これは私の実感です。個人情報保護法がなく、個人情報がいかようにも扱えた時代。ID-POSやクッキーなどという確立された仕組みはありませんでしたが、個人の工夫によって方法を発明し、何の規制も無く自由に使えた時代。

 個人情報保護法によって、現在の日本国内の多くの購買履歴は。匿名化されたものしか入手できません(米国などでは消費者の許可を得て紐付可能な情報を入手することができます)。SNSなど膨大な個人情報も、購買履歴と結びつかないのですから、あまり役には立ちません。

 私は30ほど年前から、通販とスーパーマーケットなどの実店舗のデータを「そのまま」もらって突合し、個人の購買情報を統合しました。当時はID-POSは存在しなかったので、個人をIDする仕組みを独自に発明して、追加設備無しで店舗に導入してもらい、それを貰っていました。分析結果をフィードバックするととても喜ばれ、データ料は無料でした。先見性のある店舗経営者は今も昔もごく少数ですが存在するのです。

 こうして、購買可能性の高いと特定し、葉書などによるアプローチが可能になりました。今なら、レシートの後ろにクーポンを打ち出すことができます。個客に動的にアプローチする手段は確立しています。なのですが、それを使える経営者は一握りでしかありません。ID-POSが無い時代から、やる人はやっていた。ID-POSのある時代になっても、やらない人はやらない。それは大昔から変わっていません。

 こうして、買う可能性のある人にたいして、販売の可能性をピンポイントで高めることはできるようになりました。ですが、これだけでは「買い得る可能性」を高めることはできませんでした。そうこうしているうちに、20年ぐらい前から、所謂SNSが登場し普及し始めます。購買履歴とSNSを突合し、お客様の統合データベースを構築すると … 「買う訳」を洞察(インサイト)することができるようになり、購買可能性を形成する手筋が確立できました(私は、花王の「生活者日記」の分析を経験し、購買動機の洞察を学ばせ頂きました)。

 対面販売の店舗では、優秀接客要員の知恵=お客様の特性を接客情報を記録/記憶して購買履歴と結合して洞察する、を仕組み化することができます。また、通販企業では、サイトにお客様のマイページを設けて商品の口コミなどを書いて貰い、「購買動機の分析」も可能になりました(勿論、かなりの工夫をしないと多くの書き込みは行われず、またお客様の気持ちをストレートに伝えて頂くこともできませんが …)。

 そして、「買いたい気持ち研究所」を立ち上げ、ご賛同いただいた企業に「購買動機の形成」の端緒となる事実を提供することができました。需要の先食いやカニバリなどによって、利益を削減するだけの大部分の販売促進を止め、長期安定高収益を目指す購買動機の形成=買い得る可能性の醸成を実現したのです。

 そして、現在の日本では … 上記のような「買いたい気持ち」を洞察し、購買を促進する手筋は封じられています。個人情報保護法と保身ばかりを考えるお役人と本気で儲ける気が無い経営者のおかげで、日本国内のデジタルマーケティングの灯は消えたのです。