「こうすれば日本の医療費を半減できる」 武久洋三 2017年 中央公論新社

 m3(医療のメーリングリスト)で紹介されていた書評を紹介します。[食べる・歩く・話す]を健康の第一歩と考えている生禿としては、大筋は賛成です。介護体制が整っていない日本では、納得できない部分もありますが・・・。以下は、書評を要約したものです。


 社会の高齢化が進むとともに日本の昨年度の国民医療費は41兆円を超え、今後、高齢者人口の増加に伴ってさらに増えていく。 2025年には人口の最大のボリュームゾーンである団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、医療費は60兆円近くにまで増えるという推計が示されている。

 著者の武久洋三さんは、全国9都府県で病院や介護施設など約100事業所を運営する平成医療福祉グループの理事長で、リハビリテーションや高齢者医療を専門にする医師でもある。また、厚生労働省の審議会など数多くの委員も務める。医療と経営、そして行財政にも通じている人物が、「医療費半減」の方策をまとめた。

・病院が作る「寝たきり高齢者」

 結論をひと言でまとめると、日本には約8500の病院があるが、一般の病床を減らしてリハビリ病院や介護施設に転換していけばいいという主張になる。

 平均的な入院日数は、欧米諸国では1週間に対して、日本では1か月に及ぶ。日本の病院は、治療を行うだけではなく、高齢者の収容施設となっている。欧米では病院というのは治療やリハビリを提供して自宅や施設に帰す所なので入院日数は短い。病院を欧米型に近づけていけば、現在のような病床数は必要ない。

 日本型の病院のあり方は二つの問題がある。ひとつは社会保障費が高コストになることだ。入院医療費は1人1日2万〜4万円以上かかるが、介護施設なら1日1万円ですむので、病院での長期入院は負担を増やす。そして、さらに重要なのは、入院中ベッドに寝たままの状態(寝かせきり)になっている高齢者が多く、その結果、病院が寝たきり高齢者を作っていることだ。寝かせきりにしておくと、入院中に体力や生活能力を低下させてしまう高齢者がたくさんいる。

・リハビリを強化し、元気な高齢者を増やす

 リハビリ病院は、口から食べられ、自分で排泄できるようにすることで、高齢者が自立できるようにする。入院日数を減らし、リハビリで元気な高齢者が増えれば、医療費を半減できる。

 一般の成人なら入院中にやせて体力が低下しても、日常生活に戻れば自然に回復できる。しかし、予備的な体力が乏しい超高齢者が、一度低下した体重や体力を取り戻すのは容易ではない。しかも、長期に渡る入院中に管から栄養を取らされ、食べる楽しみを奪われてしまうと、生きる意欲も低下してしまう。