「データの見えざる手
ウェラブルセンサが明かす 人間・組織・社会の法則」
矢野和男 2018年 草思社文庫
こんなタイトルの著作を見逃してはイケナイ！ という訳で、手に取りました。面白い！物事の一面しか見ていないという批判もあるが、それでも興味深い知見を与えてくれます。有難い！ 以下はこの本の要約と引用です。＊印はＷＥＢ検索の結果です。
■ 時間は自由に使えるか
どんな行動でも自由。自分の意志のみが行動を制約するのだろうか。時間の使い方は、科学法則に制約されており、自由にはならない。
物理現象を表す方程式は、エネルギーや電荷の保存則から派生する。エネルギーの概念こそが、事前現象の理解の中心にある。目に見える変化は、エネルギーの形態が変わることで起こる。
高速度の加速度センサーは、50mm秒ごと(１秒間に20回)、僅かな動きも捉え、三次元のそれぞれの向きについて計測する。
Ｕ分布は、人間行動や社会行動に普遍に見られる分布。Ｕは普遍(ユニバーサル)の頭文字。片対数プロットで直線になる。指数分布と呼ばれる分布の特徴である。
Ｕ分布は、物質中での原子や分子の熱エネルギーの分布に発見される。分子の頻度を縦軸に、熱エネルギーを横軸にとると、ボルツマン分布と呼ばれる。
身体運動の回数や店舗における棚前対流時間もＵ分布になる。違う仕事を持ち、性別も年齢も異なる人たちが、同じＵ分布に従って行動している。
そこには「繰り返しの力」が働き、社会を動かしている。
ランダムに球を配置し、ランダムに升目を二つ選んで、一方から他方へ玉を１個移す。このやりとりによって生じた「まだら模様」こそが、右肩下がりのＵ分布である。
Ｕ分布は、ボルツマン分布を一般化したものだ。気体中では分子同士が常に衝突し合い、その際に持っているエネルギーのやりとりが行われる。升目間の玉のやりとりの繰り返しは、このことを表現している。
どの升目にも等しい機会があったのに、特定の少数の升目に玉が集まってしまう。等しい「やりとりに繰り返し」は、必然に不等（偏り）をもたらす。
能力の差を仮定しなくても、確率により偏りは生じる。分布が偏るのは、能力や努力によるものではなく、「やりとりの繰り返し」による統計力学である。「繰り返しの力」を背景にした「資源配分の偏り」こそが、人間行動や社会現象を説明する。
人は因果という枠組みに頼って世界を認識しようとする。因果は、多数回の繰り返しの結果を見通すには適さない。
身体の動きの総数は人によって決まっている。我々は（無意識のうちに）動きを優先度に合わせて配分していると考えられる。有限の資源のやりとりを繰り返した結果現れるものだ。
統計力学は、マクロな現象を、無数のミクロな出来事の「繰り返しの力」によって説明する。やりとりの量が大きい場合は、個々のやりとりの詳細は知る必要はない。この原理によって、自然現象におけるミクロとマクロがつながる。
同様に、人間行動も、時々刻々変化する意識・事情を考慮しなくとも、予想や制御が可能になる。
行動で重要なのは、何が資源で、どのような規則でやりとりされているか。やりとりがないときうは、従来の統計学が扱ってきた正規分布になり、やりとりがあるときはＵ分布になる。
ミクロなエネルギーのやりとりの繰り返しが、自然現象を作る。エネルギーを一般化した「資源」とその「やりとり」の繰り返しが、人間行動を説明する。
一日の総活動量により、ある帯域の動きを伴う活動に割り当てられる活動量も決まる。それを超えたバランスの時間は使えない。
人によって活動量は異なる。動きの少ない人は、右肩下がりの傾きが急だ。この傾きの逆数を「活動温度」と呼ぶ。人の活動にも活発な「暑い日」と静かな「冷たい日」がある。
一日の時間を有効に使うには、様々な帯域の活動量を知って、バランスよく全ての帯域の活動量(エネルギー)の枠を使うことだ。
熱力学の第零法則は、温度の概念が存在する。第一法則は、エネルギーの保存則。第二法則は、エントロピーの増大則。
エントロピーが増えるとホワイトノイズの世界になると言うのは間違っている。ホワイトノイズの世界は正規分布。エントロピーが最大になるのは、ボルツマン分布（Ｕ分布）。正規分布よりばらつきが大きく、斑模様が形成された世界。
