配信されたm3の座談会「医療はAIでどう変わるか」をまとめてみました。まとめ方が悪かったので、文書の繋がりが悪い所がありますが、ご容赦ください。

 「ヒフミル君」は、スマートフォンのアプリを使ったサービスです。離島や僻地など皮膚科医の少ない地域の医師に、患者の皮膚の写真と簡単な問診内容を送ってもらい、専門医が、昼間だと30分ぐらいで回答します。24時間、無料で利用できます。回答は国内外の約40人の皮膚科医が担当します。遠隔診断だけでなく、集めたデータは機械学習の研究等に活用できるように、利用規約を作っています。

 眼の所見を遠隔診断する「メミルちゃん」、薬など臨床に関する質問ができる「知見共有(旧クスリバ)」、医療文献の論文検索サービスなども立ち上げ、今は「ヒポクラ」というアプリに統一しました。

 データは自然言語ではなく、定型フォーマットにする。「かゆみはあるのか、ないのか」「それはどこの部位なのか」など。画像の撮影方法に関しても、後々学習する際に扱いやすいように統一ルールを決め、撮影時に表示するようにしました。

 オンライン診療「Curon」(クロン)は、医師と患者の間のやり取りの仕組みを医療機関向けに提供しています。生活習慣病やアレルギー性疾患などで、状態が安定しており、「オンラインでも診療できる」と医師が判断した場合に、患者さんにこのアプリをご紹介して、オンライン診療を行っています。患者さんがモバイルでクレジットカード払いをすると、医療機関が処方箋を発行するか、あるいは医薬品をご自宅まで届けることも可能です。また、医療データを時系列に蓄積し、機械学習を進めています。

 医師が何を思っているのか、別世界すぎて、ニーズが分からないんですよ。楽天やリクルートでも、なかなか入れない。これまで電子カルテなどを導入してきた企業は、いろいろな接点があり、ニーズが拾えているので、ソリューションが出せるのではないかと思います。

 医療データは、患者さんが医療機関に行って医師に診てもらわなければ蓄積されません。しかも、それらは「症状が重くなった時」のデータ。自宅でちょっとお腹が痛かった時、つまり医療機関に行っていない時の「症状が軽い時」のデータを蓄積する仕組みが今はないのです。そうしたデータが貯まっていけば、「これは自宅で寝ていればいいのか、あるいは医療機関に行くべきなのか」など、カジュアルな決断をサポートしてくれる仕組みができ、安心して日常生活を送れるようになると思うのです。

 医療は蓄積されるデータの種類は十分ではない。しかも医療機関のデータは、アクセスが容易ではない。異なる医療機関のデータはつなげにくい。個々人の一生のデータをトラックできるようになれば、若い頃、どんな健康状態だった人が、将来どんな病気になるのかなどを推測できるようになるでしょう。

 市販の風邪薬がどんな問題を解決しているか、といったデータはないですね。誰がどのドラッグストアで、どんな薬を買っているかなんて、誰も分からないですからね。本当はもっと公的保険外の方に、リソースが回る仕組みが必要でしょう。そうなれば、公的の保険と保険外、その両方の情報がつながってくるように思います。PHR (personal health record)ですよね。「データは一義的には患者さんのもの」と考え、個々人にひも付く形でデータを集めていく仕組みを提唱されている方がいます。

 レセプトデータや電子カルテのデータは、保険者や医療機関は、あまり外に出したがらず、施設単位ではあまり得られるところがない。電子カルテのデータを見ても、詳細な症状が書かれていなかったりします。データ自体の質というのも、まだ課題としてはあると思いますね。

 疾患予測モデルや診断・治療に使えるAIは、発展途上国が先にやって、成功したものをわれわれが使用するといったストーリーがいいんじゃないか思っています。日本はやはり厳しい。Watsonも、タイなどで開発を進めています。中国の百度(バイドゥ)、アリババといったレベルで、アグレッシブに取り組んでいる企業は、日本にはない。

 病気の「入口」と「出口」。「入口」はチェックする、つまり患者さんがどんな状態にあるかを診るコストがだんだん下がってくるでしょう。全ゲノムをシークエンスするのに、今は数万円という時代。「こんな時は、この稀な病気も疑っておく」といったスクリーニングも、AIで代替ができます。「出口」ば治療。高齢者だと複数の疾患を持っており、薬が増えています。副作用も問題になってくる。AIは、この薬は要らないと判断してくれます。

 今回のAIブームは、ディープラーニングが主流で、Web広告の世界では、個々人にどんな広告を出すかだけで利益の増加につながります。しかし、医師の仕事が大幅に削減っさsれるとは考えられません。

 医療におけるAIは、画像診断の分野で、病変を精度高く、スピーディーに検出する研究開発が進んでいます。内視鏡の分野では、学会がデータ集めて、機械学習を活用して分析する取り組みが進んでいます。病理医が高齢化し、かつ数が減っているので、質を担保し、病理診断を効率化できるようになれば、価値が出せます。

 データをいかに集めるかという点では、中国や他の国が多分脅威になるのでしょうが、日本でも強みを持ち得るデータの領域があります。日本はX線CTやMRIの台数が多く、精度も高く、たくさん画像を撮っています。また、内視鏡手術のように、暗黙知とされてきた日本の医師による熟練の手技などでも日本で強みを発揮できる領域と考えられます。

 ロボットを使った自動手術は、特に簡単なものは進むと思います。腹腔鏡手術は、術者と助手が必要ですが、術者が求める位置に、助手が腹腔鏡を固定し続けるのは結構大変。ロボット手術において、鉗子の4本のうち2本は、ロボットは文句も言わずに固定してくれます。縫合などもできるようになる。その先、どこまで行けるのかが注目されます。

 今は、検査値や症状などから、「この人は高血圧」「この人はうつ病」などと診断しています。「平均値」を基に、病気か否かを判断しているのです。体温や血圧は、人によって「平常時の値」にバラツキがあります。一人一人の検査値、症状などの情報が分かってくると、個々人にとって、何が病気を捉えられるようになります。

 ある量のインプットを基に、診断したり、治療方針を決めるような領域は、AIに代替されていくと思います。その前の、何をインプットするのか、かつ患者さんと相対したときに、どのようにコミュニケーションするかという部分は、残り続けるます。AIにできそうもないこと、例えば、患者さんにリスクを説明したり、選択肢を説明することなどは、医師の大事な仕事として残るでしょう。責任問題もあり、最終的に診断するのは医師だと思います。

 高血圧の研究で、外気温の差などが、心筋梗塞や脳梗塞と関係していることが分かってきています。外気温が大きく変わった瞬間にイベントが起こったりするんですね。その変化が起きそうだったら、イベントが減らせるかもしれません。個々人に応じた疾患のマネージメント。オンライン診療で得られる時系列データが、役立つでしょう。