「個人情報保護法の知識」 岡村久道 2005年 日経文庫

個人情報保護法は間違いなく悪法です。悪法は、良心に従っていれば間違いないという倫理観を破壊します。良心に従っても仕事にならない。法律を守ろうとすれば獣になる。コンプライアンスこそが獣至上主義の源泉なのです。

良心に従っても、理解の外ですので、知識として再確認する必要があります。この本は、法律家が書いた本らしく悪文です。それでもとりあえず仕事の役には立つ。それが今の日本の悲しさですね。


OECDプライバシー・ガイドラインが定められ、EUの個人データ保護指令が出されます。「民間部門を対象とする包括的な法律を持たない米国や日本では、この指令に言う第三国として対応が求められました」。こうして、プライバシーマーク制度が導入されたのです。アメリカでも同様の制度が導入されますが、個人情報を保護する法律が施行されると解消されます。勿論、日本ではお役人が甘い汁を吸うためだけにプライバシーマークは残ります。お役人は利権を得るためなら、人を殺しても平気です。

思い出して下さい。個人情報保護法は、住民基本台帳ネットワークの導入の条件として立法化されたものです。次回の参院選で、自民党が大勝すれば国民背番号制が導入されます。利点も欠点もありますが、導入の要点は本来の機能にはありません。かつて役人に約束した利権を、国民を犠牲にして与えるためだけに導入するのです。

個人情報保護法は、「実際に権利利益が侵害される以前の段階で、未然に防止するため、個人情報の取扱い全般について広く規制を加えようとする法律です」。「事業者の個人情報の取扱いが必要最小限に止められることを促進する」と、民間には個人情報を与えないというのが主旨です。国民経済が縮小しようと、お役人の利権が増えることだけを考えています。日本のCRMなどの販売活動が欧米に遥かに遅れをとり、日本のインターネットと金融が台湾や韓国に溜息が出るほど劣っている要因の一つがこの法律であることは言うまでもありません。

この法律が出鱈目なのは、「保護すべき権利などの具体的な内容を法文に明記することなく、「個人の権利利益」という抽象的な表現で言い表すだけにとどめた」ことにも表れていると役所側の立場をとるこの著者でさえ指摘しています。かつ、「個人情報を取り扱う部門ごとに、適用されるべき一般法が異なる」のです。

そうそう、この法律の不備とプライバシーマークの出鱈目さの一例をお話しましょう。プライバシーマークは、機微情報を扱う者は取得できません。個人のセンシティブな情報はお役人だけが民衆を痛めつけるためにだけにお役人が独占するというのが、個人情報保護法の主旨だからです。ですから、疾病などの個人情報を記録する薬局にはプライバシーマークは与えられません。ところが、マークをばら撒いて甘い汁を吸いたいお役人は、法律を無視して、薬局だろうがなんだろうが御構い無しにピーマークを垂れ流します。ある薬局で、そのことを生禿が指摘すると、ピーマーク今猿とかいうお役人の犬はヘラヘラと笑って「固いことは言わずに・・・」とか言ったんですヨ。百万円以上の金を騙し取られたのですから、薬局の店主は顔面蒼白です。お役人と結託した今猿は、「騙された馬鹿が悪い」と言わんばかりに去って行ったのです。

日本は、お役人の、お役人だけによる、お役人のためだけの統治を、日本はいつまで続けるつもりなんでしょうか。

ビジネスマンとして個人情報で最も注意を要するのは、情報管理を外部委託する際の契約内容です。親切にも、お役人はどうやったら責任逃れができるかを教えてくれています。

【個人データの取扱いを委託する場合に契約に盛り込むことが望まれる事項】
・委託元及び委託先の責任の明確化
・個人データの安全管理に関する事項
・個人データの漏えい防止、盗用禁止に関する事項
・委託契約範囲外の加工、利用の禁止
・委託契約範囲外の複写、複製の禁止
・委託契約期間
・委託契約終了後の個人データの返還・消去・廃棄に関する事項
・再委託に関する事項
・再委託を行うに当たっての委託元への文書による報告
・個人データの取扱状況に関する委託元への報告の内容及び頻度
・契約内容が遵守されていることの確認(例えば、情報セキュリティ監査なども含まれる)
・契約内容が遵守されなかった場合の措置
・セキュリティ事件・事故が発生した場合の報告・連絡に関する事項

責任を逃れ、利権を貪るのに熱心なお役人は、こういうのだけは得意ですね。

お役人は、「経済産業省と総務省は、両省協同により、電子タグを事業で活用する事業者に向けた「電子タグのプライバシー保護に関するガイドライン」を策定し、公表致します。関係者におかれましては、本ガイドラインを周知徹底することにより、消費者が電子タグを安心して使える環境を整え、電子タグの普及が図られることを期待致します」と、平成16年には、「電子タグのプライバシー保護に関するガイドライン」が制定され、RFIDと呼ばれるICチップを用いた無線タグの、日本における有効活用は不可能になりました。