「ストレスマネジメント入門 島悟・佐藤恵美 2007年 日経文庫

 一般向けの実用書。生禿は学問的な本が読みたかったけど、著書は「はじめに」で、「ストレスはマネジメントできる」「働く皆さんのための実用書」と明言してあるので、それは生禿の責任。この本自体は、宣言通りに、役に立つ本だと思います。


《1. あなたを取り巻くストレスを再確認しよう》

 ストレス反応に自分自身が気づくこと。うつ病も早期発見が早期回復につながります。

 「変化」には必ず「適応」がセットになっていて、新しい環境に適応するまでの間、私たちは多大なエネルギーを費やします。

 10年後の将来像を思い浮かべて下さい。その将来像までの筋道で、どんなキャリアが必要か考えて下さい。

 職場の最も多い悩みが人間関係。職場で悩みを抱えた時に、相談できる人を見直します。

 自分の内に原動力が持てる人は、外的な環境変化に冷静に対応できます。

セリエのストレス反応のプロセス
・警告反応
心拍や血圧や体温の低下や筋肉の弛緩が見られます
・逃走・逃走反応
交感神経が緊張し、心拍や血圧や体温は上昇し筋肉は緊張します
・抵抗
自覚的にも不快や辛さが消えたかのように感じます
実は、ストレス状況に無理に適応しようとして、多大なエネルギーを消耗しています。
・疲弊
様々な身体反応が生じ、体調の不良を実感します

 エネルギーがチャージされないままストレスにさらされ続ければ、エネルギーは使い果たされていきます。

 ストレスと最も関係の深い病気はうつ病っです。最近の厚生科学研究によれば日本国民の15人に1人はうつ病に罹っています。

 うつ病では、様々な身体症状が見られます。そのため、内科や整形外科など精神科以外の病院を訪れる場合が多いのです。うつ病では、朝早く目覚めるタイプの不眠が特徴的です。朝に調子が悪く、午後から夕方にかけて調子が出てくる日内変動が見られます。心のエネルギーが減ってしまって、何をやってもつまらなく感じ、やる気がしません。食欲も低下します。注意力や集中力や判断力が低下します。

 うつ病になると神経伝達物質の変化がみられるため、治療が必要です。うつ病の治療は、薬・休養・心理療法(カウンセリング)・環境調整です。治療は、十分な休養を取ることが大前提です。また、ストレス源となっていることから距離を取ります。最も大切なのは、睡眠です。活動を抑え、気分転換のつもりの旅行なども控えます。

 ご本人自身が、これまでの自分と向き合って、考えたり感じたりすることが必要で、カウンセラーはご本人の気づきのプロセスを手助けする存在となります。

 うつ病で休職していた人が復職する場合、環境調整が必要なこともあります。安易に環境を変えてしまうと、新しい環境で再び同じ状況に陥ることもありますし、自己が成長する機会を逃してしまうこともあります。

 うつ病の人は総じて、真面目だとか完璧主義などと言われます。こだわりが強く、「〜すべき」に囚われて柔軟に考えることができません。競争心が強くせっかち、高血圧な人。取越苦労が多くいつも不安な人もうつ病傾向があります。
*備えて、気にやまない、が理想です。

《2. ストレスマネジメント取組む基盤を作る》

 生活の基本的なリズムを取り戻すだけで、症状が軽快する人がいます。うつ病はリズム障害とも言われ、人間に備わっている、地球の自転に合わせた24時間の体内時計、眠ること起きることのリズムが狂うことによる影響が大きいのです。体内リズムが崩れると、自律神経や免疫機能に悪影響が生じます。体内時計を正常化させるためには、朝の太陽光も有効です。明るい時間に就寝しなければならない時は、部屋を暗くし、体の活動レバルを下げて休息します。起きる時間を一定にし、それによって、体内リズムが整い、自律神経に乱れを防ぐことができます。

 昼間に15分から30分、耳栓とアイマスクで「ちょっと寝(パワーナップ:パワーを得る昼寝)」。30分以上寝るとだるくなってしまいます。全身の力を抜いて頭を休養させるには効果があります。視覚情報と聴覚情報を遮断して静かにしているだけでも効果があります。

