「親の介護をする前に読む本」 東田勉 2016年 講談社現代新書

 私自身が健康寿命の平均値になっています。そろそろ介護のことを真剣に考えなくっちゃ・・・と、大学の講義のための参考に読みました。とても良い本です。 以下はこの本の要約と引用です。
 話は変わりますが、この本には、私が既に読んでいる著作がいくつも紹介されています。そういう本の中にまだ読んでいない本が一冊。「完全図解 新しい介護」(太田仁史・三好春樹監修)はまだ読んでません。学生達にも薦めてみたい本です。

《はじめに》

 健康寿命は女性74歳、男性71歳。平均寿命との差は、女性が13年、男性が10年もあります。

《プロローグ》

 今、日本では2週間に一度介護殺人が起きています。同じような境遇でも天と地ほどの違いが出るのが介護です。

《1.介護難民にならないための基礎知識》

 結婚している子供たちの多くが、自分の親だけの看る「実子介護」しかしません。介護者の3割は男性になっています。実家を離れないシングル層が、介護に巻き込まれています。要介護者のためのサービスを提供する介護保険では、介護者は助かりません。
 在宅ケアが幸せというのは、立派な家に住み家族に恵まれ、お手伝いを置ける大金持ちだけです。
 子供の世話にならない時代は、孤独な時代でもあるのです。
 介護のニーズを捉えられないのは、介護を医療の延長上に位置づけようとするからです。介護は、個別の状態を把握し、残された諸力で生活を作り出していくものです。

《2.介護施設利用の常識・非常識》

 介護施設は、特別養護老親ホーム、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設(療養病床)の3つ。有料老人ホーム、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅、ケアハウスなどは「在宅」です。
 特養は、要介護3以上の人しか申し込めなくなりました。老健は、リハビリテーションを行う施設ですが、特養化しています。医療保険は使えず、介護保険でサービスを提供するので、積極的な医療は行われません。療養病床は、長期療養を必要とする患者の中で、要介護者のためのものです。
 グループホームは、要支援2以上の認知症高齢者が、共同生活を送る場です。有料老人ホームになると、」行政の立ち入り検査を行うことができます。サ高住では、大家から一方的な解約ができません。対象は60歳以上または要支援・要介護認定を受けている人とその家族です。
 自宅からサ高住に移り住んでもらい、そこへ定期巡回・随時対応型訪問介護看護が頻回訪問を行うのが、国の描く地域包括ケアの絵姿です。
 待機者がいながら、新設の特養が職員不足で部分オープンしかできない事実。全国の介護事業所の6割が人出不足に陥っています。その最大の要因が「賃金が低い」です。
 特養は要介護度が高くなっても、手厚い世話を受けれら、割安感があるので人気あります。ですが、入所していても利用料が上がって年金でまかないきれない人も出ています。
 介護保険業界には不正が多いのは事実です。指定取り消しのニューズが後を絶ちません。介護報酬が引き下げられ、中小事業者の廃業が進んでいます。
 保険金の代わりに介護サービスを受けられる「現物給付型保健」の販売拡大のために、生命保険会社が介護業界に参入しています。
 サ高住では、コンサルタントが、入居者の要介護度が高いほどもうかること、支給限度額いっぱいにケアプランを組むこと、入居者が生活保護受給者であればとりっぱぐれがないなどを指南します。囲い込んで過剰介護を押し付けるサ高住と、安否確認や生活相談など法律で決められたことしか行わないサ高住に二極分化しています。サ高住ブームは、建設側の都合に過ぎません。介護報酬は、訪問介護の方が有料老人ホームより高いのです。
 身体拘束は、自分では開けられない部屋に隔離する、ベッドに体幹や手足を縛りつける、ベッドから出られないように四方を柵で囲む、手足の動きを制限するミトン型の手袋をつける、脱衣やオムツ外しを制限するためにつなぎ服を着せる、行動しないように向精神薬を過剰に服用させるなど。高齢者虐待防止法に抵触します。但し、虐待自体には罰則がありません。

