「ビッグバンはなかった(上)」 エリック・J・ラーナー 1993年 河出書房新社

 観察の事実に基づいて邪教ビッグバンを否定するプラズマ宇宙論の本。有名な本ですし、ブルーバックスにもプラズマ宇宙論の解説書はあるのですが、定常宇宙説を支持していた私は、なんとなく敬遠してました。しかし、読んでみると、重力より桁違いに強い力である電磁気力が宇宙の進化に関わらない筈は無い、と考えざるを得なくなりました。プラズマは、電荷が作用する場所。宇宙を変化させる力がそこにあります。

 その当然の帰結として、この宇宙では「無から有は生じない」し、宇宙は永遠に存在し進化(変化)し続けます。「時間は実在しない」と言っても同じでしょう。著者は、明示はしてませんが、時間も空間も、実在概念としてではなく、計量概念として「経験」として捉えているようです。

 物理学、特に宇宙論は宗教です。ビッグバン妄想が、カトリックの神父によって提唱され、かつ、共産主義イデオロギーとも一致していたために、天下の邪教=ビッグバン妄想は世界中に広まりました。これ以前の宇宙論も、権力と結びついた邪教=神話でした。その意味では、ビッグバンばかりを非難すべきではありません。著者が主張する正当な科学であるプラズマ宇宙論も、特定の勢力の都合に合致することでしか公認されないのでしょう。物理学も、「共同幻想」なのです。

 研究者が「ビッグバンは間違っているので新しい宇宙論を構築する」という正しい趣旨で科研費を申請したら、ビッグバン妄想が間違っていることが実証されている今日でも、却下されるでしょう。ビッグバン妄想は間違っているなんて正しいことを言ったら、大学に職を得ることもできません。NHKの科学班でもビッグバンを否定する番組は作れません。

 どんな邪教であろうとも、それを受け入れなければ研究者として「おまんまが食えない」のです。科学が成立する基盤は無い。残念ながら、世界はそういう状況にあります。

 ファラデーは、「職業としての科学者」であることを拒否し、「独立した自然哲学者」であり続けました。現在、私が読んで感銘を受ける非主流の物理学研究者の多くは、大学に属さない人々です。お金を貰って研究するのであれば、お金を出す側の意向を無視できません。本当の学問をしたいのなら、大学や研究機関に雇われてはいけません。就職は、生活のための糧を得る手段なのであって、真の研究者ではなくなることを意味します。

 私も大学で教えていますが、講義の内容に大学が意見を挟むことなど認めません。そのようなことがあれば、即座に講師を辞めます。「科学の事実を教える」信念に反することは断じてしません。

 以下はこの本の要約と引用です。*は私の見解と感想です。尚、「ビッグバン仮説」は科学の事実に基づかないので「ビッグバン妄想」と表記しました。


《初版序文》

 ビッグバン宇宙論の予想と矛盾する観測が次々現れた。これらの観測は、宇宙には始まりも終わりも無く、無限時間にわたって存在したという考えに基づく理論に合致する。

 素粒子物理学は宇宙論と結びついている。ビッグバン妄想が間違っているので、素粒子物理学の基礎も崩壊している。

 ハンネス・アルヴェーンらのプラズマ宇宙論によれば、宇宙は永遠に持続し、進化し続けるものである。プラズマ宇宙論はガリレオの方法=観察と実験に基づく思考の産物である。無限の時間にわたって進化し続ける無限の宇宙。科学には最終的な答えも究極の権威もない。

 社会の進化と宇宙論の進化は互いに影響し合っている。

 無からの宇宙の誕生という考えは、創世記から生まれたのではなく、ローマ社会が崩壊し、封建社会の基礎が築かれた3〜4生起のイデオロギーから生じた。アウグスティヌスは権威主義的な世界観を基礎づけるために、無からの創造という教義を導入した。この世のあらゆる努力を蔑視し、物質的存在を「無から生じた無に近いもの」、卑しい終盤へと崩壊していくものと宣告する宇宙論であった。この宇宙論は固定的。抑圧的な社会を正当化するのに役立った。

