「フィンテック」 柏木亮二 2016年 日経文庫
米国では銀行は単独の企業としては成立しなくなり、GAFAの傘下に入りつつあります。日本では今だに「花形企業」と勘違いしている人が沢山います。日本国は劣等国なんだからし方ないのだろうが … やっぱり残念でなりません。
そんな思いがあって、この本を手に取りました。やっぱりです。金融機関の賄賂漬け金融庁の利権を守るためだけに、日本国の銀行は守られています。国民の利便性と財産を犠牲にして。そうハッキリと書いてある訳ではありませんが、よく読めばそうなります。
以下はこの本の要約と引用です。
《1. フィンテックが注目されている理由》
・米国のフィンテック
個人間の送金を実現したペイパル。
銀行口座・証券口座・クレジットカードの利用情報を一元化し、個人の資管理や資産雨尿を支援するパーソナル・ファイナンシャル・マネジメント(PFM)のミント。
既存の金融サーニスと比較して、便利で低価。
・フィナンシャル・インクルージョン(金融包摂)
「社会包摂」は、社会から孤立した人々を社会の構成員として取り込むための環境づくりを行うこと。世界には銀行口座をもたない人が多く存在しています。誰にでも金融ザービスを提供する=金融インフラを整備するにが「金融包摂」です。
老後の生活=ゴールまでの金融資産の運用を支援す「ライフプラニング」が発達しました。
SNSやGPSや取引記録や検索履歴などのライフログから、個人の様々な側面の評価や行動の予測が可能になっています。
リーマンショックによる人々の金融機関への不信と、金融機関をリストラされた人々の挑戦が、フィンテックを発展させました。デジタル・ネイティブで、バブル崩壊を経験して堅実でコストに敏感な世代がフィンテックを支持しました。フィンテックは、金融機能を分解し(アンバンドリング)、既存の金融ビジネスを破壊する新興企業になっています。
日本国は、デフレ前に資産を形成した高齢者に金融資産が偏っています。
日本国は、ATMなど、現金を利用するインフラを整備してきました。PFMの普及を阻んでいる最大の要因が、現金払いのデータ化です。
《2. 進化するフィンテック》
金融機関は、インターネットの世界とは相容れない確実さと堅牢さが求められてきました。マネーロンダリングや犯罪防止のための規制が強化されています。インターネットバンキングでは、スマートフォンでの生体認証が利用されます。
あるソフトウェアから別のソフトウェアの「機能」を呼び出す仕組み=APIによって、様々なサービスを連結。ウェッブAPIによって、外部のプログラムやデータを「部品」として組み込めるようになりました。
アンバンドリングされた機能を組み合わせて、(再)統合された新たなサービスを生み出せます。多様な参加者が強調して協働していく仕組み=エコシステム。アップルのエコシステムが代表。
中国国民の半数が使っているウィーチャット。QRコードを送ることで個人間の送金ができます。また、映画の前売券を予約して決済し、タクシーを手配して支払いができます。
物のインターネット(IOT)は、機器と感知器が繋がることで、自律した機構として機能します。
《3. 今何が起こっているのかを抑えておこう》
お金がデジタル化されると取引の費用が削減され、より小さな単位での、高頻度なやり取りが可能になります。
クラウド会計サービスは、デジタル化された企業の経済活動の記録を蓄積し、分析することで与信モデルを生み出しています。eコマースのプラットフォームを提供している企業は、出店企業の売上データを分析して融資しています。
メールとSNSで人と人との繋がりがデジタル化されました。生産者と消費者という関係を変容させることができます。シェアリングエコノミーの代表=ウーバーは、運転者と乗車者の関係を任意にしました。銀行が仲介しない、個人が貸し手にもなり借り手にもなるという関係をP2Pレンデイングは作り出しています。
オンラインで本人確認を完了する仕組みは、フィンテックにとって重要なインフラです。バミューダのトゥルーノミは、金融機関向けの顧客情報確認サービスを提供しています。日本の本人確認は、少額なな取引にも適用され、厳しすぎると批判されています。
パスワードは虚弱性があり、安全な認証技術とは言えません。現在は、スマートホンでの指紋認証などが利用されています。
電子マネーには、前払い式(プリペイドカード方式)と後払い式(クレジットカード方式)があります。ペイパルはオンラインショッピングに決済機能を提供しています。ペイパルでは相手のメールアドレスを通じて送金が可能です。送金を受け取るにはペイパルによる本人確認手続きが必要です。