《3.介護保険を使いこなすコツ》

 ケアマネージャーは、「同居家族がいると、ヘルパーを派遣したも生活援助は受けられません。受けられるのは身体介護だけです」と言います。自治体によって介護保険サービスの解釈に違いがあります。
 65歳になると介護保険証が送られてきますが、そのままでは使えません。要介護認定を受けて、要支援1〜2、要介護1〜5と認定され、ケアプランを組んで介護サービス事業者と契約しなければ使えません。
 お年寄りが独居を維持できるのは要介護1までと言われています。
 要介護認定を受けるには、市区町村の介護保険課の窓口にある申請書で申し込みます。役所の窓口に介護保険のパンフレットがあるので参照します。
 要介護認定を左右する要素は3つ。質問項目と主治医意見書と認定調査員が書く特記事項です。認定調査員は形式どおりの質問をします。それだけでは見えてこない介護の必要性を、特記事項に書いて貰いましょう。要介護度を決める物差しは、介護にかかる手間と認知症の有無です。心情的な辛さを訴えても無意味です。本人の前で日頃の不始末を告げるわけにもいきません。困ったこと、過去の事件などをメモにして渡しましょう。要介護認定にまつわる理不尽な話は数多く報告されています。
 北欧の教育・医療・介護はおおむね公務員によって提供される公共サービスです。倫理の欠如が起こりにくく、全体のレベルを確保できます。
 要支援になった人が受けることができるのが、介護予防サービスです。要介護になった人が受けるのが介護サービスです。自宅でサービスを受ける場合は、ホームヘルプ(訪問介護)、ディサービス(通所介護)、ショートステイ(短期入所生活介護)を組み合わせてケアプランを組みます。段差解消や手すりの設置などの住宅改修、介護ベッドや車椅子などの貸与を受ける福祉用具レンタルも、在宅介護初期から導入します。福祉用具レンタルに関しては、質問項目の「寝返り」か「起き上がり」が「出来ない」にチェックが入らないと利用品目が制限されます。
 介護事業者間に競争があれば別ですが、現在の介護サービスは売り手市場。市場原理が働かない状況にあります。
 いいケアをして利用者の要介護度が下がると、事業者の介護報酬が減ります。市場に任せると、介護の質は下がる一方です。
 行政は、悪質な業者への対策や、肥大する予算を抑える抑えるための政策を優先します。利用者の視点は抜け落ちています。介護保険のサービス内容は悪化し、自己負担は増大していきます。
 お役所の杓子定規な運用が利用者と家族を苦しめています。
 機能訓練特化型ディサービスは、筋トレ・体操・足湯・マッサージなど「ジム感覚」で通えます。
 ショートステイは自治体によってバラバラです。ショートステイのベッドがあるのは特養や老健です。馴染みの施設に連絡を入れて空きを調べ、仮予約してからケアマネージャーにその日を抑えるように依頼します。
 自治体は様々なサービスを行っています。住んでいる自治体の高齢者向けサービスを調べて利用します。日本の福祉制度は「申請主義」です。必要な人に必要な情報を出さないのは、自治体が給付を抑制したいからです。窓口には高齢者福祉のパンフレットが置いてあります。自治体は、防火に対するサービスに力を入れています。
 自治体以外で地域の高齢者の生活支援をしているのが、自治体ごとの社会福祉協議会(社協)です。特にボランティアの派遣は、介護保険の穴を埋めるのに便利です。

《4.家計破綻を免れるためにできること》

 認知症があると、在宅介護にかかる費用が倍以上になります。通常見守りやショートスティやヘルパーの利用が増えるためです。
 特養に入れたとしても、二重生活が始まるので家計は逼迫します。
 グループホームや有料友人ホームは、施設によって規約が異なります。退所の条件を確認しておきます。利用料金が安いからといって、無届施設を利用してはいけません。
 呼び寄せ介護が共倒れや家庭不和を引き起こすことはよくあります。呼び寄せられたお年寄りは認知症を発症しやすくなります。生活保護を受けさせて施設入所させるという選択肢もあります。
 親の年金で暮らせると思っても、介護離職すべきではありません。仕事を続けながら、介護保険サービスを使うことをお勧めします。

