「ビッグバンはなかった(下)」 エリック・J・ラーナー 1993年 河出書房新社

 とても弱い重力だけが宇宙を形成した筈はない。電磁気力が宇宙の進化に関わっていない筈が無い。どう考えても「そうに違いない」としか言い様がないし、現代の科学で観察可能な太陽系では、電磁気力の作用は実証されています。プラズマ宇宙論の全てが正しいかどうかは別にして、重力だけのビッグバンは妄想に過ぎず、電磁気力が宇宙の進化に関わっていることは、科学の事実として検証されています。

 ビッグバンが無かったことは常識ですが、それでも疑問が残ることがあります。それは、ギリシャの円錐幾何が、相対論の時空論でも姿を表すことです。

 ミンコフスキー空間は、ピタゴラスの定理の拡張だから算法としては合ってます。これを私は、四平方算法と呼んでいます。論理としては意味がありませんので、「定理」ではなく「算法」です。現代数学は「数理」を離れて「計算」に堕落しています。物理学が「物理」から「計算」に貶められているように。

 それでも、円錐幾何には「何か」ありそうです。古代ギリシャと近代欧州において、虐げられたユダヤ人が暗黒時代にその背景を作り上げたという点では一致していますが、何故「円錐幾何」なのかは、やはり疑問です。

 非ユークリッド幾何の根底にあるのも、円錐幾何です。どうしてだろう?きっと、人間の認識にとって、円錐という造形や数理が基本になっているからではないか?円錐幾何が数理の基本なのではなくて、人間の神経の性質にその起源があるのではないか?と妄想しています。 ← 科学の事実の根拠がないので、単なる妄想です。

 この本は、反主流派としての恨み辛みがダラダラと書かれていて冗長ですが、宇宙論の考えるきっかけは与えてくれています。 以下はこの本の要約と引用です。


《6. プラズマ宇宙》

 1960年代は、元素の起源についてのガモフの理論(ビッグバン)は否定され、定常宇宙論も宇宙が進化している観測によって疑問を持たれていた。

 アルベェーンとクラインは、物質と反物質を遠方に隔離できるプラズマ機構を提案した。物質と反物質の混合物が、磁場の中を動けば、電流が生じる。物質と反物質は反対方向に流れる。いくつかの雲は混合して爆発する。これがハッブル膨張である。爆発は特異点から生じるのではなく、数億光年の領域で数億年をかけて発展した。宇宙の起源は不要である。

 天文学者は、宇宙は非均質で、星・銀河・クラスター・スーパークラスターという階層を作っているだけでなく、この塊り方には規則性がある。星からスーパークラスターの範囲で、密度と半径の二乗の積は一定である。

 僅かな物質しか持たない宇宙では重力は小さく、ニュートン力学と一般相対性理論の違いは取るに足らない。

 フィラメント電流とプラズマが一緒になるとフィラメント螺旋を作ることが実験によって実証された。シュミレーションにより、電磁気力が銀河を形成したことが示された。こうして宇宙は回転する。重力では渦巻く宇宙は説明できない。銀河は電流を発生させ、それが圧縮することによって、ガス・雲・星が作られる。電磁場に支配される銀河では、平らな回転は自然に生じる。

 渦は電気を運動に変え、銀河が全体として発電機の働きをし、運動を電気に変える。銀河を生成した電流も検出された。

 渦には共通の特徴がある。密度と面積の積は一定、つまり、質量と表面積の非は一定。銀河が渦巻であり、電子も渦動である。両者の質量・面積比はほぼ同じである。数の一致は科学では危険である。背後に秘められた基本法則があることもあれば、偶然の一致でしかないこともある。

 質量と表面積の比は、様々な天体(銀河クラスター)で一定である。あらゆるフィラメントは同じ速度を持つ。密度×距離は一定である。天体は固定した軌道速度限界を持つ。

 プラズマと重力の法則から宇宙の階層が理解できる。

 殆どの銀河は22%のヘリウム、1%の酸素と0.5%の炭素を作る。元素のどの生成にもビッグバンは必要ない。

 宇宙背景放射は等方で滑らかである。放射はフィラメントに散乱されて滑らかで等方なものに変える。霧の水滴が光を散乱して一面の灰色に変えてしまうのと同じだ。ビッグバンの残影などではない。

