「植物はなぜ5000年も生きるのか」 鈴木英治 2002年 ブルーバックス
ブックオフで百円!薬学部で教える私にとっては、ある意味、生物学の基礎がまるで解っていないことに気づかせてくれる貴重な本でした。ありがとうございました!!! 以下は、この本の要約と引用です。
《まえがき》
植物と動物の生き方の違いを理解する。
《1. 生物は何歳まで生きられるのか》
キリスト教の一宗派に属するアメリカ人から、縄文杉は本当に7000年を超すのかという問い合わせを受けたことがありました。その宗派では世界は神様が7000年前に創ったという教義があるので、7000年を超える樹木があるとその競技が矛盾してしまうというのです。
最高寿命が長い生物が平均寿命も長いとは限りません。動物の世界を見渡しても、現代の日本人のように、誕生した全個体の平均寿命が80歳にもなる生物はいません。平均寿命は環境条件によって変化します。最高寿命は遺伝的生理的な性質なので容易には変わりません。
温帯に育つ針葉樹や多くの広葉樹では、年輪ができます。植物が外へ外へと成長していくことが、寿命と関連しています。魚も老化が起こらず、いつまでも成長し続けます。ある大きさまで成長した後は大きくならない生物は、死すべき運命を持っています。
放射性炭素は、大気の上層で太陽から放射された中性子が窒素原子にぶつかることによって作られます。大気中の放射性炭素量は、殆ど変化しません。放射性炭素を含んだ炭酸ガスを取り込んで植物が自分の体を作ると、最初は大気と同じ割合の放射性炭素を持っていても、5730年で半分という割合で減少していきます。地球に降り注ぐ中性子の量は、太陽活動や地球磁場の変動によって変化します。その補正をする必要があります。年輪を数えて、その年輪数から想定される放射性炭素の残量と実際に残っている量の違いから、放射性炭素の生産量の変動が推定されます。
《2. 地球型生命の誕生》
自分の複製を作る方法は、驚くほど共通しています。最初の生物はRNAで、その後DNAを遣うようになりました。代謝活動は酵素をとおして行われます。RNAは情報を解読して蛋白質を作る過程に情報を伝える役割になりました。
バクテリアなどの原核生物のDNAは、二重螺旋の両端が繋がってリングを作っています、非常に多種類のバクテリアが、動物の体内から深海底まで地球上のあらゆるところで生活をしています。
バクテリアの中から、光エネルギーを使って光合成を行う植物の祖先が出現しました。最初は水ではなく硫化水素などを使い酸素を出しませんでした。27億年前に水を利用するシアノバクテリア(藍藻の仲間)が出現します。オゾンが作られ、地表面に降り注ぐ紫外線の量が減りました。生物が海水の外に出ることが可能になりました。
DNAをヒストン(蛋白質の一種)と結合させて安定化させた染色体ができました。染色体を膜で包み核ができました。真核生物が19億年前に出現しまあす。バクテリアが体内に共生するものが出てきました。ミトコンドリアも葉緑体も独自のDNAを持っています。多細胞の真核生物は、5億年前に出現しました。
キノコ(菌類)は、陸上植物には含めません。陸上植物の細胞はセルロースで覆われていますが、蟹や昆虫の殻を作っているキチンで覆われています。
単細胞生物は、原核性と真核性。多細胞生物は、植物と動物と菌類。生物は5界に分けられます。
単細胞生物でも有性生殖を行う生物がいます。有性生殖する単細胞生物は、受精した瞬間に自分自身は消えてしまいます。新しい生命が生まれるようになりましたが、それを生み出した個体は死ぬようになったのです。
有性生殖の意義は、遺伝子の修復です。遺伝子の修復のためにニ倍体になりました。それでも修復できない箇所がでてきます。別個体と遺伝子を交換すると、両方で同じ箇所が壊れている可能性は低いので正常な状態に戻すことができます。
