「LGBTを知る」 森永貴彦 2018年 日経文庫

 日経文庫ですから、企業として利益貢献活動の一環としてのもです。何しろ、ICT業界はLGPTがとっても多く、彼らから嫌われたら「困っちゃう」業界です(少なくとも、米国では)。だから、LGPTも商売ネタなんですが … 日本ではネ〜。でも、LGPTは最大限で捉えれば10人に1人は該当するのでは?割合としては、左利きと同じです。だったらもっと真剣に取り組まないと … 。 以下はこの本の要約と引用です。*はWEB検索結果です。

*性決定のメカニズム
1. DNA(遺伝子)のレベル
 性決定の最初の段階は、遺伝子のレベルで決まります。ヒトの場合、性染色体の組み合わせが性別の基礎を決定します。
 XYシステム(ヒトなど):通常、XX染色体を持つ個体は女性に、XY染色体を持つ個体は男性になります。
 SRY遺伝子:Y染色体に存在するSRY遺伝子は、男性的な特徴を形成するための鍵となる遺伝子です。この遺伝子が活性化されると、未分化の性腺が精巣として発達し、男性ホルモン(テストステロン)の分泌が始まります。
 他の性決定遺伝子:SOX9、DMRT1、FOXL2など、SRYの影響下で働く他の遺伝子も性決定に関与し、精巣または卵巣の形成を調整します。
2. 発生のレベル
 受精卵が成長する過程で、性決定のプロセスが進行します。
 未分化の性腺:発生の初期段階では、性腺は未分化の状態で、精巣にも卵巣にも発達できる状態にあります。
 性腺の分化:SRY遺伝子が発現すると精巣が形成され、SRYがない場合は卵巣が形成されます。精巣ができると、テストステロンやミュラー管抑制ホルモン(AMH)が分泌され、男性的な生殖器や性器が発達します。卵巣が形成される場合、エストロゲンの影響で女性的な生殖器や性器が発達します。
 3. ホルモンのレベル
 ホルモンは、性別に応じた生理的および身体的な特徴を決定する上で重要です。
 男性ホルモン(アンドロゲン):テストステロンは精巣から分泌され、男性的な外性器の発達と男性的な二次性徴(髭の発生、筋肉の発達など)を促進します。また、胎児期に脳内にも影響を与え、男性的な行動パターンを形成する役割もあるとされています。
 女性ホルモン(エストロゲン):卵巣から分泌されるエストロゲンは、女性的な生殖器や性器の発達を促進します。エストロゲンは、思春期における乳房の発達や体脂肪の分布など、女性の二次性徴にも関与します。
 ホルモンバランス:性ホルモンのバランスが異なる場合、性発達に影響が出ることがあります。例として、アンドロゲン過剰の状態では女性であっても男性的な特徴が発現することがあります。
4. 環境やその他の要因
 性決定は一般的に遺伝子とホルモンに大きく依存しますが、環境や社会的要因も影響を与えることがあります。たとえば、一部の爬虫類や魚類では、温度などの環境要因が性決定に影響を与えます。また、ヒトの場合、成長過程での教育や文化的な影響も、性同一性や性役割に影響を与えることがあります。

*ユニセックスの服のデザイン
1. シルエットの基本
 ユニセックスの服は、体型や性別に関係なくフィットするよう、一般的にゆったりしたシルエットや直線的なデザインが好まれます。例えば、肩幅を広めにしたり、ウエストの絞りを少なくすることで、どんな体型の方にも合いやすいデザインにします。
2. カラーと柄
 ユニセックスの服では、中立的な色(白、黒、グレー、ベージュなど)やシンプルな柄(ストライプや無地など)がよく使われます。派手すぎる色や女性的・男性的とされるデザインよりも、性別を意識しないカラーリングが主流です。
3. 素材選び
 快適さと動きやすさを考慮し、コットンやリネンなどの柔らかい素材が多く使用されます。また、季節に応じて軽量な素材や通気性の良い素材など、誰でも快適に着られる生地を選ぶことも大切です。
4. ディテールの調整
 ポケットやボタンのデザイン、丈の長さも、男女問わず機能的かつスタイルとして成り立つように工夫されています。たとえば、ポケットの配置を左右対称にする、装飾を控えめにするなどが一般的です。
5. 前合わせについて
 ユニセックスデザインの服では、前合わせの方向について特に決まりはありませんが、一般的に多くのユニセックス服は**「左前」**(レディースの仕様)で作られることが多いです。理由としては、右利きの人がボタンを留めやすいからという説や、女性向けの服の構造が左前に統一されているため、誰でも違和感なく着られるように左前を選ぶことが多いとされています。
 ただし、ファッションブランドやデザインによっては、右前(メンズ仕様)で作られる場合もあるため、ユニセックスの服は前合わせがどちらでも違和感が少なく、好みやデザインで決まることが多いです。