 大きな赤色偏移を持つ銀河を発見された。それらはビッグバンよりも古い。ビッグバン妄想の信者は、。科学の事実を無視し続け、議論を回避する。ハッブル膨張を引き起こしているのは何か?この問題に答えられるまで、宇宙論論争は決着がつかない。

新しい宇宙論の影響

 ビッグバン妄想は、熱力学第二法則に対する神父ルメールの解釈から生まれた。宇宙は「熱的死」に向かっている。時間は有限であり、始めと終わりがある。一般相対性理論では、時間は第四の次元になり、時間は流れない。過去と未来は、右と左の関係になる。だが、ビッグバンという出来事が時間の非対称性を作りだす。

 ブリゴジーンは、宇宙は崩壊に向かうのではなく、秩序は混沌から生まれることを示した。時間は不可逆である。ブリゴジーンは、不安定性を通じる揺らぎの成長は、平衡から遠ざかるエネルギーの流れを論じている。

 プラズマは自然に、電流とエネルギーの流れの、小さい均質な一様な分布した状態から、大きな電流とエネルギーの流れを持つ非均質なフィラメントに発展する。エネルギーは創造されていない。自然な電流の自己圧縮(ピンチ)によって組織化されただけである。

 熱が高くなると、水の運動はある臨界点をで秩序だったものになる(対流)。より多くのエネルギーがこの動きに巻き込まれる。秩序を作りだす不安定性は、エネルギーの流れが生み出したものである。

 カオスによる秩序の形成に終わりは無い。水の滞留が始まると、新たな不安定性と新たな構造が生じる。新たな揺らぎと新たな進化の方式が生まれ、宇宙はより非平衡になる。エネルギーをより高い効率で捉える過程は、最も早く成長し、エネルギーの流れをもっと増大させる。進化に限界は無い。

 ある科学混合物が集中したエネルギーに晒されるとアミノ酸が生じる。プラズマ中でエネルギーを捕捉するのに最も効率が高いのは螺旋である。分子の場合でもDNAとRNAがそれである。

 宇宙進化には、多様な型を増加させる傾向がある。原子核期は、92種の元素を、化学進化は何十万種類の化合物を作り、生物進化は何千万種類の生物を発生させた。

 進化はエネルギーの流れの密度で測られる。人間の体は、単位面積当たりで、大洋の中心核の30倍も速くエネルギーを産出する。太陽の高温は、熱が急速に脱出できないために生じている。人体のエネルギーの変換速度は、太陽核の300万倍も大きい。変化の速さ、エネルギーの流れの増大する速さは加速される。

 生命が地球に与えた影響で最も大きいのは、植物の気候に与えた影響である。植物は太陽のエネルギーを利用して地表から水を汲み上げ、葉から水を蒸発させる。水を循環させ、太陽のエネルギーを吸収させる。蒸気が雨となって落下するさいに放出されるエネルギーが地上の風の動力となる。風は大洋の湿った空気を陸地に運じ、雨を降らせる。生物に利用可能な雨の量を増加させる。ついに、氷間気候を迎えた。

 生物は、エネルギーの流れを増大させる過程である。その過程で、地球の環境は進化してきた。

 ダーウィンがマルサスの人口論から引き出したのとは異なる機構。全生態系の食物供給を増大させ、かつ自分の分け前も増やす腫が進化する。進化するのは、個々の種ではなく、全生態圏である。進化を形作っているのは、全体のエネルギーの流れである。
*生態系の破壊とは、エネルギーと物質の流れを阻害することです。

 草を代謝し二酸化炭素を大気に還元する草食動物が進化しなかったなら、地球の進化は停滞しただろう。総体のエネルギーを増大させる局所生態系は成長し、そううでないものは滅ぶか停滞する。競争は、エネルギーの奪い合いではなく、エネルギーの流れを拡大する局所共生(生態系)間の競争である。それは長期の傾向であり、長い後退期を排除しない。利用可能なエネルギーの流れが縮小すると、大量絶滅が発生する。

 旧い様式が、入手可能なエネルギーを使い果たし、新しい芳樹が生まれていない場合、疫病と大量絶滅を招く。

 衝突するビリヤードの球の運動が逆転することはできない。系の不安定性(測定誤差)は、出発点に帰るのを妨げる。全ての系は不安定であり、未来を決定することも、時間を逆転することもできない。予測不可能性は、三体相互作用が不安定であることから生じる。宇宙に未来は実在しない。現実の「今」、意識の「今」があるだけだ。この不確定性は、偶然でも量子の不確定性でもない。

