「量子力学のからくり」 山田克也 2003年 ブルーバックス

 この本、見落としていました。数式も遠慮なしに載せる本格派。ブルーバックスにしては難しい部類だけれど、版を重ねて読まれている好著です。勉強させて頂きました! 以下はこの本の要約と引用です。*印はWeb検索結果です。


■ まえがき

 学生時代、量子力学は確率論にすぎないという印象を受けました。量子力学ほど数学的な理論はありません。

 粒子が波のように振舞っていることは確かめられているのだけれど、観測すると波は消えてしまいます。

■ 分母から1を引けばよい

 「波は動く」のではなく「伝わり」ます。媒質は同じ場所で上下運動を繰り返します。振動が媒質を伝わっていく現象が「波」です。

 電磁波は磁場と電場が振動してできる波。場の強さが変化するだけでなく、方向も周期的に変化します。電場も磁場も物質ではありませんから、電磁波は媒質が無くても発生します。

 いくつもの波が同じ媒質中を同時に伝搬すると、波は重なり合い干渉が起きます。波は「重ね合わせの原理」に従います。波同士が相互作用することはありません。

 波は障害物に遇うと、その障害物の端を通過する際に進路が曲げられます(回折現象)。光は小さな穴を通過すると広がります。

 物体を熱すると熱線がでます。熱線は空気がなくとも空間を伝わります。熱を加え続けある温度以上になると、光を発します。

 電磁波は、電荷を有する物体が加速される/振動すると発せられます。

 電荷そのものは何であるのかは分っていません。電荷は、物質粒子に属いています。電磁波は電荷を有していません。

 全ての波長の電磁波を発生できる物体を「完全黒体」と言います。完全黒体は、全ての波長の電磁波を吸収します。

 完全黒体の温度が、周囲の温度よりも高い場合は、全ての電磁波を放出します。

 光の色は、振動数あるいは波長によって決定されます。

 物体の温度は、物体が熱平衡状態にある時にのみ定義されます。

 光の強さは、振動数によって変化します。

 光の色は、物体(黒体)の温度だけに依存しています。

 光のエネルギーは、光の持つエネルギーはプランクの定数hと振動数fとの積hfで表されます。特定の色を持つ光のエネルギーは、色(振動数)によって異なります。

 数えられる量を「量子」と言います。

■ 電子が波であるという証拠

 熱も自由電子によって運ばれます。金属内の自由電子は金属内だけで自由。金属の外に自ら脱出することはできません。

 光電効果では、光の振動数に左右されます。光が金属に当たると瞬時に電子が飛び出します。光子は(エネルギーを失って)消滅します。金属に入ってくる光子の振動数が、電子1個を弾き出すエネルギー以上の場合には、電子の運動エネルギーが増えます。

 弾性衝突が起きた瞬間、ぶつかったボールは止まっているボールに運動エネルギー全部を与えてます。ぶつかったボールは止まり、止まっていたボールはぶつかってきたボールと同じ運動エネルギー(スピード)で動きます。光が電子にぶつかるときには、粒子ととして考えます。

  特定の色を持つ(振動数fの)光が粒子として電子と反応を起こす場合、そのエネルギーはhf。光子は重さのない電気的に中性の粒子。光速で走っているため、エネルギーと運動量をいます。光子は質量がなくとも運動量を持ちます。

 光の振動と言っても、光子自身が振動する現象ではありません。光(電磁波)の場合は電場と磁場の振動を意味しています。

 カメラは光電効果の応用です。目に見えるものは、光子が網膜と作用することによって電子信号が発せられ、その電気信号が脳に伝えられて見えることになります。

 電子が全く自由で何からも束縛されていないとすると、電子に衝突した後も光子は消滅することはありません。衝突の際にX線光子は電子にエネルギーと運動量を同時に与え、光子はその分運動量とエネルギーを与えます(コンプトン散乱|日弾性衝突)。

 振動数fは波の状態を表すもの。なのにE=fhは、粒子の持つエネルギーを表します。プランクの定数hは、粒子と波を関係づける定数です。光と言えど、波動性と粒子性を同時に表すことはありません。エネルギーEは粒子性を、振動数fは波動性を表します。

