「光と電気のからくり」 山田克哉 1999年 ブルーバックス

 評判の良い本なのですが、不覚にも読み落としていました!読んでみると、やっぱり面白い。基本から勉強させて貰いました。目から鱗がポロポロ!ありがとうございました。 以下はこの本の要約と引用です。


■ 電気のも源は何か

 電荷とは何か?この質問に明確な答えはありません。

 実際の摩擦電気発生のメカニズムはよく解っていません。

 電荷はある物体から他の物体に移動することはあっても、電荷そのものは無から発生することはなく、消滅してしまうものでもありません。

 電荷は、電子や陽子によって所有されています。電荷そのものを人間が作ることは不可能です。電荷は物質粒子に付随しています。

 一般に荷電粒子の間に働く力を考える場合は、重力を無視して、電気力だけを考慮します。二つの荷電粒子の間に働く電気力は、二つの電荷の積に比例します。

 クーロンの法則は二つだけの電荷の間に働く電気力を示すもの。二つ以上の電荷に働く電気力は、一度に計算できません。

 電気の合計の力は「ベクトル和」として表されます、電気力は「重ね合わせの原理」に従います。

 雷が発生するメカニズムははっきりしません。

 電子の電荷や質量がなぜこのような値になっているのかを説明する理論はありません。

■ 電圧と電流

 どの原子もそれに隣接する原子と電気力を通して相互作用をしています。原子の一番外側の軌道を回っている電子は、隣の原子の軌道電子と相互作用する結果、原子からもぎ取られて自由電子になっているのです。

  原子から電子1個をもぎ取ると、金属内の原子はプラスに帯電します。金属は多数のプラスの原子と多数の自由電子から成り立っています。金属内では全自由電子の電荷と全原子のプラス電荷は等しく、金属体全体の正味の電荷はゼロで、金属体は電気的に中性です。

 熱も自由電子によって運ばれます。電気をよく通す物体は、熱もよく通すのです。

 陽子は電位の高い所から低い所へ向かって加速されます。二つの金属板の間には「電位差」があります。この電位差のことを「二つの金属の間にかかっている電圧」と言います。

 電位は、プラスの電荷に対して定義されています。

 電荷Bが電荷Aに近づくにつれて、電位の坂道の勾配が大きくなっていきます。電荷Aは三次元の「電位の山」を形成します。頂上の高さは無限大です。

 基準電位ゼロは任意に選ぶことができます。絶対電位はありません。

 自由電子が動くと多くの原子と衝突します。多くの原子と衝突するために、電子の平均速度は一定になります。自由電子の測度はアリより遅いのに電気が流れるのは、同線内の各部分にある膨大な数の自由電子が一斉に動き出すからです。電流は、1秒間当りに同線の各点を通過する電荷の量を言います。

 自由電荷は、マイナス側からプラス側に向かって流れます。

 電池内には、化学エネルギーが貯えられています。

 銅線内に電流が流れていても、銅線の正味の電荷はゼロです。電流が流れている限り、銅線内には多数の自由電荷が循環し、他のところに出て行きません。電流が流れても、回路全体にある自由電荷の総数には変化はありません。

■ 磁石とは何か

 電気の場合は、陽子や電子のようにプラスの電荷やマイナスの電荷を単独で取り出すことができます。磁石の場合は、N極だけ、S極だけを単独で取り出せません。磁気単極子は存在しません。

 磁力線は三次元に存在します。磁力線は棒磁石の中を貫いています。磁場はベクトル量です。

 磁場は物質ではありません。磁場は重さを持っていません。

 磁化される物質は限られています。磁化されやすい元素は、鉄・コバルト・ニッケルの三種類です(強磁性体)。

 磁化された強磁性体の磁気を消滅させるためには、強磁性体に熱を加えます。

 電流が流れている電線の周りには磁場が(磁力線)が発生しています。電気と磁気はお互いに独立ではありません。

 電流は電荷の運動です。電荷が運動するとその周りの空間に磁場が発生します。

 地球が大きな永久磁石となっているのは、鉄とニッケルが液体上になっているからです。熱による対流が電流をもたらし、そのうえ地球が自転しているために、この二つの効果によって地球は磁石となるのです。