 今日の宇宙論は、哲学的な前提に立ち、観測によるのではない。無からは何も生じない。

宇宙論をめぐつ論争

《1. ビッグバンは起こらなかった》

 銀河は10億光年に及ぶ集団を形成している。この物質のリボンは、ビッグバン妄想の前提、宇宙は一様だったという前提を退ける。

 宇宙の物質の99%以上が、プラズマの気体である。巨大な電流と磁場がもつれ合い、電磁気と重力によって秩序づけられている。

 1989年、ネイチャーは論説「くたばれビッグバン」を掲載した。新しい宇宙論論争が始まった。

 存在している宇宙は、塊だらけの宇宙で、空間を捻じ曲げたり、空間を膨張・収縮させたりしていない。

 近傍銀河は、糸で編んだレース状のパターンを形成している。フィラメントを結んだネットワークが連なっている。1億個の1億倍の星を含むスーパークラスター複合体が5つ確認された。クラスターの密度は、リボンの外側の25倍である。宇宙の平均物質密度は10立法メートルあたり原子1個である。

 宇宙背景放射探査衛星の観測結果は、ビッグバン妄想が予想した黒体の曲線にピッタリ一致していた。だとすると、エネルギッシュな過程は存在しない。大きなエネルギーの放出は否定された。

 新しい観測に合わせるために、プトレマイオスは宇宙体系に周転円などを次々に付け加えた。新しい観測のたびに、それを説明する新しい理論が付け加えられるようでは、科学とは言えない。

 重力で宇宙の膨張を説明するダークマターは、見えないのではなく、存在しないのである。「見えない質量」は、遠くの星々を計算に入れてしまった観測の誤りである。どこにも暗黒物質は存在していない。近傍の銀河の運動を正確に観測した結果は、目に見える物質の質量と一致した。

 オーロラは、オーディンの槍と呼ばれていた。オーロラは上空のプラズマを流れる電流の効果である。フィラメントはプラズマの中を通り電流を運ぶ渦巻である。電流がプラズマの中を通ると、円筒状の磁場ができる。これが同じ方向を流れる他の電流を引き寄せる。収束した糸は捩れてプラズマの綱になる。フィラメントはプラズマの旋風である。プラズマは集まって渦巻くフィラメントを作る。

 磁場と電流は重力よりも、速く効果的に物質とエネルギーを集中させる。プラズマの糸の磁気力はプラズマの速度とともに増大する。これがフィードバック効果をもたらす。

 宇宙空間はプラズマ・フィラメントで満たされ、電流と磁場のネットワークで一杯である。電流とフィラメントが太陽系の至る所に存在しているkとが観測されている。

 銀河間空間の磁場で自転している銀河は、電流を生じさせる。銀河から生じる電流は、銀河の中心に向かってフィラメントの旋風となって流れ、そこで向きを変え、自転軸に沿って流れ出す。この銀河電流はやがてショートして銀河の核にエネルギーを注ぐ。電子とイオンの噴流(ジェット)を回転軸に沿って外向きに加速する。電流が発展して渦フィラメントになり、それが捩れて渦巻銀河になる。VLA(巨大アンテナ列)は、天の川銀河の中心に、電気の渦をフィラメントを発見した。

 銀河はフィラメントに沿って繋がっている。数千億年の時間があれば、プラズマは銀河の階層構造を作ることができる。

 マイクロ波は、散乱されて均されてしまう。背景放射が滑らかであるのは、濃い霧がどの方向でも滑らかに見えるのと同じ理由であって、宇宙自体が滑らかであるのではない。

 物質が作られるときは、反物質も作られる。プラズマは、物質と反物質を大きな領域に分離する。

 宇宙を膨張させる爆発はただ一回ではない。

 科学者が専門化すると、「定説」が蔓延るようになる。定説を作った指導者が論文を審査し、研究費を査定する。深刻な保守化が生じる。ビッグバンに反する実験観測結果が続出しても、その支配は強化されていく。

 現代宇宙論は宗教化している。ポール・ディヴィスは「神と新物理学」を著し、スティーブン・ホーキングは「髪の心を知る」ことを願っている。

《2. 天地創造説の歴史》

 創造神話は、社会がどのように運営されていたかを反映している。エジプトの灌漑工事を組織した僧侶階級によって確立された社会構造と技術体系は、1500年以上も固定された。農業技術の革新は、それ以降の進歩を妨げた。

 イオニア(現トルコ)にギリシャ人が建設した商業植民地において、学問は民主化され、フェニキア人の簡便なアルファベットが用いられた。タレスは、創造神話から神を取り除いた。前5世紀までには、経験科学の芽は育成していた。神の関与しない自然過程には、時間の始まりや、無からの創造はあり得ない。

 永遠の数理というプラトンにとって、宇宙は神の心の具現であった。

 前250年頃、アリスタルコスは、地球より重い太陽が地球の周りを回っているという考えは腑に落ちなかった。天体が完全な円を描いているも間違っていると結論した。地球も惑星も太陽の周りを回っており、地球自身も自転していると想定した。

