「真空のからくり」 山田克哉 2013年 ブルーバックス(再読)

 物理学について考え方をまとめようと思い読み直してみました、は嘘。買って読んだのを忘れて、二重買をしてしまtったのです。しかし、怪我の功名。様々な本を読んで勉強した後では、一度目とは全く違う理解になりました。著者は特定の考え方を持たない教育者なので、通説?を要領よくまとめてくれています。考え方を整理するには適していました。ありがとうございました。 以下はこの本の要約と引用です。 *印は私の見解です。尚、「真空」は「擬似真空」という意味で「擬空」としました。また、真の空と考えられるものは「真空」と表記しました。更に、「絶対零度」は、「絶対」でなないので「零度」と表記しています。


《はじめに》

 この宇宙の全ては擬空(*或いは真空)から生まれました。擬空には温度がなく、エネルギーは観察されません。質量を生み出し、力を伝え、無限大のエネルギーがざわめく擬空には、謎めいた構造が備わっています。

《1. 擬空には構造がある》

 連続体の各粒子の運動エネルギーの平均が、その物体の温度です。その運動エネルギーは、[mv^2/2]で表されます。粒子の完全静止は不可能です。ある物体からいかなる熱エネルギーを取り出すこともできない状態のとき、その物体の温度を零度と決めています。温度の元は、物質粒子の運動ですから、物質粒子が存在しない限り温度も存在しません。

 零度の擬空では、エネルギー保存の法則は成立しません。発生源の無いエネルギーをもたらし、粒子の消滅・生成が繰り返されています。10兆分の1秒という間隔で、仮想粒子が消滅・生成しています。観測できないものは「無」と同じです。

 電荷そのものが何であるかは解っていませんが、電荷保存の法則は守られています。

 電子-陽電子対(仮想粒子対)が実電子の周りに群がっています(擬空偏極)。カシミール効果はこれを検出します。電荷の熱振動にいる電磁波は、エネルギーを持っています。擬空の内部が電磁波で埋め尽くされても、その空間は擬空のままです。黒体から光が放射されることはありません。

 振動数νにぷプランク定数hをかけるとエネルギーの単位になります。エネルギーの変化の間隔はhνです(プランクの黒体放射の理論)。零度に到達すると電子は熱振動しなくなり、電磁波を出さなくなります。零度の電磁波の持つ零点エネルギーは、[hν/2]です。振動数は連続に変化します。つまり、電磁波の最低エネルギーは無限個あります。

 光は物質と反応するときは粒子として振る舞います。物質と反応していないときの光は、波として振る舞います。光子1個のエネルギーは[E=hν]です。光子の質量は零です。電磁波が量子化した姿が光子です。光子は分割できません。物体に吸収されるとき、粒子として吸収されます。明るさは光子の数に比例します。

 空気は隙間だらけです。その隙間の擬空では、仮想粒子の消滅生成が起こっています。

《2. 擬空から粒子を叩き出せ》

 波動性と粒子性の両方を有するものを量子と呼びます。波動性と粒子性が同時に現れることはありません。ルイ・ド・ブロイは、波動性⇒波長と粒子性⇒運動量の間の関係(ド・ブローイの式)を見出しました[ν=h/p]。

 野球のボールが波として振舞うときの波長は小さいために、ボールの波は観測されません。野球のボールは量子ではありません。また、量子は数えられます。

 粒子Aが粒子Bを突き飛ばす能力を、粒子Aの運動量と呼びます[p=mv]。全ての量子は、静止することがありません。零度でも量子は振動しています(零点振動)。

 行列力学は、AとBの積がBとAの積に等しくないことを示します(不確定性原理)。波は広がりをもつために。運動量にも不確定さが現れます。[位置の不確定さ×運動量の不確定さ=h]。見えるような物体には、不確定さは現れません。

 エネルギーの大きな電磁波(ガンマ波)が原子核の近傍を通過するとき、光子は消滅して質量を持った電子-陽電子対(実粒子)が現れます(エネルギーの物質化)。

 量子力学では、エネルギーや運動量などの物理量は「演算子」として表すことができます。「時間」は物理量とは看做されませんん。時間は「概念量」です。従って、時間は演算子に置き換えることができません。エネルギーと時間の間の不確定性は[エネルギーの不確定性さ×時間間隔=h]。不確定性原理が許す時間間隔内ではエネルギー保存則を破って無からエネルギーが生じます。