《5.質の高い介護サービスを受けるには》

 障害者支援は、サービス管理責任者さえいれば、あとは全員無資格でもOKなので事業所は素人だらけです。一般人としての常識すらありません。重度の身体障碍者を介護できる人はいません。理学療法士(PT)以外の介護職は人間の体に対する理解が足りません。
 ヘルパーは利用者の体や財産に触れることを許されえています。日本ヘルパー協会では「ヘルパー憲章」を制定しています。強い倫理観がなければ務まりません。
 ヘルパーの多くは、登録ヘルパーです。複数の訪問介護事業所に登録して、働いた分だけの時間給を貰います。多くが直行直帰です。ヘルパーになる人は様々です。介護力や家事能力にも大きな開きがあります。介護保険制度上は利用者からヘルパーを指名できませんが、ケアマネージャーに「ヘルパーを替えて欲しい」という依頼が多く入ります。利用者とヘルパーとの馴れ合いから、様々な問題が発生します。
 入所系のサービスは満床にして待機者があれば利益計画が立ちます。ショートスティは、入出所を繰り返すので空きベッドが出やすく、介護スタッフも利用者が変わるので大変です。ショートスティのベッド数が増えないのはそのためです。
 ショートスティの最大の問題は、利用者が心身の状態を低下させてしまうこと。安全優先で何もさせないため日常生活動作(ADL)が落ち、居室に生活感がないために認知症が進行しやすくなります。
 歩行力の弱ったお年寄りは転倒します。転んでも骨折しない環境、床材やマット、大腿骨に骨折予防パンツを履かせたりします。
 心無い介護施設は、安全のためにという名目で行動を抑制します。心ある施設では、エレベーターのボタンのカバーや暗号化も抑制と見なして廃止しています。施設ケアの良し悪しを見分ける一番簡単な方法は、玄関の自動ドアが内側から開くかどうかです。
 安全優先でお年寄りに何もさせない介護ほど有害なものはありません。廃用症候群を引き起こすからです。家族側は「開かれた施設」のリスクは覚悟する必要があります。
 お年寄りへの虐待は起こっています。小規模施設における一人夜勤は苛酷な仕事。介護業界ではいじめに近いと言われています。大部分の施設が一人夜勤を指せている以上、そのような施設であっても利用せざるを得ません。

《6.良心的な介護施設をみつける方法》

 生活習慣を維持するのが介護です。口から食べ、トイレで排泄し、気持ちよくお風呂に入ってもらう必要があります。ところが、これっができない介護現場が多いのです。
 食事・排泄・入浴(三大介護)がしっかりできているかどうかは、施設に置かれた介護用品を見れば分かります。
・ベッド
 医療用のベッドは、処置をするとき両側から手が届くように幅が狭く、医師や看護婦が腰を痛めないような高さに設定されています。幅が狭くて寝返りが打てず、高くて降りられないベッドでは寝たきりになります。
 介護用ベッドは、マット幅が100儖幣紂憤貳未離轡鵐哀襯戰奪鼻砲必要。褥瘡を防ぐ目的のエアマットは寝返りを打ちにくく、かえって褥瘡ができます。背上げ機能は使わないこと。ベッドの高さが高く、柵で囲まれている施設は失格です。
・食堂の椅子とテーブル
 椅子は、深く腰掛けることができ、背もたれが付いていること。足が短い椅子を使っているのは良い施設です。
 テーブルは前かがみの姿勢で食事ができるよう、充分に低くなければなりません。お臍の位置ぐらいが理想です。
・車椅子
 車椅子には、座る・移動する・移乗するという要素があります。移乗しやすい、ひじ掛けが簡単に取り外せ、足代も簡単に外せるものが安全です。車椅子に座らせっぱなしにしない施設が良い施設です。レッグサポートを付けていると、足を後ろに引けないので立てません。職員は腰を痛め、お年寄りは自立から遠ざけられています。
・居室の私物
 私物で溢れた居室がいくつかあれば、かなりいい介護施設です。認知症のお年寄りは、私物が無いと見当識(ここがどこで。自分が誰であるかを認識する機能)が保てません。私物はお年寄りを落ち着かせる介護用品なのです。