 電磁波を量子化すると光子が現われます。

 電子が単独にポテンシャル・エネルギーを持ちません。ポテンシャル・エネルギーは相互作用に由来するエネルギーです。

 原子は球形をなしています。量子飛躍は、電子が外側軌道から内側軌道に移ること。軌道間のエネルギーが光に変換されます。

 運動量p=mv m:質量 速度:v

 運動エネルギー=(1/2)mv^2

 光子1個のエネルギー E=(hc)/λ f=c/λ λ:波長

 [p=h/λ]は質量0の光子に対する運動量。光子は運動エネルギーやポテンシャル・エネルギーを持つことができません。運動エネルギーやポテンシャル・エネルギーは質量を持つ粒子のみに関与しています。質量のない光子を加速できません。真空中の光子の速度は一つしかありません。

 ド・ブローイの式[λ=h/mv]は、物質波の波長。

 質量を有する粒子のエネルギーは、運動エネルギーとポテンシャル・エネルギーの和です。ポテンシャル・エネルギーは、粒子が他の粒子と相互作用するエネルギーとして貯えられています。

 粒子が波として振舞う時、振動しているのは粒子そのものではありません。波になっている時は、粒子ではありません。あくまでも波としての振動です。波になると空間に広がりを持って存在することになります。何が振動しているのか?全く観測不能です。

 人間が観測結果=波か粒かを決定するように思えます。

 質量mの粒子が秒速vで半径rの円運動をしている場合の角運動量はmvr。角運動量の次元は[運動量]×[長さ]。これがプランク定数hの持つ単位となります。

■ 見ようとすると消える波

 どんな波でも回折現象は起こります。障害物近くを通過する際に進行方向が曲げられます。波の波長と障害物の大きさが同じ程度の場合、波は最も顕著に回折されます。

 レーザー光線は、波の位相が一致しているコヒーレントな波。二重スリットを通過した光は、スクリーンに干渉縞を作ります。1個の電子が2つのスリットを同時に通過しないと干渉は起こりません。スリットが1つの場合は、解説縞が現われます。干渉縞も回折縞も確立分布を表しています。

 粒子に対する波動関数は、波動性と粒子性の両方の状態を含む「状態ベクトル」です。

 無限空間を自由に直進運動する粒子の波動関数は

 Ψ(t,x)=Acos(ωt−kx)+iAsin(ωt−kx)

 t:時間 x:位置 ω=2πf k=2π/λ

 波は静止していることは絶対にありません。同一の波が反対向きに移動している場合、定常波という合成波ができます。静止しているように見えますが、一つ一つの波は移動しています。

 1個の電子が二重スリットを通過する状態を示すΨ関数は

 Ψ=ψ(1)+ψ(2)

 ψ(1)とψ(2)との和=重ね合わせで表されます。

 波動関数Ψは、実在する波を表しているのではなく数学的な波です。|Ψ|^2 は電子の存在確率を表すと解釈されます。

 |Ψ|^2=|ψ(1)+ψ(2)|^2

 |Ψ|^2=|ψ(1)|^2+|ψ(2)|^2 + ψ(1)ψ(2)*+ψ(1)*ψ(2)

 右辺の前の2項は回折パターンを、後の2項は干渉を表します。

 電子はスクリーンに当たる時は粒子として当り、その場所は波動関数の干渉に左右されます。

 電子の何が振動しているのでしょう?誰にも分かりません。波を数学的に表したに過ぎないのです。

 光子に対する波動関数。電磁波は、電場と磁場という「場」が振動しその振動が空間を光の速さで伝わります。

■ 振動の出所は波動方程式

 波は波動関数を解くことによって得られます。糸に伝わる波は古典波動方程式を満足し、電磁波は電磁波方程式を満足します。シュレーディンガーは、電子が波として振舞うなら、それに対する波動方程式はアインシュタインの関係式とド・ブローイの関係式を同時に満たさなければならないと考えました。

