「軍事のリアル」 冨沢 輝 2017年 新潮新書
タイトルを見たら・・・読まなきゃ!有用な内容もあったのですが、自衛官であったにもかかわらず、人殺しもできない腰抜け=右翼っぽいところがあって、ちょっと残念。そういう人って「兵器マニア」チックなところがあって、実際の戦闘では案外に(想定内に?)役立たずなんですよね。やっぱり日本軍は当てにはならない、という事実を再確認しちゃいました。 以下はこの本の引用と要約です。*印はWEB検索結果です。
■ 戦争を放棄しているのは日本だけではない
軍事の目的は、外交に寄与し、平和(秩序)を構築することにある。相手に正しく理解されなければ、目的を達成できない。
国際紛争を兵力に訴えることなく、平和裏に処理しようと約束した最初の多国間条約は、1907年のハーグ条約(国際紛争平和処理条約)。より身近なのは、1928年のパリ条約(不戦条約)。極東国際軍事裁判は、主としてこの条約違反を根拠に裁かれた。不戦条約は、第1条「戦争の放棄」、第2条「紛争の平和解決」、第3条「批准、加入」からなる。
現在の国際法体系下では、いかなる国も「国際紛争解決のための戦争や武力行使」は出来ない。武力行使を認められるのは、集団安全保障と個別/集団自衛に限られる。
自衛権は、集団安全保障が十全ではない実情を踏まえて、例外として国家の権利として認めると考えるべきだ。
■ PKOの武力行使は集団自衛権とは無関係
集団安全保障における武力行使は、国連軍や多国籍軍に参加して外地で戦闘する場合。PKOでもやむを得ず戦闘する場合がある。世界の秩序維持機構たる国連の要請に応じての遂行にあたる。自衛ではない。多国籍軍の法的根拠は、集団自衛権ではない。
国連加盟にあたっては、「平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧のため有効な集団措置をとる」ことが義務付けられている。多国籍軍の権利は国連の権利。参加国の国権ではない。
日本国憲法第九条は、「国家の利益追求のため」の武力行使を放棄するもの。自衛隊ができてしまったので、「個別自衛権はある」と認めざるを得なくなった。
国際法上の自衛の3要件。1) 急迫の侵害がある、2) 他に適当な対抗手段がない、3) 必要な限度に止めること。
「日本には多くの資源が欠乏しています。これらの供給が絶たれた場合には、多大な失業者が出ると懼(おそ)れていました」「彼らが戦争を始めた目的は、安全保障上から導かれたものです」マッカーサー将軍。
自衛権は経済封鎖にまで及ぶ。経済制裁は、宣戦布告と同義。日本はロシアに事実上宣戦布告している。それを米国、ロシア、中国は理解している。日本だけその自覚が無い。
74年の国連総会は、「侵略」の定義を、武力攻撃に限定した。
日本国内では、自衛と正当防衛は同じとする誤解が消えない。「自衛」は国際法上の問題。権限と責任は国家にある。「正当防衛」は、個人の刑法上の問題。その権限と責任は個人にある。
■ 集団自衛権論議はズレている
公海上で海上自衛隊艦船と並走する外国艦船が攻撃された場合、自衛隊が反撃する。防衛出動命令が出され、その命令の中に行動地域が示され、外国軍との共同項目が含まれていれば、個別自衛権の発動として説明できる。但し、米国以外の軍隊については、日米安保条約に代わるなにがしかの国家間の約束が必要である。
防衛出動命令が出ていない状況では、外国艦船はもとより、指揮系統の違う自衛隊艦船、海上保安庁・民間船艇を攻撃したものに反撃することはできない。自衛隊は、防衛出動命令が下達(かたつ)されるまでは武力行使ができない。
首相が防衛出動命令を出すのに時間がかかる。対応すべき時に間に合わないことが起こり得る。第一線の指揮官に「武力行使準備」の実行を予め委任する[デフコン]。武力行使権限を委任したものではない。
他国軍航空機の領空侵犯についてだけは、警告・強制着陸に従わない場合には、撃墜して良いという国際法がある。自衛隊だけは、これも実行しないと定めている。
自衛隊に許される対応は、個人の権利としての正当防衛だけである。正統防衛の権限と責任は個人(指揮官)に帰する。あるいは、明白な侵害の危険性がある場合、その侵害に応じた限度の反撃をしても良いという国内法の利用である。
集団自衛権は、当該国が援助を要請してきたときに、当該国がそれに応じて防衛出動命令を出す権利だ。
■ 日本に北朝鮮のミサイル迎撃はできない