 場は物質ではありません。重力場や電磁波が存在していても擬空であることに変わりはありません。波を量子化すると仮想粒子になりますが、それは観測できません。仮想粒子は擬空を通して力を運びます。場は実在し、実験で確かめることができます。二つの粒子が実在する場を通して相互作用をする際に、その場が仮想粒子に置き換えられます。

 質量の大きいヒッグス粒子は仮想粒子ではありません。極めて不安定で、短時間で光子などに変わります。ヒッグス場は容易に振動しません。CERNが叩き出したヒッグス粒子も実の粒子です。ヒッグス粒子は現在の宇宙には存在しません。

 真空中には仮想のクォーク-反クォークの対が出没します。これがコライダー(衝突型粒子加速装置)による衝突エネルギーからエネルギーを貰って実のパイオン(中間子の一つ)となって現れます。中間子は、クォークと反クォークから構成されます。

 エネルギーも高きから低きへ流れます。真空から私たちの世界にエネルギーが流れることは不可能です。

《3. 擬空が生み出す奇妙な現象》

 [hν/2]は光子一個のエネルギーの半分ですから、擬空には実の光子はありません。個々の電磁波のνには不確定性は伴いません。振動数とエネルギーとは別の物理量です。真空には零点波が存在します。

 質量を持つ粒子が波として振る舞うときの波を量子化すると再び粒子性が現れます(第二量子化)。

《4. 力が擬空を伝わるとはどういうことか − 仮想粒子の役割》

 擬空に2つの粒子があるとき、力が伝わります。相互作用を引き起こす力は、粒子自身に存在します。素p粒子の世界では、力は相互作用を引き起こす要因です。

 宇宙の膨張は、「空間の膨張」です。擬空が新たな擬空を創り出しています。宇宙全体の擬空のエネルギーは増加し続けています。エネルギー密度は一定です。

 現在の擬空のエネルギーには、重力が含まれていません。量子重力理論は確率されていません。*「重力」は「見かけの力」で失体は無いのかも知れません!?

 力の種類よって「荷」が異なります。電荷・色荷・弱荷、そして質量です。荷によって発生した場は、擬空の各点を占めます。場こそが力そのものと言えます。力は方向も持つので、ベクトル場です。粒子の荷が場を生み出し、場を通して力が伝わります。場の量子論では、場はゲージ場です。ゲージ場はゲージ粒子に置き換えられます。ゲージ粒子は、予め存在するのではなく、二つの粒子から生成・消滅するのです。力を感じるのは、ゲージ粒子(仮想粒子)を投げた時(反動で逆向きの力を受ける)と、受け取った時(受けた向きに力が働く)だけです。互いに反発します。
*だから「斥力」は理解できますが、「引力」理解できません。まして、引力しかない重力って変態です。

 相互作用における仮想粒子の出現は、計算の結果を物理に解釈したものです。
*現在の理論物理学は、少なくとも実証科学ではありません。ぬしろ、宗教に近いものでしょう。宗教も悪くありません。信じる者は救われるのですから。信じない者は救いようも無いのですが …。

 ファインマンは反粒子のマイナスのエネルギーをマイナスの時間に置き換え、っその代わりにエネルギーをプラスにして扱います。この結果、ファインマン図では反粒子は時間を逆行するよううに描かれます。実際に観測される反粒子は、時間を順行します。ファインマン図では、素粒子は実線で表され、仮想粒子は波線で表されます。また便宜上、相互作用はある瞬間に(頂点で)起こるように描かれます。

 これら一連の相互作用が観測されるものではないことに着目したのが、「繰り込み理論」です。[無限 − 無限 = 有限]、つまり[無限大の電荷 − 無限大の電荷 = 観測される有限の電荷][無限大の質量 − 無限大の質量 = 観測される有限の質量]。これが、朝永博士らによって築かれた「量子電気力学」です。

 仮想粒子は、計算手段に過ぎないとも言えますが、その影響は実在します。

《5. 弱い力と質量の起源をめぐる謎》

 物理法則が不変性を保つことを、対称性を維持する表現します。時間変換に対して対称であることの背後には、エネルギーが保存されることが含まれます。場所の変換に対して対称であることは、運動量の保存が含まれます。

