「人気サプリメントのウソとホント」 生田哲 2006年 講談社α文庫

ニュースを見ていたら、川柳が浮かびました。

三代目の算段墜ちたる三段目
 − 金正恩さん、何を食べているのか知りませんが太り過ぎですよ! そうかおしっこ漏れそうに怖がっているので、過食症なんですね。「三代目は国を滅ぼす」気にしないで、貴男だけ滅んじゃって下さい。国民は巻き添えにしないようにネ。

 と言う訳で?、読書の記事です。


 生化学者が書いたサプリメントの本。食品としての栄養というより、薬効の有無を検証しています。ですから、薬=毒と同様に、短期(3ヶ月程度)の治験に基づく、生化学作用を問題にしています。サプリメントは本来は食品ですから、5年以上の長期の疫学によるQOL(生活の質)の向上を調査すべきです(この本には、QOLの視点が欠如しています)。

 具体例を挙げれば、コエンザイムQ10は、治験では優れた薬理効果を示す物質です。そして、疫学調査では寿命を縮める効果が検証されています。では、人々はCO-Q10を摂取すべきなのか、すべきでないのか。例えば、65歳の生禿が、細胞レベルから身体を活性化させ、元気な10年を過ごしたいと思うなら常用するでしょう。あと15年以上は、とにかく生きながらえたいと思うなら、CO-Q10を摂取すべきではありません。

 食品は、急性期の薬効のように、単純な問題ではないのです(医者は治療のためなら殺しても良いという憲法上の特権を持つ、単純な存在です)。個々人が自身のQOLをどう考えるか?どう生きたいかを考え、その上で、適切な食べ物と食べ方の調和(バランス)を考えるという、生き方=食べ方の問題(=難問)なのです。医学のように標準療法のような簡単な一般解などはありません。健康について相談するなら、医者や薬剤師には相談すべきではありません。彼らは病気(治療)の専門家であり、健康(生命)の専門家ではないからです。相談するなら、生き物を相手にしている農学者でしょう。

 それはともかく、生田氏の書くものはお勉強になります。薬学部で教えている生禿としては、「ありがとうございます」なのです。 以下は、この本の要約と引用です。*印の部分は、関連情報の検索結果です。

《まえがき》

 サプリメントとは、ある特定の成分を取り出した栄養補助食品のこと。本書は、治験(臨床試験)の結果をもとにサプリメントを評価する。*つまりこの本は、サプリメントに関する妥当な評価はしていません。

《序章 サプリと賢くつき合おう》

 先進諸国では高カロリー高脂肪な食品が行き渡り、肥満・糖尿病・高血圧・癌が増えた。一方で、健康への意識が高まった。

 物忘れのサプリメントとして有名なアラキドン酸。必須アミノ酸ではあるが、その過剰摂取は、心臓病・糖尿病・癌の原因となる慢性炎症を発生させる。

 健康の基本は、食物の摂取。どうしても食事だけでは足りない栄養素を補うのがサプリメント。健康食品で「健康は買えない」。調和のとれた食事と運動と休養の生活が健康をもたらす。

 外食や加工食品の利用が増えると、高カロリーは高いが、ビタミンやミネラルやファイバーが不足しやすい。

1.現代人の心に効く 抗ストレス・サプリメント

1)心を平安に導く伝達物質 ギャバ

 ギャバ(γ-アミノ酪酸)は、脳を抑制する伝達物質。関連する酵素が働くにはビタミンB6が必要。ビタミンB6が不足するとギャバが不足し、脳が興奮しすぎる。

 抗不安剤は、ギャバ受容体がギャバをキャッチするのを助けることで効果を発揮している。

2)抗鬱薬よりも効く セントジョーンズワート(セント)

 和名は、西洋オトギリソウ。

 メタアナリシス(過去の治験の結果をまとめて統計処理を行う)によれば、セントは一般に処方されている抗鬱薬に劣らない効果を示し、しかも副作用が少ない。ドイツでは欝治療に優先処方している。