 ヒッパルコスとプトレマイオスは、理論と観測の溝を埋めるために、離心円・周転円などを付け加えた。理論と観測の乖離を埋め合わせるために新たな仮説が付け加えられるような理論は、科学ではない。

 無からの発祥という考え方は、初期キリスト教には無かった。イエスは貧しい人々に語りかけ、社会の二元論と不平等を糾弾した。キリスト教は、奴隷制度に反対した。全ての人間は同胞である。しかし、ローマ化したキリスト教は、プラトン哲学に染まってしまった。アウグスティヌスにとって、人間を含めた自然は腐敗している。死は性行為によって次の世代に伝えられた罪に対する処罰である。

 イギリスの僧ペラギウスにとっては、病気と苦痛と死は、自然法則の結果であって、原罪などではなかった。

《3. 科学の台頭》

 イスラムによる征服が、科学を復活させた。イスラムの道徳性は、ローマ帝国の貪欲よりも好ましいものに見え、信奉者は急速に広まった。

 欧州の人口の1/3を奪った黒死病によって、封建社会はついえた。イギリスでは、ジョン・ウイクリフが人間と神の間を取り持つ聖職者は不必要であるとした。

 19世紀には、宇宙は自然過程によって進化し、観測と実験によって知ることができる。イオニアの方法が公認の知識となった。

 ドイツ生まれの僧ニコラウス・クザーヌスは、無限で無限界の宇宙というアナクサゴラスの思想に復帰した、クザーヌスは、時間には始まりも終わりも無いと論した。無限宇宙には、無限の数の星があり、中心もない。最終の真理に到達することは無い。自由都市から生まれたクザーヌスは、人間の生得の平等という初期キリスト教の教えに復帰した。階級を否定し、都市のギルド制度(民主制度)が根付いていった。エリザベス統治下のイギリスは、コペルニクスの反階級-反権威の教えを歓迎した。自由労働が製造業には必要だった。科学知識は万人に共有されるべきものになった。

 アイザック・ニュートンは、宇宙を形成するには神が必要であると論じた。イマニュエル・カントは、地球の起源を自然主義で説明した。カンとは無限の宇宙を唱えた。

 トーマス・マルサスは、人口の増加は常に農業生産を上回り、人々を飢えさせ、物質上の進歩を阻害すると論じた。チャールズ・ダーウィンは、限られた資源というマルサスの説を捉えて、継続する進化という見解をまとめ上げた。

 「宗教は天への行き方を教えるが、天がいかに動くかは教えない」ガリレオ・ガリレイ。

《4. 現代宇宙論の奇妙な経歴》

 今日の宇宙論は、アウグスティヌスと同様に、時間も空間も有限で四次元の球をなしている。ルネ・デカルトは、神のみが真理を導くと信じていた。ラプラスでさえ、「初期条件」は予め決定されていたと考えた。しかし、ガリレオの考え方では、科学は閉じたものとは見なされていない。

 熱力学の第二法則は、すべてのシステムは平衡状態に向かう傾向があるとした。ルドヴィッヒ・ボルツマンは、何が起こりやすいかを述べるが、何が起こるべきかについては述べないと考えた。ボルツマンは、原子の衝突だけを採り入れ、電磁気や重力のような長距離の力を考慮に入れなかった。無秩序の増大という法則は真でないことが証明される。

 大衆によるアインシュタインの一般相対性理論の受け入れは、科学誌の例を見ない展開だった。アインシュタインの球状宇宙は永遠に不変である。第一次世界大戦によって苦悩する社会にいとって、静態の秩序ある宇宙は安らぎを与えるものだった。変化は進歩ではなくなり、死を意味する不安定を意味した。アインシュタインは宇宙の新秩序を示した。大衆は方程式を理解しないが、物理概念は理解する。それは、ビッグバンの受け入れに通じていた。

 科学は信じるもので、理解すべきものではない。

 アインシュタインの理論は、数理の演繹から展開された。実験室の経験は、抽象の領域に高めることはできない。

 アインシュタインは、有限な宇宙の閉じた静態を信じた。宇宙が均質で至るところで同じ密度であれば、宇宙は有限となる筈だと考えた。観測によれば、宇宙はいかなる規模で見ても非均質である。また、宇宙はアインシュタインの哲学に反して、回転している。

 ベルギーの神父で相対性理論研究者のジョルジュ・アンリ・ルメールは、ビッグバン宇宙論を展開した。ハッブル膨張に着目し、半径零の特異点から始まる宇宙論である。エントロピーの法則にも合致していた。

