「ロジスティックス入門(第二版)」 中田信哉 2012年 日経文庫

 久しぶりにロジスティックスの本でも読もうかと、手に取りました。日経文庫だし・・・。中身がないな〜、というのが素直な感想。なのですが、ロジスティックスとマーケティングの歴史について再認識させてくれる内容は読むに値するものでした。ありがとうございました。 以下は、この本の引用と要約です。


《まえがき》

 ロジスティックスは、物流を情報を核として管理する技術です。

《1. ロジスティックスの本質をつかむ》

 方針に基づいて、経路を決め、拠点を作り、予定を立てる。物資や要員の、調達・輸送・保管・保守・補充に必要な人と物の管理を行います。

《2. 物流からロジスティックスへの展開》

 物流は、生産から消費に至る物の流れ。輸配送と倉庫の活動。

 第二次大戦移行、米国は軍事国家の道を歩み、経済の軍事依存が強くなっていき、軍事産業は巨大な影響力を持ちます。第二次大戦以降、米国は絶え間なく戦争を続けています。インターネットも米国の軍事の要請で民間の利用が強制されました。

 マーケティングは、消費者運動の一環として誕生し、1950年代からは企業のマーケティングを「マネジリアル・マーケティング」と呼んで区別してされました。米国は今でもロジスティックス関連の学会は、企業と軍の人が混在しています。世界企業の勃興により、ロジスティックスが浸透します。

《3. 物流管理の進展と飛躍》

 物流は、多くの要素が組み合わされて効果を生み出すシステム・エンジニアリングが有効な分野。

物流活動

 物流技術の革新。ピギー・バックやフルコンテナ船やガントリー・クレーンや立体自動倉庫(積層ラック倉庫)が登場します。

《4. ロジスティックスの日本への導入》

 花王などが、工場から小売店に至る流通在庫を管理する在庫統制の仕組みを作ります。販売状況に工場の生産を情報によって結びつけ、他社の活動を含めて供給パイプラインの流通在庫を同期化させます。在庫と活動時間と費用対効果が管理基準です。

 「ロジスティックスとは、需要に対して調達・生産・販売・物流の供給活動を同期化させるための管理」日本ロジスティックシステム協会

《5. ロジスティックスは体系管理》

 ロジスティックス・ネットワークの設計は、市場需要の量と時期と方法と、需要空間の広がりと密度から、小売店舗や供給拠点の数と立地が決まります。ロジスティックス・ネットワークを決めるのは、下流から上流に流れる情報によります。

 拠点の在庫量の調整。商品在庫を市場の近くに配置するという考え方は、品切れを少なくし、市場の変化に素早く対応する方針に基づきます。季節品や流行品は機敏な需要対応を重視します。不良在庫が発生する危険があります。

 生産地の近くに、少ない拠点に在庫を集中させると、不良在庫は少なくなります。市場の消費状況への対応が遅くなります。需要が堅調な商品では、在庫を集中させます。

 災害への対応では、3日間持ち堪える物資をすべての地域に分散在庫します。1週間は余裕がある物資は、集中在庫します。

《6. ロジスティックスの管理》

 在庫統制は、拠点別ではなく、ロジスティックス・ネットワーク全体で決めます。

=在庫=
原材料・部品 / 仕掛品 / 製品
メーカー / 卸売 / 物流 / 小売 / 家庭

リード・タイムは、商品の発注から納品までの時間。[受注処理 / 仕分・包装・検品 / 積込み / 輸配送 / 納品]から構成されます。

《7. ロジスティックス・ミックス》

 物流活動は、輸配送・荷役・包装・流通加工・受発注・在庫管理。

 荷受施設のない店舗では、道路を荷受場所として使わざるを得ません。商業集積では、混雑する上に、規制も厳しくなります。共同の配送や拠点が必要になります。

 45フィート・コンテナが世界標準になっています。国際コンテナ輸送では、ハブ・アンド・スポークが採用されています(ハブ港を中心とするフィーダー輸送)。

 ロジスティックスは、加工と移動を総合した管理です。牛乳の産地から現乳をタンク・ローリーで市場近くに運び、そこでパック詰めにします。原乳の体積は、パック詰めにしたものより小さくなります。

《8. ロジスティックス・プロバイダーの登場》

 管理の主体は、物資(荷)の所有者です。

 国際輸送は、重量ベースでは99%が海運、金額ベースでは20%が航空です。国内輸送では、重量ベースでは90%がトラック、トンキロベースでは36%が内航海運です。トラック業は、荷主企業に入り込んで、輸送に付帯する作業も担当するようになりました。

 1兆円を超える年商の国内輸送の企業は、日本通運とヤマト運輸の2社。物流を総合して行っています。グローバル・サプライチェーンにおいては、総合商社・海運企業・航空企業を組み込むことは必要条件です。

 米国の3PLは、昔から大きな流通センターを持ち、複数の荷主企業の在庫管理を行い、混載で納品行ってきました。販売データから、毎日の方面別の発送量を予測し、配車を行って積載率の高い混載を行います。

 クロネコ探検隊は、[eコマース&宅配便&コレクトサービス(債権買取)]。資生堂物流サービスが日立物流に統合され、通販のムトウ(スクロール)は運用業のハマキョウレックスに委託(担当者は転籍)しました。

《9. ロジスティックスの新展開》

 国際物流では、インフラが未整備な地域、運輸業者が未整備な地域。人件費や地下などの費用構造も違います。ハブ港やハブ空港やコンテナ船の基幹航路も設計の基本条件となります。

 「グリーン」という言葉は、「環境に優しい」という意味で使います。モーダルシフトは、輸送を炭素発生の少ない鉄道や海運に替えていくとする動きです。静脈物流も、ロジスティックス体系に組み込みます。

 ウォルマートでは原材料の調達から生産までの垂直統合によって、SCM(供給連鎖線)を構築していいます。

《10. リスク管理とロジスティックス》

 3日以内に必要なのは、激甚災害地域の避難場所に対しての、(ヘリコプターを含む)最低限の物資供給経路の確保です。1週間以内には、災害地に対しての基幹輸送路の確保です。災害地周辺に物資集積地ができ、定期-大量の輸送を行う経路の確保します。1ヶ月以内は、幹線輸送網や拠点の能力回復です。

 燃料の補給状態が判らないと、トラックが現地に出発できません。輸送だけでなく、情報の流れも確保されなければなりません。

 予想できないから「災害」なのです。予め対応できるなら、災害とは言いません。

 危険管理の方法は、分散化と標準化・共通化。これをロジスティックス・システムに組み込みます。