米国向けの弾道ミサイルを日本のミサイル防衛システムで迎撃することはできない。北朝鮮から発射されるとしたら、日本上空を横切ることはない。航空自衛隊の地対空ミサイルPAC-3の射程は20km。海自イージス艦搭載のSM-3ミサイルの射程は200km。長距離ミサイルが日本上空を通過するときは300〜400kmの高度になっている。どちらもそのレーダーからして届かないし、速度は追いかける方が遅い。
ミサイル防衛に使用するPAC-3やSM-3は「待ち受け兵器」。その射撃陣地のまわりにある重要警護対象を護るものだ。イージス艦搭載のSM-3は、ミサイル攻撃に弱い航空母艦を護るために開発された。
米国には80隻以上のイージス艦がある。日本は8隻、オーストリア4隻、韓国3隻。無論、常時配備は半数以下になる。
各艦のレーダー、日本や韓国の地上レーダー、衛星からの情報を収集し、各目標をどの艦に撃たせるかを選定する。有志連合による集団安全保障保障であり、指揮権は連合国=連合艦隊司令官にある。
*海上自衛隊イージス艦8隻には、米国製巡航ミサイル「トマホーク」発射機能を付加される。
兵站部隊は、戦闘部隊よりも危険なのに、安全なものと誤解されている。
ホルムズ海峡のような国際海峡の掃海作業を、日本の掃海艇だけでやることは考えられない。障害物排除は危険な作業。そして無防備状態になる。掃海作業には、相手の火力を封じ込める戦闘が必要。イランの機雷設置が日本に対する武力攻撃だとしても、日本は個別自衛権で対応する能力を持たない。安保理決議が出ないときには、有志連合で実施することになる。
「今やコアリション(有志連合軍)により平和を維持する時代だ」防衛省高官。集団安全保障措置参加を、国民に説得し、理解を得るべきだ。
集団安全保障は、戦うことが目的ではない。諸国連合で「何時でも戦える」という姿勢を示しつつ、まず話し合い、相手が先に武力行動をとったときに武力制裁するものだ。
■ PKOも矛盾のツケ
2013年に閣議決定された「国家安全保障戦略」。
自衛官は、自らが訓練し自信を持っていることだけを実行して欲しい。訓練していないこと、訓練してもできないことについては「できません」と言わなければならない。他の国の軍隊もそうしている。
■ 陸海空自衛隊の「出自」と「性格」
海上自衛官募集が困難なのは「家族と離れて暮らすのが嫌だから」。
実戦を想定した訓練を行うと、見張りや休憩や整備や給食などの交代要員が足りない。
米国からの売り込みがあり、海空の装備品は米国からの輸入もしくはライセンス輸入が多かった。
かつては、「米ソ海軍の衝突を、宗谷・津軽・対馬3海峡を統合戦力で護ることにより回避し、世界秩序を護ることで日本を護る」が周辺海域の守りだった。
*広域・多層・常時監視型の防衛体制に移行
・戦略の変化
中国・ロシアの海空戦力を「早期に探知し、広域で抑止・対処する」
👉「通り道を守る」から「動き全体を見て抑える」への変化
・防衛海域
第一列島線(日本防衛の中核)
北海道〜本州〜南西諸島(沖縄・先島)に連なるライン
中国海軍の太平洋進出を抑える最前線
➡ 特に重要なのは:宮古海峡、大隅海峡、対馬海峡
👉 中国艦艇はこのルートを頻繁に通過するため、監視が強化されています
南西諸島防衛(最重点)
与那国島・石垣島・宮古島などに、地対艦ミサイル、地対空ミサイル、電子戦部隊を配備
👉 海峡封鎖ではなく、通ろうとすれば攻撃できる状態(拒否能力)にシフト
日本海側(対ロシア)
宗谷・津軽は引き続き重要、ただしロシアの活動は冷戦期より縮小
👉 現在は、哨戒機(P-1など)、イージス艦での監視が中心
・手段の変化
過去:機雷封鎖、対潜水艦戦(ASW)、海峡での直接阻止
現在:常続監視(ISR)〜 衛星、早期警戒機、哨戒機
👉 「どこにいるか常に把握」
スタンドオフ防衛
長射程ミサイル(12式改など)、艦艇・航空機からの遠距離攻撃
👉 海峡に入る前から対処可能
統合運用(統合作戦)
海上自衛隊+航空自衛隊+陸上自衛隊、さらに日米連携
👉 かつてより「統合」が格段に進展
日米同盟の役割拡大
アメリカ海軍との連携
空母打撃群・潜水艦との共同運用
👉 日本単独で海峡を守る発想ではなく、同盟全体で西太平洋をコントロール
・現在の目的
👉 「中国の接近拒否(A2/AD)と抑止」
👉 「グレーゾーン(武力未満)への対処」
つまり、“戦争を防ぐための見せる防衛力”が重視されています。
・まとめ
現在の日本の海域防衛は、
三海峡 → 第一列島線全体へ拡大
海峡封鎖 → 広域監視+遠距離打撃
個別防衛 → 統合・同盟防衛
という形に進化しています。
