雪が積もり、ベランダの外は真っ白。写真でも、雪が降っているのが見えるでしょうか。

H270130s007 H270130s001

 ともあれ …、マーケティングのお話です。世界のマーケティングの流れは、ビックデータを含むデータに基づくものに変わっています。なのに日本では何故、事実の情報(データ)に基づくマーケティングが行われないのか?その要因を考えてみましょう。勿論、世界の流れに乗っていなければいけない、という訳ではありません。世界に『遅れている』ということは良いことでも悪いことでもありません。ただ、『考え方』の問題ではなく『技能』の面の遅れでもあるので、気になっているのです。

1)日本のマーケティング・スタッフにとって“不都合”である
 日本のマーケッターは、事業の事実とは無関係な文化と妄想の中で作業をしています。『事実に基づいた』意志決定と行動計画は、彼等の習慣と嗜好に反します。データに関する技能を持たない彼らにとって、“事実に基づく”マーケティングは、今までの自分たちのやって来たことの出鱈目を白日の下に晒すことであり、自己否定なのです。これが、日本国内で“事実に基づくマーケティング”が否定される最大の要因です。

2)プライバシーに関する日本人の特性
 プライバシーに関する行動規範や反応傾向には、国々で大きな違いがあります。英米人は、個人空間を侵されることを嫌います。病院の大部屋や満員の電車内などは“言語道断”のプライバシーの侵害です。日本の文化環境で育った人々にとっては、自分の生活の『内輪の事情』を他人に知られ、それに基づいて『弱いところを突かれる』ことをとても嫌います。生禿は、個客のピンポイントのニーズに基づくアプローチをする時には、DMやメールなどの名義は「お客様各位」とします。個人宛にした場合は、『なぜそんなことまで解るのか?』『個人の立ち入った情報を利用することは許せない!』という苦情が殺到するからです。ですから、効く“1to1”の宛先は『お客様各位』にすることは、ダイレクト・マーケティングに技能と経験を持つ人間なら常識です。

3)外資系の企業が最先端の技能を日本で導入しようとしていない
 外資系の企業には、ダイレクト・マーケティングの技能と知識の蓄積を持つ企業が少なくありません。密度の高い1to1のコミュニケーションが要求される医薬の世界では、ファイザーやノバルティス、J&Jなどが有名です。彼等も日本に進出していますが、“本気”で日本市場を開拓しようとは考えていません、中国などのアジア地域に対する開発拠点として日本を位置づけている世界企業もあり、日本で最先端のマーケティング技能を導入しようという意志は弱いようです。日本市場は発展性の低い魅力の低い『最後の市場』なのです。

4)お客様が売り手を信用していない
 現在の日本人は、売り手を信用していません。ディスカウンターが台頭し、価格訴求が販売促進の中心になってしまった日本では、“商人(あきんど)の信用”は重視されていません。結果として、『メンテナンスを要する製品は“信用できるアマゾン”で買う』というような行動を示す消費者も出てきました。通販が便利だからではなく、約束を守る実直なアマゾンだから、日本の小売が信用できないから、アマゾンが支持されている。そういう一面を日本人は直視しなければなりません。日本が大切にしてきた“信用”という文化が崩壊しているのです。医療訴訟の増加は、患者が医師を信用していないからです。専門店に客足が遠のくのは、専門性を信頼した上での応対への信用が失われているからです。化粧品店も薬局も時計店も …。ユニクロの柳井さんのような市場原理の獣がもてはやされる日本のマーケティングは“死に至る病”を罹患しています。日本の生活文化を守るためには、買い手が売り手を信用する“暖簾”を高く掲げなければなりません。

 某世界企業は『我々が本気になれば日本の市場を手に入れることができる』『日本企業は自分たちの敵ではなく、簡単に圧倒できる』ことを十二分に認識しながら、『日本人が学ぼうとしない』ことと、『日本市場には投資をする価値が無い』ことから、日本に世界標準のマーケティングを導入することに熱心ではありません。生禿は、ノウハウを持つ外資系の仕事をすることが多いので、このことを実感しています。某大手薬品企業が外国人を社長に据えて国際化しようとしていますが、“笑止”以外の何ものでもありませんよね。抵抗勢力に囲まれて何もできはしません。これも周知の事実です。

 一方で国内では、某ドラッグストアがID-POSなどを活用して、欧米並みのオムニチャネル、『インフルエンサーへの働きかけをも組み込んだタッチポイントの設計』を目指す動きがあります。あい変らずですね。何度も失敗を見てきましたが、またも上っ面だけの技術論の繰り返しです。健康に関する事業では、個客の要求する『健康』を個別に識別しなければ、個客不満足を招きます。「明日死んでもいいから、今日、娘の結婚披露宴に出席したい」患者のQOLと、「一日でも長生きしたい」患者のQOLではまるで違います。医師の処置も処方する薬品も異なるものとなるでしょう。だから、ダイレクト・マーケティングでは、個客の要求を聴き取ることが不可欠になります。この聴き取りには、医師と患者の信頼関係が無ければなりません。信用基盤が失われた現在の日本では、ダイレクト・マーケティングは成立しないのです。繰り返し強調しますが、『信用の暖簾』を高く掲げることから始めなければなりません。

 さらに、生禿らしく技術論で言えば、欧米の優れた企業に行き、ダイレクト・マーケティングのノウハウを貪欲に学ぶことをお奨めします。例えば、“ピーク&エンド”のコンタクト・ヒストリーとコミュニケーション・プラニングの設計です。医薬の世界で言えば、退院などの治癒をゴールにしてしまうと『そこで切れる』関係を構築していることになります。そうではなくて、『治った!から始まる』… その信頼関係から始まる個客関係の構築のために、顧客満足のピークと顧客関係のエンド(最終到達点)を分けて、それを共有し、お客様と作り手・売り手が共に歩んでいく過程を設計する。それを“ピーク&エンド”のゴール&アクション設計と言います。生禿は、こういう経験と知識と技術を、学び取って、日本企業に伝道していきたいと思っています。