 一般の抗鬱薬と同様に、セントの有効成分のハイペリシンも、セロトニン再取り込みを妨げる。

 セントは、薬との相互作用に注意を払わねばならない。

3)脳神経細胞の膜を作る DHA・EPA

 DHAはドコサヘキサエン酸、EPAはエイコサペンタエン酸という脂肪酸の略称。背の青い魚に多く含まれる。DHAとEPAは、オメガ3とも呼ばれる。

 細胞は膜で包まれている。膜は脂肪で作られている。その脂肪の重要な成分がオメガ3である。そして、神経細胞の膜は、オメガ3を多く含んでいる。受容体が伝達物質を受け取れるかどううかは、その形や柔軟性などの膜の性質が鍵を握っている。オメガ3とオメガ6は、人間の体内では作ることができない必須脂肪酸である。オメガ6の代表はリノール酸。

 オメガ3の不足による慢性炎症によって、アルツハイマー病・心臓病・癌が発症しやすくなる。オメガ3は、飽和脂肪酸やコレステロールを溶かして洗い流す。

*炎症は組織異常に対する生体の反応。慢性炎症は、組織異常が解消されても炎症物質、細胞などの活動が収束しないものを指す。ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患、関節リウマチなどの自己免疫性疾患が知られている。

4)気分を高める天然物質 S-アデノシルメチオニン(サミー)

 必須アミノ酸のメチオニンからは、アドレナリン(怒りのホルモン)・メラトニン(睡眠物質)・コリン(記憶物質)などの伝達物質やカルニチン(筋肉にエネルギーを供給する物質)・エルゴステロール(性ホルモン)・クレアチン(瞬発力を高める物質)などの重要物質が作られる。メチオニンは、地球上で最初にできた有機物質とも考えられている。

 サミーは、ビタミンB6と葉酸を触媒として、メチオニンとATP(アデノシン三燐酸)から合成される。

 サミーは、鬱を改善する。効果は、一般の抗鬱薬と同様で、副作用は少ない。サミーは、炎症を抑え、慢性関節リュウマチを緩和する。

 サミーは、セロトニン再取り込み阻害剤と併用すると、セロトニンの作用が増強されすぎる危険がある。

5)快眠ハーブ バレリアン(和名:西洋カノコソウ)

 快眠ハーブの代表であるバレリアン。ドイツでで不眠症や精神不安への使用が認められている。

6)神経を安定化する伝達物質 タウリン

 タウリンは魚介類に多く含まれる。分子中に硫黄のある含硫アミノ酸である。タウリンの名は、タウリ(牡牛)の胆汁から発見されたことに由来する。タウリンは、魚類に多く含まれる。

 タウリンは全身に分布しているが、特に、心臓・白血球・筋肉・網膜に多い。タウリンの役割は、細胞膜の電気安定性を維持すること。脳内でもタウリンが特に多いのは、嗅球・海馬・松果体(睡眠中枢)。

 体内で、ビタミンB6を触媒として、含硫アミノ酸のシスティンやメチオニンから合成される。ビタミンB6不足はタウリン不足に直結する。

 タウリンの働きはギャバに似ている。タウリンが不足すると、てんかん発作・不安・多動などが発生する。心臓を収縮させるためのイオンの出入りにタウリンは欠かせない。眼にもタウリンは欠かせない。