2006年に統合幕僚監部が新設された。防衛大臣の指揮・命令がすべて統合幕僚監部を通じて行われる。
統合の戦略合体は難しい。特にその調整にあたる指揮官・幕僚を育成することが難関。宇宙軍やサイバー軍のとの統合はさらに腹圧になる。
■ 統合と連合
軍事における「連合」は、軍事による国際協力のこと。連合軍には、国連軍・NATO軍・有志連合軍などがある。
*日本も含む連合軍を形成すると考えられる国
アメリカ合衆国〜日米安全保障条約
円滑化協定(RAA)などを締結し、実質的に連合軍に近い動きをする国々
オーストラリア〜日豪円滑化協定(RAA)、日豪安全保障共同宣言
イギリス〜日英円滑化協定(RAA)、グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)
フィリピン〜日比円滑化協定(RAA)
多国間の枠組みによって実質的な「連合」の土台が作られている
QUAD(クアッド)日・米・豪・印安全保障を含む広範な協力
インドとは「物品役務相互提供協定(ACSA)」を締結済み
日米韓〜2023年のキャンプ・デービッド合意
NATOパートナー〜「国別適合パートナーシップ計画(ITPP)」を策定
自衛隊は専守防衛。日本の領土・領空・領海以外の領域で攻勢作戦をとることはない。敵が日本領域に侵入したら反撃として敵基地攻撃はできる、という法解釈もあるが、航空自衛隊に敵基地爆撃の能力はない。海上自衛隊の艦砲射撃も敵基地攻撃には適していない。
*イージス艦以外の長射程ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)の搭載予定
12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型)
日本の反撃能力の主役となる国産ミサイル
「12式地対艦誘導弾」の射程を大幅に伸ばし、1,000km以上に延伸
ステルス性能も付与されています
イージス艦以外の主要な護衛艦への搭載
地上発射型は2025年度末から配備が始まります
艦艇に搭載する「艦発型」の配備は2027年度から順次開始される予定
もがみ型・新型FFM(護衛艦)や、その発展型である「新型FFM」
最初から長射程ミサイルの運用を前提とした垂直発射装置(VLS)を装備
トマホークや前述の12式能力向上型を運用する中核的なプラットフォームとなります
多機能護衛艦への「長射程ミサイル」付与
統合火網(クロス・ドメイン): 陸上や航空機から発射されたミサイルを、護衛艦のレーダーで誘導したり、その逆を行ったりするネットワーク化が進んでおり、艦隊全体で「打撃力」を共有する形を目指しています
米国において統合軍が発展したのは、ミサイルとITの進歩のためだと言われている。陸海空全てのプラットフォームが目標情報を共有し、どのプラットフォームから発射するかを選ぶ情報技術が自動で効率的な指揮を可能にした。
イージス艦搭載のSM-3ミサイルの情報網と射撃統制網は連動しており、西太平洋上に配置された米・韓・豪のイージス艦はそもネットワークの中にある。
リムパック(環太平洋合同演習)は、有志連合軍演習。集団安全保障措置に関わるもの。国際協調に基づく積極平和主義の軍事力行使である。
*2024年リムパックへの参加国
日本、米国、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、
フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、
マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、
大韓民国、シンガポール
*2025年リムパックには、29か国が参加する予定
アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、日本、ブラジル、インドネシア、
シンガポール、 オランダ、韓国、ペルー、ブルネイなどが含まれます
台湾の参加も推奨されています
■ 当面米国は一極集中に秩序を守るべき
近代戦力では、テロ・ゲリラには勝てない。
世界各国が国益重視の路線をとるなら、世界秩序は混乱する。
日本は戦争予防のための集団安全保障に参加する。米国を中心とする連合訓練への参加すること。演習を通じて防衛交流を重ね、外交に寄与していく。米国中心の大連合結束を図ることが大切。
■ 在日国連軍の活用