生物の進化はDNAを増やす方向に進化してきました。新しい個体を作りDNAを増やす方が有利でしょう。長寿な針葉樹は裸子植物に属し、その後に進化してきた被子植物よりも原始的です。杉の天然林は少なく、日本以外での自然分布は見られません。
生物の個体数の変化を表すロジスティック式
次世代の個体数=成長率*現在の個体数*(1−現在の個体数/環境容量)+現在の個体数
成長率が3以上になるとごくわずかな成長率の変化でも結果に大きく影響します。生物の進化は複雑ですから、予想することはできません。
《3. 動物の体、植物の体》
細胞内部の構造は、動物と植物で大部分が共通しています。
植物細胞は、細胞壁が細胞膜の外側にあります。動物の細胞は柔らかく動き回るのに都合よくできています。植物の細胞では縦に長く大きなものがあります。植物の古い細胞は死んでしまいますが、硬い細胞壁は、菌類に分解されなければ、そのまま残ります。
全部の細胞が分裂するのは発生の初期に限られ、成長すると分裂細胞だけが分裂能力を持ち続けます。髪の毛は基部の分裂能力を持つ細胞が二分裂し、一方は分裂細胞として残り、他方は分裂能力を失います。各組織の分裂細胞に分化した後には、その組織以外の細胞を作れなくなります。心臓の筋肉は赤ん坊の時に分裂を終え、新しい細胞は生まれてきません。心臓の筋肉や神経細胞の死は、心筋梗塞や脳溢血を引き起こし個体の死に直結します。
植物も種子が発芽し成長するようになると、細胞分裂は茎の先端部にある茎頂(成長点)と、根の先端部の細胞の二ヵ所だけになります。樹木では、幹や根の樹皮のすぐ内側に、肥大するための新しい細胞を生み出す形成層ができます。分裂する始原細胞はシダでは茎の先端に一個だけ、裸子植物では複数になり茎先端の表面に層になっています。
植物の分裂組織が全ての組織を作り出すことができるのに対して、動物の分裂組織は特殊化しています。植物では、生殖細胞と体細胞の分裂組織がずっと後で分化します。茎頂の分裂細胞は、茎も葉も花も、そして根も生み出します。
動物と植物の器官を比較すると、植物の方が簡単です。植物では、花・葉・茎・根しかあありません。動物の場合にはぞれぞれの器官が一つか二つしかなく、かつ相互に影響し合っています。植物では同じ器官が複数あります。単純で繰り返しの多い植物の体と、複雑で予備の少ない動物の体では、植物の方が長生きしやすいことになります。動物では癌細胞が転移しますが、植物の細胞は細胞壁で固定されているのでほかの場所に転移することはありません。
植物の体はブロックを積み上げるようにしてできています。
長寿な生物は成熟した後も、死ぬまで成長を続けます。
脊椎動物の起源は4億年前、頭が甲羅で覆われた甲冑魚の段階を経て、軟骨魚、硬骨魚、両生類と進化してきました。脊椎動物の頭蓋骨は、甲冑業の頭を覆っていた外骨格が変化したものと考えられます。そのほかの骨は、まず軟骨ができ、リン酸カルシウムが蓄積して硬い骨になります。
内骨格の動物は、骨を支えたままで大きくっします。破骨細胞を作り、成長に伴って不要になる部分を壊します。形を維持しながら骨が成長するために、骨芽細胞によって新しい骨が作られると同時に、不要になった部分の骨を壊す作業が行われます。骨折した場合でも、折れ目を合わせて固定しておけば、骨芽細胞がカルシウム類を分泌して元のように繋がります。
コラーゲンは動物の体の中で一番豊富にある蛋白質で、皮膚の有機成分の四分の一、腱の3割を占めています。コラーゲンの長い分子が一方向にたくさん並んでロープのようになったものが腱です。年とともに腱は硬くなり、体の動きをぎこちなくさせる一因になります。
