他者の感情を感じ取る能力について考えてみました。

まず、他者の心の理解と自己の心の理解は相互に関係しており、共通の機構によっている。ミラーニューロンが、自分や他者の行動の模倣と理解の基礎となっている、のは確かなようです。

浅野大喜氏のHPを引用すれば、「成人では共鳴運動や行動伝播など他者行動を観察するだけで自動的な模倣が生じることが示されています。そしてこの神経基盤としてミラーニューロンシステムの関与が考えられています」。「アイコンタクトによって自動模倣が促進されること(Wang et al.,2011)、信念や思い込みによって自動模倣が抑制されること(Liepelt&Brass,2010; Liepelt et al.,2009)、などが示されています」。

但し、「発達という視点から見たとき、これまで模倣能力の獲得により、他者と同じような行動を自分がしたときに、そのときの意図などを理解するようになると信じられてきました。しかしSantiestebanらの研究結果から、実は模倣獲得後にその模倣を抑制し、他者と自分の行動とをしっかりと区別できるようになり、異なる立場があることを理解するようになることが、心の理論の獲得につながるのかもしれません」の知見が得られています。

現在の神経科学では、まず、自他の行為を神経的に模倣して行為自体を理解し、次に、自他の区別をつけて他者の意図を理解するという過程が想定されています。

*ミラーリング
面接法として喧伝される、「ミラーリング(他者への同調行動)は、共感を高める」は実証された事実ではありません。


人間の意思決定の殆どは「無自覚な」ものです。それを「理解する」考え方は2つあります。一つは、他者の、本人ですら意識していない感情(意図)を感知しようというもの。もう一つは、「理解できる筈の無いもの」を追うのではなく、事実として認識可能な「行為者に作用すると考えられる要素(インプット)と、結果としての行為(アウトプット)の対応関係」によって『ブラックボックスとして意思決定過程』を理解する、という立場です。

生禿は、現在は後者のブラックボックス派です(行動主義心理学と見做されることもあります)。ですが、かつての精神科での臨床経験に基づき、“根拠の無い信念として”「他者の感情を感知する“能力者”が存在する」とも信じています。

生禿自身は共感能力が劣るので他者の感情などさっぱり判りませんが、人々の中には他者の自分でも気づいていない感情を感知する“能力者”が存在すると思いたいのです。要は、科学を気取っていても、他者をなぶり殺しにしても屁とも思わないオウム真理教やキリスト教を信じる人間と同様に、邪悪な知りたがり屋なんですネ。お釈迦様に怒られそうです。時々、“ハッ”として、猿並に反省だけはするのですが、この自慰行為は止められません。ドギャンすべえ!真っ白です。← ドッピュッの白さ? ← 馬鹿は死んでも治りません。


*アイコンタクトと共感

「アイコンタクトによって、自動模倣が促進される」は、考えさせられる知見です。大昔、生禿は心理面接において「ケースの眼を見てはいけない」と教わりました(勿論、面接を始める前の挨拶や雑談でラポールが形成されているという前提ですが)。でも、共感の達人達は、ケースが言葉に詰まったときなどに、眼を上げてケースと目線を交わし静かに頷いたりしたものでした。それは独特の間合いで、生禿は真似ることができませんでした。それを機械的に模倣し演技として固めると、精神科医に共通の職業病(相手を理解しようとする温厚で愛情溢れた仕草と言う仮面が顔から剥がれなくなって、自己を喪失してしまう)になってしまいそうでした。

この「アイコンタクトによって、自動模倣が促進される」の、「アイコンタクト」はどのようなものなのでしょうか?この研究を主導したアントニア・ハミルトン博士のアメリカ神経科学学会に発表した2011年の論文によれば、実験は役者を使って行われたそうです。つまり、研究されたアイコンタクトは、特別なものではなく、社会的な表象として他者に提示される「演技」=通常の行為ということになります。

そして、アイコンタクトは“貴方を今私にコピーします”というメッセージとして作用することを、脳内の信号により確認したと言います(自動翻訳で読んでいるので不確かですが)。

と、と言うことは、大昔に精神科で教わったのは、ラポール形成後に「ケースが自ら気づくことを援助する」過程での話。その段階に至る以前では、むしろ積極的にケースとの間で信頼の目線を交わす演技を重ね、(暗黙に)了解された自動模倣を相互に行うことが、むしろ推奨されるということです。生禿は、古臭い「フロイト流」の面接に毒されていた?ようです。


よし!今度からは、お客様ミーティングを行うときは(特に導入部では)、アイコンタクトを積極的に行うことにしましょう。← とは言え、アイコンタクトが下手くそなのが問題なのですが・・・。