「宇宙は本当にひとつなのか」 村山斉 2011年 ブルーバックス

 著者は優れた科学者だと思われるのですが、残念ながら、ビッグバンの信者でもあります。ですが、この本は最近の宇宙論〜時空論の手軽な案内書になっています。ありがとうございました。 以下はこの本の引用と要約です。*印は生禿の見解です。


《1. 私たちの知っている宇宙》

 地球は毎秒30Kmで太陽の周りを回っています。太陽系は、銀河の中で220Kmで動いています。

 太陽系から一番近い一番近い恒星に行くことは、今の技術では無理なのです。

 元素は、特定の色に対応しています。その星にどのような元素があるかが分かります。

 ブラックホールは、その重力の及ぶ範囲を分ける境界「事象の地平線」があります。

 星が集まっている天の川銀河の中心から遠くに行くほど、星の速度は遅い筈でが、星の速さはむしろ速くなっています。銀河の外縁部には重力をのもとになる何か=「暗黒物質/暗黒エネルギー」があると考えられます。暗黒物質は銀河の中心部から離れるほど増えています。

《2. 宇宙は暗黒物質に満ちている》

 遠くにある銀河から来る光りが、重力のせいで曲げられ伸ばされています(重力レンズ効果)。変形の度合いから、その場所の重力が計算されます。

 すばる望遠鏡はハワイ島にある標高4200mのマウナケア山の山頂にあります。

 暗黒物資は周りのものと反応しませんから、通り抜けてしまいます。暗黒物質は普通の粒子ではありません。

 重力で引き合って円盤の形を保つことは難しいことです。暗黒物質が球形に分布していているから、銀河は円盤のまま回っていられるのです。

《3. 宇宙の大規模構造》

 物でもエネルギーでも温度があるものは光を出します。宇宙全体に温度(絶対温度2.75K)を持つものが広がっています。宇宙背景放射を調べて、宇宙を構成する内容が分かりました。
*ビッグバンなどというキリスト教の親父が考えた邪説では背景放射の温度測定もろくにできませんでした。しかし、定常宇宙説ではビッグバン信者よりも遥か前に、しかも正確に宇宙背景放射の存在もその温度も予測していました。宇宙背景放射がビッグバンの証拠だというのは、科学の事実の根拠の無い世迷言です。
*ビッグバンを前提とした宇宙の構成の推定に、科学の事実としての根拠はありません。

 物質を作る素粒子(フェルミオン)と、原子核よりも小さな距離で相互作用する素粒子(ボゾン)。そして、すべての素粒子に質量を持たせるヒッグス粒子。現在の素粒子論では、全ての粒子の質量はゼロという前提があります。ですが、クォークや電子は質量を持っています。ニュートリノは宇宙で一番たくさんある素粒子で、重さがあります。素粒子を動きにくくする(質量をもたせる)粒子が存在します。

《4. 暗黒物質の正体を探る》

 暗黒物質の正体はわかっていません。暗黒物質は電気を持ちません。暗黒物資は銀河同士が衝突する時も、何もぶつからずにすり抜けてしまいます。

 暗黒物質は重い素粒子かも知れません。重さがあるということはエネルギーがあるということです。

 暗黒物質を作る試みはCERNで行われています。

 日本国民で初めてフィールズ賞を受賞した小平邦彦氏は、多様体の特異点(無限大)の解消を扱った論文があります。

 重力波は重力の変化によって生じる時空の歪が波動となって伝わります。これを捉えるのが重力波望遠鏡です。

《5. 宇宙の運命》

 宇宙の膨張速度が速くなっています。
*宇宙のあちこちでいつもインフレーションが起こっているのですから当たり前のことです。だからビッグバン信者は困るのです。

 アインシュタインは、宇宙は変化しないという信仰があったので、宇宙は変化する宇宙方程式の結果をみて「宇宙項」をつけ足します。アインシュタインは、この宇宙項を「生涯最大の誤り」と認めるのですが、宇宙の膨張の観察結果が出るて計算上の辻褄が合うとホッとしたよううです。超ひも理論の研究者の多くが、アインシュタインの重力理論は間違っているしています。