 ロバート・ミリカンは宇宙線は過ぎ去った時代に作られたという仮説は、科学として認めることができないと述べた。観測される宇宙線は既知の過程で作ることができる。

 第二次世界大戦が終わると、宇宙論研究は変わった。ジョージ・ガモフはビッグバンの二つ目の変種を提唱した。水素は宇宙の質量の3/4を占めている。炭素・窒素・酸素などは、全体の1%である。ガモフは自分の元素起源説を宣伝する能力に恵まれていた。ガモフの原爆の喩えは、大衆には生々しく感じられた。

 フレッド・ホイルは定常宇宙説をまとめた。宇宙は均質で等方的であるという仮定に基づいていた。進化しない宇宙はあり得えないものだった。

 最も安定した鉄より重い元素は融合からでは作り出せない。ガモフのビッグバンも駄目になってしまった。

 天体が潰れてブラックホールになるのなら、宇宙が特異点をから生まれてもいいのではなかろうか?若い研究者は、一般相対性理論の数理研究に向かった。

 宇宙背景放射の温度は、ビッグバン論者の予測とはかけ離れていた。宇宙を閉じさせるにはエネルギーが足りなかった。ビッグバン論者は宇宙の密度の仮定を変えた。第三の変種=現在の標準モデルが誕生する。

 物理科学の研究資金は減少した。宇宙論は紙と鉛筆だけで計算する安上がりの科学だった。観測は方程式の操作によって、二次的なものとなった。ビッグバンが誤っているなど考えられなくなった。それは信仰の問題だった。

 この宇宙は球のように歪曲しておらず、平坦である。ビッグバンを救うには、見えない物質が必要だった。インフレーション理論は平坦性の問題を解決した。グース理論では、真空中のヒッグス粒子が、必要されるエネルギーを無から作り出す。スティーヴン・ホーキングは、多宇宙を提唱した。物理学者は、観測と実験を放棄し、数理によって法則を導き出せると主張しだした。

 穀物生産は停滞し、ローマクラブは有限な資源に対して成長に限界を表明した。ビッグバンは衰えいく宇宙の隠喩となった。全世界で生活水準は低下した。社会の停滞が神話への逃避を生み出した。

《5. オーディンの槍》

 プラズマ宇宙論は、検証された電磁気の物理学に基づいている。運動は電気に、電気は運動に変わることができる。束縛されていない荷電粒子は、磁力線を囲む円を描いて運動する。流体力学、特に渦巻きを記述する方程式は、マクスウェル方程式に一致する。但し、静電気のような電荷が入り込むと、この類推は成り立たなくなる。

 宇宙に電磁気学を応用する道を拓いたのは、ノルウェーのクリスチャン・ビルケラーンである。ビルケラーンは、電磁気学をオーロラに応用した。地球(宇宙の星)は磁場を持っている。1904年に、太陽の黒点や土星の環そして銀河の形成が、宇宙空間の希薄な電磁性ガスの中を動く電流と磁場で説明できると主張した。

 ハンネス・アルヴェーンは、実験室のモデルを天上に拡張するビルケーンの方法を追求した。

 宇宙電気力学の基本概念は、1)宇宙線のような粒子の電磁気力による加速、2)空間の巨大な電場の単極的な発生、3)大規模な電流と磁場の存在、4)空間で電流を運ぶプラズマ。

 中立国スェーデンで研究したいたアルヴェーンは物理学の研究を続けられた。戦争中に開発されたレーダーは、プラズマ物理学の発展に繋がった。電波望遠鏡は、天体が電磁源であることを見出した。水爆実験は、核融合を実現させる一億度の温度(プラズマ)を閉じ込めて置けるのは磁場だけであることを示唆した。

 電流がプラズマの中を流れる時、電流は磁力線に沿って流れるためにフィラメントの形を取る。フィラメント電流の形成によって生じた非均質性は宇宙にとって不可避である。宇宙は巨大な電力送電網を形作っており、宇宙を横切って延びているフィラメント(電線)にそって巨大な電流が流れている。フィレマンとは撚り合わされる。巨大な電流を運び、集中させ、強い磁場を作るフィラメントの能力がアルヴェーンモデルの鍵である。フィラメントの渦運動は、内部の集団に角運動量を提供し、圧縮のサイクルを生じさせる。この仮説は、1989年に確証された。

 磁場を測定する磁力計を搭載した衛星は、オーロラ帯の中に局所化された磁場の存在を確かめた。銀河は全体として発電機の働きをし、巨大な電流システムとなっている。