コラーゲンは加熱するとバラバラになって溶けます。冷やしても元の状態には戻らずゼラチンになります。コラーゲンが変性する温度は動物のよって異なり、南極の氷の下に棲んでいる魚は数度、人間では40℃、つまり体温より少し上の温度で変性してしまいます。植物の体を形成するセルロースは、100℃の熱湯につけても変性しません。
細胞壁の主成分はセルロース。自然界に最も多量に存在する有機物です。木材などの硬い細胞では一次壁の内側に二次壁ができます。二次壁はリグニンがセルロースの繊維の上に付着して硬くなっています。
セルロ−スを分解するためには、酵素のセルラーゼが必要です。草食動物は腸内にいる微生物がセルラーゼを持っています。リグニンは分解がいっそう困難です。
水を流す木部の細胞は、被子植物である広葉樹の場合は道管です。裸子植物である針葉樹の場合には、仮道管があります。水の通り道の道管は空洞ですが、光合成でできた糖類が移動する篩部の細胞には原形質が残っています。糖類は隣の細胞から溶け込むようにして、少しずつ移動していきます。篩管は隣どうしの原形質がじかに接するように、細胞壁に小さな穴がたくさん開いています。
植物は光合成によって1gの有機物を生産するために、約250mlの水を根から葉に運ばなければなりません。その殆どは蒸散に使われます。蒸散を行うことで、植物は直射日光に当たり続けても熱くなり過ぎず、また土壌中に溶け込んだ養分を吸い上げています。
心材が変色するのは、虫や菌の繁殖を防ぐフェノールが付け加わったためです。完全に死んだ細胞だけになり数千年も樹木を支え続けます。
植物は外へ外へと新しい組織をつけていくので細胞が交代することはありません。葉も完成すると、虫に食べられても修復しません。働けなくなったら散っていくだけです。葉には最適な大きさがあります。成長に限りがあるものは、寿命にも限りがあります。
樹木も細胞の寿命はせいぜい30年です。大部分が死んだ細胞からできていて、切られてもあまり違いはありません。動物の体はほとんどが生きている細胞からできています。草の体の大部分も生きている細胞です。爬虫類、魚類、植物とも細胞の最高寿命には大きな違いはないようです。
動き回る生物にとって、その体のつくりにあった最適な大きさがあります。普通の人間のプロポーションのままで、身長を数倍にすると、歩くことさえできません。体重は体積に比例するので身長が倍になると8倍に。骨の強度は断面積に比例するので4倍にしかなりません。ですから、大きな動物ほど体の割に足が太くなります。植物は動き回らないので、大きさの上限が動物より上にあります。結果として、植物の体は、生きている限り大きくなります。
《4. 老化する細胞、老化しない細胞》
分裂組織でも、線維芽細胞は分裂回数が有限ですが、造血細胞や表皮を作る幹細胞では分裂限界はありません。
テロメアを再生するために、テロメラーゼ(酵素)があります。卵巣と精巣では、卵や精子を作られる時にテロメアの長さを元に戻します。マウスは寿命が3年なのに、人より長いテロメアを持っています。癌化した細胞はテロメラーゼを合成することができます。植物の染色体にも末端にはテロメアがあります。植物の分裂組織には、テロメラーゼがあります。
原核細胞の核にはテロメアがありません。リング状になっていて末端が無いからです。
DNAの二重鎖の構造は、修復を容易にしています。二倍体になったのは、一部が壊れてもただちに死なないためと、修復が行いやすくするためでしょう。生殖細胞を正しく複製するためには、生物は多くの酵素を注ぎ込みます。
植物では花の一部が生殖細胞になります。植物には花を作る専門の分裂組織がありません。従って、全ての茎頂で正しく遺伝子を子孫に伝えるためには、全ての茎頂で遺伝子を正常な状態に保ち続ける必要があります。そのため茎頂にはテロメラーゼなどが存在します。従って、葉や幹の細胞に老化が生じないことになります。樹木の葉は、3000年生きている杉の葉と、数十年生の葉を比べても同じように見えます。
