「人事制度イノベーション」 滝野誠一郎 2006年 講談社現代新書

 人事制度の本を読むなんて珍しいのですが … 何しろ「人事」業務は最も不得意なので、どういう訳か“魔が差して”手に取ったのです。読んでみるとそれなりに面白い。体系的でも論理的でもなく、実務的内容に好感しました。 以下の前半は、この本の要約と引用。後半は、この本をベースにした、私なりの理想の人事制度をまとめです。


■ 人事激動の時代

 終身効用・年功序列から成果主義へ。しかし、成果主義は機能していない。成果が明確に定義されていない。成果の評価基準が曖昧。評価方法に妥当性がない。評価が処遇に反映されない。成果主義が適正に運用されている企業はない。

■ 幸せな成果主義/不幸な成果主義

 成果主義の下では、配属は重要な問題になる。「業績の上げられそうな部署に異動したい」からだ。

■ いい成果主義・悪い成果主義

 外資系のIT・今猿会社には、ニューリッチが増えている。日本企業が導入している成果主義は、成果に応じた報酬格差がつかない。

 達成評価と行動評価。目標の達成度を絶対評価するのが目標管理制度の基本。しかし、貢献度や難易度がことなる目標をベースに成果を評価することは無理。

 職務に応じて高い業績を残す人のコンピテンシーをパターン化したモデル。ハイパフォーマーが成果を達成する行動特性を、業種ごとに特定する。コンピテンシーは、成果主義の下でのプロセス評価に適している。

 目先の成果を求めれば、人材育成はできない。成果主義でモラルアップはしないが、強迫観念だけは植え付けられる。自分さえよければという傾向が強まる。

 成果のみで評価すれば、裁量労働やフレックスタイムなど働き方も変わる。

■ 人を活かす人事・賃金制度

 成果主義は、法定労働時間の適用を受ける従業員への適用には限界がある。

・コーチングの研修内容
 ペーシング(部下の安心感を得る)
 アクノレッジメント(部下を承認する:相槌など)
 コミュニケーション(部下のタイプを見分ける/タイプ別のコミュニケーション)
 質問(様々な場面での質問/部下から多くを引き出す質問技能)
 実践研修:職場で1週間実践し、その結果について助言と次周への課題

■ 人事制度は会社を救えるか

 伸び盛りの企業は、人事制度などはでうでもいい。このような時期における人事の仕事は採用に尽きる。

 人事制度をいじることで組織の活性化を図ることはできない。

 成果を上げにくい時代では、終身雇用・年功序列の方が社員の士気は上がる。残念ながら、それはできない。

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〇 望ましい人事制度

対象:経営者を含む業務に就いている全ての従業者

給与の基本方針:生活給+成果給
 生活を保障する「生活給」/仕事の成果に応じた「成果給」

配属と異動:社内人材市場により人と業務を適合させる
 対象:部長以上の管理職は対象外
 手順:
  部署は、職務の内容と要件(職務行動基準や資格など)を提示
   全社業績に対する貢献と、その課題を示す
   求人内容違反(求人内容と異なる業務)は処罰される
   期間限定業務(例:新卒採用)は社内ダブルワークを前提として募集
   臨時業務は別途に公募する
  従業者は、所属希望の部署の順位を登録(20チーム以上)
  各部署は、希望する従業者の順位を登録(20人以上)
  マッチングソフトウェアによる自動マッチング
  結果を部署と従業者に通知し、異動を実施する
 *ソフトウェアは、研修医マッチングアプリと同様なものを想定

業績評価:チーム別目標管理による絶対評価
 成果を規定し、全社業績への貢献度を推定する
 成果目標とそのための行動目標を設定する
 目標を達成するチームを作る
 個人の目標と計画を立てる
 目標の達成度を評価する
 貢献度に応じた成果給を算定する

担当業務外/計画外の業務への表彰と報酬
 評価対象:勤怠状況/資格取得/発案と発議/研究開発(論文・特許)/…
 表彰:社長賞/企画賞/皆勤書/スマイル賞/メンター賞/…

研究開発成果の評価(職務発明実績評価)
 報酬:研究開発製品の売上に応じた報奨金
  特許法に定める「相当な対価」を満たす必要がある
 運用:職務発明審議委員会
  弁護士など社外の第三者もメンバーに加える

コーチ制度(メンター制度)
 コーチ資格:コーチ・トレーニング・プログラムの終了(合格)
 運用:従業員が希望し、コーチを選ぶ
  一人のコーチが指導できるのは3人以下
 実施:最低週に1回のミーティング/月に1回上司に報告
 評価:コーチングを受けた従業員の成果を基準とする

マイスター制度(エキスパート制度)
 目的と留意点
  技能をマンツーマンで継承する
  事業にとって重要な技能を特定
  技能者のコンピテンシーの識別
  従業員の技能研修意欲の高揚
 対象技能
  標準化・自動化の目処が立たない
  研修やOJTでは伝承することが難しい
 マイスター委員会
  対象技能と伝授者の認定
  継承者(トレイニー)の認定
  継承活動の促進
  伝承終了の認定

研修
 課程:昇格などに必須の課程と選択課程を設定
  昇格など資格要件となっている課程では修了試験の合格を以て修了とする
 運用:研修は有料とし、カフェテリアプランに研修を含める

職務行動基準(コンピテンシー)の認定
 業務運用機構の設定
  業務行動手順の抽出
  業務成果基準の設定
  業務日報の構造と書式の設定
 行動と業績の関係分析
  業務日報の内容と業績を分析し、職務行動基準を設定する
   ハイパフォーマーへの聴取も行いコンピテンシーを識別する