 電子はどんな条件下でも、常に自転(スピン)しています。

 電子のスピンは、地球の自転やコマの自転とは異なるものです。電子は内部構造が無く、点状の粒子です。どのように自転しているのかは想像すらできません。

■ 磁場と電場

 電位の勾配が急なほど粒子は大きく加速されます。つまり、電気力も大きいことになります。この空間における電位勾配のことを電場と言います。電位があっても電位勾配が無い空間には電場はありません。

 二つの平行電極版の間の空間の電場は、電極版の電荷によって作られます。

 どんな電荷も周りの空間に電場を作ります。電気力線は、電位の高い方から低い方へ向かいます。

 磁場も電場も物質ではありません。真空中に磁場や電場があってもその空間は真空です。

 電場にある空間に荷電粒子(電荷)を置くと、電場はその荷電粒子に電気力を与え、荷電粒子は電場の方向に加速されます。磁場だけがある空間に荷電粒子を置いても、荷電粒子には何も作用せず、荷電粒子は動きません。

 走っている荷電粒子は磁場からの力(磁力)を受けますが、その磁力の方向は荷電粒子の測度の方向(運動方向)に対して直角になります。磁場のある空間を走る荷電粒子は磁力のために真直ぐ進むことができず、道筋は絶えず曲げられ、荷電粒子は円運動もしくは螺旋運動をします。

 電流が作り出す磁場の方向は、電流の方向に直角方向となります。磁気コンパスが電流の流れている電線に対して直角方向に向きます。

 磁場の荷電粒子に対する効果は、荷電粒子の運動方向に直角方向に力を与え、荷電粒子の運動方向を変えるだけ。荷電粒子の速度を変えることはできません。磁場は荷電粒子の運動エネルギーを上げることはできません。

 電場の荷電粒子に対する効果は、荷電粒子は電場の方向に加速されるため、電場の方向が常に同じ方向ならば、電場と荷電粒子の測度は常に平行となり、電場は荷電粒子の測度を上げることができます。電場は、荷電粒子の運動エネルギーを上げることができます。

 磁力線と電気力線の違い。磁力線は閉じている。電気力線には出発点がある。プラス電荷から出発した電気力線は、マイナスの電荷を求めて延びていく。マイナスの電荷が見つかれば吸収され終点となる。従って、一本一本の電気力線は閉じていない、開いている。閉じていない電気力線は、電位の勾配が存在する空間において存在する。電気力線どうしや、磁力線どうしは交わることがない。

 電気の存在は感じることできます。磁気は何も感じません。電気と磁気は違うものです。

 電場は、電位勾配です。電位勾配を空間に作ったのは電荷です。電場に付随する電気力線は閉じていません。

 時間変化する磁場によって作られた電場は、電位勾配で表すことはできません。磁場は渦巻き状に変化する「ベクトル・ポテンシャル」として表されます。時間変化する磁場によって誘起された電場は、「ベクトル・ポテンシャルの時間変化」として表されます。この電気力線は閉じています。電荷によって生じたのではありませんから、出発点も終点もありません。

 時間変化する磁場(磁力線)とそれによって誘起された電場(電気力線)はお互いに直角をなします。

1)強さが時間変化する磁場は、強さが時間変化する電場を誘起する
2)強さが時間変化する電場は、強さが時間変化する磁場を誘起する
3)電荷は電場を空間に生み出す。電荷の無い空間では電気力線の増減は無い。
4)磁場を作り出す源は電流(動く電荷)である。
5)時間変化してもしなくても、磁力線は常に閉じている

 走っている電荷から発する磁場は、時間変化しません。しかし一定の距離を行ったり来たり往復運動を繰り返すと、電荷はその間に加速と減速を繰り返すことになります。加速と減速を繰り返している電荷からは、強さが時間変化する磁場が発せられます。

 光は、電場と磁場から構成されています。光は物質ではありません。

 相対性理論によれば、観測者の運動のし方によって、電場が現われたり、磁場が現われたりします。物体の質量は観測者の運動状態によって変わります。運動していても静止していても、物体の持つ電荷の総量は不変です。

■ 光の源は何か

 光が媒質を伝わる速度はその媒質の物理性質(密度、温度、圧力など)が決定し、周波数や波長に関係ありません。空気中を伝わる音の測度はその周波数や波長には関係なく、常温では秒速340mです。音が媒質を伝わる速度は、その媒質に対しての測度です。