植物は老化せずに無限に分裂し続けます。外界にさらされている表面の組織は、老化しやすい部分です。表皮の肝細胞には分裂の回数に上限がありません。
動物細胞のほとんどが二倍体であるのに対して、植物では四倍体、六倍体など高次の倍数体が珍しくありません。倍数対比の意義は解っていません。
イモリのDNAはヒトより多いのです。DNAの量と進化の過程と関連するとは考えられません。
クレオソートブッシュは、周囲に枝を広げ根を下ろしながら同心円状に広がっていきます。中心部の幹は腐って無くなります。クローンの株が1万年以上も存続しています。
生命の寿命を考えると、個体とは何かが問題になります。個体とは、卵と精子が受精して新しいDNAの組み合わせを持った細胞ができた時に誕生し、その遺伝子をもった細胞が全て死んだときに個体も死ぬと言えます。
一卵性双生児やクローンは同一個体と言うべきか、簡単には決められません。植物は栄養繁殖(無性生殖)します。芝や竹は地下茎を伸ばして増えます。どれとどれが同じ個体なのか調べることは不可能です。球根で増える植物も同じことが起こります。
西洋タンポポは三倍体で、卵を作る時に減数分裂をしないでそのまま三倍体の卵を作り、花粉から性核をもらうことなしに分裂して、母親と同じ遺伝子を持つ胚が入った種子を作ります(単為生殖)。受粉の必要が無いので昆虫がいなくても分布を拡大できます。植物は個体性がはっきりしません。動物ではアブラムシが単為生殖をします。
動物ではサンゴがクローンを作ります。サンゴ虫同士は消化循環系の管によって連絡しているので、全く別の個体とは言えませんが、一つ一つのサンゴ虫が個体としての全ての能力を持っています。体内に藻類を共生させその光合成の産物も利用しているので、太陽光が届く浅い海にしか生活してません。体の作りも生活様式も、樹木に似ています。
核を移植する方法で生まれたクローンは、完全なコピーではありません。ミトコンドリアは卵を提供した個体ものだからです。
普段は無性で増殖するゾウリムシにも性があり、オスとメスが接合して有性生殖しないと、数百回しか分裂できません。ゾウリムシのような単細胞生物でも、寿命は有限です。植物でも、無性生殖しか行わないものは稀です。
ゾウリムシは単細胞ながら、核には代謝活動に使われる栄養核と、子孫に伝えるための小核がああります。ゾウリムシが無性生殖を続けられないのは、栄養核のDNAに異常が蓄積するためと考えられます。小核は修復する酵素をたくさん持ち正しい遺伝情報を保持し続けます。無性増殖するときにも小核は有糸分裂で新しい核を二つ作ります。栄養核は無糸分裂。DNAが完全に等分されません。ゾウリムシは自家生殖をし、若返ることもできます。
アメーバーでは分裂に限界がありません。ゾウリムシのように分裂の限界があるのは例外的なようです。原核生物のバクテリアも無限に分裂できると考えられています。
《5. 動物の老化と寿命》
ヒトとコウモリを例外として、体が大きな動物ほど寿命が長い傾向があります。霊長類は体重の割に寿命が長くなります。小型動物ほど単位体重当たりのエネルギー消費量が多くなります。体重が大きい動物ほど一日の体重当たりの基礎代謝量は少なくて済みます。寿命に関わりなく、一生に使うエネルギー量は体重当たりに換算すれば違いはありません。たっぷり食べて早死にしても、節制して長生きしても一生に食べるカロリー量は同じになります。
変温動物は体温を一定に保つ必要がないので、基礎代謝量が少なくなります。細胞がゆっくり活動している分だけ長生きになあります。低温で飼育された個体は寿命が延びます。一生の鼓動数は同じになります。