《8. 物質》

 「超弦に関する思弁は、中世の神学者に類比できるような人達が神学校で行うに相応しい活動に発展するであろう。高尚な研究の行き着く果てが、信仰による科学の代行であることを目にするのは、暗黒時代以来これが初めてだ。」シェルドン・グラショウ

 ビッグバン妄想が間違っていれば、素粒子物理学の基本も揺らぐことになる。

 マックスウェルを真似て、基礎物理学者は四つの力を統一し、物質を形づくっている粒子を説明する理論を展開することを望んでいる(大統一理論:GUT)。

 「究極の設計者は宇宙を設計するにあたって、美しい方程式だけを使われた筈だ」A・ジー。基礎物理学者は、プラトンと同じように、科学の事実を無視して、創造主が宇宙を設計した論理を探ろうとしている。

 ダ・ヴィンチは、自然を観察することによって美を見出した。プラトンのイディアを嘲笑った。ケプラーの記述した太陽系に対称性を見出すのは難しいが、その中に美を見出すことは難しくない。プトレマイオスの美しい対称性は不毛だった。
*前述したように、不毛であるにしても、古代ギリシャの円錐幾何と相対論の時空双円錐の間の類似は、人間の認識についての普遍なある事実を示唆しているように思えてなりません。それは基礎物理学の問題ではなく、分子生物学〜神経科学の課題です。

 もっぱら演繹が科学の方法論となる時、科学は停滞し、技術と社会は危機に陥る。

 物質がエネルギーを失うと、対称性は自発的に破れる。室温では水は対称的だが、凍ると結晶の面が非対称な方向をもたらす。ブリゴジーンは、エネルギーの流れの増大するにつれて非対称性を生じると見做した。

 標準モデルは「素粒子動物園」を整理するために生まれた。マレー・ゲルマンは、素粒子を分類すれば対象的に配列できることに気づいた。完全な対象性という考えが生まれた。ゲルマンは、中間子とバリオンが素粒子からできていると仮定した。新粒子が現れるので。もっと多くのクォークが必要になった。

 全てのクォークの質量と相互作用の強さ−計20個の定数−は、観測に基づいて理論の中に入れてやらねばならない。

 標準モデルも、観測に合わせようとすると、特殊な仮定が多数必要になる。標準モデルも観測と矛盾している。核の性質を予測できない。核物理学は素粒子物理とは分裂している。核の性質は、核それ自体の研究から見出された経験的な規則を用いて解釈されている。

 仮にクォークが存在しているとしても、スピンを担っているのは、クォークではなく、陽子である。これはQCDと矛盾する。

 物質は本来的に非対称性なのである。標準モデルは、観測に基づかない基本仮定=「点粒子」がある。量子電磁力学(QED)は、量子力学と電磁気学と特殊相対性理論をまとめた理論である。特殊相対性理論による修正を取り入れることで、量子力学は正確になった。素粒子物理学者は、QEDの数学形式−点粒子と粒子の交換による選ばれる場−は取り上げるが、電磁気の実在は無視する。点粒子仮説は矛盾を招いている。

 電子は電場から無限大のエネルギーを得ているので、その質量も無限大になる。「繰り込み」という算法が導入された。方程式に、電子の観測された質量を代入すれば良い。理論質量から無限大を差し引き、観測された質量を加える。正確に計算できる以外には、根拠は無い。

 素粒子物理学の困難は点粒子仮説から生じている。真空は生成されては消滅する見えない仮想粒子で満たされてる、と仮定されている。従って、尋空は膨大なエネルギーを持っていることになる。このエネルギーは質量と同じく空間を湾曲させる。

 量子力学の方程式は波動を記述するが、これらの波動がコントロールするのは点粒子である。測定がなされた時だけ、波動関数は潰れて粒子はある一点に、観測の結果として現れる。アーヴィン・シュレディンガーは。「猫の実験」を持ち出して、ボーアたちの考えをからかった。ボーアたちは、奇妙なのは宇宙であって量子力学ではないと主張する。シュレーディンガーやプランクやドブロイは、コペンハーゲン学派を神秘主義だと非難した。アインシュタインは因果性を放棄したことを認めなかった。シュレディンガーは、電子の位置が確定できないのは、点粒子が存在しないからだとした。

 アラン・アスペの実験は、何らかの信号が光よりも速く伝わっていることを示している。量子現象は非因果的であるとみなされている。量子世界では因果は成立しない。出来事が原因なしに起きることができ、粒子は現れたり消えたりする。ハイゼンベルクは、イデアの世界に進んだ。電子や原子は、行列の集合に置き換えられた。