 波の測度 = 波長 × 周波数 = 一定

 電磁波の測度は真空中で秒速30万km。なぜこの値なのかは解っていません。電荷が加速減速を繰り返して、時間変化する磁場が発生し … 電磁波が形成される。

 物体が熱せられると原子が振動し、電磁波を発します。物体の温度がある温度以上になると、発せられる電磁波の波長が可視光線の波長に達します。

 真空中に置かれた金属板に光を当てると自由電子が飛び出します(光電効果)。自由電子が飛び出すには、外からある量のエネルギーをその自由電子に与えてやらねばなりません。赤色光に対する光子のエネルギーは小さく、金属板内の電子にぶつかっても、電子は飛び出すことはできません。光電効果においては、1個の光子が1個の電子にぶつかるのです(一対一の相互作用)。1個の光子が1個の電子にぶつかると、光子はエネルギー全部を電子に与えます。衝突後は光子は消滅します。

 光子の持つエネルギーは波長が短くなるほど/周波数が高くなるほど大きくなります。

 E = hf E:エネルギー f:周波数 h:プランク定数

 光の強さは「光子の数」によって決まります。1個の光子の持つエネルギーは、光の明るさとは関係がありません。

 光電効果を利用すると光の信号(エネルギー)を電気信号(電気エネルギー)に変えることができます。カメラ、自動で鳴るチャイム、太陽電池 … 。光子自身から電子と陽電子の対が発生します。光子は電子の子でもあり親でもあるのです。

 電荷が加速されると、その電荷から光(電磁波)が発生します。

 ボーアは、電子が角運動量の量子化によって定められた軌道に沿って回る限り、電子は電磁波を発しないという仮説を立てました。

 電子の持つエネルギーは、外側の軌道ほど大きくなっていきます。

 物体の自然運動は、不安定状態(高エネルギー)から安定状態(低エネルギー)に向かって進行します。

 電子が外側軌道に飛び移ったことを「励起」されたと言います。電子は光子を1個放出してエネルギーを吐き出します。

 電子が外側軌道から内側軌道へクオンタム・ジャンプするとき光子1個が発せられます。光子の持つエネルギーは、二つの軌道のエネルギー差になります。

 n=3から2へのジャンプから発生する光の色は赤
 n=4から2へのジャンプから発生する光の色は緑
 n=5から2へのジャンプから発生する光の色は青
 n=6から2へのジャンプから発生する光の色は紫

 n=1へのジャンプから発する光は可視光線ではありません。

 電子は構造を持っておらず、電子の中に光子は存在していません。光子は、電子(電荷)から発生したり、吸収されたりするのです。光子は電荷も質量も有していないため、電子が光子を発生したり吸収したりしても電子の正体は変わらず、電子のままです。

 原子内の電子は「数学的な波」。電子の波は電子がそこに存在し得る確率を表します。

 構造を持たない荷電粒子から光子が発生する場合は、電子内部には光子は存在していないのですから、この光子の発生は創成を意味します。

■ 電子のコマ

 コマは自転運動と歳差運動(首振り運動)をします。コマの首振り運動は地球の重力の影響です。重力の無い空間で自転しているコマは、自転運動だけをし、歳差運動は起きません。

 磁石の源は、動く電荷あるいは自転(スピン)する電荷です。電子がなぜスピンするかは解っていません。スピンの方向は、右ネジが進む方向と定義されます。スピンの角運動量は「スピンの強さ」を表します。

 真空空間に孤立する電子のスピンの、(勝手に)設定された座標系のZ軸傾斜角度は54.7度。それ以外の値はありません。

 電子では、スピンの強さも決まっています。スピン量子数は1/2で、スピンの強さは(√3/2)ℏ。

 スピン量子数:電子は点状粒子のように振舞うために、スピンしている状態を描くのは不可能です。

 電子のスピンの方向はZ軸に対して2つありますから、スピンのZ成分も2つできます。電子のスピンの2つの成分は「上向き」と「下向き」と区別します。「上向き」は電子が右回転してスピンしている場合。「下向き」は電子が左回転していると解釈します。