*利き手の決定メカニズム
1. 遺伝的要因
 遺伝子の影響:利き手は遺伝子によって一定の影響を受けていると考えられていますが、特定の遺伝子だけで決まるものではありません。複数の遺伝子が利き手の決定に関わっており、いくつかの遺伝子が脳の左右非対称性や利き手に関係していることが分かっています。
 家族的傾向:利き手には家族的な傾向が見られ、両親が右利きの場合は子どもも右利きである可能性が高く、逆に片方または両方が左利きである場合は、子どもも左利きになる確率が上がるとされています。ただし、右利きが圧倒的に多いのは、利き手を決定する遺伝子が右利きを優先させるように働くためと考えられています。
2. 脳の構造と左右非対称性
 脳の非対称性:利き手は脳の左右非対称性と関連があるとされています。多くの人では、左半球が言語や運動制御において優位性を持つため、右利きになることが多いです。左利きの人では右半球が発達していることがあり、この違いが利き手に影響を与えます。
 運動野と手の制御:脳の運動野(一次運動野)は、体の反対側の手足の動きをコントロールしています。右利きの人では左半球の運動野が、左利きの人では右半球の運動野が特に活発であることが多いです。
3. 発達と環境的要因
 胎児期の影響:胎児期において、脳の発達や環境要因が利き手に影響を与える可能性があります。例えば、母体のホルモンレベル(特にテストステロン)は、胎児の脳の発達に影響し、結果として利き手に関わる脳の構造を変化させることがあるとされています。
 幼少期の学習と環境:多くの文化では右利きが優勢であるため、子供の頃に右手を使うよう促されることもあります。ただし、現在では左利きの人がそのまま左手を使うことが一般的であり、環境が利き手に与える影響はかつてより少なくなっています。
4. 遺伝と環境の相互作用
 利き手は、遺伝だけでなく、環境も複合的に作用する多因子性の特徴であり、遺伝子と環境が相互に影響し合って決定される「遺伝環境相互作用」の一例です。たとえば、遺伝的には左利きの素質があっても、文化や家庭で右利きを促されると右利きになることもあります。
5. 左利きの少なさと進化的背景
 左利きが少数派である理由として、進化の過程で右利きが生存に有利な形質として優勢になった可能性も考えられています。例えば、道具を使う社会や、右手での作業が主流となることで、右利きが主流になったのではないかとする説もあります。


■ はじめに

 ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂)

■ LGBTの基礎知識

 セクシャリティは「性のあり方」。人の性に関する傾向の総称です。人それぞれに異なります。

 身体性(Sex)
 性同一性(ジェンダーアイデンティティ)
 性指向

 身体性は、体の性。染色体や外性器。「男-女」に該当しない様々な身体性があります。

 性同一性は、心の性。性についての自己認識。

 性指向は、好きになる性。

 性表現は、振舞う性。言葉、仕草、服装。

 LGBTは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字で、性マイノリティの総称。

 身体性に対して性同一性が一致する人を「シスジェンダー」、一致していない人を「トランスジェンダー」と言います。

 性指向が、自分の性同一性(性自認)に対して異性の場合は「ヘテロセクシャル」、同性の場合は「ホモセクシャル」、両性の場合は「バイセクシャル」(両性愛者)。国内で性少数派は8%。

 自身のセクシャリティを隠していることを「クローゼット」、クローゼットに中から飛び出すという意味で「カミングアウト」。カミングアウトは個人の自由です。当事者たちは、常にストレスを抱えながら生活しています。

