーマ

ブランドとは
「ブランドは、売り手を識別させる」デービット・アーカー
「ブランドは、一貫性をもった一連の(お客様への)約束の集合体である」スコット・ディビス
「ブランドとは、お客様が知覚したベネフィットに基づいた特定のポジションである」ディーン・ナップ
 → 「お客様の自然なブランド認知マップを描写する“B-MAPの代表銘柄”がブランドである」という生禿の主張と同じです。
「ブランドとは、お客様がその名を聞いて思い浮かべる全てのことである」デービット・ダレッサンドロ
「ブランド・アイデンティティとは、ブランド戦略策定者が創造したり、維持したいと思うブランド連想の集合体である」デービット・アーカー
 → 日本では、その技術は高度であるので(日本人のマーケッターの水準が低すぎるので)計測〜計画することが少ない“連想価”は、世界標準のマーケティングでは、必須の技能です。

ブランドの価値
「消費者の72%が、自分の好む銘柄に類似する競合銘柄よりも20%割高な代金を払っても良いと考えている。また、30%割高でも良いと答えた者も40%いる」スコット・ディビス
「子供を入れる学校だろうと、ポテトチップスだろうと、何かを決める決断を下す際に、あらゆる選択肢を調べ上げ、比較検討することはできない」デービット・ダレッサンドロ
「1970年代には2種類しか無かったコルゲート社の歯磨き粉は、今や17種類にも達している」ジャック・トラウト

差別化についての注意
「実際には存在しない問題を解決するな」ジャック・トラウト
 → 差別化のための差別化は、原価高と低価値をもたらし、お客様のニーズを充足しようとする結果としての差別化は、価値を収益を生み出します。

「第二次大戦後、パッケージ製品メーカーが大量生産に乗り出した。… 1970年代までに、マーケターは、選択肢の増加とメディアの普及によって次第に強まってきた喧噪の中で、自社のブランドを際立たせる方法を求めるようになっていった。マーケティングの世界でポジショニングと言う考え方が囁かれ始めたのはこの頃のことだ。ポジショニングでは自銘柄を他銘柄から差別化することが焦点となっていた」スティーブン・クリストル&ピーター・シーレイ

ブランド・コンタクト
「ブランド・マネジャーは、ブランド経験とブランド・イメージが一致するように管理しなければならない。… ブランド構築には、ブランド・イメージ形成以上のものが求められる。顧客がブランドに接触するあらゆるブランド・コンタクトを管理しなければならない」フィリップ・コトラー
 → 但し、ブランドは、“お客様の頭の中”にありますから、管理不能です

顧客リレーションシップ
「新しい双方向の個別対応メディアでは、企業は一人の顧客を巡って競うことになる」ドン・ペパーズ(1989年アメリカ広告機構でのスピーチ)

「北米流CRMは、データ集積や統合、データマート、データ処理や販売の自動化といったテクノロジー分野で成長してきた。要するに、リード・マネジメントやテレ・マーケティング・サポートといった買い手と売り手の間の情報の流れの管理を行うものである。スカンジナビアで発達した北欧流のアプローチは、企業が顧客との長期的な関係を築き上げるサービス・マーケティングから誕生したものだ」ドン・シェルツ

「フリークエント・ショッパーズ・プログラムなどロイヤルティ・プログラムはの大半は顧客ロイヤルティの向上につながっていない。… 要するに、個々の顧客をそれぞれにふさわしい方法で対処するというCRMの一番大事な部分が抜け落ちてしまった」フレデリック・ネウェル

「業種によって異なるが、顧客維持率を5ポイント上げることで、企業は平均的な顧客の生涯価値を25%から100%向上させることができる」フレデリック・ライクヘルド

「一般的な企業なら、マーケティング予算の大半は顧客ではない人々に向けて費やされている。非顧客を顧客にするには、それなりの時間と労力と金がかかる」ジェイ・カーリー&アダム・カーリー

「CRMを成功させる秘訣は、お客様の話に耳を傾け、理解することだ」フレデリック・ネウェル

「カスタマイズは、選択肢を増やして顧客のストレスを高める。顧客が求めているマス・カスタマイゼーションは、最適な選択が可能な範囲、つまり、顧客にとって重要な特性と便益の中から選択できる範囲であって、最大可能な選択肢ではない」スティーブン・クリストル&ピーター・シーレーン

カスタマー・エクイティ
「もし利益の見込めない製品を識別できれば、収益を改善できる。レジにスキャナーを導入したSMは自信満々だった。そして、スキャナーデータが示す利益が見込めない製品を排除した。結果として、短期収益は上向いたが、総売上は落ち込んだ」「自分たちのビジネスが製品によって作られていると見做していた。それは、一度に一種類以上のアイテムを購入する顧客が存在しないという前提でしか成り立たない。例えば、朝食用のシリアルは利益が見込めるが、ミルクはそうでないとする。そこでミルクを排除してしまうと、シリアルのお客は困ってしまう。 … 利益は顧客から生まれるものだ」ローランド・ラスト&バレリー・ザイタムル&キャサリン・レモン

「特定の顧客に対しては“トランザクション顧客”として割り切って扱う方が理に叶っている」「顧客維持率の増加に伴って利益も増加するが、ある時点まで維持率が増加すると、その後は利益が落ち込む」「顧客維持率を上げる簡単な方法は、優良顧客に対して低い価格を提供することである」「維持される大多数にやや高い価格を課すことによって得られる利益は、離脱者から生じる損失より大きい」ロバート・ブラットバーグ&ゲーリー・ゲッツ&ジャクリーン・トーマス

「一つの卵子を受精させるのになぜ100万もの精子が必要なのか。それは奴らが闇雲に勝手な方向へ進むからだ」「投資収益率(ROI)が算出できなければ、どんな投資も同じにしか見えない。多くの企業は安全策として、全てに均等に投資する。彼らはターゲットを見失っている。 … 顧客の生涯価値は個々の顧客レベルでの測定基準となる」ケビン・クランシー&ピーター・クリーク