 一般相対性理論に基づく対称性を保つために導入されたのがゲージ場です。量子力学によれば、運動量は波の波長に相当し、エネルギーは波の振動数に相当します。粒子に対応する波の位相は、粒子の持つ運動量やエネルギーにによって決定されます。場所と時刻によって変わる位相(ずれ)の大きさ、すなわち局所変換を加えたのがゲージ場です。波動関数の何らかの変化を「ゲージ変換」と呼びます。

 湯川博士は、力を伝達する粒子が無限大の距離に及ぶ場合、その粒子の質量は零でなければならないことを示しました。質量零の光子は、無限大に到達できます。

 自然はエネルギーの高い状態を嫌います。質量の大きな粒子は崩壊し易いのです。中性子を過剰に持つ原子核も不安定です(原子核のベータ崩壊)。

 物質を構成する素粒子はスピンしています。スピンの向きは上か下かのどちらかです。アイソスピンは、中性子と陽子を区別するために仮想に導入された物理量です。

 電荷を持つ粒子は、質量を持っています。電荷は保存されており、電荷はには不確定性原理は成立しません。

 クォークを結びつけるゲージ粒子=グル―オンは質量も電荷も持たない仮想粒子です。Wボゾンは仮想粒子です。クォークより大きな質量を持ちます。

 量子力学のスピン角運動量は計算上の概念です。整数のスピン角運動量を持つのがボーズ粒子。奇数を2で割ったスピン角運動量を持つのがフェルミ粒子。物質は、パウリの排他律が成立するフェルミ粒子だけからできています(だから原子は潰れません)。凝縮するボーズ粒子の数に制限はあありません。

 光子は電荷を持たず、質量も零ですから、電子間の相互作用で電子自身が性質を変えることはありません。

 フェルミ粒子で強い核力を感じないものはレプトンと呼ばれます。クォークは、4つの力を全て感じます。

 現在の宇宙に反粒子が見当たらないのか?は解明されていません。弱い相雨後小夜の生じ方に違いがあるためという想定があります。

 観察される物質は、エネルギー安定の第一世代のフェルミ粒子だけで構成されています。素粒子が崩壊する時には、必ず質量が減少して軽い竜氏へと変化します。

 素粒子の右巻き/左巻を「カイラリティ」と言います。質量零の場合は、カイラリティは保存されまあす。弱い相互作用は、左巻きのフェルミ粒子だけを選びます。全てのクォークとレプトンは左巻きです。反粒子に対しては、右巻きの粒子にしか作用しません。素粒子が質量を持つとカイラル対称性が破れます。

 dクォークとうクォーク、電子と電子ニュートリノを、アイソスピンを導入することによって識別します。弱アイソスピンのZ成分を「弱荷」と呼びます。「弱荷」が弱い核力を発生させます。

《6. 擬空はななぜヒッグス粒子を生みだしたのか》

 物体に相転移が起こると対称性が変化します。鉄の温度が転移温度以下では、エネルギーの最も低い状態は二つあります。磁気双極子が全て上を向いた状態と、全て下を向いた状態です。

 金属内の自由電子は、原始にぶつかるなどして抵抗を受けます(電気抵抗)。金属によっては、一定の温度で電気抵抗が零になります。リング状の超伝導体では、いったん電流が流れると、電源無しで電流が流れ続けます。

 普通の金属は室温で、プラスに帯電した原子が格子を作って結晶体をなしています。自由電子はこの格子の合間を動いています。

 スピン零となった電子のペア(クーパー対)もボーズ粒子として凝縮します。凝縮後の全ての電子は、全く同じ行動をとります。空間の広がりを持つ一つの量子として振る舞います。波の波長が同じだからです。一つの量子は何の抵抗もなく電線内を流れます(超伝導)。自発的対称性の破れが生じます。電子の数は保存されなくなります。

 自発的対称性の破れによって出てくる質量零でスピン零のボーズ粒子を「南部-ゴールドストン粒子」と呼びます。

 電磁波(光子)は、電離層(プラズマガス)でエネルギーを奪われ減速します。減速されるということは光子が質量を得ることと同じ結果を生みます。光子が、南部-ゴールドストン粒子を吸収して質量を得ます。

