「第十 折々のうた」 大岡信 1992年 岩波新書
句作りの参考に読み耽っています。言語感覚が鈍いので、ついて行けませんが。 以下に印象に残った句を引用します。
■ 春のうた
鵞鳥(がちょう) − たくさんいっしょにいるので、自分を見失わないために啼いています 三好達治
日の影や眠れる蝶に透き通り 高桑蘭更
■ 夏のうた
道問えば一度にうごく田植笠 排風柳多留
そろそろとおろす竹筒鰻どの今宵のどかに宿りゆきませ 植田重雄
千年の留守に瀑布を掛けておく 夏石番矢
■ 秋のうた
月の友又来し気配甃(いしだたみ) 星野立子
■ 冬のうた
地下鉄に坐る乙女の向股(むかもも)は我を見てをりわが目閉じても 高野公彦
犬ワンワン猫ニァーゴニァーゴと聴くとして人間の声は何と聴くべしや 奥村晃作
枯葦を瞳(め)につめこんでたちもどる 富沢赤黄男
ひとりごつ如くに降りてまた見ればひっそりとただ積もりいる雪 高安国世