ズルワーン主義が無限時間を仮定し、そこから全てが生じたとしていることに大きな衝撃を受けた。無限時間を前提にするなら、有限なものなら何でも、宇宙全体でも一瞬で作りだせる。辻褄は無限の時間の中でどうにでもなる。有限の世界の矛盾は、無限の世界では何の問題にもならない。勿論、我々は有限の世界に生きている。無限の時間と空間を知ることはできない。しかし、無限時間を仮定して有限世界が生成されたとする物理(もののことわり)を組み立てることができ、この世界の中において、それが無矛盾であることを示すことは可能である。[無限∞ → 無0 → ∞×(0-0)(0+0)=空Φ → Φ×∞=1(振動)]という訳である。

20200321AUs001 勤務先のコブシの花

 我々が認識する「時間」が形成される過程は以下のようだと考えられる。

1)無限時間から、原質が放射される
 無限時間(∞:ズルワーン *1)は、無限の時間をかけて≡一瞬にして、質量零・絶対温度零・無振動の原質(0:無*2 / メーノーグ*3)を放射する。
2)無限時間と原質が作用して、真空(φ:偽真空 / 空)が広がる
 創造されるのではなく、原質が遍く放射されることにより「広がる」。
3)原質(無)は偽真空(空)に果てしなく充満し、その一部が振動する
 原質の振動(*4)≡実在(アフラマズダ*5 / フォース)は維持される。実在は、質量と形体と、そして、有限の時間と空間を生成する(インフレーション)。有限時空の中では実在は行程を変えられない(エントロピー増大)。

*1 時間は無限であり、始原も終焉も無い
 ズルワーンは、「時間」を意味するアヴェスター語に由来する。インドの神シヴァも時間の神としての性格を持つが、その時間は「カーラ」と呼ばれる。
*2 「有」の地としての「無」 〜 「無」は「虚」ではない
 感覚としては、この「無」は、「人々はなぜ有が有ると言うのか。むしろ、無があると言うべきではないのか」(ハイデガー)の「無」に近い。無は、有を有たらしめる根源としての無である。「無」は「有」の性質を何も示さない=温度零・無振動・質量零の普遍の真存であり、無限の時間に遍在する。ガゥタマ‣シッダールタの「無」「空」は、このように理解することができる。
*3 メーノーグは原初の実在
 「メーノーグ」は、まだ質量を持たないもの、まだ形を成していない原初の実在と定義される。アリストテレスの質量の概念とほぼ一致する。
*4 シヴァは振動でもある
 シヴァは「スパンダ<振動>」とも名付けられる。それはまた、宇宙の放射の原因でもある、とされている。シヴァは破壊と創造と維持の神=量子力学の生成消滅演算子である。
*5 ゾロアスター教のアフラマズダは無限時間を体現する
 ササン朝ペルシャのゾロアスター教ズルバーン主義では、ズルワーンから発したアフラ・マズラは、無限時間を体現し、この世の全ての実在を形成する。

 無限時間≡絶対時間は、世界を無限の時間をかけて≡一瞬のうちに作り出す。無限時間(=ジャイナ数学の無限集合≒カントールの集合論)はあらゆる矛盾を創出することができる。限りはあるが辿り着けない空間。限りある果てしない時間。無限はどのような帳尻でも合わせることができる。無限時間の中では、どんな貸し借りでも「踏み倒せる」のだ。物質と反物質の掃滅-生成の「揺らぎ」から、物質を生成-維持することなど簡単だ。「無」を「空」に詰め込み、溢れんばかりの無を振動させて、実在世界を生成-維持してしまう。
 我々は、無限時間を認識できない。従って、それを実証できない。しかし、それを仮定し、それに基づいてこの世界を表式できる。そして、その表式が無矛盾であれば、その仮定が否定できないことは保証される。それが、ゲーデルの不完全性定理が示した意味での、人間の知恵≡世界観の創造性である。

 以上の物理を表式すれば、時間の自然哲学は完成するものと思われる