放送大学 「学校臨床心理学特論」
大学院の講義なんですが、そんなに大したものではなく、スクールカウンセラー(SC)の「仕事」の現実を踏まえた「お話」です。
SCも仕事。人間として「人間と向き合う」というよりも、仕事として[見立て→手立て]を行うという「業務」です。これは非難されるべきことではなく、医者が「診断→処方]を行い、教師が「教える」というのと同じ。一人の人間として「向き合う」ことをしていたのでは「身が持たない」のです。学校も医療も福祉も「人間に人間として向き合う」ことはしません。
学習支援のボランティアをするなかで、子供たちと「向き合う」とはどういうことなのか、それは私という人間を問うことでもあります。静かに向き合いましょう。
以下はこの講座のごく簡単なんまとめです。*は私のコメントです。
■ 照射領域
・スクールカウンセラーの配置
中学校では殆どの学校に配置 1回/1週
小学校では中学校の学区内の小学校を1人で担当する
小中学校では、絵画や箱庭など遊びの中で共感を以て問題を把握する
・スクールカウンセラーの資格と研修
公認心理士 国家資格として発足した医療に近い資格
臨床心理士
精神科医 など
学校臨床心理士などの研修会が行われている。虐めなどの重大事案では、法律も知らなければならない。
スクールカウンセラー(SC)は「無力感」に苛まれることがある。優先すべきことはSCが、自分自身を大切にすること。現実から理想を見る。理想から現実を見るのではなく。
■ 小学校でのプレイセラピー
遊びを媒介とする心理療法
プレイルームでカウンセラーと遊ぶ
遊びで癒され、自分らしさを取り戻す
遊びを通してSCと信頼関係ができる
ここでは自分が大切にされる
遊びの中に実際の人間関係が投影される
自己表現がなされる
SCは、あるがままに大らかに受け入れ共感する
カウンセリングに場所と時間の制限を設ける
ごっこ遊び=心的現実を通して、体験を心に収めるよになる
自分のあり方を認める〜心の変容
■ 小学校のストレスマネジメント
・ストレス対処の体験学習(集団指導)
保護者への指導も行う
力を発揮する「頑張りすぎない頑張り方」
緊張(張る)と弛緩(緩める)の上手な調和
予期不安 → ストレス場面 → 体の緊張
↑ ↓
ミス ←−− 固い動作 ←−− 不安
1) 肩の上げ下ろし
足の裏を床に付ける
ゆっくり肩を上げる
肩に注意を向ける
ストンと力を抜く
2) 腹式呼吸
3秒 お腹を膨らませて静かに深く吸う
1秒 止める
6秒 意識をお腹に集中して、ゆっくり吐く
3) 相談
困ったら相談する
緊張している友達に話しかける
4) リラックスして眠る
手首を曲げて緊張させ、脱力する
足首を 〃
背中を 緊張させ、脱力する
お尻を 〃
顔(口)を尖がらせて、脱力する
全身を脱力してから眠る
■ 中学生の不登校
不登校は問題行動ではない。今、何が必要なのかを子供と一緒に考える。
*私が教えている子供の中にも不登校の中学生がいます。とても大人しく蚊の鳴くような小さな声で話します。「耳が遠いからもう少し大きな声で…」と言っても声は大きくなりません。聞き耳を立てて一生懸命に聞きます。それはそれでいいのかなって思っています。
・事例
インテーク=情報収集のための受理面接(予診)は、SC意外が行うこともある。会えないときは、手紙を書くこともある。
細かいことに拘る、細かいことが見える、などの症状があって医師の受診を勧めた。
母子関係を再構築する。
教員が課題を出し、自宅学習を始める。
ケーズ会議にSCが参加する。
別室登校が可能になる。
カウンセリングルームで、媒介(パズルとか)を通じてコミュニケーションを図る。
卒業後もSCのフォローアップをする(できることもある)。
■ 中学生の虐めと非行
教員は事実を確かめ、SCは被害者の心のケアを行う。子供たちの言うことを聴き、ありのままを受け入れ、どうすればよいかを考える。
■ 高校生の自傷行為
・事例
自傷行為(リストカット)を保健室の養護教諭が気づく。
本人の感情を受けとめ、一緒に考える
面接は本人のペースで始まり終わる
必ずしも話さなくてもいい
箱庭などを使う
SCの感想は控える
リストカットのことは本人が話すまで待つ
「切るとホッとする」
カウンセラーは(原則として)自分の意見は言わない
■ 大学生の引きこもり
引きこもりは本人なりのストレス回避であることを理解する。
・事例
どういう生活をしているのか
外出は? 何時に起きますか?
このまま消えてしまいたいと思うことがありますか?
→「実行に移さなくて良かった」
これからも学生相談室で話しませんか
御両親は現状を知っていますか?
→ 危険が及ぶときは知らせますがよいですか?
