「ＩｏＴまるわかり」 三菱総合研究所 日経文庫2015年
ブックオフで、「これ読んだかな？」と思ったが、パラパラめくると、読んだ覚えがないような … 。ところが家に帰って調べてみると、読んだ！ まったく〜！この惚け老人が〜〜。でも再読してみると、参考になることもあって … ということは、一度目に読んだ内容が、まるっきり頭に入っていないということじゃあないのか？ ふ〜困ったものです。
この本には未実現のＳＦのような話が多いのですが、セキュリティなどに関しては考えるべき課題を認識させてくれる部分もあります。 以下はこの本の要約と引用です。＊印は、ネット検索で調べた事項と、私の所見です。
《はじめに》
「ＩｏＴ」は「モノのインターネット化」。
《キーワード》
・インダストリー4.0
ドイツの産学官が共同で取り組んでいる新しい製造業のコンセプト。地域ごとに関係のあるメーカー群＝産業クラスターの間をデジタル･ネットワーク化します。ＩｏＴを活用して製造にかかわる情報を繋げる生産システムの構築を目指しています。
・ドローン
人が搭乗しない航空機。ラジコンは目視で操作しますが、ドローンはカメラ画像やＧＰＳにより操作したり自動飛行するもの。
・ＳＮＳ
昔から、掲示板や伝言板などアナログなソーシャルメディアはありました。
・クラウドコンピューティング
ネットワークを通じて、ハードやソフトやデータを使用する方式。
・スマートヘルスケア
健康診断履歴･受信履歴(カルテ)･投薬履歴･日常のバイタルデータを医療･介護施設で共有し、適正な医療･介護に活用します。スマートフォンがプラットフォームになると予想されています。
《1. ＩｏＴを大づかみしてみよう》
Ｍ２Ｍは効率化を目指し、ＩｏＴは価値創造を目指す。
センサーが低価格になり、スマートフォンが専用端末に置き換わった。データを蓄積するインフラが整備され、データを定速に分析する技術が登場した。
「スマート」は「賢明な」という意味。センサーと通信機能と自立制御機能があるシステムを指します。スマートであるには、ＵＩとＵＸが重要になっています。
やり取りをする相手が、人間なのか物なのかシステムなのかはっきりしなくてもコミュニケーションが成立します。
メーカーが売ってしまった後でも、ユーザーの使用状況がわかるようになります。その使い方データから、付加価値を探して広めていきます。「意図せざる使い方」からイノベーションは始まります。
ユーザーインサイトには、行動観察などのフィールドワーク、ストーリーテリングや即興演劇などのワークショップ、交流制約法などの想像思考手法があります。
＊ストーリーテリング
「ストーリーテリング」とは、伝えたい思いやコンセプトを、それを想起させる印象的な体験談やエピソードなどの“物語”を引用することによって、聞き手に強く印象付ける手法のことです。
iPodがあっという間に市場を席捲したのには、スティーブジョブズが市場に投下した一言のストーリーにあります。“1,000曲もの音楽が、あなたのポケットに。(1,000 songs in your pocket.)”この一言でiPodはたちまち人気音楽プレイヤーとなり、成功に導いただけでなく、産業全体を変えたとも言われています。それまでMP3プレイヤーを提供しているメーカーのほとんどが、「こんなに素晴らしい機能を持っていますよ！」というプロダクトアウト的な訴求ばかりでストーリーを持っていませんでした。
＊即興演劇
インプロ（即興演劇）とは、イギリスの演出家であり教育者のキース・ジョンストンが確立した教育法です。子どもが個々に持っている表現する力を育て、自由でありのままの姿を取り戻します。
近年では創造力や表現力のほか、チームワーク、臨機応変力、コミュニケーション力を養う有効な方法として、GoogleやPIXARのようなアメリカ企業でも研修として取り入れられています。
＊創造的グループ思考「交流制約法(TCoM)」
明治大学法学部教授 阪井和男氏が開発した発想法。
＊上記の３つ（即興演劇のある部分以外）は、本来の意味でのインサイト(洞察)と何の関係も無いものですが … ビジネスの世界は言葉の使い方はいい加減なのでどうでもいいか〜〜〜。