エントロピーは「乱雑さ」の尺度ではなく、むしろ「自由さ」の尺度と考えた方がよい。宇宙は、一様さから解放されて、偏りが許されるようになっていく。
エントロピーの数学上の定義を与えたのは、ルートヴィッヒ・エドゥアルト・ボルツマン。温度や圧力などのマクロな性質を変えない範囲で、ミクロな状態が取り得る組合せの数を数え上げて、その総数の対数をエントロピーの定義とした。マクロな状態を変えずに実現可能なミクロな状態が広いということが、エントロピーが大きいことに対応する。
人間の全活動時間を分母とし、目的の活動に投入した時間を分子としたものを「活動の効率」と定義する。カルノー効率の式を人間の活動にも適用できる。ある活動を行う際に使われる最も活発な動きの値(〇回/分)と、最も穏やかな動きの比を１から引いたものが、人間の活動の効率の上限となる。
「身体活動の回数の分布」を見ると、例外的にしか起きない活発な動きは急速に減少してる。Ｕ字分布で近似されるのは、このカットオフ以下の領域。これ以外の中間領域にも、直線に乗らない部分が、人や時期によって、見つかることがある。
エントロピーは、活動の自由さの尺度。直線からの「ずれ」は、束縛の度合いを定量化している。
■ ハピネスを測る
システムを制御するためには、「システムの望ましい状態」を見定める必要がある。人間の望ましい状態の表現は「ハピネス」。
幸せは、半分は遺伝に、半分は環境に影響される。環境要因は、人間関係、健康など幅広い。これらをすべて合わせても影響度は10％に過ぎない。残りの40％は、自分から積極的に行動を起こしたかどうか。自ら意図を持って何かを行うことで、人は幸福感を得る。
行動の結果が重要なのではない。行動を起こすこと自体が、人の幸せなのである。自主自律の行動がハピネスを決める。
幸せな人は仕事ができる。逆ではない。収入も高く、配偶者や友人に恵まれ、健康だ。
リュボミルスキ教授の研究「ハピネスの方法」に拠れば、社員が幸せに働くことは、社員も会社も利する。「社員の幸せで会社が儲かる」。
毎日「良かったこと」を報告したメンバーは、組織への帰属意識が高まった。ハッピーな社員は活力に満ちて仕事にとりかかる。
ハピネスと身体活動の総量は相関する。「幸せな人の身体はよく動く」。積極的に行動すると、身体の動きが増える。
「会話するときの身体運動の量」が大きい人は、積極的に問題を解決する人である。
コールセンター（もしもしホットライン）の生産性。出勤者の平均スキルが高い陽は受注率が高くなるという相関は無い。パーソナリティ（電話応対への向き不向き）と受注率の相関も無い。
休憩室での会話（身体運動）の活発度が受注率を相関していた。因果関係を特定するために、同世代の相性の良い仲間と休憩を取るようにした。休憩中の活発度が10％以上向上し、受注率が13％向上した。アウトバウンドとインバウンド、米国と日本の違いも関係なかった。
社員が「活発な現場」では「生産性が高まる」。個人プレーの業務でさえ、現場の活発度という集団要因が、生産性に影響している。
身体運動の活発度は、人かた人へと伝染する。磁性体ができる機序と似ている（イジングモデル）。身体運動は、集団の協力現象を生み、人と人が影響し合うことで、活発度が高まる。会話において身体運動が活発な現場では、問題が解決され、創意工夫が実践されている。会話が多いかどうかは、仕事の種類によって異なり、それ自体で職場の活発度とは関係ない。
ＧＤＰが一定の水準を超えると、もはや国民の幸せとは相関しなくなる。
■ 人間行動の方程式を求めて
力学の方程式が表すのは、時間軸上あるいは空間軸上で状態がそれだけ変化するか。状態そのものではなく、状態を表す量の変化(勾配)に注目している。「現在から次の瞬間の状態が創られる」ジェネレーターを表す言語が微分。
行動のジェネレーター(作源)を、イベントの不連続の変化そのものではなく、確率の変化を表現する。イベントが一定確率でランダムに起きるとすると、ポアソン分布に従う。
例えば、面会というイベント生起の時間間隔を定量化すると、ポアソン分布に従う。再会の確率は最後に会ってからの時間が経過するに従って低下していく。最後にある人に会ってからの時間をＴとすると、再会の確率は１/Ｔに比例して減少していく。「去る者は日々に疎し」。面会確率が低くなり、仕事が進まなくなる。