 素粒子は形と大きさをもつ実在である。アスペの実験は、光速よりも速い交信を証明している。太陽の周りを巡る惑星の運動のような因果過程でも、時間がたてば非決定になることをブリゴジーンは示した。因果過程でも、量子力学の非決定な法則に従うのである。ブリゴジーンのアプローチは、量子過程は非局所であり、系全体の影響を受けていると仮定する。

 電磁気学の方程式は、流体力学の方程式と同じである。シュレディンガー方程式も流体の方程式と見なせる。流体中の不規則性から生まれるランダムな衝撃の影響を受けて運動する粒子は、シュレディンガー方程式に従う。プラズマ・フィラメントの方程式も、非線形シュレディンガー方程式と呼ばれているものである。陽子は、実際に渦である。粒子は「利き手」があるように行動する。

 科学専門雑誌で審査に当たるのは、主流派の中心人物である。同僚審査と専門化の弊害を克服する道は、ジュアン・レドレールの「学際化」しかない。自身の研究に直接関わる専門雑誌しか読まない研究者は、狭い視野しか持ち得ない。

 現在の米国の生活水準を世界中に人々に及ぼすには、全世界のエネルギーを5倍に増大させることを意味する。経済的にも環境的にも不可能である。人類は、宇宙を植民地にしなければならない。土地には限りがある。社会進歩の速度は、人口の急増期と結びついている。

《9. 無限の時間と空間の中で》

 ビッグバン妄想はキリスト教の創世記の科学版に過ぎない。宇宙の起源という考えは、多くの宗教には無縁のものである。宇宙に限界は無いと述べることは、汎神論つまり自然そのものが神である、とすれば神は要らないことに通じる。ユダヤ教とキリスト教では、無限宇宙を信じることは異端となる。

 無からの創造がキリスト教の教義となったのは、中世になってからである。宇宙が有限であることは、神の存在の証拠である。後に教皇科学アカデミーの長となるルメールが、ビッグバンを導いたのは熱力学の第二法則からである、

 熱力学は宇宙の衰退を要求しない。宇宙の秩序にも、エネルギーの流れ増大にも固有の限界は存在しないことを、ブリゴジーンは証明した。自然は、より大きなエネルギーの流れに向かって進化していく。歴史過程は、直線的に展開しない。

*エネルギー流量を最大化させる一つの尺度は、生態系の多様性です。ウィルス〜菌類〜植物/動物によるエネルギーの循環と物質の移動は、多様な種間の調和を前提としています。ホモサピエンスは、この生態系の多様性を阻害し、地球の進化を停滞させています。ホモサピエンスは邪魔者であり、絶滅すべき存在であることは論を待ちません。

*かつては、ウィルスは「生物進化の究極の一形態」と考えられていました。ですが最近では、ボルボックス(細胞集合体であり多細胞生物ではない)の形成にもウィルスが不可欠であるなどが解明され、ウィルスによる遺伝子の組み換えが生物進化の鍵を握っていることが証明されました(進化のためには染色体がウィルスに感染する必要があります)。さらには、ウィルスが生命以前に存在した可能性があること、が示唆されています。ある化学混合物が強い放電に晒されれば、有機物が合成され、その形態は螺旋になる … 、つまり、RNAが生体外で発生する可能性があります。ウィルスは生命進化の中核なのではなく、生命誕生の出発点であった可能性が否定できません。菌もそうですが、ウィルスも除去するのが「衛生」だという間違った考えは、生命力を低下させています。  

《10. 宇宙と社会》

 オカルト信仰が先進国でも発展途上国でも万延している。

 「フォーチュン」誌の推定によれば、1000人を超えない個人が、全世界の経済力の9割以上を所有ないし支配している。

《訳者あとがき》

 宇宙の構造の理解には、か弱い重力よりも、電磁気の作用を重視すべきだというのが、アルヴェーンの考え方。その方法論は、太陽系の電磁場の説明で成功を収めた。

 著者は、現代宇宙論が事実を無視していることを批判する。

 宇宙膨張は局所の現象であり、無限の宇宙全体にまたがる現象ではない。

 時間も空間も無限の宇宙の永遠の進化。進化の過程としての物質宇宙という宇宙観は、我々にどのような展望を切り開くのか?著者は熱く語っている。