鳥類は飛ぶためのエネルギーが必要で基礎代謝量が2倍近くになります。にも拘わらず、長い寿命をもつ種類が多いのです。有袋類は哺乳類よりも基礎代謝量が少ないのに、寿命は短くなります。単純な消耗理論では寿命は説明できません。
動物にはなぜ寿命がああるのかについては、いくつもの理論があります。プログラムされた死。生きたままで乗り越えられない環境(サケや蝶など)。捕食者の存在(小さな動物)。小型の生物でもハリネズミやヤマアアラシのように体を棘で蔽う動物は、同じサイズの哺乳類よりも寿命が長いことが知られています。コウモリや鳥の寿命が長いのは、捕食者から飛んで逃げることができることが影響しています。飛べない鳥の寿命は長くありません。老化。自然選択は種全体にかかるのではなく、個体にかかります。
《6. 植物の寿命》
発芽してからの寿命が長い種類は種子としての寿命が短く、発芽後の寿命が短い種は種子の寿命が長くなります。雑草を根絶やしにできないのは、土の中に種子が残っているからです。
休眠して代謝しなければ老化しなくなります。人体全体を凍結させようとすると、内部が凍るまでに時間がかかり、その間に氷の結晶が大きくなって細胞を傷つけてしまうため、凍結された人体を復活させることができません。
木の寿命には、体を支える木材の耐久性が影響します。比重は材の強度と関連し、重たい材ほど折れにくくなります。長寿な樹木ほど比重が大きくなります。
長寿な針葉樹の比重は小さいのです。針葉樹は少しの材料で長持ちする材を作ることができます。針葉樹のリグニンは腐りにくく、かつ含量が多いのです。
針葉樹の樹脂=マツヤニは、食害する虫から幹を守ります。ヒノキは「火の木」。樹脂を多く含み乾燥しているので、摩擦で火を起す時に使われました。広葉樹でも長寿なユーカリは、樹脂があります。巨木になるクスノキの幹には防虫剤になる樟脳を含みます。
日本人では南西日本の県が長寿で、北日本は短命な傾向があります。脳卒中を起こしやすい寒冷な気候が影響していると言われています。アメリカでも、南の州ほど平均寿命が長くなります。
針葉樹の寿命は南西日本ほど長くなります。南西部に行くほど夏冬の温度差が少なくなるからでしょう。
《7. 植物はどこまで大きくなれるか》
木の大きさは地面から高さ1.3mのところで測った周囲長で表します。
イチョウは日本に自生しない樹木。全て植えられてものです。スギは、まっすぐな木という意味です。大気汚染に弱いので東京にはほとんどあありません。材を分解する昆虫が多い熱帯では、樹脂を出す植物がたくさんあります。
巨木になることが優占種になる条件にはなりません。短期間で交代する種の方が個体数を増やすには適している場合が多くなります。
植物は生きている限り成長を続けるので、大きさの限界が寿命の限界になるはずです。大気の圧力では10m以上水を持ち上げることはできません。水の分子がくっつきあう凝集力。水分子は電荷を帯びているために、分子同士が引き合います。幹の上の方で水が蒸発して不足すると、下から水を引き上げます。根から葉まで水のパイプがつながっていなければなりません。小さな気泡が入っても水の連絡が途切れてしまいます。
仮道管は上下に穴が無く、横に開いた小さな穴を通して水を流します。そのため気泡ができても、その気泡が水の水路を遮断しません。水の運搬速度では劣りますが、安定性では優れています。広葉樹は成長を速くする方向に進化し、早く死にやすくなりました。寒い地方に針葉樹が多いことも、凍結による気泡発生に耐性を持つことも一因です。
《8. 過去の生物 寿命の変化》
現存する陸上植物は、コケ植物、シダ植物、裸子植物、被子植物。コケとシダは胞子で、裸子と被子は種子で増えます。コケとシダの区別は、一倍体か二倍体かです。コケ以外は維管束植物です。
シダ植物は葉を持たず、茎で光合成をしています。3億年前、植物の遺体を食べる小さな節足動物が出現しました。