アイディアが出たら、それをそのまま形にしてお客様に試してもらい、フィードバックをもらって改善し発展させる、というアプローチを「アジャイル」と呼びます。
《2. 消費･サービスへのインパクト》
中高生の間で問題となった「既読スルー」は、リアルタイム回答を強いるものです。
お客様はわがままです。お客様がわがままだからこそ、商品やサービスが売れるのです。
デジタルサイネージは、屋外や店頭などで、ディスプレイを使って情報を表示するシステム。接客型デジタルサイネージは、質問や発言を認識し、日時や天候などに応じた情報提供を提供します。
ウェラブル端末は、バイタル(生体)データが取得できる端末。
カスタマージャーニー分析は、消費者が商品を選択〜利用する行動プロセスを明らかにします。
サプライチェーン･プランニングは、実需ベースの需要予測や、需要変動による生産計画修正を行います。
非接触型タグ(RFID)は、単品管理ニーズにより、国際標準化が進み、ＧＳ１によりコード体系が設定されました。ＪＡＮコードもＧＳ１の一つです。レジや改札を通ると、情報の書き換えが行われます。
非接触の読み書きするＮＦＣチップが普及しています（日本では「オサイフケータイ」）。
旅行は、パック旅行から個人旅行へ移行しています。スマホ上のコンシェルジュ機能を活用して、現地の橋渡しと通訳をこなすことも可能です。
外界から切り離してくれるディスプレイとヘッドホンがあれば、自分好みの環境に居続けられます。自分の嗜好にあった予定調和の心地よさと、想定外の刺激と驚きの組み合わせが求められます。
過去の録画･録音はタダに近くなり、リアルテイムの経験は価値が高くなります。
《3. 製造業･ものづくりへのインパクト》
品質･コスト･納期(ＱＣＤ)は、売切り型のビジネスモデル。顧客向けのソリューションサービスは、物以外の価値が中心になります。
スマートファクトリー産業プラットフォームは、インダストリー4.0の構成企業の多くが参画し、実証実験などを行っています。長年にわたって形成された、産官学が連携した産業クラスターという土台の上に成立しています。
インダストリー･インターネットは、ＧＥが提唱･推進しているコンセプトです。販売した機械のデータを分析し、顧客が機械を使って得られる価値を最大化します。製品を購入してから排気するまでに注目し、顧客の使用価値を把握し、価値をさらに向上するにはどうしたらよいかを考えます。顧客の囲い込みができます。顧客の変化を自ら作り出します。
インダストリー･インターネットは、顧客の利用環境の標準を作ることになり、その市場のトップメーカーでないと実現が難しいものです。
自動車のＩｏＴ＝自動運転と捉えるのは、これから起こる変化を矮小化しています。行動予定をスマホに登録すると、自動運転車で駅に向かい、電車に乗り、到着した駅で別の自動運転車が待っていて目的地に向かう。予定が変われば全てのアレンジを修正する。移動のＩｏＴ化の手段の一つとして、自動車が組み込まれると理解すべきです。
自動者向けＯＳの中心はグーグルとアップル。グーグルは、2014年にホンダ･ＧＭ･アウディ･現代･エヌヴイディア(半導体)とＯＡＡを設立。アップルは、メルセデスベンツ･日産･ホンダ･フェラーリとCarPlayを立ち上げました。
ブレーキのかけかたから危険な場所を抽出したり、ワーパーの動きから雨の動きを把握したりできます。
送配電機器に付けた温度センサーでリアルタイムに熱上昇を感知し、送配電網の流れを随時調整し、送配電機器の損傷を抑えています。
ＩｏＴ環境は、セキュリティ上の危険性を高めています。制御系システムから情報システムへの不正アクセスの足掛りにしたり、社会インフラの制御系システムが攻撃対象になる危険性が高まっています。
制御系で求められる遅延ミリセカンド以下のリアルタイム性や、停止検証が難しい中での可用性といった、厳しい制約下でも機能する新しいセキュリティ技術が求められています。
制御系システムの歴史は古く、かつオープンなネットワークへの接続を想定していなかったものがほとんどです。安易に接続すると、重大な危険が生じる可能性があります。
《4. 日本にとって大きなチャンス》
もの造り、サービスに加え、市場のプラットフォームが重要な役割を果たします。
