「季語の記憶」 黒田杏子 2003年 白水社

 博報堂のプランナーにして俳人。夏川いつきの師匠。一冊は読んでみたくなり手に取りました。 以下は特に印象に残った句です。


 百八はちと多すぎる除夜の鐘 桐雨(暉峻康隆(てるおか やすたか))

 月の出の木にもどりたき柱達 六林男

 聞くうちに蝉は頭蓋の内に居る 篠原梵

 日に干せば日向臭しと母のいひし衾はうれし柔らかにして 長塚節

 *衾(ふすま)は掛布団

 恋猫の身も世もあらず啼きにけり 安住敦

 貌が棲む芒の中の捨て鏡 中村苑子

 雲を吐く口つきしたり蟇(ひきがえる) 一茶

 仕る手に笛もなし古雛 たかし

 だくだみや真昼の闇に白十字 川端茅舎

  どくだみは「十薬」。様々な病気に効く薬草。

 万緑や死は一弾を以って足る 上田五千石