現在の両生類には植物を食べる種がいません。両生類は、セルロースの分解酵素を合成する微生物を共生させることができなかったようです。
石炭紀になると大型のシダ植物が出現しました。石炭紀の気候は現在の熱帯多雨林のような気候だったと考えられます。シロアリは樹木を分解する主要な昆虫。新生代以降にしか出現していません。シロアリは進化した新しい昆虫です。
両生類から爬虫類が進化しました。水中生活を必要とせず、生息範囲を拡大しました。草食性の種はペルム紀に出現します。石炭紀には植物を食べる生物が多くはありませんでした。植物遺体の膨大な埋蔵量が石炭になりました。
シダ植物から裸子植物が進化しました。シダは一倍体の胞子が風邪まかせで飛んでいきます。効率よく受精するために、卵を作るメス胞子が親の体にとどまり、精子を作るオス胞子を待つ方法に進化しました。ペルム紀に気候が寒冷化し、巨大なシダは絶滅しました。
日本のイチョウは100万年前に絶滅しました。歴史時代になって中国の1種類の残っていたイチョウが持ち込まれました。
イチョウより進化した裸子植物が、針葉樹と言われる球果植物。球果はマツボックリなどのこと。日本の針葉樹は細い葉を持っていますが、一概に細い葉とは限りません。スギはかつては広く分布していましたが、現在の自生地は日本だけです。中生代の白亜紀は、温暖で雨が多い気候でした。ヒノキはスギから分化して出現しました。
中生代は恐竜の時代。ジュラ紀には竜脚類が、白亜紀にはトリケラトプスなどの角竜類が多くなりました。恐竜の歯はスプーンのようになっていてかみ砕くことはできませんでした。口に臼歯がなく、消化管の途中に胃石が入った砂嚢がありました。鳥類も砂嚢を持っています。恐竜は恒温動物の鳥類に近い種です。
恐竜は小さな脳しか持っていませんでした。脳の大きさと寿命になぜ相関があるのかは、明らかではありません。
哺乳類の体重と寿命の関係は、[寿命=8.72*体重^0.2279]。
被子植物は白亜紀の初期から出土します。中世代の針葉樹までは、植物の進化は寿命を延ばす方向に進んできました。その後は短命に向かっています。
最初の被子植物は離弁花類でした。合弁植物が色々な系統で並行して進化しました。離弁花類と合弁花類は子葉が二枚あるので双子葉植物です。単子葉植物は、離弁花類から分化し、イネ科やラン科などを生み出しました。単子葉植物は、タケとヤシを例外として草ばかりです。合弁花類には巨木になる目はありません。離弁花類の中でも原始的な目に巨木になる種類が多いのです。
進化した合弁花類のキク科やナス科などは、新生代に出現しました。キク科は2万もの種を持ちます。
進化した種ほど短命なのは、中生代から新生代にかけての気候の寒冷化と乾燥化が関連しているようです。
新生代になって低温化しました。一因は、ヒマラヤ、アルプスなどの造山活動。山が高くなると雪が積もり、太陽光線を反射してエネルギーを宇宙に逃してしまいます。細長い山脈は、熱の移動を妨げます。中生代は凍っていなかった北極が凍りました。これらの結果、地球全体が冷えたのです。変動が大きく厳しい環境では、長く生きられるよりも、すばやく成長して子孫を残す方が有利です。
さらに低温化は蒸発量の減少を招き、乾燥化も引き起こしました。低温で乾燥した環境は大きな樹木の生育を抑え、草原を拡大しました。植物は小型化し、一年草になることで冬を種子として休眠して乗り切ろうとしました。昆虫も一年生になることで、寿命一年未満で卵やサナギで越冬します。
哺乳類の目の大部分は新生代に入ってから出現しました。哺乳類は、大型化と長寿化で寒冷化を乗り切ろうとしました。いろいろな動物で、森林生の種よりも草原生の種の方が体の大きな種が多くなっています。草原の草の方が消化しやすいことが関連しています。
大絶滅がなければ現存種が進化することはなかったでしょう。