 タウリンは、胆汁中へのコレステロールの放出を促進し、コレステロール値を下げる。

 腎臓から放出されるアンジオテンシン(ホルモン)は血圧を上げる。タウリンは、アンジオテンシンの働きを妨げ、血圧を下げる。

7)カフェインが主成分 マテ茶

 イエルバ・マテは、イグアス滝の周辺に育つ木である。成分はコーヒーとそっくり。カフェインには、高血圧・心臓病・不安症候群のデメリットがある。

 マテ茶より、緑茶やコーヒーを飲めばいい。

2.精力増強を謳うセックス・サプリ

8)天然の精力増強剤 マカ

 勃起不全(ED)の特効薬バイアグラ(クエン酸シルデナフィル)は、女性の性障害には適していない。副作用があり、性欲そのものを増やさない。

 女性の性障害は、エストロゲンとテストステロンの生産が下がる閉経を引き金とするホルモンの乱れが原因で起こることが多い。エストロゲンは、膣を濡らし性器に血液を運ばせる。男女ともにテストステロンは性欲を高め、興奮を起こし、一酸化窒素(伝達物質)を増やして平滑筋を弛緩せさせてリラックスさせ、オーガニズムに達しやすくする。

 男性の勃起不全の殆どは、ペニスへの血液の流れが妨げられることにより起こる。その主な理由は加齢。血管の拡張や平滑筋がリラックスしにくくなる結果、ペニスに血液が留まりにくくなる。早漏は、殆どの場合、精神面による。

 マカは、南米ペルーの高地に植生するアブラナ科の植物の根である。インカの時代から滋養強壮食材として用いられてきた。

 マカは、男性には8週間後に効果が現れる。しかし、女性への効果は無い。

9)勃起に効果あり アルギニン

 アルギニンは肝臓で作られる。わざわざ摂取する必要は無い。

 アルギニンの役割は、アンモニアの処理。毒性の少ない尿素に変換する。アンモニアは血液-脳関門を通過するため、脳内の神経細胞に損傷を与える。肝臓が悪くなると、脳にも障害が発生しやすくなる。

 アンモニアは、伝達物質の唯一のガスである一酸化窒素を作る。血管拡張因子である一酸化窒素は、血管を緩め、動脈を柔らかくする。高血圧や狭心症や心筋梗塞の治療にも使われている。アルギニンを摂取すると、男性の性機能の改善が見られる。

 アルギニンは成長ホルモンを放出させる。怪我や傷の修復が早める。アルギニンが不足すれば、筋肉が弱体化する。但し、経口摂取では、成長ホルモンの放出は促進されない。

 アルギニンは、胸腺を刺激し、白血球を増産させる。

 腎機能の低下した人が、アルギニンを摂取すると腎臓を害する。アルギニンがウィルスの突然変異を速めるので、ウィルスに感染している人も摂取を避けるべきだ。

10)人を元気にする漢方薬 高麗人参(朝鮮人参)

 高麗人参は、ウコギ科の人参の根を乾燥したもの。成分のサポニンは、ブドウ糖や果糖などの糖類と有機化合物が結合したものの総称。ジノセノシドやパラキシノシドが高麗人参の効果の源である。

 ジノセノシドは抹消血管を広げて血行を改善する。脳への刺激で、ギャバの働きを妨げ、代謝を促進する。高麗人参は、免疫力を高め、感染症を抑える。免疫力は、抗体値とナチュラルキラー細胞の活性度をパラメータとして計測される。

 副作用は、高血圧の人の血圧を上昇させる。糖尿病でインスリンを打っている人が服用すると、血糖値が下がりすぎる。

3.身体機能向上を謳う スポーツ・サプリ

11)瞬発力を高める クレアチン

 クレアチン・エフェドラ・アンドロステンジオンといったスポーツサプリには、競技能力を向上させる効果は無い。

 クレアチンは、肝臓や腎臓や膵臓で、アルギニン・グリシン・メチオニンから作られる。筋肉に蓄えられ、瞬発力が必要な時に利用される。クレアチンは、有酸素運動には無効で、耐久力を高めない。

 クレアチンは、エフェドラなどとの併用で深刻な副作用を起こす。エフェドラは、交感神経を興奮させ、心臓の毛細血管を収縮させる働きがある。心臓発作や脳梗塞が発生することがある。

