イチローの四千本に捧げる3句を作ってみました。
八千の悔しさ紛れぬ4千本
この道は足らざることを求む道
吾足りる悟りなどとは無縁なり
四千本打ったからと言って、8千回の打ち損じの悔しさは紛れることは無い。それが、イチローをして四千本を打たしめた心技と知る。上っ面の悟りや境地とは無縁の、求道の地獄を今も彼は歩いている。
さて、大岡信の「新折々のうた 1」(1994年)を読んでみたので、面白いと思ったものを気紛れに拾ってみました。
《春のうた》
もろこしのむさむさ坊主ひげ坊主さしたる事も言わじとぞ思ふ 一休宗純
おそらく偽作と言われているが、破戒僧一休の面目躍如。流布された一休像こそが面白い。
人を恋い雛おき去りし娘かな 中村伸郎
男を追って家を出たなら、心配などするものかってね。
先をゆく仔馬の尻の双栗(ふたつくり) 若山喜志子
ああ昨日のその場しのぎの優しさが深夜電話に化けてまた響(な)る 島田修三
鞦韆(しうせん)は漕ぐべし愛は奪うべし 三橋鷹女
鞦韆はブランコのこと。「ブランコ」とも読む。
人は但(ただ)当(まさ)に死ぬべき日を知らず 山上憶良
《夏のうた》
裸婦の絵に暑がりやなの?風呂上り? 荘 敬東
人間は心を洗う手は持たない 小熊秀雄
ブラウスの中まで明るき初夏の陽にけぶれるごときわが乳房あり 河野裕子
たまゆらに消えし命か妻の目は我を見つめていまだ開けり 飯島正
今は亡き母の知人。私の名前の由来はこの人かも知れないと疑ったことがある。
へなへなで野に捨てられし扇風機、風の吹く度未練を廻す 遊 細幼
句にすれば、「扇風機が野に捨てられて風の音」でしょうか。
念力の草へ抜けたる蛇の衣 刈谷敬一
鳴神の鳴らす八鼓ことごとく敲きやぶりて雨晴れにけり 正岡子規
仏にひまをもらって洗濯している 尾崎放哉
月さすや谷をさまよふ蛍どち(たち) 原 石鼎
筆まめな得意にこまるかし本屋 誹風柳多留
今時ならば、「熱心な書込み困る図書館員」でしょうか。
みずからを流出させてあそばする液体ヘリウムが羨ましくてならぬ 坂井修一
句にすれば「遊び出る液体ヘリウム羨まし」でしょうか。超流動って、記録映像では無くて、一度は目の前で見てみたいものです。
足折るな夫(つま)のくにまで茄子(なすび)馬 西阪シゲ
まんまるな思ひの中にゐたいので机上のメロンいつまでも置く 高野佐苗
《秋のうた》
天の川鷹は飼われて眠りをり 加藤楸邨
手をあげて此世の友は来たりけり 三橋敏雄
上がるたび うちあげ花火で 友さがす 平下美里
ひばりはかわいい ちいさなパンクヘアをして レネ・ハンソン
「ひばり上がるちいさなパンクヘアをして」って、なんか面白い。
キノコが生えてる 赤ちゃん虫を雨やどりさせて 杜 娟
句にすると「キノコはえ赤ちゃん虫の雨やどり」って可愛い。
勇ましい弓は静かに横たわる 矢は飛んでいってしまった アリナ・ラヴィルヒナ
句にすれば「矢を放ち弓は静かに唸り立つ」か。
地上では子供たちがはねまわり 空ではミサイルが今ちょうど 標的の真上 ファラート・パノ
作者は、核保有国インドの少年だそうです。
いまもなほ上司の妻といふ位置に物言ふひとの受話器置く音 辻下淑子
ダイナモの 重き唸りのここちよさ 石川啄木
質に直(ね)のせぬ宝久しき 武玉川
お宝探偵団で「借金の形」が贋作が多いのは、質屋でも取らなかったからなんですね。今更に気づきました。
思ひにし死にするものにあらませば千度(ちたび)そ我は死にかへらまし 笠女郎
万葉集の昔から、恋は「死ぬ!死ぬ!」だったんですね。
《冬のうた》
薄氷そっくり持って行く子かな 千葉皓史
躁鬱の「うつ」のはじまり出勤の電車いっぽんまずやりすごし 小高 賢
句にすると「やり過ごす電車一本うつが来た」でしょうね。
大方の誤りたるは斯くのごと教えけらしと恥じて思ほゆ 植松寿樹
芝中学の先生だったそうです。立派な先生ですね。生禿も見習わなきゃ!(^^)!