偶然に、目を合わせる機会があり、その後、話が進む
箱庭を作る
解釈をしない 言葉にしない方がよい
親に連絡し、学校に行っていないことを伝える
体を鍛え始める 〜 心を強くすることに繋がる
自分の気持ちを言葉にすることができるようになった
不安を抱えながらでいい 不安のない人生は無い
ゼミに出る
他人が信じられる
■ 大学生の自閉症スペクトラム障害
話しが理解できない。場の空気が読めない。拘りがある。細かいところが気になる。聴覚が敏感。
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、自閉症障害とアスペルガー障害を併せたもの。
・事例
状態を具体で聴いていく
相手の話が理解できない
子供の時から一人で遊んでいた
人とうまく話せない
→「次回に思い出したこと(エピソード)を教えて下さい」
毎週話をしませんか
次の面会時に「エピソードを思い出す」を忘れた
メモをとり、やるべきことができるようになっていく
彼女に振られた 何故かわからない
小学校の時から虐められていた
履修登録などを手伝う
クライエントの代わりに何かをするのは、普通はNGだが自閉症の場合はやるべき
通院する
医者は診断名をつけ処方をするのが仕事
セラピストはクライエントに共感して一緒に考えるのが仕事
生きづらさの正体が自閉症スペクトラム障害なんだと説明する
大学の先生へのコンサルティング
一緒に学生の長所を見つける 〜 アカハラが止まる
私は生きづらい〜外への働きかけを工夫する〜誰かの助けを求める
症状特性を(説明する)道具として使う
様々な生活のノウハウを身につける
■ 教職員に対するコンサルテーション
現在は同調圧力が強い社会。
校務分掌(役割分担)
'80〜'90年代
教育相談 − 不登校 母性で対応
生徒指導 − 非行(校内暴力) 父性で対応
現在は一人の子供に両方の見方と関りが必要になっている
福祉関連とのつながりも必要
特別支援教育も関わることがある
教員へのコンサルテーションでは、相手の専門性のヨロイを大切にする。
「どうすべきか」の助言を求められることが多い
⇔ 子供への理解(見立て)を中心に相談する
[見立て→手立て→関係性]を一緒に考える
[守秘を大切にする⇔協働で作業する]の板挟みに中で仕事をする
生徒を守る養護教員(保健室)と反抗する生徒指導との対立。教頭や担任などとのケース会議で、役割を分担する。
生徒自身が気がついていないが、生徒は傷ついている。
傷に気づくと生徒は動揺する。味方(いい人)と敵(悪い人)を作る。
■ 保護者に対する面接
不登校の生徒では、初期では保護者面接が中心になる
保護者の主訴が「〇〇を直したい」はNG。発達障害等の場合、「子供の特徴と環境の相互作用」を考える。
保護者の「子育て」の振り返りが必要
振り返ると、辛くなる可能性がある
どうやって協力関係を築いていくかが課題
親や環境などとの「子供との歴史」を大切にする
家族の歴史を共感的に共有する
出産の頃の家庭環境や出産に際しての困難
発達の状況 愛着の形成(人見知りや後追いなど)
学校との関係 教員や友人との関係
身体の変化 背はいつごろ伸びましたか?から性の問題へ
転居、家族構成の変化、経済状況、家庭内暴力があった時期
転居は痛みを伴うことが多い
保護者自身の歴史
保護者自身に親との関係
配偶者との関係
保護者自身の思春期の問題
子供の問題は子育てと関係している
子育ては親自身の内面と関連している
子供の問題は親の問題でもある
保護者の問題をテーマにすることは保護者にとって辛いことなので慎重に
学校の先生や児童福祉の方々と同共有していくか?守秘の問題が生じる
■ 心理教育 − 虐めの事例で
心理教育は、不登校や虐めや暴力の予防に力点を置く。ストレス耐性の強化などによる問題行動の予防。
生きるためのスキル
対人関係能力
ストレスマネジメント、アンガーマネジメント
児童に人としての優しさと教員同士の協働を、日常に見せる。
・事例
虐めは児童自らが解決しなければならない
5名の児童イジメ解決隊を作る
虐められている子供の傍にいる
困った事は担任やSCに相談する
虐める側の児童と一緒に遊んでグループを分離する
虐められた児童を学生ボランティアが訪問し学習支援を行う
被虐児童の声をSC〜担任が共有し、担任が虐め仲間の虐めの告白を引き出す
虐め仲間が謝罪、いじめっ子も謝罪
いじめっ子が解決隊と遊び孤立を避ける
担任が関与者に学級で虐めのついて考える場を設けることに合意
虐めをしなくなるぐらい楽しく(遊ぶ)活動を考えて実施した
■ 緊急支援
突発の危機に対して心理支援。阪神淡路の経験を引き継いで、東日本大震災に際して「心のケア」を行う。
トラウマ反応が長く続くならPTSD
神経過敏になる、フラッシュバックが起きる
喪失−悲嘆
忘れたくない事実を大切にする
生活の変化によるストレス反応
トラウマへの対処は、喪失に対する二次被害をもたらすこともある。
心のサポート支援
リラクゼーションの指導
ストレス反応のチェック チェックリスト(アンケート個票)への記入
ストレス対処法のリーフレットの配布
辛いことを思い出す→信頼できる大人に話す
個票に基づく、教員の面談
面談のマニュアルを作成し、指導を行う
緊急支援はマニュアル化できる
時間が経つと個別の問題になる
絵を描くなど表現(外部化)することで、カウンセラーに分かってもらう
他者への表現を強要してはいけない
安心できる相手はの問わず語りでなければならない
人との関係において、安心を体験してもらう
■ 海外のスクールカウンセリング
・米国
メンタルヘルスというより、子供の成功(情緒・学業・職業)を考える。
2001年「落ちこぼれ防止法」により、効果のある学校だけを残す。
米国SC協会によるデータに基づく「ASCAモデル」。
■ 全体を振り返って
カウンセリングとは、「分かり持つ」ことで、患者が「自分をわかる」。箱庭などで自分を表現することを通じて。
見立て(仮説)→手立て(立案)→実施→評価→調整
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学校が活動の中心になる 〜 教職員との信頼関係が課題。
クライエントの秘密を守る=守秘と連携との矛盾を抱えることが大切。
危機では守秘は解除される。
「危険なことはしない」と本人に約束させる。
教師に様子を教えてもらう。
本人がどうしたいか?私にできることは何か?を問いかける。