「新興俳句アンソロジー」 現代俳句協会青年部 2018年 ふらんす堂
女房が「包丁が切れなくなった」というので、庖丁を研ぎました。女房が使う包丁と、私が使う包丁は分けてあります(私のはいい加減な「万能庖丁」です)。女房は研ぎ上げると「切れすぎて怖い」というので、荒砥だけで緩くかける「鈍ら研ぎ」。なので直ぐ切れなくなります。なのでちょいちょい研ぎます。とは言え、たいした手間ではありません (^^)/ と言う訳で、読書です。
多くの句が収録されているし、「新興俳句」に興味があったので、図書館で借りて読んでみました。 以下は特に印象に残った句と語です。
新興俳句は、昭和六年に水原秋桜子が「自然の真」と「文芸上の真」の違いを主張して高浜虚子の「ほととぎす」と袂を分かったことを出発点としている。富澤赤黄男は、「俳句は詩である」とし、俳句を超季とする立場を明らかにした。
妻がゐて子がゐて孤独いわし雲 安住あつし
あたたかに顔を撫ずればどくろあり 阿部青鞋(かい)
梟の目にいっぱいの月夜かな
にんげんをもうすこしやってみるつもり
敗戦の冬の男等髪長し 石橋辰之助
雪路をさきだつ母の小提灯 井上白文地
秋晴れの空にくるへる時計台
ふつつかな魚のまちがいそらを泳ぎ 渡辺白泉
鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる 加藤楸邨(しゅうそん)
こがらしや女は抱く胸をもつ
女教師の汗に目をふせり少年は 嵩篤三
水枕ガバリと寒い海がある 西東三鬼
おそるべき君等の乳房夏来たる
梅雨はげし百足虫殺せし女と寝る
幼霊の遊ぶ声して小滝壺 佐藤鬼房
しんしんと肺碧きまで海の旅 篠原鳳作
白藤や降りやみしかばうすみどり 芝不器雄
我が影や冬の夜道を面伏せて 嶋田青峰
キャンプ・カーおもちゃの色に塗られあり
アイス・キャンデー百本売れて日が暮れる
一億のみ民のひとり初詣
一兵士はしり戦場生まれたり 杉村聖林子
流弾に死ぬかも知れぬ尿をする
月の出や死んだ者らと汽車を待つ 鈴木六林男
遠くまで青信号の開戦日
溶けながら考えている雪達磨
疲れては富士に面あぐ茶摘かな 中村三山
サイダー売り一日海に背を向けて 波止影夫
雪はげし抱かれて息のつまりしこと 橋本多佳子
炎天の梯子昏きにかつぎ入る
天と遊ぶわが凧の絲のばしきって
十万の下駄の刃音や阿波おどり 橋本夢道
鞦韆(しゅうせん)は漕ぐべし愛は奪うべし 東鷹女
みんあ夢雪割草が咲いたのね
天道虫天の密書を翅裏に
いなずまにまばたきしたる枯木達 日野草城
ブラウスの胸は振動計である
木の股に居てかんがへてゐるとかげ
クリスマスの夜のいとけなきピアニスト 藤木清子
啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々 水原秋桜子
出征ぞ子供等犬は歡べり 三橋敏雄
戦争にたかる無數の蠅しずか
かりかりと螳螂蜂の皃(かお)を食む 山口誓子
胸の上にこほろぎが鳴くと云ひて死にし 横山白虹
女郎蜘蛛身じろぎもせず神の前
グリーンピースをまく まだねむっている土 吉岡禅寺洞
戦争が廊下の奥に立ってゐた 渡邉白泉
玉音を理解せし者前に出よ

