「ブランディング」 中村正道 2019年 日経文庫

 マーケティングの「玄人」(←そこいらの学者や専門家とは違う意味で)としては、チラッと見ておくべき本なのでしょう(←嫌でもね!)。それにしても「おざなり」の本ではありましたが。それでも、講義の参考になる部分がありました。ありがとうございました。 以下はこの本の要約と引用です。*印は私の見解です。

 ナイキ・ジャパンのプロジェクトでブランディングを担当した時、ナイト会長から教わったこと。「エモーショナル・タイズ」が、ブランディングの核。後に、博報堂が「絆」論を展開します。この本を読んでも「感情の絆」の形成がブランディングの核であることが確認されます。


■ はじめに

 著者は世界最大のブランディング会社であるインターブランドの第一線に身を置き、多くのブランディングと関わってきました。本書は、グローバルスタンダードのブランディングを経験してきた者のブランディングの実践書です。

■ ブランディングの必要性

 現在の日本企業のブランディングの背景には、国際的な競争力の低下があります。「もやは世の中に欠陥車など存在しない」JDパワー。製品のコモディティ化です。品質に代わる差別化要因が求めらます。高付加価値を生み出す努力が必要になりました。「ブランドによる価格プレミアム」がブランド価値です。

 ブランドは、社員を惹きつけ、モチベ―ションを高めます。その社員の活動を通じて、顧客に価値を提供します。顧客から選ばれ、使い続けて頂くことにつながります。

■ ブランディングの理解

 ブランドとは、企業が顧客や従業員などと交す「約束」です。何に対してお金を払うのか。企業の存在理由です。ブランドの約束は、社員の意思を一つに束ねます。

 合理訴求は価格感受性を高めます。情緒訴求は、長期の取引を増加させます。人々の意思決定は、多くの体験が基盤となっています。情緒-知覚を形成するには、継続する活動が必要です。

 ブランディングの対象は、「実態も評判も含めたビジネスの全て」です。

■ ブランディングの設計

 ブランドの約束は、様々な接点を通じて人々に「伝わります」(「伝える」ものではなく)。様々な経験を通じて知覚が形成される「器」がブランドです。

 ブランドには、企業銘柄〜事業銘柄〜製品銘柄があります。

■ ブランディングの中核概念

 ブランディングの中核概念は、銘柄の「約束」です。そこから「何をすべきか」「何をすべきでないか」の基準(「らしさ」)が定まります。約束を体現する「パーソナリティ」と「表現指針」を設定します。

 ブランドの存在理由と価値を、関係者間で合意形成することがブランディングの第一歩です。

 ブランドパーソナリティの設定は、ブランドの情緒的な魅力を確認するものとなります。

■ ビジネスとブランド

■ ブランディングの推進

 ブランドプロミスは、社員による様々な活動を通じて顧客との接点に展開され、顧客の知覚が形成されます。ブランドプロミスが社員に理解され、プロダクト、社員の行動、コミュニケーションチャネル、店舗空間 … それぞれの顧客接点で体現されることがブランディングの実践です。

 スターバックスは「スターバックス・エクスペリエンス」を提供しようとしています。広報には積極的ですが、広告には支出しません。顧客自身が自らの体験をSNSなどで発信することのよってブランド・イメージを増幅しています。

 顧客の生活行動を分析して、ブランド体験とタッチポイントの関係がどうなっているのかを把握します。

 表現要素の仕組化は、雇用の流動が前提となってる欧米のブランドを支える仕組みとして発達しました。

 ブランドが持つ価値を証明する事実=証拠(プルーフ)。ブランドの歴史や実績がプルーフポイントとなります。事実に基づいたキーメッセージを整理し共有します。全ての接点で一貫したメッセージを発信することができます。ブランドガイドライン(ルール)を作成します。社員の「体質」になり、ブランドが「我が事」とします。

■ ブランディングの効果測定

 インターブランドのブランディング効果を測定するKPIが、ブランド強化スコア。


■ ブランディングの共創

 2002年にシティーブ・ジョブズは直営店の開発を発表。顧客と繋がること、ラグジュアリーな体験が必要だと判断しました。*そうしなければApple-PCは売れない製品になっていたからです。

■ おわりに

 2019年、米国のビジネス・ラウンド・テーブルは、「株主至上主義」を見直し、全ての関与者を重視する方針を表明しました。