 ストレスに強い人やメンタルタフネスのある人は、セルフモニタリングの意識を持っています。

《3. タイムマネジメント − 時間使い上手でストレス激減》

 自分で決めた「頑なな決め事」がタイムマネジメントを邪魔します。完成度と早急性の兼ね合いを阻害する、いつも決まった習慣。その習慣が無駄な時間を作っています。

 一日に二時間、来客や電話や休憩を入れない時間を確保します。集中した時間は、「ここまで終わった」という落ち着きをもたらします。

《4. 認知的ストレス対処法 − 物事の捉え方が変わればストレスも変わる》

 物事の捉え方によって、受けるストレスも違います。自動思考(頭に浮かぶ考え)は、意識しません。自動思考を振り返ると、攻撃的だったり不安が強かったり、偏りに気づくかもしれません。

認知の癖を修正する
1)行動の傾向を観察する
行動は目に見えるので分かりやすい
2)認知の癖に気づく
行動の癖から認知の癖にありかに見当をつけます
3)自動思考に飲み込まれない
自動思考は止められない
思い直すことが重要です
物事の捉え方は一つではないことを知ること
4)別の考え方を探す
貴方と同じ状況の人に助言をする
本当にそれが唯一かと問う

《5. コミュニケーションは身を助ける》

上手な自己表現(アサーション)
 ー 自分も相手も大切にしながら、自分の気持ちや意見を伝える
1)自分の気持ちに耳を傾ける
自分自身の気持ちがわかっていなければ表現のしようがありません
一呼吸おいて自分の気持ちを感じましょう
2)表現の内容
状況をそのまま描写する
私の気持ちを表す
相手の気持ちや立場の理解
考えや希望を明示
選択肢を提案
3)アサーティブ邪魔する思い込みを調べる
4)セルフフォロー
後からでもフォローできれば、人間関係はスムーズになる

アンガーコントロール(怒りや苛々を処理する)
 − 怒りはストレスと密接に関係する感情
1)自分の怒りの感情に気づく
自分がどこに怒っているのかを知るのは、意外に難しいことです
2)怒りを静める
心の中で一から十まで数える
心の中で「ストップ」「落ち着いて」と言う
深呼吸してホッとするイメージを思い浮かべる(落ち着くイメージを探しておく)
出来事や考えを文章にする
怒りを感じる事物から離れる
一晩たっぷり寝る
怒りを客観的に表現する(YOUではなくIで伝える)

 「あんたはグズだ」ではなく、「私は、あなたが遅いと感じるので、急いで欲しいと思っています」とIメッセージで表現します。怒りの制御は、気持ちや表現を抑え込むことことではりません。時に涙しながらも、相手の自分の気持ちを率直に伝えます。

《6. 適切にサポートを得よう》

 誰かに助けを求めるのも能力の一つです。どんな情報を得たいのか整理した上で、情報を集めます/助言を求めます。とにかく、気持ちを聞いて欲しい場合は、相談内容をしっかり絞っておく必要はありません。

《7. リラクセーションの勧め》

 筋肉をゆるめ、呼吸を落ち着かせ、自律神経の動きを整えます。いったん筋肉が緊張していることを感じてから、筋肉を緩めて「緩んでいる」を体感します。落ち着ける環境と体調で行います。

 自律訓練法は、精神医学者ヨハネス・ハインリッヒ・シュルツが、自己催眠から発展させ開発したリラクセーション法です。体が「重たい」「温かい」という変化を体験する方法です。重くなることは筋肉が弛緩していることし、温かくなるのは血管が拡張していることを示します。終えるときには、背筋を伸ばしたり、深呼吸をしたりして、はっきりした意識に戻します。

 ゆっくり深い呼吸をすることでリラックスしたり、脳を活性化することができます。

 今の感情と違う感情を味わう。手近な方法は、思いっきり笑ったり泣ける映画を観ることです。特に泣く行為には、感情を吐き出し、浄化する作用があります。

《8. ストレスに強くなるチャレンジングという方法》

 悩む時に避けたいのは、1)むやみに自分を責める、2)堂々巡りの思考をする、3)情報不足、です。

 テレビを消し、ネットを止め、考える時間を持ちます。思考を整理するために、ノートと筆記用具を用意します。

 チャレンジングな計画を立てることは、ストレスに対して受身の姿勢ではありません。乗り越えていくためのエネルギーを効率よく使います。

《9. 働くことを見直す − キャリアカウンセリング》

 仕事を選択する時に、譲れない拠り所の価値を、キャリア・アンカーと言います。

《10. ストレス・マネジメント活用事例 − ストレス生活への処方箋》

 苦手意識を持ったら、自分から前に出て、自分から働きかけます。

 ストレッチやウォーキングは、体全体を活性化させて、気分を切り替えてくれます。休日は趣味に没頭します。