「病気は自分で治す」 安保徹 2006年 新潮文庫

 統合医療の一般向けの解説書だと思って読んでみたのですが、科学者というより、宗教家の本でした。書いている内容は強引で矛盾もありますが、“信じる者は救われる”かも。教祖様の説法に耳を傾けるのも悪いことではありません。人間は科学で生きている訳ではありませんからね。医学の研究者もこういう本を馬鹿にせずに真正面から読んで、自らの論理でどれほどの吟味ができるかを試してみると良いと思われます。


 「病気の原因が突き止められなければ、対処療法も止むを得ません」。しかし、「癌を含めて、慢性疾患と呼ばれるものは、患者自身の生き方の偏りに起因します。生き方を変えることで、病気を治していけるのです。対処療法は、むしろマイナスになります」。

 「多細胞生物の病気は、調節系(自律神経系)や防御系など体全体に及ぶシステムの破綻と繋がっています。人間の能力の限界を超えた生き方、能力を十分に使わない生き方は、病気に繋がります」。「血圧、血糖、呼吸、消化器の働きなどは、自律神経によって調整されます。交感神経と副交感神経のバランスで、全ての調節が成し遂げられています。血圧の上昇は、興奮の体調で、交感神経の働き。休息や睡眠、消化は副交感神経の働きです」。

 「白血球は、単細胞時代のアメーバーのような細胞を残したものです。白血球の基本形はマクロファージ(貪食細胞)です。マクロファージは、存在する場所によって異なる名称がつけられています。脳ではグリア細胞、肺ではマクロファージ、肝臓ではクッパ―細胞、血液では単球、骨では破骨細胞、組織では組織球。マクロファージから、細菌処理に優れた顆粒菌と、小さな異物処理に優れたリンパ球が派生します。リンパ球は、T細胞、B細胞、NK細胞などに分かれています」。

 「交感神経が活性化すると、顆粒菌が増加し、副交感神経が活性化すると、免疫系を司るリンパ球が増加します。自立神経の働きが偏り過ぎると、顆粒菌、リンパ球の二つの白血球の過剰反応も生まれ、病気を作り出します」。

 「風邪をひくと、体がだるくなり熱が出ます。ウィルスとリンパ球が闘っている状態です。強いストレスで交感神経緊張になると、顆粒菌の割合が増え、過剰反応が起こります。自分自身の細胞を攻撃してしまい、胃潰瘍などの組織破戒が起るのです。副交感神経優位になり過ぎると、リンパ球が多すぎて、微量な抗原にも反応してしまい、アレルギー反応を起こしやすくなります」。

 「NK細胞が攻撃するのは、腫瘍細胞やウィルス感染細胞など、異常化した自分自身の細胞です。NK細胞は、細胞膜上にアセチルコリン受容体とアドレナリン受容体を持っているので、ストレスがあるとNK細胞の数は増加します」。

 「断食が続くと、脂肪だけでなく、筋肉などの自分の組織を食べエネルギー源を作り出します(自食作用)。自食作用を真っ先に受けるのは、ポリープや癌細胞などの不要な部分だと言います」。

 「体温が低下して代謝に必要な温度が得られなくなると、蛋白質合成が鈍くなります。体温低下は循環血流を伴い、細胞に運ばれる栄養と酸素も減少します。低体温と循環障害は、遺伝子のスイッチがオフの状態にします」。

 「体温の維持は生きるための基本です。体温を上げるには、体を動かす必要があります。副交感神経優位の状態は、体温は低くなります。運動不足や肥満は低体温を招きます。よく動き回る人は、体温も血糖も高いのです」。

 「血糖の維持も、自律神経によって調整されます。活発な人は血糖値が高く、ノンビリした人は、血糖値が低い、インスリンの分泌は副交感神経支配下にあるので、交感神経緊張の人はインスリンの分泌が抑制されしまいます、そのため、糖を処理しきれずに血糖値が上昇してしまいます。夜更かしをすると、昼過ぎまで低体温と低血糖が続きます。甘いものを接種すると、血糖上昇に反応して大量のインスリンが分泌され、低血糖が誘発されます。興奮すると交感神経が緊張し、アドレナリンの分泌で血糖は上昇します」。

 「生体の基礎代謝のかなりの部分は、細胞内電位をマイナス75ミリボルトに保つために費やされています。真核細胞の場合は、組織内にナトリウムイオンを細胞外に汲み上げることによって行われます。これを行っているのが、ナトリウム-カリウムポンプで、1個のATPを使って、3個のナトリウムイオンを細胞外へ汲み上げ、2個のカリウムイオンを細胞内に取り入れています。細胞の内外に生じた電位差によって、細胞同士が反発しあって凝縮しないのです。健康な人の赤血球がバラバラに存在し、血液がサラサラ流れます。基礎代謝が低下すると、赤血球も凝縮するのです」。

 「ストレスを受けると、ステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン)の血中濃度の上昇と、体温低下、血液PHの低下などの生体反応が現れます。大きなストレスを受けた時は、代謝を抑制してやり過ごすこともあります。ステロイドホルモンは、代謝を下げて免疫系を抑制します。ストレスが小さい時は、代謝を亢進する現象が知られています」。「交感神経緊張は、血液の収縮を招くので、血流の低下によって顔色が悪くなります。また、穏やかさも行き過ぎると、神経過敏になってストレスを受けやすくなります」。

 「腫れは炎症です。傷が治るためには大量の酸素や栄養を患部に送って組織を修復しなければなりません。腫れも大切な生体反応です。代謝経路を活性化するためには、熱が大切です。発熱なくして病気は治りません。痛み・腫れ・発熱を抑える薬は、組織修復のための治癒反応を止めてしまいます」。