12)エネルギー・サプリ エフェドラ

 エフェドラは、漢方の生薬「麻黄」からの抽出物。

 エフェドリンの効果は、神経細胞を刺激してノルアドレナリンを放出させ、交感神経を興奮させる(血圧が上昇する)。気管支の平滑筋を拡張させ、呼吸困難を改善する。喘息の治療には欠かせない処方薬だ。

 カフェインとの相乗効果で覚醒剤(メタンフェタミン、通称ヒロポン)と同様に作用する。心臓麻痺の危険がある。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、エフェドラを大衆薬から除外した。

13)天然の男性ホルモン アンドロステンジオン

 男性ホルモン・テストステロンは、骨を成長させ、筋肉を増強する。未成年者が服用すると、成長が止まってしまう。

 テストステロンを使用した選手の好成績により、オリンピック委員会は、ドーピング検査を開始した。

 アンドロステンジオン(アンドロ)は、テストステロンの原料。アンドロは副腎や性腺で作られ、酵素によってテストステロンに変換される。これを飲んだ、マーク・マクガイアが1998年にMLB記録を塗り替える70本のホームランを放った。

 20代はアンドロを飲んでも、テストステロン値は上昇しない。35歳以上の中年男性は一時上昇するが、永続せず、飲み続けると正常値以下に低下する。

14)耐久力を高める ガラナ

 ガラナは南米に自生する植物。摂取すると大脳新皮質が興奮する。眠気や疲労感が無くなり、頭の回転が速くなり、集中力が高まり、気分が爽快になる。饒舌になり社交的になる。カフェインは脳内のドーパミンを増やす。

 ガラナの主成分はカフェイン。コーヒーに比べてもガラナのカフェイン含有量は突出している。

 伝達物質アデノシンは神経細胞の興奮を抑制する。カフェインは、アデノシンに似ていて、受容体に着いてしまう。結果として、交感神経が興奮し、アドレナリンが放出される。アドレナリンが心臓の働きを強め、心拍数や血圧を高めて、全身の筋肉に血液を送り込む。運動能力を高める。一方で、血管を収縮させて、皮膚や内臓への血液の供給を減らす。

 カフェインの大量摂取は、様々な副作用を引き起こす。

4.美容に効果? 若返りサプリ

15)記憶力を増強する 銀杏葉エキス

 銀杏葉エキスの成分はフラボノイドと、ギンコライドやビルポライドなどのテルペノイドとギンコール酸。ギンコライドやビルポライドは、脳を覚醒させる。銀杏葉エキスは、記憶を改善する。脳の血流量を増加させる。活性酸素を分解して、神経細胞や血管を活性酸素から守る。

 銀杏葉エキスを抗血栓剤と併用すると出血しやすくなる。ギンコール酸はアレルギー物質である。

16)老化を防止する コエンザイムQ10

 コエンザイムQ10は、「ユピキノン」「補酵素Q」とも呼ばれる。「ユピキノン」はいたる所に存在する「ユピキタス」に由来する。生体内でビタミンB6を酵素として作られる。全ての動物はユピキノンを生産できる。このため、ユピキノンはビタミンには分類されない。コエンザイムQ10は、10個のイソブレンだからQ10と呼ばれている。

 CO-Q10は、脂融性が高いため、ビタミンEとともに細胞膜に埋まっている。CO-Q10はミトコンドリアの膜の中に存在し、電子のバトンリレーを担当する電子伝達系である。

 細胞内で古くなった部品は、リボゾームに取り込まれ、酵素によって分解される。リボゾーム内の酵素は酸性で働くので、プロトンを内部に運び、内部を酸性に保つ。

 CO-Q10は、細胞でATP(アデノ三燐酸)が生産されるときに発生する活性酸素を分解する。抗酸化物質の殆どが水溶性なのに対して、CO-Q10とビタミンEは脂融性であるので、細胞膜を守る。