 電子はマイナスの電荷を持っているため、その磁気双極子の方向(S極からN極に向かう)とスピンの方向は逆になっています。

 電子の磁気双極子は磁場の方向に対して、54.7度の角度で傾斜し、この傾斜角を保ちながら磁力線の周りを首振り運動します。磁気双極子が外部磁場(磁力線)と平行の場合に最も安定になります。このエネルギーは、ポテンシャル・エネルギーです。

 陽子から放射線状に電気力線が出ています。電子は、この電場を横切るように運動しています。電子は磁場を感じます(内部磁場)。この磁場に対して電子は位置を変えずにスピンしているということなのです。

 電子が、最も安定である内側の軌道(n=1基底状態)を占めている場合は、電子は内部磁場を感じません。電子が軌道運動による角運動量を持たないためです。

 電子がn=1の軌道を占めるとき、電子は陽子の周りを回っていないということになるのです。電子が外側軌道を回っていても角運動量を持たない場合があります。しかし、電子は常にスピンしているためにスピンによる角運動量は持っています。内部磁場の強さは、軌道角運動量が大きいほど大きくなります。

 n=2の軌道に相当するエネルギー。電子は、スピンしているため磁気双極子を持ち、磁気双極子と内部磁場との相互作用によってそのエネルギーの状態が変わります。

 電子のスピンの方向のZ成分が内部磁場に平行な場合は電子のエネルギー・レベルは高くなり、反平行の場合は下がります。レベル2Aと2Bとのエネルギー差は大きくないため、放出される二種類の光の色にあまり変化はありません。

 電子が基底状態(n=1の軌道)にある場合は、電子の軌道運動に由来する角運動量がゼロとなるために、電子に内部磁場が発生しません(電子は陽子の周りを回っていない)。

 スピン量子数が半整数になっている粒子は排他率に従います。

 nの軌道(殻)には、2n^2の席があります。

 同じ軌道を回っていても軌道角運動量量子数が大きいほど、電子のエネルギーも大きくなります。軌道角運動量量子数lは、取り得る値はnによって決まり、l=0,1,2,3,…,n−1として表されます。

 軌道角運動量量子数l=0の場合をsと書き、l=1の場合はpと書きます。sが基底状態でpが励起状態です。しかし、どちらもn=3です。この励起状態にあるエネルギー状態は3pと書き、基底状態は3sと書きます。上側のエネルギー・レベルを3pupと書き、下側を3pdownと書きます。外部からエネルギーを与えると、励起のされ方は二通りあります。sの状態というのは、最も外側の軌道の電子の角運動量はゼロと言うことです。

 エネルギーなどの物理状態を変えられるのは、軌道に空きがある場合だけです。内側の軌道は身動きできません。

 電子の状態は波動関数によって表されます。スピンに対する波動関数は行列によって表されます。

 温度が低くなるほど低い方のエネルギー・レベルを占める原子の数が多くなってきます。与えられた温度の下で何個の電子がどちらのエネルギー・レベルを占めるかは「ボルツマン統計」に従います。

 陽子の磁気共鳴現象は、MRIに応用されています。

 質量が大きいために陽子の磁気双極子は電子の持つ磁気双極子よりも小さく、外部磁場を与えても簡単に外部磁場の方向に平行になったり反平行になったりしません。陽子の磁気双極子に強力な外部磁場を与えます。

 水素を多く含む物体に、外部から電磁波を照射します。高いエネルギー・レベル(スピン反平行)を占める陽子は、再び低いエネルギー・レベル(スピン平行)に戻ろうとします。エネルギーhfの光子を放出します(核磁気共鳴現象)。

 人体内においては「周囲の磁気の強さ」は、陽子が体内のどの部分にあるかによって異なります。人体を大型電磁気による外部磁場にさらしますと、人体内の陽子はこの外部磁場と周辺磁場とのベクトル合成の作用を受けます。外部磁場の強さを場所によって異なるように調整します。

 さらに、人体に外部から特定の周波数を持った電磁波を照射します。周波数の異なる電磁波を照射すると、あちこちにある養子にスピン反転が起り、異なった周波数(異なったエネルギー)の光子が放出されます。

 磁石の外側では磁力線はN極からS極に向かいますが、磁石の内部ではS極からN極へ向かいます。このため、磁気双極子に方向はS極からN極に向かう方向と定義します。電子のスピンと陽子のスピンが反平行になっている方がエネルギーが高くなっているのです。