新製品発売のインパクト = 発売前に購入していた品種と金額 − 発売後に購入した品種と金額

新製品が発売されたインパクトとは、その新製品がどれだけ売れたかではなく、直接の競合品以外にどれだけの影響を与えたかを表現するものです。ある製品が発売されたら、他の製品の売上が減少したなどという製品は、少なくとも販売店には歓迎されません。また、投入した新製品が影響を与えた範囲は、当該銘柄が影響を与えうる範囲、つまり、銘柄拡張の範囲を表現するものでもあります。もし、新製品が、店舗の品揃えと顧客の生活に影響を与えないとしたら、それは存在意義が無い新製品であると言えるでしょう。

上記の簡潔な説明で、「新製品発売のインパクト」が理解できる方は、マーケティングの達人レベルの方でしょう。少し具体的に解説してみましょう。

新製品が消費に与える影響は、品種の中で買う銘柄が入れ替わったというだけなら、「何の影響も与えなかった」、つまりインパクトは「無し」です。ですから、新製品として、市場に投入する価値は完全無欠にありません。最低限でも、流通の粗利が向上し、かつ、購買者にとっては価格が低下しなければ、発売すべきではありません。何故?!繰り返し申し上げますが、何の価値も無いからです。価値の無いことしかできない供給者は、市場から退出しなければなりません。実際に、そうやって企業は倒産していきます。目出度し目出度し。

価値のある製品は、お客様の生活を変えます。具体的に言えば、その製品を利用するようになった前後で、買う物が変わります。生活の変化は、購買製品に表れるのです。

例えば、大きな冷凍庫付の冷蔵庫を購入したお客様の冷凍食品のストックは増えます。ですから、冷凍食品の販売に注力すると同時に、冷凍食品の使用頻度を上げるメニュー提案が必要になります。アイスクリームのような嗜好品は、購買を促進する広告を投下すれば、消費も促進されますので、店舗としては広告投下に合わせた売場作りをします。

要注意なのは「これ一つ」製品です。化粧品では「これ一つ」で「化粧水も化粧下地も要りません」という省手間製品はヒットする傾向があります。問題は、「これ一つ」製品は、化粧品全体の販売金額を低下させる可能性が高いことです。ですから、当該製品が対応しているそれぞれの品種のポピュラーな価格を合計した金額を「正価」とします(正価!なんと懐かしい言葉でしょう)。何故「正価」なのか。価値として「正しい価格」だからです(ですから「○○○コラー○○ゲル」は、原価とは何の関係も無く、あの高い値段(8190円)を「正しく」付けているのです)。

マーケッターは「価値」に敏感でなければなりません。原価と価値とは何の関係もありません。あきれるのは、仕入原価は違うという理由で、販売価格を決める小売が存在することです。そのような異常な小売が、日本では今だに少なくありません。自らの価値の判断で、販売価格をすることもできない小売は市場を去るべきです。