仕事で新橋に出る用事があったので、上野に寄ってみました。いつもは殆ど見ることのない密教関連のものと刀剣が中心です。今読んでいる考古学の本「馬・車輪・言語」に影響されちゃいました。

 まず本館一階から。

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 善光寺式阿弥陀三尊像(鎌倉時代/福島-如来寺)。善光寺の本尊はインド伝来と伝えられる秘仏。善光寺式阿弥陀三尊像は鎌倉時代以降に多く作られました。奈良平安時代には、大和朝廷に障りがあり、作るのが憚られたのだろうと、私は考えています。

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 善光寺式三尊像中尊(鎌倉時代/泉知寺)。善光寺の阿弥陀三尊像は、飛鳥時代に百済からもたらされたと言われ、最澄も善光寺に参ったと伝えられます。

20211109X5s008不動 20211109X5s010
 不動明王立像(平安時代)。左目を細め、閉じた口の両端から牙を出す形式は、天台宗の僧・安然が説いた「不動十九観様」と呼ばれるそうです。太めの不動ですね。

20211109X5s024不動明王
 不動明王立像(平安時代/京都-妙法院)
この像は比叡山にあったと考えられています。毛束を編んだような髪型や巻きスカートが膝までめくれる表現、左足の踵を上げる点など、天台宗の不動明王の特徴が認められます。

20211109X5s020蔵王権現
 蔵王権現立像(鎌倉時代)。蔵王権現は険しい山中で修行する山岳修験において信仰され、中世以降、天台宗を本山とするようになりました。

 熊野神社の役行者は銅などを求めて関東から東北の山を駆け巡った「山師=修験者」ですが、蔵王権現は元はともあれ、護摩祈祷でお布施を掻き集める水手に泡の商売人(詐欺師ではないが近い)。天台宗に利用されたのが身の不運でしたね、というのが私の考え。

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 金銅輪宝(鎌倉時代)。密教法具。古代インドの武器武具に由来があるとされます。回転する車輪が敵を薙ぎ倒すことから転じて、密教では煩悩を打ち砕く象徴です。

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 三条宗近(三日月宗近|平安時代)。宗近は、日本刀が誕生した平安時代の京三条の刀工。手元が強く返った細身の刀身に三日月型の刃紋が見える。天下五剣の一つ。

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 長船景光(小龍景光|鎌倉時代)。景光は備前長船派の刀工。精密な小板目の地鉄に、鋸歯のような逆がかった互の目を主体とする刃文を焼き入れています。倶利伽羅龍の彫刻から小龍景光と呼ばれます。

20211109X5s039越中則重
 越中則重(鎌倉時代)。色味の異なる鋼を鍛えた大板目の地鉄に、沸の動きを強調した乱刃の刃文を焼き入れています。 珍しく刀剣をたくさん見ましたが、中でもこの一振りの凄みに迫力を感じました。

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 長船忠光(鎌倉時代)。忠光は、日本最大の刀工流派=長船派の祖。高低のある丁子の互の目を交えた刃文を焼き入れています。長船派に先んじた一文字派との関連が伺えます。

 特集「浅草寺のみ仏」も、密教-天台宗の仏たちを見ることができます。浅草寺は観音霊場の一つ。天台宗の古刹としても知られます。

20211109X5s046聖天坐像
 聖天坐像(江戸時代/浅草寺)。聖天は歓喜天とも呼ばれ、インドのガネーシャ神に由来します。象頭が一般的ですが、二股の大根を持つ童子の姿でも信仰されました。

20211109X5s051角大師
 角大師坐像(江戸時代/浅草寺)。慈恵大師良源は、天台宗を代表する高僧。鬼の姿で表されることもあります。護符などの魔除けとして信仰を集めました。

20211109X5s055不動明王
 不動明王立像(平安時代/浅草寺)。不動明王は、大日如来の使者。仏敵を退ける仏。丸みのある穏やかな肉取り、浅く整えられた衣の襞は、平安時代後期の特徴。護摩堂本尊として伝来する浅草寺屈指の古像です。