 口から食べることにこだわっている施設は良い施設です。
 口から食べるためには、ベッドで食べさせないこと。車椅子から食堂の椅子に移乗させること。体が後ろに傾く姿勢では、安全な食事ができません。できるだけ自分で食べてもらうために、安易にスプーンで口に入れない。同じものを食べていても、口に入れてもらうと美味しさが半減します。食べやすい食形態で、正しい姿勢で、自助具も用意して…、工夫をします。箸が使えなくなるとスプーンやフォークも使えなくなります。そんなときは、手づかみ食べを容認します。
 口に入れてあげる場合は、前傾姿勢になる、介護者は利き手側に座る、下から食べ物を口に運ぶ、の3つを守ります。上から食べ物がくると、のけぞって誤嚥を起こしやすくなります。
 介護者がお年寄りと一緒に同じものを食べているのは良い施設です。介護者が食べながら見守ると、別室で食べる倍の時間がかけられます。
 正しい介護ができれば、癌でも認知症でも、亡くなる前の数日間以外、オムツの無い生活が送れます。意識のハッキリしている人はトイレに連れていきます。正しい排泄ケアができない事業者は、年寄りを認知症へ追い込みます。オムツへの排泄を強制されると、想像を絶する不快感を味わいます。この不快感から免れるために感覚を消そうとします。そして、全てがわからなくなります。
 尿意や便意が訴えられないお年寄りでも、落ち着かない雰囲気になるので、慣れれば様子で気づけます。何かにつかまって20秒くらい立っていられれば、介護者がパンツの上げ下ろしができるはずです。車椅子で入れる様式トイレがあれば、外出もできます。
 お年寄りが便意や尿意を訴えたら、介護者はしていることをいったんやめて、トイレへの誘導を最優先に行います。「排泄最優先の原則」です。
 自然な排便には、直腸の収縮力、腹圧、重力の3つが必要。直腸は便意を感じたとき=便が直腸に送り込まれたときしか起こりません。便意を感じたときを逃すと/我慢すると、お年寄りは頑固な便秘になります。
 便意を感じなくなって訴えが無い場合、直腸の収縮が起こりやすい朝食後のトイレ誘導を習慣化します。根気よく続ければ便意が戻ってきます。排便表をつけて排便を予想し、定期的に便座に座ってもらいます。最悪の介護現場では、全員一律にオムツを当て、定時交換しかしません。下剤・浣腸・適便(肛門から指を入れて便をかき出す)に頼っている介護現場も少なくありません。
 介護施設の中には、段差が無いのがバリアフリーだと勘違いして、埋め込み式の大浴場を作っているところがあります。このプールのような浴室に入るには、床にしゃがむ動作をしなければなりません。お年寄りが入浴できないとわかると、ストレッチャーやリフトに乗せたまま浴室に入れる機械浴を導入します。寝たままお風呂に入ると、足が浮いて頭が沈みます。溺死事故も起きています。機械浴は、両足にまったく力が入らない人や、意識障害のある人のためのものです。
 普通の家庭用浴槽(半埋め込み式)が最も入りやすく、介護もし易いのです。浴槽と同じ高さの洗い台を付け、これに座って浴室に出入りして貰えば、簡単に一対一の入浴介助ができます。歩行が困難でも座れれば、マヒした足を介護者が出し入れしてあげることで、浴室のふちを安全に超えられます。
 あるべき介護を行う現場は少数派です。その原因を作っているのは介護学校です。介護者役がスプーンで食べ物を要介護者役の口に運んでいます。排泄介助では、オムツの交換を教えています。入浴でも特殊浴槽による介助を教えている学校が少なくありません。
 いい介護とは「せかされることが苦手なお年寄りを待てる」介護です。効率優先の介護変場には、ゆったりとした老いの時間は流れていません。