死にたれば人来て大根煮(た)きはじむ 下村槐太
「さりながら死ぬのはいつも他人だけ」(マルセル・デュシャン)ってところです。
炬燵にはいかにあたるぞ蛸の足 浜田酒堂
うくすつぬ童子唱へてえけせてね今日の終はりの湯の音のなか
一生のお願いといふが口癖の子の他愛なきお願いを聴く 今野寿美
この冬は得過ごさじとも思いしに命なるかなまた春に逢う 目加田 誠
句にまとめれば「こしがたき冬を過ごして春に逢う」なんでしょうね。
「あの人」と娘に呼ばれしあのひとは一般的には父と言います 杉本宏一
蛇きつね火つけ盗人かどはかしをかしき名のみ我は貰ひぬ 与謝野 寛
ぱさぱさに渇いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを 近親のせいにはするな なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを 暮しのせいにはするな そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を 時代のせいにはするな わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ (茨木のり子)
ハイ!その通りです。御免なさい。
絨毯は空を飛ばねど妻を乗す 中原道夫
ひとりにて暮せば時間にこだわらず区切りよきとき飯食う寂し 佐藤志満
短くすれば「独り居て区切りよきとき飯を食う」になるのでしょうか。
几巾(いかのぼり)まだつめたいか山の空 岩間乙二
旅行に出ておりまので、返信や訪問が出来ませんが、ご容赦ください。
八千の悔しさ紛れぬ4千本
この道は足らざることを求む道
吾足りる悟りなどとは無縁なり
四千本打ったからと言って、8千回の打ち損じの悔しさは紛れることは無い。それが、イチローをして四千本を打たしめた心技と知る。上っ面の悟りや境地とは無縁の、求道の地獄を今も彼は歩いている。
「新折々のうた 1」 大岡信 1994年 岩波新書
さて、大岡信の「新折々のうた 1」(1994年)を読んでみたので、面白いと思ったものを気紛れに拾ってみました。
《春のうた》
もろこしのむさむさ坊主ひげ坊主さしたる事も言わじとぞ思ふ 一休宗純
おそらく偽作と言われているが、破戒僧一休の面目躍如。流布された一休像こそが面白い。
人を恋い雛おき去りし娘かな 中村伸郎
男を追って家を出たなら、心配などするものかってね。
先をゆく仔馬の尻の双栗(ふたつくり) 若山喜志子
ああ昨日のその場しのぎの優しさが深夜電話に化けてまた響(な)る 島田修三
鞦韆(しうせん)は漕ぐべし愛は奪うべし 三橋鷹女
鞦韆はブランコのこと。「ブランコ」とも読む。
人は但(ただ)当(まさ)に死ぬべき日を知らず 山上憶良
《夏のうた》
裸婦の絵に暑がりやなの?風呂上り? 荘 敬東
人間は心を洗う手は持たない 小熊秀雄
ブラウスの中まで明るき初夏の陽にけぶれるごときわが乳房あり 河野裕子
たまゆらに消えし命か妻の目は我を見つめていまだ開けり 飯島正
今は亡き母の知人。私の名前の由来はこの人かも知れないと疑ったことがある。
へなへなで野に捨てられし扇風機、風の吹く度未練を廻す 遊 細幼
句にすれば、「扇風機が野に捨てられて風の音」でしょうか。
念力の草へ抜けたる蛇の衣 刈谷敬一
鳴神の鳴らす八鼓ことごとく敲きやぶりて雨晴れにけり 正岡子規
仏にひまをもらって洗濯している 尾崎放哉
月さすや谷をさまよふ蛍どち(たち) 原 石鼎
筆まめな得意にこまるかし本屋 誹風柳多留
今時ならば、「熱心な書込み困る図書館員」でしょうか。