 日本は明治以前は性のあり方には寛容でした。明治維新以降、性マイノリティーに対するタブー視が強まります。

 古代ギリシャでは、少年愛は「美」とされ、都市では年長者が少年を庇護者として愛することが称揚されていました。

 ネイティブアメリカンでは、異性装をする者が部族会議の助言役を務め、占いや予言者、治療師としても活躍していました。

 旧約聖書の創世記の「ソドムの街」の記述を根拠に「同性愛者は「ソドミー」と呼ばれ、排除されます。342年には同性婚が禁止されます。390年には同性間の性交渉は火あぶりの刑と定められました。

 19世紀に入ると、オランダやブラジルやポルトガルやメキシコやイタリアでは同性愛の非犯罪化が、米国、イギリス、ドイツでは厳罰化が進みます。

 第二次世界大戦が終わり、公民権運動が進んでも、同性愛者への差別は続きました。ドイツでは男性同性愛を禁じる刑法は、東西ドイツ統一後の1994年まで撤廃されませんでした。

 戦後1946年、戦後初のLGBT支援団体「COC」がオランダで組織されます。1962年、イリノイ州が全米で初めてソドミー法を撤廃。1970年、ニューヨークで世界で初めてプライドパレードが行われました。

 日本の神道や仏教や儒教は同性愛には寛容でした。奈良時代の仏教の広まりと共に、寺院では稚児(少年)を寵愛する風習が広まりました。足利義満は世阿弥を寵愛し、二人の男色関係は芸能の発展に寄与しました。当時の能や狂言にも男色が取り入れられています。

 1579年に来日したイタリア宣教師も「日本人は男色を公然と口にする」と驚いています。

 西洋の価値観が流入し、1872年(明治5年)同性間性交渉が禁止されます。

 戦後1971年、ゲイを公表する東郷健が立候補します。

 1990年、厚生省が「性非行」の項から同性愛を除外しました。

 2015年、渋谷区が同性パートナーシップ証明書を発行しました。

■ 企業とLGBT

 ダイバーシティの語源は、ラテン語の「離れて」「向く」「状態」。多様性は「一つの価値観の下に」、多種多様な人材が集まっている様子です。

 企業にとっては、LGBTは従業員、お客様、株主などあらゆる利害関係者に存在します。海外企業では、性別、年齢、人種、国籍などの差別を禁止していない企業とは取引をしないという企業が多く存在します。

 LGBTは高い消費力を持ち、生活を豊かにするための自己投資に貪欲です。高い情報感度とネットリテラシー。イノベーター気質で、新商品に対する高い試用傾向がああります。

■ LGBTと向き合う 〜 ロードマップ作り

 「LGBT向け」を謳うことは、カミングアウトにつながり、敬遠されます。

 制服やトイレの対応は、希望者が現われた場合に準備します。カミングアウトしなくても過ごしやすい環境作りを目指します。

 米国最大の人権NGO「ヒューマン・ライツ・キャンペーン財団(HRC)」は、企業のLGBTQに対する平等化への施策状況を評価する「企業平等指数(CEI)」を毎年公表しています。

■ LGBTと向き合う 〜 マーケティング

 LGBTは、高い消費支出と、インフルエンサー気質を持ちます。多くがDINKsで、可処分所得が大きい。自宅内での飲食、旅行、ペット関連、芸術関連に高い支出傾向があります。人目につく自宅外での飲食よりも、安心できる自宅内が増えます。ホームパーティの機会も多い。旅行では解放感を味わえます。ペットは子育ての代替や、孤独感への対応が背景にあります。

 男女二元論で構築された商品を、男女に区切らない形に再構築します。

 エスノグラフィーの語源は、ギリシャ語の「人々」を「描く」。発想の起点となる「機会領域」を見つけ出します。

 LGBTは、引きこもり傾向が強く、SNSの発信量が多い。インフルエンサー・マーケティングの起点になります。

 同じセクシャリティ同士のつながりは強く、情報の信頼度も拡散スピードも高くなります。リアルなタッチポイントにアクセスすることも有効です。

■ 事例から学ぶLGBTへの取り組み

 研修では「効果が目に見えない」と。「カミングアウト数」た「アライ(同盟者)数」などに設定すると逆効果です。

 2017年に発売されたパナソニック・メンズ・グルーミング。多様なセクシャリティが賛同可能なユニバーサルデザインとして捉えることができます。