《7.間違いだらけの高齢者医療》

 日本の高齢者医療は特殊です。高齢者医療が無い、かかりつけ医が機能していない、病院/病床が多い、入院日数が長い、死期が迫った人に延命を行う、緩和医療を受けられない。
 日本では高齢者医療が確立されていません。高齢者にも若者と同じ検査が行われ、同じ薬が出されます。欧米では、高齢者の医療は、苦痛の緩和が中心です。終末期には検査などは行いません。
 日本の医師は、診療科目を自由に標榜できます。診療所が専門医を名乗って部位別に看るため、患者はクリニックを梯子しなければならず、かかりつけ医が育ちません。
 欧米では病院の周りに福祉施設が配置されていますが、日本では施設の役割まで病院が引き受ける結果、病床が増えてしまいます。
 日本では、終末期を迎えたお年寄りに過剰な延命行為が行われます。胃瘻や人工呼吸器などが取り付けられます。欧米では、終末期を迎えたら点滴もしません。欧米では寝たきりになる前に亡くなります。
 出産でも、欧米では麻酔を使った無痛分娩が主流。患者の苦痛を取り除くことを最優先します。
 不必要な医療を行わず、入院させなければ、廃用症候群も起きません。
 医療費が改定され、出来高払いから定額制になると、点滴が無くなり、検査技師が辞めていきました。医師が「金になることはやる、金にならないことはやらない」という姿勢を変えない限り解決にはなりません。
 介護者は時間がかかっても、本人の力で生活できるよう、見守りと手添えに徹します。

・寝たきりにならない7ヶ条
廃用症候群の怖さを知る
なるべく座った姿勢を保つ
低栄養にならないように気をつける
 介護が必要なお年寄りに多いのが低栄養です。蛋白質を接種することが必要です。
口で咬むことで脳を賦活する
 咬むと意識がハッキリします。口の動きのトレーニングをすると、誤嚥性肺炎の予防にもなります。
できることは何でも自分でする
 生活行為に優る訓練無し。残存能力を活用し、できることは自分でやります。口から食べ、トイレで排泄し、普通の風呂に入ることが何よりの訓練です。
関りをもつ力を大切にする
 私たちは人との交流の中でお互いに元気を貰います。気の合う仲間を探してあげます。

 病院に入院してベッドを80度ぐらいにして食事をさせます。この状態が続くと、退院しても正しく座ることができなくなります。退院したばかりのお年寄りの日常生活動作(ADL)は低くなります。要介護状態になったお年寄りが、レベルの低い介護現場の経験しか持たない、安静看護しか知らないケアマネージャーに出合うと、人生が一変します。
 一般病院の看護師は、お年寄りが入院すると、危ないからと、入れ歯を外します。入れ歯を外すと食べられませんから栄養が悪くなり、治癒が遅れ、在院日数が長くなります。病院関係者は、代替栄養の処方が仕事ですから、経管栄養や中心静脈栄養や胃瘻にしてしまいます。口から食べないと、口の中が不衛生になり、細菌が繁殖して、肺炎などの感染症になります。病院の看護師が行うのは、口腔清拭で口腔ケアではありません。
 お年寄りが肺炎で入院すると、「とりあえず禁食」が指示されます。点滴で数日過ごすと接触機能が衰え、経口摂食が困難になりかねません。入院を機に多発し始める誤嚥性肺炎は「医原病」です。入院患者がベッドに訪問歯科医を呼ぶ自由を保障すべきです。