電子メールを受け取ってから返信するまでの時間。時間が経つほどに、返信する確率は低くなる。
生活の中で安静(静止)状態がＴ時間続くと、活動に転じる確率が１/Ｔになる。安静から活動への遷移確率は、鬱病に人は20％低い。
行動の持続時間は、１/Ｔの法則に従う。
１/Ｔの法則は、Ｕ分布から導くことができる。ランダムな気体分子の間隔に注目すると、あるイベントが起きてから次のイベントが起きるまでの時間は、分子間の距離間隔で表される。Ｕ分布において、この間隔を横軸にして集計し直すと、１/Ｔ法則に従う。注目しているところが違うだけだ。
人間行動のイベントに関する分布を生成する式。Ｐ(ｔ)は、時刻ｔにおいて直前のイベントが発生後、次のイベントが発生していない累積確率。時刻ｔに次のイベントが発生する確率（イベントのジェネレーター）。Ｆ(ｔ)は、Ｕ分布からのずれをもたらす外部から加わる力。
対して、イベントがランダムに起きると、その時の分布はポアソン分布（近似的には正規分布）になる。τ(タウ)は、平均的なイベントの時間間隔。
ポアソン分布では、一定の頻度で次のイベントが起きる。１/Ｔ方程式では、時間の流れが経過時間Ｔとともに速くなる。「行動を続けるほどやめられなくなる」ことを表現している。
但し、１/Ｔ方程式が厳密に成り立つのは、外部からの力や制約が加わらないときである。外部からの力の項Ｆ(ｔ)が作用することで１/Ｔの法則からずれる。
行動を続ければ止められなくなる。「集中している」状態にあたる。
古代ギリシャでは、機会の時間「クロノス時間」と主観の時間「カイロス時間」を区別していた。
「ものさし」を創ることは、共通の言語を提供する。ものさしがあることで、明らかになる。
温度計が登場した初期の実験では、当時の科学者たちは、温度計が何を計測しているのかが解らなかった。温度という概念を受け入れるためには、温度計が客観測度で、感覚は曖昧で複雑な現象だと気づく必要があった。温度の見方の逆転が起きたのは17世紀のことである。
計測量として追求すべきなのは、「感覚と合わせる」ことではなく、科学の基盤のある量を見出し、その根拠を確立することだ。新たな世界観を確立することだ。
「フロー状態」は、人が集中している状態。フローを経験すると、人は充実感を得る。
チクセントミハイ教授のフロー状態の計測。「あなたは今、困難なことを行っていましたか」「あなたは今、自分のスキルを発揮していましたか」を、ランダムな時刻に質問する。この計測を継続する。心配/余裕/フロー/無関心の４つの状態が得られる。
やや速い身体の動きが一貫して継続していることがフローの頻度と相関する。フローになり易い人は、やや速めの身体運動を継続する傾向が強い。フロー体験のまさにその時に、速い動きがある必要はない。仕事や生活に楽しさを得ている人は、身体運動の継続性が高い。
仕事が停滞したときには歩いて身体運動を増やす。心は身体の動きによって制御できる。
業務の生産性は身体の動きの活発度=「活気」に影響される。
■ 運と真面目に向き合う
「運」を「望ましい確率現象」と捉える。偶然の現象も、確率を制御することは可能。
水が100℃沸騰したり、塩基が集まって二重螺旋構造を形成するのも確率過程の結果。
＊「確率過程の結果」というのは、自然界の現象が必然的な決定論的プロセスではなく、分子レベルの確率的な振る舞いの積み重ねによって生じるという考え方を指します。
�� 水が100℃で沸騰するのは確率過程の結果
一定の温度（100℃）に達すると、水分子のうち特に高エネルギーなものが液体表面で蒸発しやすくなり、蒸発する分子の割合が急増する。これにより水の蒸気圧が大気圧と等しくなり、大量の水が気化する「沸騰」が始まる。個々の水分子の振る舞いは確率的であり、それらの統計的な平均的ふるまいの結果として、マクロなレベルでは「水は100℃で沸騰する」と見えるのです。
�� 塩基が集まって二重螺旋を形成するのも確率過程の結果
溶液中では、DNAの塩基（A, T, G, C）は自由に拡散しており、それぞれが確率的に他の塩基と衝突する。