《6. 多次元宇宙論》

 多次元宇宙は、次元=時間や空間の広がりに見えない次元があるという仮定。超ひも理論では10次元だと予言されています。多元宇宙は、宇宙がたくさんあるという仮定。
*宇宙背景放射はビッグバンの名残ではないので、暗黒物質がビッグバン信者の計算よりも少なくていい筈。つまり、多元宇宙や多次元宇宙を仮定する必要は無いかも知れません。ですが、生禿は多元宇宙論に魅力を感じています。これは単なる主観、妄想に過ぎませんが。

 重力は電磁気力と比べてとても弱いものです。大きな地球の重力が働いているクリップに、小さな磁石を近づけると引きつけられます。電磁気力は互いに打ち消し合います。重力には引力しかありません。集まれば集まるほど重力波強くなります。

《7. 異次元の存在》

 ホーキング博士によると、ブラックホールは熱を持っていると言います。熱が出ることはエネルギーが減ることを意味します。

 ワープは空間が曲がっていることを指した言葉です。

 不確定性原理は波と深い関係があります。波は広い場所に居る時は小さくて穏やかなですが、狭い場所に行く=閉じ込められると大きくぶれます。ですから、場所を決めようとすると場所が分からなくなります。

 電子は、原子核の周りに円状に波を描きます。この波は一周して元の場所に戻ってこなければいけません。そうしないと、存在し続けることができなくなります(エネルギーを失ってしまいます)。そうすると波打つ回数が決まってきます。

 運動している粒子は、運動しているエネルギーの大きさによって重さが変わります。

 暗黒物質は原子で出来てはいません。

 重力があると空間が曲がる/沈みます。沈んだゴム膜の上にボールを乗せると、沈んだ中心の方に近づいていきます。重力は、空間を曲げるものだと理解されます。

 光は電気を帯びていないので、光と光は反応しません。光を光で見ることはできません。私たちは、光そのものではなく、光があたって出てきた電子を見ているのです。

《8. 宇宙は本当に一つなのか》
町費も
 量子力学の多世界解釈。多元宇宙は、全体から見て一括りの空間の中に収まります。

 量子力学ではエネルギー保存の法則が破れているように見えます。粒子と反粒子は出来たり消えたりしています。粒子や反粒子はエネルギーが無いとできません。真空の中にエネルギーの貸し借りが起こります(真空エネルギー)。この真空エネルギーが暗黒エネルギーではないかと考えられています。

*ガウタマ・シッダールタの教えに拠れば、「無」=真空から「空」(無限の力 → 空間)が生まれます。西洋人は、シッダールタに遅れること2600年経ってやっとこのことに気づきました。良かった !(^O^)!

 重力と量子力学を一緒に考えると異常な答えが出てしまいます。揺らぎが大きくなるのは、素粒子を点として扱っているからではないかと考えるのが「超ひも理論」です。超ひも理論の紐は10~-33cmです。素粒子は、振動して広がっている紐です。宇宙は十次元で、一次元の時間に加えて空間は九次元。ブレーンと呼ばれる三次元空間の膜に物質が貼り付いています。超ひも理論は、量子の理論と重力の理論の両方を含んだ理論です。

 超ひも理論はブラックホールの性質を説明することができました。ブラックホールの特異点は時空が無限に曲がっています。この特異点には事象の地平線に囲まれていています。この境界よりも外側では、空間を自由に移動できます。ホーキング博士が予言した熱は、エネルギーの貸し借りによって起きると説明できます。

 事象の境界でエネルギーを借りると、粒子と反粒子を作ることができます。反粒子をブラックホールに捨てると、粒子だけが存在するようになります。

 六次元の空間は、空間が折り畳まれたカラビ・ヤウ多様体です。

 超ひも理論では、宇宙(の可能性)は無数にあります。人間が存在できるように宇宙の条件が揃えられているのは当たり前です(人間原理)。人間が存在し得る宇宙に人間が生まれ、そのような特殊な宇宙だけが科学の対象になり、見ることができます。ここまでくると科学なのか宗教なのか哲学なのか、その境界が曖昧になってきます。*生禿が自然哲学者であろうとするのは、ファラデーと同様にこの世の理を突き止めたいからです。物の理ではなく、世の理だからです。