 場の量子論は特殊相対性理論に基づいています。そのために、南部-ゴールドストン粒子と質量の関係は疑われていました。

 南部博士は擬空に凝縮が生きると自発的対称性の破れを生じさせると考えました。超伝導体でクーパー対と相互作用した光子が質量を得るように。擬空に自発的なカイラル対称性の破れが起きると、フェルミ粒子が質量を獲得します。

 標準模型には、全ての素粒子は質量を持っていなかったという考えに基づいているために、ヒッグス粒子が含まれています。

 宇宙の温度の変化が相転移をもたらし、その結果として対称性が破れて質量が生じたと考えられています。つまり、ヒッグス粒子の凝縮により、擬空は相転移を起こしたのです。

 ヒッグス場は方向を持たないスカラー場です。そして、発生源の無い場です。宇宙のインフレーションの原因となったのが、ヒッグス場だと考えられているのです。

 素粒子は何らかの場の励起状態だと考えられています。それぞれの場は、エネルギーポテンシャルを持っています。擬空は零点エネルギーはプラス側とマイナス側を行き来しています。この振動による場の強さの変化の平均は零になります。同じように、ヒッグス場の擬空の期待値も零になっています(図参照)。

 エネルギー最少の安定を手に入れる代わりに、対称性が破られます。不安定であるために、自ら落ち込むのです。結果として、ヒッグス場の場の強さは零でなくなります。普遍的に存在するヒッグス場が凝縮できるのは、方向を持たないスカラー場であるためです。量子化されたスカラー場は、スピン零のボーズ粒子となります。

 他の擬空の期待値は全て零です。零ではないヒッグス場も、電磁場と同じように実在する場です。現在の理論では、擬空の相転移により発生した場は、ヒッグス場だけとされています。

 自発的対称性の破れが起こると、弱い核力のW+-とZボゾンは、現れた三つの南部-ゴールドマン粒子が吸収して質量を獲得します。

 ヒッグス機構とは別に、ヒッグス粒子が存在します。自身が質量を持つヒッグス粒子です。溝の底にあるボールは振動します。この振動がヒッグス場に発生します。ヒッグス場の振動も質量に置き換えられます。CERNが検出したヒッグス粒子はこの粒子です。ヒッグス粒子の質量は大きいので、他の粒子にすぐに崩壊します。だから「ヒッグス粒子がそこにいた」痕跡を突き止めたということです。

 ヒッグス場は力の場(ゲージ場)ではありません。ヒッグス粒子は、電荷もスピンも零のボーズ粒子です。色荷も持ちませんが、弱荷を持っています。ヒッグス粒子の質量の値は予測不能です。

 弱荷をもつクォークやレプトンも、弱荷を通してヒッグス場と相互作用し、質量を獲得します。フェルミ粒子とヒッグス場の結合は「湯川結合」と言われています。力を伝達するゲージ粒子がスピン零の場合が湯川結合です。光子とグルーオン以外の全ての素粒子は、ヒッグス場との相互作用から質量を獲得することになります。

 擬空に発生した凝縮は、空間全体を埋め尽くし、自発的対称性の破れた状態になります。クォークが粒子-反粒子対のボーズ粒子の凝縮に衝突すると、右巻きのクォークは左巻きに変わり、左巻きのクォークは右巻きに変わります。クォークに質量をもたらすこの仕組みは、ヒッグス機構ではありません。カイラル対称性の破れを引き起こす粒子-反粒子の凝縮は、カイラル凝縮と呼ばれています。

 クォークの質量は、ヒッグス場との相互作用からは全体の2%です。98%はカイラル対称性の破れから獲得したものです。

 陽子や中性子の空間では、グルーオンやクォークが動き回っていて、このエネルギーが質量化することで質量が増加します。

 素粒子に最初に質量を与えたのはヒッグス場ですが、物資の質量には様々な要因が関わっています。

 崩壊は、外部にエネルギーを吐き出して、安定な低エネルギーな状態に移る現象を指します。現在の擬空は、エネルギーが最も低い状態なのか?擬空の崩壊の連鎖反応は光速で広がります。現在の擬空が、安定なものなのか?