みずからを流出させてあそばする液体ヘリウムが羨ましくてならぬ 坂井修一
句にすれば「遊び出る液体ヘリウム羨まし」でしょうか。超流動って、記録映像では無くて、一度は目の前で見てみたいものです。
足折るな夫(つま)のくにまで茄子(なすび)馬 西阪シゲ
まんまるな思ひの中にゐたいので机上のメロンいつまでも置く 高野佐苗
《秋のうた》
天の川鷹は飼われて眠りをり 加藤楸邨
手をあげて此世の友は来たりけり 三橋敏雄
上がるたび うちあげ花火で 友さがす 平下美里
ひばりはかわいい ちいさなパンクヘアをして レネ・ハンソン
「ひばり上がるちいさなパンクヘアをして」って、なんか面白い。
キノコが生えてる 赤ちゃん虫を雨やどりさせて 杜 娟
句にすると「キノコはえ赤ちゃん虫の雨やどり」って可愛い。
勇ましい弓は静かに横たわる 矢は飛んでいってしまった アリナ・ラヴィルヒナ
句にすれば「矢を放ち弓は静かに唸り立つ」か。
地上では子供たちがはねまわり 空ではミサイルが今ちょうど 標的の真上 ファラート・パノ
作者は、核保有国インドの少年だそうです。
いまもなほ上司の妻といふ位置に物言ふひとの受話器置く音 辻下淑子
ダイナモの 重き唸りのここちよさ 石川啄木
質に直(ね)のせぬ宝久しき 武玉川
お宝探偵団で「借金の形」が贋作が多いのは、質屋でも取らなかったからなんですね。今更に気づきました。
思ひにし死にするものにあらませば千度(ちたび)そ我は死にかへらまし 笠女郎
万葉集の昔から、恋は「死ぬ!死ぬ!」だったんですね。
《冬のうた》
薄氷そっくり持って行く子かな 千葉皓史
躁鬱の「うつ」のはじまり出勤の電車いっぽんまずやりすごし 小高 賢
句にすると「やり過ごす電車一本うつが来た」でしょうね。
大方の誤りたるは斯くのごと教えけらしと恥じて思ほゆ 植松寿樹
芝中学の先生だったそうです。立派な先生ですね。生禿も見習わなきゃ!(^^)!
死にたれば人来て大根煮(た)きはじむ 下村槐太
「さりながら死ぬのはいつも他人だけ」(マルセル・デュシャン)ってところです。
炬燵にはいかにあたるぞ蛸の足 浜田酒堂
うくすつぬ童子唱へてえけせてね今日の終はりの湯の音のなか
一生のお願いといふが口癖の子の他愛なきお願いを聴く 今野寿美
この冬は得過ごさじとも思いしに命なるかなまた春に逢う 目加田 誠
句にまとめれば「こしがたき冬を過ごして春に逢う」なんでしょうね。
「あの人」と娘に呼ばれしあのひとは一般的には父と言います 杉本宏一
蛇きつね火つけ盗人かどはかしをかしき名のみ我は貰ひぬ 与謝野 寛
ぱさぱさに渇いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを 近親のせいにはするな なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを 暮しのせいにはするな そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を 時代のせいにはするな わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ (茨木のり子)
ハイ!その通りです。御免なさい。
絨毯は空を飛ばねど妻を乗す 中原道夫
ひとりにて暮せば時間にこだわらず区切りよきとき飯食う寂し 佐藤志満
短くすれば「独り居て区切りよきとき飯を食う」になるのでしょうか。
几巾(いかのぼり)まだつめたいか山の空 岩間乙二
旅行に出ておりまので、返信や訪問が出来ませんが、ご容赦ください。