 CO-Q10を血圧降下剤と併用すると、血圧が急降下する恐れがある。CO-Q10は血液を凝固させるビタミンKと似ているため、血栓を発生させる。

17)効能が怪しい 核酸

 サプリメントとしての核酸は、鮭の白子から抽出したDNAと酵母から抽出したRNAが使われている。

 DNAの塩基であるアデニン(A)とグアニン(G)をプリン塩基、シトシン(C)とチミン(T)をビリミジン塩基と呼んでいる。プリン体は。プリン塩基を持つ物質を指す。肉や魚の旨味成分イノシン酸もプリン体の仲間だ。

 核酸の合成は加齢とともに遅くなる。髪が薄くなるのも、肌の艶が衰えるのも、疲れ易くなるのも、老化現象だから、核酸を補うという主張はもっともらしい。核酸の合成が遅くなるのは、代謝がゆっくり進むからだ。核酸は胃腸で分解されてしまう。核酸は体内で合成されているのだから、サプリとして摂る必要は無い。

 大量の核酸の摂取で、痛風を引き起こす危険がある。痛風は血中の尿酸値が上昇することで発症する。プリン塩基は、痛風の原因とされるプリン体そのものである。尿酸を異物とみなして白血球が攻撃する。血中の尿酸値が高い人は、プリン体の多い食品の大量摂取に注意しなければならない。

18)即効性は期待薄 コラーゲン

 コラーゲンは、動物の骨の中心や皮膚や軟骨や腱などの成分となって、組織と組織を繋いでいる。コラーゲンは、生体を構成する蛋白質の30%を占める主要成分だ。肌の真皮では、水分を除いた70%がコラーゲンである。

 口から摂取されたコラーゲンは、胃腸でアミノ酸に分解される。

 コラーゲンのアミノ酸の組成は偏っている。合成にはビタミンCが必要なので、ビタミンCが不足するとコラーゲンが充分に作られない。

5.痩せ効果は本当? ダイエット・サプリ

19)健康を害する にがり

 にがりは、海水を煮詰めて製塩した後に残った母液のこと。主成分は塩化マグネシウム。豆腐を固まらせるのに使われている。

 マグネシウムは、医薬品では下剤に分類されている。腸管のマグネシウムに邪魔されて、ビタミンやミネラルが吸収されにくくなる。下痢をすると体力が落ちるのは、ビタミンやミネラル不足のためである。

 マグネシウムは、腦・心臓・肝臓・腎臓といった代謝が活発な組織に集まっているが、マグネシウムで代謝が促進されることはない。

20)サプリで摂る必要は無い キチン・キトサン

 キチン・キトサンの成分は、蟹・海老に多く含まれているムコ多糖類である。ムコ多糖類の代表は、キチン・ヒアルロン酸・コンドロイチン硫酸・ヘパリン。キトサンはグルコサミンが長く繋がったもの。

 人が消化できない多糖類を食物繊維と呼ぶ。植物性食物線維には、セルロースやペクチン、動物性食物繊維には、キチン・キトサンが代表である。

 キトサンには体重を減少させる効果は無い。摂取されても、便として排出されるだけだ。

21)ダイエット効果は期待できない カルニチン

 カルニチンは、必須アミノ酸ではない。肝臓や腎臓で、ビタミンCを酵素として、リジンとメチオニンから作られる。

 カルニチンは、全ての筋肉にエネルギー生産の効率を高める役割を担っている。ミトコンドリアに燃料となる脂肪酸を運んでいる。カルニチンは、心臓機能にも欠かせない。

 カルニチンの経口摂取は、体重や脂肪量を変えることは無かった。

6.病気の予防・改善サプリ

22)健康維持に欠かせない 亜鉛

 亜鉛は、人体の全ての細胞に存在する。人の持つ酵素2200の内100種類以上の酵素の補酵素。蛋白質の合成や遺伝子の複製、細胞の増殖、生命の誕生、傷口の治療、免疫力向上、男性機能改善、味蕾の成長など。

