「ペルソナ戦略」 2007年 ダイヤモンド社
著者は、マイクロソフト社に勤務するジョン.S.ブルーイットと、元アマゾン.ドット.コムの今猿のタマラ.アドリンです。ペルソナ戦略が、IT業界で完成された技法であることは著者の経歴でも分かりますね。
○ ペルソナ戦略の概要
ペルソナとは、お客様の「プロフ(人物像)」であり、またある時は、プロフにナリキリの「代役」でもあります(ペルソナですからね、月光仮面みたいです)。技法としては、ユーザー中心デザイン(UCD)を実現する手法の一つとなっています。ユーザビリティ・エンジニアリングでは、「ユーザー・プロファイリング」という手法が使われてきました。この技法が出てきた背景は、中国など理解が難しい顧客象を掴むことが巨大市場のアプローチに不可欠だからです。
ペルソナは、実在する人々についての明確で具体的なデータをもとに作り上げられた架空の人物であり、ユーザーが本当に使いたいと感じる製品の実現をサポートするためのツールです。マーケティングでは、製品に携わる全ての関係者が常に製品を使う人々のことを考えることが大切です。誰の為に製品を開発し販売しているのかについての、明確で一致した理解が無ければ、製品は失敗に終わる可能性が高いからです。
製品を作るのではなく、「ユーザー・エクスペリエンス」を作っているのです。だから、ペルソナによるシュミレーションが必要になります。
ペルソナは、ターゲット・ユーザーを具体的に詳細に描写していますから、ユーザーについての共通言語を作り上げることができます。人々はそれぞれに顧客についての仮説を持っている。これらの仮説は個人的或は組織的な偏見に基づいていて、仮説を持っている本人すら気づいていないこともあります。勿論、ペルソナによって、政治的な問題や組織上の問題は解決できません。ペルソナ・プロジェクトは、ターゲットについて関係者が持っている心象(偏見)を明らかにします。それを「表沙汰」にしたくない場合は、ペルソナの使用は諦めます。
=ペルソナが必要な理由=
ターゲットをはっきりさせる
ユーザー・ニーズを明確にして、製品の機能や目標を決める
共通の目標や理念を持つ
○ ペルソナの開発と運用
・ユーザー・カテゴリーの抽出
ユーザーの、役割、ゴール(到達点)、セグメント(の市場規模)を考えます。ユーザーの役割とは、ユーザーは「何をする人」なのか、ということです。ユーザーのゴールは、何を達成しようとしているのか、です。そして、役割、ゴール、セグメントの違いによって、ユーザー・カテゴリーを抽出します。
=作業手順=
データを収集する
データ要点を抽出する
(データ要点はペルソナのスケルトンになる)
親和図法で群化する
・スケルトンの作成
スケルトンは、カテゴリーの特徴を勘定書きにして列挙したもので、ユーザーの事実、つまりデータ要点の一覧です。次に、スケルトンを評価し、優先順位を付けます。
・スケルトンのペルソナへの展開
ペルソナの肖像と物語を加えると人間らしくなります。そして、ペルソナの詳細を「基本文書」にまとめます。基本文書には、ゴール、役割、行動、セグメント、環境、典型的な行動、データ要点へのリンクなどが含まれます。
・ペルソナの運用
ペルソナを関係者に紹介し、ペルソナのポスターを掲げ、ペルソナのメールアカウントを設定し、WEBサイトを作ります。ペルソナ関連資料は一箇所にまとめて保存し、管理します。
ペルソナは、様々なミーティングンに参加し、顧客の声を代弁します。また、ペルソナについての疑問にメールで回答します。そして、ペルソナがユーザー・エクスペリエンスをレビューします。このようにして、ペルソナは、お客様の要望と都合を関係者に伝達し共有する「中心人物」になります。

ペルソナを作成する手順を概観すると、明らかに日本の顧客志向の物造りをパクッたものであるが分かります。相変わらず、アメリカ人は、日本的なるものを標準化し手順化するのが上手ですね。