信濃(長野県)の井戸尻考古館へ。女房と一緒に、縄文-井戸尻文化の真髄を見に行きました。
信濃境駅のホームは、井戸尻考古館のショーウィンドウになっています。
駅からそれほど歩かない距離に考古館はあります。
入口には、いきなり！「縄文の人たちは、神話や儀礼以前に … アミニズムを表現していた」（田中基「諏訪学」）などという、信濃考古学独特の言い回しのご案内でした。
前期の遺物。この時代から井戸尻は他とは違います。
籠畑や机原の土器。そして、中期初頭の打ち鍬。
先井戸尻遺跡群の説明書きには「６千年前、関東や東海の海沿いから内陸から内陸を目指した人々が集落を営みました」「やがて、台地上に生活の舞台を移し集落を形成していきます」「平坦な台地の上に集落を展開し、井戸尻文化を開花させます」の説明。
信濃ですからね。勿論！黒曜石です。
中期前葉の偏刃の引き鍬。「畝を立てたり土寄せをする」の説明。信濃考古学では、縄文人は「農耕していた」と主張しています。栽培はしていたが農耕はしていない＝畑は見つかっていない、が妥当な見解だとは思うのですが、思いっきり踏み込んだ解釈が特徴です。
中期初頭の小鋤。「ヤムイモ・タロイモ類の栽培用堀棒」となっています。
草掻です。こういう解釈だと「農耕」ですよね。
中期中葉の手鋤に草取鎌。
井戸尻文化の説明パネル。「打製の石器類は、起耕から収穫にいたる一連の作業の用いられた農具であろう考えています。縄文土器の傑出した作品がこのあたりを中心に見出されます。そこには当時の人々の世界観が表明されています」。信濃縄文考古学です！
土器の造形もだんだん複雑になっています。
みづち。怪異な水棲生物の文様の土器。「土器図像は天地の始まりや洪水の神話に由来すると考えられる」「太陰的な世界観にいては、水は月に属している」「原初の水界の主も月の動物だと観念されていただろう」。解釈が突き抜けています。
これ以降、藤内遺跡の土器が並びます。これらの土器は、土器作り専業者の作品ではないかと感じます。片手間で作れる精度ではありません。土の作り方から緻密です。文様の完成度は高く、立体感は計算尽くされています。職人芸です。
黒曜石の交易で豊かになった信濃の人々が井戸尻文化を開花させた。シルクロードのサマルカンドと同じです ← 世界中どこでもいつでも同じだ〜。
特にこの立体感は、写真では伝わりませんが、驚きです。こんな土器は見たことがありません。縄文土器に関心のある方は是非！見に来てください ← 女房に言わせると縄文好きでここを訪れない人は「モグリ」だそうです。
四方に目を持つ大鉢。「模様の一方は眉を重ねたもの、もう一方は半人半蛙の精霊の長く屈折する腕」「これらは三日月の象徴である」「浅鉢の器体自体が三日月」「四方の目は４つの月の相を象徴するものだろう」。これを言い切るのが信濃流ですね。
半球形の洞穴。「乳房のような半球形の膨らみが口縁に連なる」「半球形はいくつもある太陽と月」だそうです。
区画文筒型土器。溜息が出る作品が所狭しと並びます。狭い考古館なので、「クラクラ」しそうな密度の展示です。
蛇を頂く土偶。「とぐろを巻いた蛇を頂く土偶は類例をみない」そうです。
始祖女神像（中期後葉/坂上遺跡）。頭・上半身・下半身の３つに割られた状態で出土しました。高さ23cmの大ぶりの土偶。「天に向かって祈っているようです」。
男根を象った石神（曽利28号址）。やっぱありました。
欠きとられた人面（久兵衛尾根６号址）。人面または人首の神。下原３号址から出土した人面。一つ一つの表情が面白い。
三日月形の腕。「半月形の文様は三日月の表現」とのこと。
有効鍔付樽。手の技に脱帽です。
蒸器。「御強や団子や粽(ちまき)を蒸したものだろう」って解釈が凄い。蒸器はくびれた独特の形をしています。
四方眉月文深鉢。「太陽と月の１年の道程(季節)を表したもの」。
雷文大深鉢。人面系大深鉢。実物を見ると凄い！・・・
東京国立博物館の土器なんかとはレベルが違い過ぎです。
井戸尻文化の変容。「中期後葉に入ると土器は立体的な造形や具象性を失っていきます」「土器から大地へ、敷石や地上絵や環状列石へと表現は深化します」。
井戸尻文化の残照（続井戸尻文化）。「集落は台地の縁に移り、集落の数は減少していきます」「やがて、人々はこの地を去っていきます」
これ以降は、特集「縄文 ど真ん中」です。
水煙渦巻文様鉢（中期中葉）。長野の県宝に指定された土器です。
眉月文深鉢（中期中葉）。「縄文土器のシンボルともいえる渦巻文を配した土器」。
蛇の腕を持つ人面深鉢（中期中葉）。「右腕が蛇になっており、細長い新月の表現と重ね合わせることができます」「新月が蛇の表徴であることが判ります」。
隻眼深鉢（中期中葉）。「蛙の手足が表現され、尻が半円球に出ています」「半人半蛙像です」。
みづち文深鉢（中期中葉）。
重弧文深鉢（中期後葉）。曽利�脅阿寮瀋蟯霆爐箸覆辰辛玄飴駑繊�「口縁部の重弧文様や頸部の波状隆帯がこの時期の特徴です」。
もう縄文土器で満腹です。もう何も、目にも頭にも入りません。
歴史民俗資料館へ。いい天気です。暑〜い！
馬具です。この地方から荷物を運ぶには馬が欠かせなかったのでしょう。
「呪術 石川雷太作品展」というのをやってました。女房が興味津々です。
この地域には古代から製鉄もあったようです。商工業の町だったんですね。
八ヶ岳山麓概念図。宮崎駿氏の画です。
遺跡公園には、水車小屋に復元された縄文住居。
崎玉蓮。所謂、古代蓮です。
縄文ゆかりの地には … この埼玉の古代蓮がどこでもあるんですね。
信濃境駅近くの食堂「しなの」。600円のランチのコスパが高すぎ！唐揚げも豚しゃぶも美味しかったヨ！ボリュームも凄くて、お腹一杯になっちゃいました。