 亜鉛は経口でも、傷口に塗っても効果がある。吸収された亜鉛は、アルブミンと結合して肝臓で利用される。

 フィチンが亜鉛と結合して吸収を妨げる。フィチンはパンやインスタント食品に多く含まれている。亜鉛は不足しやすいミネラルの一つ。亜鉛は牡蠣と海苔に豊富だ。

 亜鉛は生体で銅と競合する。銅は、ATPの生産に不可欠である。ノルアドレナリンの生産にも欠かせない。

 亜鉛は、抗生物質の吸収を妨げる副作用がある。

23)酵素の働きを助けるビタミン 葉酸

 ほうれん草に抗貧血要因が含まれていることが分かり、「葉酸」と呼ぶことにした。

 葉酸は、ビタミンB群の一つで、DNAや伝達物質の生産に欠かせない補酵素である。葉酸の不足は、血管に損傷を与える。瀬血球の酸素を運ぶ能力を傷害する。

 葉酸と抗癌剤併用は避けるべきだ。

24)命と健康に最重要のカルシウム

 カルシウムは人体で最も多いミネラル。小腸でビタミンDの助けをによって血液に溶け込む。リン酸と結合してハイドロキシアバタイトの結晶として存在する。骨や歯の主成分となっている。

 カルシウムは、酵素の活性化・筋肉の収縮・脳内の神経伝達物質の放出・神経の電気興奮を伝える・神経や筋肉の興奮を和らげる・心臓の鼓動調節・血液凝固などの役割を担う。

 血液に溶けているカルシウムを骨に移動させるカルシトニンと、骨のカルシウムを溶かし血液中に移動させる副甲状腺ホルモンによって調整されている。

 カルシウムは、食物から摂るべきだ。

25)多くの薬理効果が期待されるカテキン

 お茶は、カメリア・シネシスの葉を湯で抽出した飲料。白茶は、摘んだ茶葉をそのまま乾燥したもの。緑茶は、積んだ茶葉をただちに熱処理し、緑色を保ったもの。ウーロン茶は、茶葉を天日で干して発酵させ、熱し揉んで乾燥したもの。ウーロン茶を長く発酵させると紅茶になる。緑茶を麹菌で発酵させたものが黒茶。

 新鮮な茶葉には、フラボノイドの一種カテキンとポリフェノール酸化酵素が含まれる。積まれた茶葉を揉むと、ポリフェノール酸化酵素がカテキンに作用する。そして、カテキンが繋がったテアラフラビンやテアルビギンができる。この過程を茶製造業者は、「発酵」と呼んでいる。酵素による発酵が進めば、カテキンが減少していく。酵素の働きを止めるために、茶を加熱する。白茶や緑茶は、全く発酵していない。

 疫学研究によって、茶の消費量が増えると、心筋梗塞や心臓発作などが減少することが確認されている。緑茶の消費量と癌予防には関係が無い。

 鉄分の吸収を最大限にするためには、緑茶を一緒に飲まない方がよい。

26)脂溶性の抗酸化物質 ビタミンE

 ビタミンEの別名は、トコフェロール。トコは、子供を産む。フェレインは、妊娠。オールは、アルコールを意味する(アルコールは、水酸基(-OH)を持つ物質の総称。酒の成分は、エタノール或いはエチルアルコールと呼ばねばならない)。

 ビタミンEの欠乏症は滅多に起こらない。ビタミンEが不足すると不妊症になる。

 脂溶性のビタミンEは、細胞膜の中に埋め込まれている。抗酸化物質として機能している。

 心臓病のリスクは、ビタミンEの血中濃度に逆比例する。ビタミンEは、癌の発生を減らさない。

27)300以上の酵素を助けるマグネシウム

 マグネシウムは、人体の全ての細胞にある。特に、骨と筋肉に多い。

 300種類以上の酵素の補酵素となっている。DNAやRNAやATPは、マグネシウムが結合して初めて生理作用を持つ。マグネシウムが不足すれば、慢性疲労や鬱になりやすい。インスリンの放出や機能に、マグネシウムは不可欠である。マグネシウムは糖尿病を改善する。

