企画展「発掘された日本列島」を観るのが年中行事だったのですが、2年間途絶えてしまいました。一昨年はテーマに関心がなかったから、昨年はコロナ禍で。今年は、いつもの感じに戻ったので、女房と一緒に観に行きました。今回は「発掘された日本列島2021」の報告です。

20210703NEXs019天神台遺跡
 天神台遺跡(千葉県市原市)縄文早期の土器。

・千葉県市原市国分寺台遺跡群
 縄文時代の貝塚の3割が集中する千葉県。干潟が広がるこの地域全国屈指の貝塚がいくつもあります。縄文時代だけでなく、弥生時代の環濠集落や古墳も数多く確認されています。
 天神台遺跡では炉穴の焦土から炭化したクルミの殻が多数見つかりました。木の実をすり潰すのに使った石皿や摺石も多数見つかっています。

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 安山岩製剥片(瀬戸内海-洗谷貝塚)

・瀬戸内海の水運
 瀬戸内海の潮流は福山沖で東西に分かれるため、近代以前には船は鞆浦で潮待ちのために停泊しました。福山市内を流れる芦田川は、瀬戸内海と内陸部を結ぶ水上交通に利用されました。そのため、備後国の国分寺・国分尼寺が置かれました。瀬戸内海が形成された縄文時代以降、交通の要衝として栄えました。

・海上輸送された石材
 芦田川流域にある縄文遺跡(洗谷貝塚・御領遺跡)からは、香川県産の安山岩(サヌカイト)原石が見つかりました。大分県姫島産の黒曜石も出土しています。縄文時代から船を使った交易が行われていました。

20210703NEXs038葉茶壺
 陶器-河南産葉茶壺。

・大内文化
 大内氏は祖先を百済王族とし、多々良姓を名乗りました。大内氏は朝鮮との貿易を展開しました。中国から手に入れた唐物を朝廷に献上することで影響力を拡大しました。

20210703NEXs042デーノタメ遺跡
 縄文土器(デーノタメ遺跡)。

・デーノタメ遺跡
 埼玉県大宮大地の北部に位置する縄文中期〜後期の集落小河川の支流に面した台地から竪穴建物が多数見つかりました。中期には関東地方最大級の環状集落でした。水場からは漆塗りの土器も見つかっています。

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 ミミズク土偶(下ケ戸貝塚)

・下ケ戸貝塚
 利根川流域の台地上に立地する縄文後期の貝塚を伴う集落です。汽水に生息するヤマトシジミが多く含まれ、海水と淡水が入り混じる汽水域があったと考えられます。

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 骨格器(下原洞穴遺跡)

・下原洞穴遺跡(縄文草創期貝塚時代)
 奄美大島の南、徳之島の遺跡。鍾乳洞から生活の跡が見つかりました。1万5千年前の隆起線文土器が出土しました。隆起線文土器は、本州最古段階の土器です。奄美諸島でも本州と同年代に土器の使用が始まっています。

 企画では、遺物の保存についての解説もあります。女房は深く頷きながら、苦心を分ち合っていました。

・考古資料の保存
 金属は放置するとサビが進みます。鉄製品では脱塩処理(塩化物イオン等の除去)と、樹脂によるコーティングを行います。
 女房によれば、漆は水から出すと乾いて剥がれてしまうそうです。記録するための「実測」という工程ではコーティングする訳にはいきません(コーティングするのは保存のための最終段階)。そこで登場するのはラップ。それもサランラップとかクレラップとかの大手メーカーのものでなく、某弱小企業の低価格品が最適なのだとか。薄くてぴったりくっついて微細な採寸ができ、かつ空気を通さないのだそうです。考古学も職人芸の世界なんですね。

20210703NEXs075僧形神立像
 僧形神立像(大南遺跡)。神仏混合を示すものだとか。どうみても僧に見えます。神には見えないけどな〜。大南遺跡は、山形県の天王川の自然堤防に立地する15-6世紀の屋敷跡。

 企画展の一部として展示されていた「特集 記念物100年」も面白いものでした。

・鈴木遺跡(遺跡)
 かつての勤務地の近くの遺跡です。石器製作跡には、関東平野周辺からもたらされた黒曜石が多数含まれています。旧石器時代の拠点的な居住地であったと考えられています。

・エルトゥールル号遭難事件移籍(史跡)
 紀伊大島の樫野埼灯台で座礁したオスマン帝国の軍艦エルトゥールル号。地域住民の行動は、その後の日本とトルコの国際交流の礎となっています。トルコの小学校の教科書には、日本への感謝の言葉とともに、この遭難が紹介されています。

・糸魚川-静岡構造線(天然記念物)
 日本列島の成立ちに関わる地質学上の境界が、人流と文化をい分かつものともなっています。なぜなんだろう?私のこの疑問は謎のままです。