以下の三本のセミナーを聴講させて頂きました。 以下はその要約です。生禿の聞き違いや勘違いなどありましたらご容赦下さい。

■「社会実装が進むブロック・チェーン」 ビットフライヤー代表 加納祐三

 ブロック・チェーンは、分散台帳。相互接続可能で共有され開かれている。互いに参照しているので改竄がされない。ノードとなるパソコンがP2Pで合意したら、次に進むことができる。ハッキングされても多数決により、結果として正常に動く。ハッキング対策は不要である。ナカモト・サトシ氏が、2008年にビットコインを始め、広がった。ブロック・チェーンはタブレットでも動く。

 菅政権はデジタル庁(平井卓也大臣)を開設するなど、デジタル化に推進している。政府の後押しもあって、日本の中央銀行である日本銀行から、「デジタル円」が発行され、「スーパー(デジタル)シティ」特区が設定される見通し。中国や欧米から遠く後れを取ってしまったデジタル化へ、日本も挑もうとしている。

 ブロック・チェーンを導入すれば、手続きが簡単になる。決済が便利になる。例えば、確定申告が無くせる。行政手続きが簡略化される。引越しの手続きを一度すれば、住民登録はもとより、運転免許の住所変更まで完了する。決済は、「デジタル円」の発行が想定される。本人確認のための費用は1件2000円。“time for trust”のコストは膨大なものになる。

 法律の整備も必要で、ブロック・チェーン協会でも政府に提案をしている。

 新しい技術に対する反対は必ずある。もし、無ければその技術は価値の無いもの。革新のために必要なしゃっくりみたいなものだ。

 ブロック・チェーンについても中国が最も進んでいる。既にデジタル人民元が試験段階に入っている。また、ナイジェリアでも既に運用されている。英国では、ロンドン39にブロック・チェーン特区が設定されている。バハマでは、デジタル通貨が正式な国家の通貨となっている。

 デジタル化は行政の縦割りを横に繋げる。特にブロック・チェーンは情報の共有化を促進すると期待される。

 ブロック・チェーンには、ビットコインのようなパブリック・チェーンと、ミヤビのようなパブリック・チェーンがある。ビットコインは、5件/1秒しか処理できないが、ミヤビは4000件/1秒と高速で処理できる。

 「信頼が繋がる社会へ」がスローガン。マイナンバーと決済用のIDと間接的に結び付けて、なりすましを防止することができる。株式総会を信頼できる形で、正確に運用できる。


■「AI基礎講座 AI活用の現在と未来」人口知能学会会長 野田五十樹

 現在のキーワードは、(深層)学習−(ビッグ)データ−ロボット(自動機械)。covid19に関する症例は人間では読み切れない。これをAIが読み込めば、的確に診断を下すとこができる。AIロボットで注目されるのは、自動運転。これらは、工学の世界の話。

 現在のディープ・ラーニングでは、画像解析や音声解析やゲームの開発運用が可能になっている。

・神経回路網
 関数近似により、入力と出力の関係を学べる。連続関数であれば近似が可能。ディープ・ラーニングでも使用されている。状態を次の時刻の入力にし、時系列で処理する。有限オートマトンと同じ。これにより、長い文章を順番に処理し、出力することが可能になる。

・強化学習
 手続き(プログラム)に依らず、評価が与えられることにより、入出力の関係を構築する。教師あり学習と異なり、教師データの作成が不要となる。

・転移学習
 類似の学習から学ぶ。小さなタスクから大きなタスクへと進む。

・敵対的生成ネットワーク(GAN)


■「量子コンピューティングへの期待と未来」東北大学准教授 大関真之

 量子コンピュータは、量子力学に従ったもの。量子ゲートは何でも、量子アニーリングは組合せ最適化に特化され、実用段階になっている。量子ゲートは、材料開発と創薬に役立つ筈。また、量子通信もゲート型の一種。現在は、C言語で量子コンピュータは使えるようになっている。日本が量子ゲートコンピュータを作る、が政策目標の一つになっている。

 量子コンピュータは、素因数分解が高速。材料開発と創薬以外に役に立つのか?については、まだ不明である。量子コンピュータは省電力。超伝導あるいは光を使うので、熱への散逸が無い。それだけでも有用性はある。消費電力は、冷却のための20KW。計算のための電力は実質は零。

 量子力学は確率。座標に粒子を見つける確率(状態の重ね合わせ)のデータ量は、原理的には無限。しかし、量子コンピュータには、確率を入力する必要は無い。もともと、量子コンピュータは、無限の(メモリー)状態にある。

 IBMとIonQは、全ての原子の真似ができる、50量子ビットのコンピュータを開発。まだビット数が小さく、古典コンピュータとの併用(ハイブリッド)が現実的。

 量子アニーリングは二次関数。組合せ最適化の問題は、配送計画などの物流、製造の手順(工程)、防災など。選択の問題は、磁石の向きに還元できる。現在は5640量子ビットのものが開発されている。

 現在、工場内の無人配送車が実現されている。都市の交通の全体を最適化することが可能になる。最適化問題の応用は広い。