《8.医師は教えてくれない認知症の真実》

 認知症を引き起こす原因疾患は70以上あります。最大の要因は加齢。それを薬物で「治そう」というのは無理があります。
 日本の認知症の診断数が増え始めたのは、1999年にエーザイがアルツハイマー型認知症治療薬アリセプトを発売して以降です。抗鬱病の登場によって鬱病の診断数が激増したのと同じです。
 米国では認知症が減り続けています。欧米先進国に比べて日本の認知症有病率は高すぎます。
 アリセプトの用法・容量が問題を起こしています。一定期間が過ぎたら用量を増やすのが標準治療。個別性が重視される認知症の治療で、医師の裁量は認められず、製薬会社が用量を決めています。薬を売るためだけに、加齢による年相応のボケを認知症という病気にするのは止めるべきです。もし、薬物療法が必要なら、河野和彦医師が開発した少量投与のコウノメソッドしかありません。75歳以上の後期高齢者の認知機能の低下を病気と考えるのが異常です。
 抗認知症薬は興奮系の薬です。陽性の行動=興奮・暴言・暴力・俳諧・不眠・昼夜逆転・妄想・幻覚・介護抵抗などが悪化します。それを抑えるために向精神薬(抗精神業薬・抗鬱薬・抗不安剤・睡眠薬など)が処方されます。するとお年寄りは、取り返しのつかないダメージを受けます。
 抗認知症薬は、効果があったとしても、わずかに進行を遅らせるだけです。一方で様々な副作用は確実に有害です。目立つ副作用は、歩行障害と嚥下障害です。寝たきりになり、寿命を縮めます。長期服用は避けるべきです。認知症では受診しないか、コウノメソッドを採用する医師に診てもらうかしないと、薬害から身を守る方法はありません。
 脳外科の仕事は手術が主ですが、術後は意識障害との闘いです。脳外科医はもっと認知症のことを知らなければなりません。総じて脳外科医は手術にしか興味がなく、手術後は病棟スタッフに丸投げして、ボケたら「お前らが悪い」と他人のせいにします。
 認知症が疑われる場合、病院を受診しないこと。認知症を改善できる医師はごく少数です。医師ではなく、「認知症の人と家族の会」に連絡し、地域の家族会を紹介してもらいます。そこで、医師を教えてもらえますし、ケアに関する助言も得られます。
 家庭天秤法。医師の指示と了解のもとで、介護者が処方された薬の量を調節します。特に、陽性症状を抑えるための抑制系の薬剤が効きすぎると危険です。本人がぐったりしたらすぐ薬の服用を中止します。
 多くの医師が標準治療しかしない理由は保身です。用法用量を守らずに患者が死亡したら医師は裁判で負けますが、用法用量を守って患者が死んでも裁判で負けることはありません。患者が異常体質だったで済まされてしまいます。
 神経に作用する薬を使用するときは、少しでもおかしいと思ったら断薬する覚悟が必要です。精神科病院は薬を過剰投与する傾向があります。精神科病院に入院すると多くの場合症状が重くなります。
 認知症は脳の病気だから、脳に作用する薬で治そうという発想が危険なのです。

《9.平穏死を迎えるために家族ができること》

 医療費がパンクし、出来高払いがマルメ(定額)になり、出来高払いで残ったのはレントゲンとリハビリだけ。老人病院は、リハビリに力を入れます。
 ご遺体は介護の通知表という言葉があります。お年寄りを寝たきりにさせて拘縮をつくってはいけないということです。介護施設では身体拘束は禁止ですが、病院ではやりたい放題。少なくとも、棺桶が閉まらないようなご遺体にはしないことが必要です。
 看取りについての本人と家族への3つの質問。経管栄養にするか。救急車を呼ぶか(どうやっても救命するか)。救急車を呼ばない場合、亡くなることを許容しますか。
 石飛幸三医師の「平穏死のすすめ」。人間は年を取ると口から食べられなくなり、やがて自然な死を迎えます。人が終末期を乗り越えて生き延びることはあり得ません。癌も動脈硬化も老衰が黒幕。だから治りません。治そうとしても本人を苦しめるだけです。亡くなる直前まで点滴をしていると、体中が水ぶくれ。水を抜く処置が必要になります。
 人は枯れるように亡くなることができます。心ある医師ならば、看取りに入ったら点滴はしません。人の体は脱水を起こすと意識が朦朧とするので、痛みや苦しみを感じることもありません。看取りに入った高齢者に「急変」はありません。
 入院患者に胃瘻を勧める理由は、食事介護をしたくない、退院先を見つけやすい、誤飲性肺炎を防げる、の3つ。但し、誤飲性肺炎を防ぐ効果は全くありません。
 食べ物が原因の誤嚥性肺炎は少数です。ムセる力のある人は口から食べられます。誤嚥性肺炎の殆どは、唾液が気づかないうちに気道から肺に流れ込んで起こります。これを防ぐには、口の中を清潔に保つ必要があります。また、口から食べていれば唾液の量はコントロールされていますが、胃瘻にすると痰と唾液の量が異常に多くなります。先進国では、終末期の高齢者に胃瘻は行いません。
 米国では終末期になると人工呼吸器を外します。日本では外すと殺人罪になる可能性があります。先進国で、リビング・ウィルが効力を持たない国は、日本だけです。日本は延命治療の不開始・中止が法制化されようとするたびに、「終末期が定義できない」など各方面から猛烈な反対の声が巻き起こりま宇s。
 看取りに入ったら救急車は呼びません。訪問医に連絡をいれます。医師は自分の患者であれば「死亡診断書」を書けますが、過去に診察したことがなければ「死体検案書」しか書けません。