自然科学研究機構 分子科学研究所
第135回分子科学フォーラム
「化学と幾何学 - 多面体の定理を活用したものづくり」
分子科学研究所 卓越教授 藤田 誠

 化学の苦手な私としては … それでも知っておかなければならないものなので、恐る恐る視聴させて頂きました。とても面白い内容で、この分野に興味を持ちました。

 ご案内のHPには、「私たちの住む3次元空間には、様々な幾何学的な制約か゛存在します。例えは゛、よく知られているように、すべての面か゛正多角形て゛構成される正多面体はたった5種類しか存在しません。このような3次元空間の幾何学的制約を逆手に取り、原子・分子の世界でものづくりを行う化学の世界において、「化学構造の幾何学制御」という新しい概念を考えました。金属イオンを頂点に、やや湾曲した分子を辺とする多面体構造を、金属と分子が引き合う性質を利用してつくってみると、一見無数の生成物ができてしまいそうな反応が、幾何学的な制約を受けてたった一つの構造を与えることがわかってきました。また,この研究を通じて,歴史上の数学者も見落としていた新しい多面体の系列が発見されました」とあります。ご講演の内容もこの通りで、目から鱗の連続でした。 以下はこの講演の内容を大雑把にまとめてみたものです。


 生物学、化学、物理学、はては経済学まで、自己組織化という概念が注目されています。

 金属イオン(パラジウム)と有機化合物を混ぜると、弱い相互作用を繰り返して自己組織化します。様々な形の結合ができ、「繋がった輪っか」も作ることができました。正三角形と四角形を合わせると、三次元の大きな構造ができました。

 金蔵イオンが誘起する自己組織化は、中空構造体であることが特徴です。このことによって、立法八面体ができたのです。

 正多面体は、5種類しか存在しません。これは、プラトンの立体と言われます。半多面体を含めたものは、アルキメデスの立体と呼ばれます。さらには、凹んだ多面体も考えられます。歪が少ないように組織化するすると、どんどん球に近づいていきます。

 自己組織化する構造を作るためには、折れ曲りの角度を調整してやることが重要です。角度を変えると全く違ったものができます。例えば、134°と135°でできる立体は変わります。

 できる形の選択性は、1)立体効果で制御する、2)電子効果で制御するがありますが、立体効果による方が様々な可能性を秘めています。

 目標としては、蛋白質を包み込める大きな多面体を作るのもその一つ。幾何学の教科書に載っていない構造ができたりします。また、原理的には異性体も作ることができます。最終的には、ゴールドバーグ多面体の拡張により、自然界には存在しなかったものを作ることもできるでしょう。新しい蛋白質も作ることができます。現在でも、ペプチド粒子が4個絡み合った構造も作れる

 立体効果は、飛び飛びの値しか取れません。物質が理論に先んじて、幾何学制御の理論が進化する可能性があります。逆に、構造は、数学的に予想でき、狙って構造を作ることもできます。複雑なトポロジーによる構造も可能です。