「官能教育」 植島敬司 2013年 幻冬舎新書

 とても中途半端というか浅いというか … 書きにくいのは判るけれど、もっとチャンと正面から考えろ!って言いたくなる本でした。 以下はこの本の要約と引用です。


《はじめに》

 一夫一婦制度は近代に至るまでほとんど存在しなかった。一夫一婦制の歪が、三組に一組は離婚するという結果に現れている。


《1. 人にはなぜ愛人が必要なのか》

 「一回ルール」。一回だけなら無かったことにする。男は一度やったんだからまたやらせろと迫って来る。ウザイ。

 結婚したら浮気相手を持つ。子供が生まれると、精子の提供者は父親を名乗らない。不倫を公に奨励する社会は多くない。若衆宿の風習は日本にもあった。

 鳥類は90%以上が単婚。一夫一婦である29種類の鳥を調査すると、雛の70%以上が妻の浮気の子という例も見つかっている。単婚の事例は、霊長類の10%程度、哺乳類では3%程度。238のヒト社会の中で、単婚なのは43に過ぎない。

《2. 愛はいつまでも続かない》

 愛は4年で終わるのが自然。離婚のピークは4年目。人類の出産の間隔である4年と一致する。繁殖期間だけ番う狐やロビンなどの多くの種と同じように、人の絆も扶養を必要とする子供一人を育てる期間なのだ。

 人類の歴史を通じて最も広く行われたのは、一夫多妻制だった。複数の妻を持つ男は10%にすぎない。下位の無力な男たちが生殖権を奪われることはあっても、女性がそうなることはほとんどない。単婚は男性を平等にする。フランスでは「事実婚」制度により、結婚制度そのものを揺らいでいる。

 エロス(性愛)-フィリア(友愛)-アガペー(博愛)。遊女と妾と妻。愛には様々な形がある。

《3. 官能教育》

 17世紀までは西欧でも性についてはあけすけで、恥ずかしがったりしなかった。19世紀のビクトリア朝時代は、性道徳が最も厳しい抑圧のもとに置かれた。背景には、キリスト教エヴァンジェリズム(福音主義)の影響があった。フロイトが登場したのもそうした時代背景と無縁ではない。「今日、健全なものも病んでいるものも、皆おしなべて性に関しては偽善者である」フロイト。

《4. どうして不倫はいけないのか》

 特定のパートナーと絆を深める安定を求める気持ちと、エロスを感じる相手と交わる刺激を求める欲望が、同時に存在する。鳥の雌は受精に必要な回数以上に交尾を行っている。

《5. 究極の贈り物》

 クラとはマリノウスキーが観察した「贈与」。ポトラッチは、見せびらかしの「もてなし」「ふるまい」「歓待」。客人などに、愛する人を与えることも含まれる。

《6. セックスに対抗するにはキスしかない》

 フラートとは、相手のことを気に入っている、気に入ってもらおうとしているかのような思わせぶりな態度をとる。キス、抱擁、手をつなぐ、息を吹きかける、体に触れる … セックスへの導入部以上のものと考えることができる。

《おわりに》

 インティマシー(親密さ)。恋人でも友達でもない。全人間の触れ合い。恋愛とは相手を所有しようとすることである。しかし、それは他の誰かを排除することは意味しない。