 「自律神経の働きの偏りは、[ストレス → 交換神経緊張 → 血流障害・顆粒球増多 → 組織破戒の病気]と[運動不足・無気力 → 副交感神経過剰優位 → 疲れとリンパ球増多 → アレルギー疾患・活力を失う病気]を起こします」。

 「交感神経緊張によって癌が発症します。腫瘍を悪性と良性にきれいに分けることはできません。癌や膠原病の治療法は、体を休め、食事・入浴・運動で体を労(いた)わり、薬(消炎鎮痛剤、抗癌剤などの代謝阻害剤)を止めて、血流を良くしていくことです。癌の場合でも、生き方を変えれば、リンパ球が働いて、癌細胞は自然退縮します。癌が消えるのは、頻繁に起こることです」。

 「リウマチの関節炎は、ストレスによる免疫抑制から、ウィルスが増殖します。また、増加した顆粒菌によって関節が破壊されます。体が硬いことは関節が硬いことなので、注意する必要があります」。

 「関節の炎症を止めようと、腫れ・熱・痛みを作るプロスタグランジンを消炎鎮痛剤やステロイドで抑制すると、炎症は止りますが、治ることはありません。炎症は抗原を排出するなどの治癒反応として出現するものです。抗炎症剤をリウマチは悪化していきます」。「発熱は、体温が上がってリンパ球が働き出す体調です。熱が出たら、体を温かくして休めばいいのです。肩こりや腰痛も、温めて血液を増やせば治ります」。

 「塩分の摂取量は、自分の感性で決める必要がある。味覚を無視し、やみくもに塩分を制限するのは愚かなことです」。「早朝や集中している時は、交感神経優位になり、血圧が上昇します」。血圧などを気にし過ぎることもストレスになりうます。

 「癌の発生と退縮は、頻繁に起っていることです。抗癌剤の多くは代謝阻害剤で、リンパ球を抑制する発癌剤でもあります。抗癌剤、ステロイド剤、消炎鎮痛剤、インターフェロンなどは、長期間続けると病気を悪化させます。早期発見・早期治療が実践されていますが、癌の年次死亡率は上昇し続けています」。また、「乳癌の手術などで、リンパ節の広範囲な除去は良い結果をもたらさないことが、外科医からも報告されています」。

 「病気を作ったのは自分であるという患者さんの自覚が少ない。自分が作った病気なのだから、自分が治すという信念に辿り着く。疑わない人、信念を持つ人が治る。決断力のある人が治る、のです」。

 「『息抜き』は、交感神経緊張に特有な、浅くて速い呼吸から脱却することです。『骨休め』は、筋肉と共に重力の負担を引き受けている重荷を下ろすことです。『気休め』は、気疲れから離れることです。『休息』は奥が深い言葉です」。

 「私達は物を口にすると、消化器が動き出すので、副交感神経が働き出して。気持ちが落ち着きます。ストレス解消に手っ取り早いのは、飲み食いすることです」。「食物繊維の豊富な野菜・海藻・キノコ類は、消化吸収に時間が掛かるので、消化管が働く時間が長くなり、性格を穏やかにします」。

 「長時間の労働で短時間の睡眠になる。疲れないから眠くならないので夜更かしになることもあります。睡眠には脳神経の休息のほかに、体を横にすることによって、体を重力から解放することでもあります」。「気分が落ち込んだ時には、体を横にすれば、頭部にいく血流が増え、元気を取り戻すことができます」。

 「対症療法は行わず、生活改善を指導する。たくさん検査をしても、病気の状態が分るだけで、原因を知るには役立ちません。他人に生きる指針を与えなければならないとなれば、全人格の力が求められることになります」。

 自律神経免疫療法についての、著者の言葉は、頷ける部分も反発したくなる部分もあります。「癌の自然退職は、半年から2年で現れるので、気長に取り組む必要があります」。「薬を止めると、薬で抑えられていた生体反応が出るようになります(好転反応)」。「感謝の気持ちをもって、人生を前向きに生きる。一方で、人はいずれ死ぬことを理解する必要もあります」。「35億年の進化で修得した能力を超えた生き方をした時に、人間は病気になります。生き方を正すのは、患者さん自身の意志です」。まさに『信じる者は救われる』です。それは事実でもあるのですが …。

 「紫外線は骨や筋肉を丈夫にします。太陽の下で活動することが、アレルギー体質からの脱却の道です。朝に太陽の光を浴びることは、体のリズムを整えます」。「放射線は大量に浴びると悪影響を及ぼしますが、少量なら生きる力を増す効果があります。微量の放射能は、体の様々な機能を活性化します。日本では、放射線を出す温泉や岩盤浴も利用してきました」。

 「副交感神経優位の精神活動は、よく気が付く、気が回る状態です。美しい自然に感動し、それを表現するのは、副交感神経の働きです。それが行き過ぎると、感情の動きが激しくなり、心の揺れが大きくなります。副交感神経優位の人は、筋力が低下しやすいので、体を鍛えなければなりません。『散歩』は、歩くことによって、毒気を散じようとする漢方の行為から生まれました」。

 「一口だけでも自分の口で食べるようにすると、咀嚼が脳を刺激し、三叉神経が刺激され、脳の血流が増えます。葉は、『歯を食いしばる』の言葉があるように、頑張る・耐える・悔しがるなどの能力に関わっています」。「電磁波を出す製品が身の回りに溢れています。電磁波を受け止めるアンテナとして、口内の金属が問題になります」。

 『頑張らない、諦めない』(鎌田實医師)。その通り!ですね。