 腎臓に疾患があるとマグネシウムの排泄が促進される。一方で、過剰なマグネシウムは排泄しにくい。にがりを過剰摂取すると高マグネシウム血症が起きる。

 中高年は、マグネシウム不足に陥りやすい。加齢によってマグネシウムの吸収率が下がり、腎臓がマグネシウムを排泄しやすくなるためだ。

28)生命維持に欠かせない微量元素 セレン

 セレンなど、微量に必要な元素を「微量ミネラル」と呼ぶ。セレンはセレノプロティンという酵素群の成分になる。

 セレンが不足すると、ウィルスの毒性が強まる(免疫力が弱まる)。過剰に摂取すると様々な症状が発生する。

29)関節炎への効果は不明 グルサコミン

 グルサコミンは、キチンを塩酸などで煮るとできる。

 骨と骨の間に軟骨が摩耗して興るのが、変形性関節炎。軟骨の主成分は、コラーゲンとプロテオグリカン。コラーゲンの補給は、動物性たんぱく質とビタミンCを補えば充分である。プロテオグリカンは、グルコサミンと蛋白質が繋がったもの。グルコサミンは、変形性関節炎を抑える。

7.夢の効果を謳う 万能サプリ

30)人気サプリの宝庫 ビール酵母

 ビール酵母には、必須アミノ酸を含む蛋白質・食物繊維・核酸・ビタミンB群・クロム・鉄・亜鉛・カルシウムなどが含まれている。

 ビタミンB群はATP生産を助ける。クロムは、インスリンが血糖値の調整を助ける。

 痛風の人は、ビール酵母の摂取も避けるべきだ。

31)価格の割には栄養価は高くない クロレラ

 クロレラは、国民生活センターに寄せられる苦情の件数で1位。

 クロレラは、繁殖力や蛋白質の合成能力が高く、必須アミノ酸のリジンを多く含む。但し、クロレラは丈夫な細胞膜に包まれているため、人体には殆ど吸収されない。

32)民間薬として用いられてきたプロポリス

 プロポリスは、蜜蜂が樹木から集めてきた樹枝状の物質と、蜜蜂の唾液中の酵素が化学反応してできたワックスである。巣の隙間を埋めたり、縁を強化するのに用いている。このワックスには殺菌消毒作用がある。古代エジプトでは、ミイラを作る時に、防腐剤として利用されていた。

 プロポリスの成分は、アミノ酸・ビタミン・ミネラル・フラボノイドである。これらの栄養素は、食品から摂れば済む。

 プロポリスは、性器ヘルペスの治療に有効である。その他、試験管の中や動物試験では、様々な働きが認められているが、人では効果は見られない。

 プロポリスには、かぶれなどの副作用がある。

33)スーパー抗酸化物質 α-リボ酸

 免疫細胞は炎症性ホルモン-サイトカインを放出する。脂肪細胞も免疫細胞と同じ働きをする。脂肪細胞も炎症性ホルモンを放出し、慢性炎症を起こし、活性酸素を放出する。慢性炎症が毛管内で起これば、コレステロールが酸化されて血管壁にこびりつき、血管が詰まる。

 α-リボ酸は「チオクト酸」とも言う。α-リボ酸は、1個の硫黄を含み、酸化と還元をくり返し、抗酸化物質として働く。また、他の抗酸化物質を再生することができる。α-リボ酸は、ミトコンドリア内部で補酵素となる。α-リボ酸は代謝を助ける。

 α-リボ酸は、血管-脳関門を通り脳内に到達できる。水にも油にも溶けるために、神経細胞を守ることができる。