朝鮮戦争は未だ講和条約が結ばれておらす、休戦状態にある。国連軍司令部が今なお存在している。米空軍・横田金地内にある在日国連軍後方司令部には、8ヵ国の駐日大使館駐在武官が連絡将校を兼務している。国連軍地位協定も存在する。
■ 専守防衛は成り立たない
2013年に閣議決定された国家安全保障戦略は、基本理念を「国際協調主義に基づく積極平和主義」としている。武力を背景とした積極外交による平和主義。軍事的脅威を、1)大量破壊兵器の拡散、2)国際テロ、の2つに絞っている。これは、米国QRDで「最大の課題」として記述されたもの。
日本の核戦略は、1)核廃絶を目指す、2)米国の核抑止力に頼る、と矛盾したものなので、1)については具体策は無い。テロ対策は(日本では)警察の仕事であろう。治安出動下の自衛隊は、警察官職務執行法に基づく権限しか与えられない。つまり、警察も自衛隊も対応できない。
スイス、ノルウェー、米国、ロシア、イギリス、シンガポールでは、核シェルターが50~100%準備されている。日本でも、地下街に空気清浄機を設置し、2週間程度暮らせる食糧備蓄と上下水道を完備して欲しい。
専守防衛は軍事として成り立たない。日本のように広正面の国を針鼠のように守る技術は事実上は無い。専守防衛は、「日本は楯、米国が矛」という「日米ガイドライン」により成立している。
中国と日本は、尖閣諸島を奪取/奪還することはできるは、確保できない。怖いのは非武装の漁民などが多数上陸することである。この場合、派遣するのは「武装警察」としなければならない。
■ 日本核武装の是非
1964年中国が核実験を実施。「中国が核を持つなら日本ももつべきだ」ジョンソン大統領。ジョンソン大統領は核軍縮に取り組み、68年「核拡散防止条約」を制定。最近でも、「日本は核武装したらよい」トランプ大統領候補。
トランプ・プーチン両首脳の「核強化発言」は、米ロの核は陳腐化しているので、リニューアルする必要があるということ。
秘密管理と危機管理のできる民間工場が日本には無い。国の工廠も無い。日本には技術はあっても、核兵器を作る工場は無い。
■ 前捌きと本腰
歩兵戦時代と騎兵戦時代は、古代ローマ以来、何百年という周期で入れ替わった。第一次世界大戦で、火力の優越が重要になると、「騎兵の終焉」が囁かれるようになる。
騎兵部隊=機甲部隊とヘリボーン歩兵と空中騎兵は、偵察・警戒、先駆け・形成部隊。
*ヘリボーン歩兵
ヘリボーン歩兵とは、ヘリコプターを用いて部隊を迅速に展開させる戦術です。 この戦術は、エアボーン(空挺)と異なり、ヘリコプターが直接戦地に着陸するため、専門の訓練を受けていない歩兵でも行える利点があります。ヘリボーンは、空中での機動性や水陸両用作戦、特殊作戦に適しており、現代の戦術においてその重要性が増しています。具体的には、ヘリコプターを用いて部隊を迅速に展開し、敵の背後に設営することができ、戦略的な機動性を発揮します。
機甲騎兵部隊の装備は、装甲斥候車・軽戦車・装甲人員輸送車・自走迫撃砲。空中騎兵部隊の装備は、観察ヘリ・武装ヘリ・人員輸送ヘリ。
米国に比べ日本は、ヘリコプター部隊の活用が不十分なように思う。
大国の狭間にある国は、そのパワーバランスの中でバランサーとなり得る力を持たねばならない。
■ 危機に及んでは独裁を
世界の多くの憲法に緊急事態条項がある。緊急事態条項は、緊急事態にける政府の独裁を認めるもの。独裁官が無制限に権力を行使しないように制限を設ける。かのシーザーは終身独裁官になったために刺されたのである。
主権者たる国民の、自衛隊に対する付託というものが何であるかが不明確になっている。
■ 徴兵制と志願制
中国は選抜徴兵制。中国人は日本人以上に兵隊になることを嫌がっている。徴兵の募集広告は「息子だけは兵隊にとらないでくれと徴兵担当者に賄賂を持ってこさせるため」。「貧乏な農村地帯の青年は軍隊に入りたがっています」「兵隊は共産党員になる近道」。
スイスは1996年に徴兵制を廃止しました。
■ 情報を軽視しがちな日本
軍事情報とは、相手の能力と意図を知ること。
作戦は、状況判断から生まれる。
戦場での状況判断の要素は、任務、敵の能力、当方の能力、地形(環境)、時機。
諸外国に「この国とは戦争をすべきではない」と信じて貰うには情報を公開しなければならない。情報公開の原則と、秘密保持の原則は背反する。
中国は、心理戦、広報宣伝戦、法律戦の3戦を推進している。
機械-自動の情報収集が増えている。相手の意図を知るためには、ヒューマンインテリジェンスが必要。首脳外交と防衛交流が重要になっている。
「力の弱い兎は長い耳を持つ」中曽根康弘防衛庁長官。
