事象のポテンシャルが高かろうが低かろうが、一定の条件があれば、売上を2倍以上にすることはとても簡単です。限られたマーケティング予算を、買い得る可能性の高い人々に集中すれば、売上は何倍にもなるのは当たり前です。

 売上が倍以上になる条件を整理しておきましょう。
 ・(統合された)購買データ(と属性データ)が整備されている
 ・(個人を特定する情報が付加されている)
 ・商品の購買ポテンシャルが劣化/衰退していない
 ・一定(月300万円)以上のマーケティング予算がある

 三流のマーケッターは、こうして事業を「売り潰し」ます。空前絶後に完全無欠な事実ですが、「売上を最大にする」は「事業を潰す」とイコールです。とにかく目先の売上さえ最大化すればいいのであれば、「押し売り」「その時その場限りの誘い売り」も許容されます。そして、買った人々の中には「もう二度と買うものか」と思う人もいます。こうして、その商品と事業は「買い得る可能性の無い人々」を増大させ、購買可能性を破壊していくのです。

 ゴールを「購買」定めるならば、「売り潰し」は必然です。事業の目標は、持続するお客様の支持=長期高収益である筈です。売上をゴールにするのは、事業の設計として間違っています。

 なのですが、未だに「売上第一主義」を掲げるシーラカンスな経営者が日本国には少なくありません。こういう企業を「食い物」にして、三流のマーケッターは、次々と事業を潰していきます。潰れたら「お次」の獲物を探せばいいだけです。お馬鹿な経営者の後は尽きないからです。

 使えるお金が限られている以上、売上を倍にすることは「赤子の手を捻る」ぐらいに簡単なことです。マーケティング技術の要の一つが「ターゲティング」です。これにより、投入-産出の「効率」を高めることができるからです。ですが、それは「効率」を高めるだけで、「効果」は高まってはいません。

 マーケティングの本義は、「その時その場限り販売を促進する」ことを否定し。「お客様の恒久の購買動機を形成する」ことです。販売促進は目先の売上を追及する営業の仕事。マーケッターは「売り得る可能性を醸成する」のが仕事です。ですから、売上を倍にするマーケッターは、本来の意味ではマーケッターではありません。売上を倍にすることすらできない無能な者は・・・詐欺師と呼ばれても文句は言えないでしょう。

 さて、上記の条件を満たさない、購買可能性の低下した商品と事業はどうしたら良いのでしょうか?結論は決まっています。「市場から撤退する」です。日本国の企業は、撤退を嫌います。そして、旧日本軍のように企業丸ごとに「玉砕」して消えていきます。自業自得と言えばそれまでですが、日本国の企業も世界標準の「手仕舞い」マーケティングを身につける時がきています。日本企業の収益性が低い最大の要因は、赤字の商品と事業から撤退しないからだと言われ続けてもう数十年が過ぎました。「手仕舞いは、大人のマーケティング」です。日本国民はそんなに幼児性が高いのか?ひょっとすると、何も切れないで「もろ共に死ぬ」のが日本国民の性癖なんでしょうか?それならば、潰れるままにしておくしかありませんね。