「ナレッジマネジメント」紺野登 2002年 日経文庫

 机上の空論っぽい部分もあるが、簡潔にまとめてくれていて助かりました。以下はこの本の引用と要約です。


《はじめに》

 ナレッジマネジメントは、ITよりも、人間の側面が重視されています。経営の中で知識を活かす「知識経営」がナレッジマネジメントです。

 野中郁次郎教授の知識創造理論を軸にしています。

《1.IT革命が引き起こした知識競争時代》

・ボーダーレス化

 無国籍企業が増え、著作権や特許などの知財産を国単位で管理する制度は必然性を失っています。

・アンバンドリング

 大企業の強みだった統合性が疑問視され、機能分割(アンバンドリング)やアウトソーシングが推進されています。シナジー効果を生み出す機能を組み直す(リバンドリング)も注目されます。

・EMS

 EMSはOEM(相手先商標製品)によって、設計-製造-検査-発送を行うアウトソーシングサービス。EMSへの依存が高まると、顧客知が薄くなる危険性があります。

・ソリューションビジネス

 コンピュータネットワークの構築・整備・維持を行うSIから、顧客の要求内容を把握し、それを実現するシステムデザインやビジネスモデルの提供までを一貫して行うサービスへ。コンサルティング企業との提携や協業を求めるSI企業も増えています。

《2.知識とは何か》

・データ・情報・知識

 データは記号。情報は意味を含む。知識は知識の枠組み(メンタルモデル)。

・知識はスティッキネス(粘着質)

 知識は個人経験、状況や場面に属しているので、形式知化されたとしても、移転は困難です。知識は粘着質なのです。知識は五感を通じた訓練を伴わなければ役に立たない、文書で移転できるものではありません。

・知識が生まれ共有される「場」

 知識は文脈を伴っています。知識の文脈が創造・共有される「場」の運営が知識経営の最重要課題です。休憩室の雑談、オフィスでの会議、大規模な会議(コンファレンス)、ワークプレース、様々な場が知識のの場となります。

 「優秀な者を雇って、対話させればいいんだよ」L・プルサック(IBM)。

《3.知識はどのように富を生み出すか》

・企業の内部資源を見つめる

 リストラクチャリングによって従業員が解雇され、組織内の知識が散逸しました。その結果、米国では、人が持つ知識や技術や経験が注目を集めることになりました。

・顧客知

 企業が顧客について知っていること。顧客が企業について知っていること。顧客と継続する関係を作る必要があります。

・ブランディング

 商品を差異化し、印象づけて売る旧来のブランド・アプローチは過去のものです。ブランドの威信を押し付けるやり方も通用しません。ブランドエクイティ論も曲がり角を迎えています。

 ブランドは企業と顧客によって作り出され、共有される知識です。企業や製品の背後にある知識を、身体や対話や実践、暗黙知の水準で経験できる場を通じて多層で顧客に提供します。

・知財戦略

 日本では部分特許が多く、周辺技術を包括する全体特許の取得数が少ないと言われています。

・ベストプラクティス

 米国でナレッジマネジメントが発達したのは、TQM推進機関が、ベストプラクティスをベンチマーキングするためには、その背後にある知識を理解する必要があることに気づいたからです。

・共創文化

 競争ではなく、共創(コラボポレーション)が必要になってきました。

《4.知識組織のつくり方》

・組織と個人

 知識活動には、個人が自己を革新する場が必要です。

・専門知識サービス

 プロフェッショナルサービスファーム(PSF)の4類型

ホームドクター型
 顧客を知った上で、個別の知識を提供する
看護婦型
 パケージされた知識を、顧客との高い相互関係を通して提供する
アスピリン型
 定型の商品(パッケージ)
脳外科医型
 顧客との相互作用は低いが、専門性の高いサービスを提供する

・知の人間側面

 知識は人間に属しています。情報はデータベースで管理できます。知識は知識を生み出した文脈を場で共有します。

・コーチング

 コーチの語源である馬車には、乗客を目的の場所まで連れて行くという意味があります。中間管理職は、知の能力(ケイパビリティ)を引き出すファシリテーターとなります。

・コミュニティ型ビジネス

 Linuxは、1991年、UNIXをベースに開発され、ソースコードはネット上で公開されました。

《5.ナレッジワーカーの時代》

・インセンティブ

 ナレッジワーカーは、自分の知識の価値に関心を持ちます。金銭よりも感謝や名誉の方が重要です。

・エキスパートネットワーク(専門家網)

 1998年、パキスタン政府は世界銀行に対し、荒廃した高速道路の復元技術についての助言を求めました。その日のうちにヨルダンやアルゼンチンや南アフリカ共和国から知見と経験が寄せられ、翌日には問題解決に取り組むことができました。

・ワークプレイス民主主義

 ナレッジワーカーを主体とする組織では、機能分業と業務プロセスで組織を捉えられなくなりました。知識の共有と創造の「場」を単位とする組織。命令や管理ではなく、参画や貢献の「民主主義」動機が組織の駆動原理になります。

《6.知識戦略のデザイン》

・ナレッジオーディット

 知識資産は現在の企業会計では明示されません。独自の知識資産の測定が必要です。

・バランスト・スコアカード

 BSCは、財務指標だけに依拠した企業経営の限界を明らかにし、経済価値を生み出す指標を経営管理に組み込みます。経営戦略を現場業務に落とし込む手法でもあります。