20211109X5s060大威徳
 大威徳明王騎牛像(鎌倉時代/浅草寺)。五大明王の一尊。足が六本あるために六足尊とも呼ばれます。護摩堂に安置されています。

20211109X5s064愛染
 愛染明王坐像(鎌倉時代/浅草寺)。煩悩すら悟りに昇華させる密教では、愛欲を司る仏として愛染明王が信仰されました。太陽を象徴する光背に赤い身色が特徴。小像が多いのは、儀礼自体が秘されたためでしょう。浅草寺の裏手は吉原。密教は性欲を秘する宗派ですから、仏像だけでなく、実際の性愛とも隣り合わせでした。

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 風神・雷神立像(鎌倉時代/浅草寺)。天上を疾走する姿の風神・雷神の像。西方起源の風神と雷神は、浅草寺雷門に安置されることで有名。千手観音をとりまく二十八部衆とよばれる神々に伴うことが多い像です。

20211109X5s072五髻
 五髻文殊菩薩坐像(鎌倉時代/浅草寺)。左足を立膝にする珍しい菩薩像。頭上に五つの髻(もとどり)を結う、知恵を司る五髻文殊。肉感的な体躯や写実的な衣の表現が巧みです。遊女を思わせる艶っぽさですね。

20211109X5s077菩薩
 菩薩坐像(南北朝時代/浅草寺)。切れ長の目と高く結われた髻が印象深い像。仏師の宗清は、運慶系統の仏師です。

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 バルコニーからお庭を見ようと思ったら、悪天候のためバルコニーにも出られません。ガラス越しに見ると白鷺が池の幌の石の上で雨を浴びて(?)います。

20211109X5s085厨子甕
 厨子甕(沖縄本島/19世紀)。琉球の葬制に洗骨があります。改葬するために遺骨を洗い清め、厨子甕に納めます。

20211109X5s089女 20211109X5s116
 女(荻原守衛/明治43年)。眉を寄せた苦しげな表情や両手を後ろに組身をよじる姿態。ロダンに師事した守衛の「内的な力」が感じられます。本作は近年に鋳造されたもの。

 緊張感が伝わってくる像です。肉の張り詰めた感じ … この不自然さが印象深い。

20211109X5s099孔雀明王
 孔雀明王像(平安時代|複製)。ず〜と変な像だと思っていましたが、やっぱり不思議です。

 平成館の考古室へ。

20211109X5s110遮光器土偶 20211109X5s129
 遮光器土偶(秋田県-六郷石名館/縄文晩期)。遮光器土偶(宮城県-恵比寿田/縄文晩期)。土偶は、安産や豊穣を祈るために用いられたと考えられています。遮光器土偶は、大きな目とデフォルメされた体の表現と、全身を覆う文様が特徴です。

 この文様が刺青だとしたら … 姉御!と呼ぶべきなんだろうか ?(^▽^)?

20211109X5s123花見山遺跡
 花見山遺跡出土の土器。多摩丘陵東部に位置する縄文時代草創期の遺跡。多くの隆起線土器が出土しています。

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 みみずく土偶(埼玉県-真福寺貝塚/縄文後期)。丸い耳飾りや髪の櫛、なによりもデフォルメされた顔。みみずくちゃんお帰りなさい。他所に行っていたのがやっと戻ってきました。嬉しい!

20211109X5s140埴輪
 埴輪 両手を挙げる女子(古墳時代/茨城県-伊勢ノ台)。抱きしめたいというより、抱きしめられたい感が伝わってくる埴輪ですね。顔が優しい!

20211109X5s148蔵王権現
 蔵王権現像(奈良県天川村/平安時代)。修験道の聖地=大峰山山頂からは、たくさんの鏡像や懸仏が発見されています。神仏習合によって生み出された多くの神仏が見られます。

 結構歩いてくたびれました。いつものように、大戸屋で鯖の炭火焼を食べて新橋に移動です。