A（アデニン）はT（チミン）と、G（グアニン）はC（シトシン）と水素結合を形成しやすい性質を持つ。多くの結合と解離の中で、最もエネルギー的に安定な構造（=二重螺旋）が最終的に形成される。個々の塩基の結合や解離は確率プロセスですが、大量の塩基対が統計的に振る舞う結果として、安定したDNAの二重螺旋が形成されるのです。
人と人が出会い会話することは、運と出会う通路を開く。人に出会ったから、必ず良いことが起きるわけではないが。必要な情報や知識に巡り合う運が結果を左右する。
会う人たちの顔の広さ＝何人の人と会っているか。「知り合いの知り合い」まで繋がりをたどったときに、何人の人に到達できるかを調べる。これを、運に出会う確率を示すと考える。仕事がうまくいく人は、「到達度」が高かった。
組織内のソーシャルグラフでは、到達度の計測基準を、面会時間が週に15分以上とした。コミュニケーションの相手を増やせばいいということではない。重要なのはメンバーどうしの繋がり。メンバー間に三角形の繋がりが多いと、その組織のリーダーの実績は向上する。
組織ネットワークにおいて、三角形が多いと、リーダーが直接介入しなくても、現場で問題が解決される可能性が向上する。現場の結束の強さを三角形の数で表すことができる（結束度）。平均的な組織の結束度は４程度。
リーダーか現場か、トップダウンかボトムアップか、営利か公益か、政治主導か官僚主導か。そういう二者択一ではない。両社の統合と協調の道がある。
誰と会話をすれば到達度が増えるかが判る。候補者の中で、仕事の関連度が強い人から優先順位をつける。ワークショップでグループでのセッションを４回実施した。これにより、周りの能力や情報に助けてもらう可能性が向上した。
すぐに人に聞いたり相談したりするのは、運のよい人に共通する特徴である。
人は問題解決や創意工夫を目指すと、会話中の速い身体運動の成分(活発度)が増える。コミュニケーションの影響の90％以上は非言語要因。加速度センサで１秒間に50回、人の動きの波形を捉える。
会話している両者に基準値を超える速い身体運動がある１分間を「双方向」。その割合を「双方向率」とした。
会話の双方向率が高まるのに重要なのは、真剣に両者が関わり合うことが必要な挑戦的な目標が設定されていること。そうでなければ、双方向の議論は生まれない。表面的な会話の形を改善しようとしても効果はない。
運こそ実力そのものだ。
■ 経済を動かす新しい「見えざる手」
購買に影響を与える要因は、本人にも解っていない。
人の行動は、「人と環境の相互作用」から生まれる。両社の複合システムと捉える必要がある（動態論）。
ホームセンターでの購買過程。赤外線による場所情報の発信機(ビーコン)を２〜３ｍおきに設置（赤外線が届くのは２〜３ｍ）。1000坪の店舗に500個のビーコンを設置した。動線だけでなく、商品棚のどちらを向いているかも取得できる。これを、ウェラブルな名刺型センサのデータ、ＰＯＳデータに連携した。
これらのデータを人工知能ソフトウェアＨで分析。目標は、来店した顧客の客単価の向上。Ｈの分析結果は、客単価を影響していたのは、店内の特定の場所に店員がいることだった。専門家が実施した対策は、店舗の売上にも、顧客の行動にも影響を与えなかった。
その場所に店員が居てもらうようにしたところ、店全体の客単価が15％向上した。営業利益は５％増えた。結果として、営業利益は２倍になった。
その場所に店員が居ることと、客単価の上昇を結びつける機序は自明ではなかった。その場所に店員がいることで、客の動き=流れが変わり、人通りの少ない=単価の高い商品棚の滞在時間が増えた。しかし、その商品棚からその場所はかなり離れていた。
その場所に店員がいると、店員も顧客も身体運動の活発度は向上した。その要因は不明である。
これまでの情報処理は「演繹」を行ってきた。普遍の前提を記述し、個別のデータを得る。
意味の解らないビッグデータの背後にあるパターンを明らかにする。膨大なデータにどんな法則性があるのか人間には解らない。仮説など作りようがない。
仮説検証は、職人芸で膨大な労力が必要。そして、出てくるのは「当たり前」の結果。
人工知能は「人間の知能を再現しなければならない」という立場と、「問題解決に役立てば良い」という立場がある。