アグリゲーション・サービスは、様々な金融機関の口座情報を一つの場所に集約して表示します。これにより支出が正確にわかるようになりました。
PFM(パーソナル・ファイナンシャル・マネジメント:個人資産管理サービス)には、アグリゲーション機能・家計簿機能・支出分析機能・資産運用アドバイス機能・税金計算機能などが提供されます。
日本国のPFMは家計簿管理が充実していること。レシートをスマホで撮影すれば、自動で読み取ってくれます。
PFMサービスは、利用者の全ての金融行動を可視化します。PFMは、情報に基づいて顧客の行動変化を促すことができます。金融機関は自社の口座しか把握できません。カード引き落としでも、それがどのような支出なのかは不明です。金融機関とPFMサービスとの連携が進んでいます。
《4. 金融ビジネスと実務への影響》
フィンテックは、銀行口座無しで資金決済を提供できます。資金を集める機能もあります。金融商品を小口化して提供します。クラウドファンディングや送金もできます。
情報を活用することで、フィンテックはリスクを制御しています。資金を貸す人と借りる人の「マッチング」を、信頼できる第三者(人工知能)がリスクに応じた金利を設定します。米国のFICO(ファイコ)は、クレジットスコア=返済能力を算出しています。日本国には厳密な意味でのP2Pレンディングは存在しません。
クラウドファンディングには、寄付型・(商品などの)成果還元型・エクイティ型(投資型)・ロイヤリティ型(収益の支払い)・貸付型(レンディング)があります。クラウドファンディングは、プロジェクト実行者と出資者の間の「共感」がキーワードになります。事業者は資金調達を通じて、自らのプロジェクトのプロモーション、出資者という支持者の獲得を行います。
日本の寄付型ファンディングでは、山中伸弥のiPS細胞研究が有名です。集まったお金を「志金」と呼ぶこともあります。
ロボアドバイザーは、ポートフォリオのリスクやパフォーマンス、そして顧客への質問への回答を分析し、適切な資産配分を助言します。現在のロボアドバイザーは、数百ドルの資産規模から利用できます。自社の都合の良い商品を勧めるなどの不正を防ぐために、投資の助言には規制が存在します。
アマゾンウェブサービス(AWS)は、スタートアップ企業の参入のハードルを下げました。フィンテックの多くは、銀行業務を地方銀行に委託しています。
SNS上の友人関係・WEBサイトの閲覧履歴・オンライン購買履歴などのライフログを人工知能が分析してユーザーの信用度を分析できます。ライフログの利用には、利用者の同意が必要です。審査に人間が介在しないため、短時間で与信が可能です。
トランザクションレンディングは、通販プラットフォームに出店している企業に、取引履歴を分析して融資を行う仕組みです。過去三年分の決算書などは不要で、短時間で融資が実行されます。
企業がフィンテックを利用する際には、クラウド会計の利用が前提となります。よりリアルで即時の経営情報を共有します。
金融ビジネスには大きな参入障壁が存在しましたが、モバイルインターネットはこの障壁を崩そうとしています。アフリカのエムペさはその代表です。
保険のフィンテック。ビッグデータからリスクを評価する保険が商品化されています。自動運転が普及すれば事故は激減し、費用のかかる販売方法が困難になるでしょう。医療保険にも、運動量に応じたボーナスを支払うサービスがあります。また、スマート住宅は火災などの無縁なものとなりでしょう。
《6. さらに進化するフィンテック》
アンバンドリングが進んだ金融機能が、APIを通じて新たな総合金融サービスに進化しいます。人工知能は、それまで金融が届かなかった領域や場所に金融を届けて、フィンテックの本当の意味での機能を実現しようとしています。
銀行による決済システムをノンバンクなどに開放するオープンAPIの動きは、世界中で加速しています。APIには、参照型と実行型があります。実行型が悪用されると、被害は甚大です。
機械学習は、人間の手を借りずに、データから特徴量を抽出し、それを分析することができます。深層学習は汎用性が高く、同じモデルを様々な領域に適用できます。機械学習の結果は、データの質に左右されます。
ブロックチェーンは、取引記録をまとめたブロックを鎖のように順次追加していくものです。ダウンタイムがなく改竄が不可能なシステムを安価に構築できます。
インドなどではモバイルによる「金融包摂」を促進スすために、生体認証などのインフラを整備しようとしています。