人工知能が出力した結果を、人間が理解するのは難しい。しかし、経験を重ねるたびに、人間は学ぶ。「先入観を持たずに、事実の示すまま」シャーロック・ホームズ(コナン・ドイル)。
店の売上は、店舗の面積に依存する。売上と面積の「粒度」は揃っている。データが一対一に対応している。
マクロな業績とミクロなデータとの粒度のギャップを埋める。データを多数組み合わせる。ミクロとマクロの両方を扱う技術は従来の統計学には無い。
人工知能は、「行為判断型」「質問応答型」「パターン(類型)認識型」の３種類。「行為判断型」は、現実世界をミクロな要素の集まりとして理解する。統計力学に負うところが大きい。
・ビッグデータ活用するための要点
目標(アウトカム)を明確にする
関連するデータを広く収集する
仮説に頼らず、データからコンピュータに推定させる
人が仮説を作るという観念を捨てる。大量のデータを人間が理解することは不可能。
仮説が無いと決済がおりないことが多い。会社の意思決定者にも理解してもらうことが必要。
データを可視化すると、目新しさがあり面白い。業績に結びつかないものは、価値にならない。
データを使わせてもらうには、明確な理由が必要。使わせてもらったからには、成果が期待される。
情報システムにあるデータだけでは、人のデータが不足している。営利活動は、財務-需要-業務-投資の４層からなる。業務は顧客の需要や要求に応える活動。需要や業務の人の乗法を取り込んだ分析を行う必要がある。
テイラーの科学的管理法は、インダストリアル・エンジニアリングとして展開された。業務過程を分解して標準化した。コンピュータのソフトウェアは、柔軟に対応できないことを逆手にとって、標準化された業務過程を徹底した。ベストプラクティスを共有する。
多くのサービスにおいて、業務過程を標準化し、手順書を整備しても、生産性向上は限定的だった。
看護婦や販売員や自動車整備工は、マニュアルワーカーではなく、ナレッジワーカーだとドラッカーは説いた。
学習する機械は、人間の学習能力を補完する。自立して判断し、結果に責任を負う人間を支援する。
人間の仕事は、問題を設定すること、未知の状態で意思決定すること、結果に責任をとること。機械に解くべき問題を定義し、データを提供するのは人間である。
学習する機械が、アルゴリズムを自動生成する時代が来る。
売上の向上は、従業員や顧客の身体活動の活発化を通してもたらされた。接客時間が増えた。顧客が接客された時間の長短は、その顧客自身の購買金額には直接相関していない。従業員の接客時の活発度が向上する。結果として、購買金額が向上する。
アダム・スミスの「国富論」と「道徳感情論」。経済性の追求と人間らしさは、両者が協調してうまくいく体系だというのがスミスの主張だった。
■ 社会と人生の科学がもたらすもの
同時並行で進む新しいモデル。科学 → 技術 → 社会実装(サービス化)。それぞれに関与する人は違うコミュニティいる。従来の科学では、大学の研究室で１〜３年がかりで(博士号を取得するサイ来るに相当)一仕事行う。
未来は予測できない。ロバスト(堅牢)な自律組織を実現する。ホウレンソウ＝報告-連絡-相談に加えて、マツタケ＝巻き込み-繋がり-助け合いが必要になる。
社会資産としての、データのアーカイブセンタも構築が必要。
■ あとがき
名刺型ウェラブルセンサによる「ライフシグナルズ」。64の生活変化の類型を特定した。
■ 著者による解説
ルール指向の方法論から転換する。ルールに頼れば、学習回路は停止する。
現状突破の切り札は「成果(アウトカム)指向」である。最も重要なことは、目的を明確にすること。目的の達成を具体化する成果を明確にする。目的があって初めて人工知能という道具が生る。
アウトカムのためには、何でも使うのが「オープンベーション」。ＡＩは成果指向。
需要が標準化された物やサービスから、個別性の高いものに変わった。ルール指向では多様性に対応できない。
無意識の身体運動の指標化。幸福な人たちは、コールセンターでも、店舗でも、開発プロジェクトでも生産性が高い。
ＧＤＰだけでは不充分。幸せ(ハピネス)が必要なのだ。
幸せには一律ではない。幸せの「なり方(行動)」は人によって違う。ダーウィンは「進化は多様性を生む」ことを強調している。