 アインシュタインの関係式 E=hf f:振動数
 ド・ブローイの関係式 λ=h/mv λ:波長

 シュレーディンガーは、この2つと光学の理論さらにハミルトン=ヤコビの式を駆使して波動方程式を得たのです。∇^2は空間座標についての2階の微分を表します。

 素粒子のポテンシャル・エネルギーUは、粒子と場との反応エネルギーのことです。

 アインシュタインの関係式とド・ブローイの関係式を同時に満たすためには、波動関数Ψに虚数が現れます。虚数の入っている波動関数は観測不能です。

 電子は点粒子で空間に広がりを持ちませんから、電子自身が振動するのではありません。波動関数は波動性を数式に表しただけで、実体はありません。

 Ψ(t,x)=Acos(x,t)+iAsin(x,t)

 電磁波、糸状の波、水面上の波、音波など。観測できる波は、実数部分と虚数部分を切り離すことができ、それぞれ独立に波動方程式を満足します。実数部分の波動関数は、実際に観測される波を表します。シュレーディンガーの波動方程式は、虚数部分を切り離すことはできません。物質波/確率波は観測できません。

 水素原子のエネルギー=電子の運動エネルギー+ポテンシャル・エネルギー

 角運動量L=mvr

 厳密に言うと、等速直進運動量をしている物体も、ある固定された点に対しては角運動量を持っています。

 角運動量は保存されます。フィギュアスケーターが腕を伸ばしたり縮めたりすると回転速度が変わります。角運動量が一定に保たれているからです。

 水素原子の対するシュレーディンガーの波動方程式。−e^2/rは水素原子のポテンシャル・エネルギーです(e:電荷)。

 角運動量が保存される限り、シュレーディンガーの波動方程式はエネルギーに関する方程式と軌道角運動量に関する方程式の2つに分離されます。

 波動関数に境界条件を当てはめることによって、水素原子のエネルギーも軌道角運動量も量子化されます。量子化は、粒子としてではなく、波として扱ったからこそ生じたものです。

 量子化を表現する整数を「量子数」と呼びます。量子数は単なる「数」で単位はありません。

 電子のスピンは、外部の物理条件には左右されず一定の角運動量を持ちます。スピンに境界条件はありません。電子のスピン角運動量に対する量子数は1/2になります。

 日常生活で見られる波はエネルギーを持っていますが、角運動量は定義できません。

 n=1の軌道が最もは波長の長い(振動数の低い)電子波を与えます。n=1よりも内側の軌道は存在しません。これがために、水素原子は潰れないのです。

 [mvr]は粒子に対する軌道角運動量。シュレーディンガーの方程式から得られる軌道角運動量[L=ℏ√(l(l+1))]は、粒子ではなく量子の角運動量です。

 確率は、「観測に対する確率」。|Ψnlm|^2 は水素原子における電子の位置の分布を表します。電子の存在分布(電子雲)こそ、水素原子の形を表しています。

 量子飛翔(クオンタム・リープ)。電子が軌道を変えている最中はどうなっているいるのでしょう?誰にも分かりません。エネルギーが量子化されるという場合の「エネルギー」は常に全エネルギーを表します。

 位置座標xを−xに変える操作(鏡に映す操作)をパリティ操作(空間反転)と言います。

 波動関数 Ψ(−x)= Ψ(x) 偶関数のパリティ(偶奇性)は 1
 波動関数 Ψ(−x)=−Ψ(x) 機関数のパリティ(偶奇性)は−1

 シュレーディンガーの波動方程式は、波動関数が偶関数でも奇関数でも元のままで変わりません。鏡の中の世界と現実の世界の世界で同じシュレーディンガーの波動方程式が成り立つ。区別はつきません。パリティが保存されると言います。

 弱い力によって引き起こされる物理現象では、パリティが保存されません。

 電子の質量m、電荷e、プランク定数hが、全ての原始の大きさを決めています。

 粒子が観測されていない時、全ての波動数を持つΨ1(x),Ψ2(x), … が重なり合っています(重ね合わせの原理)。

 全部の波が重なり合った「合成波」は、「波束」。全ての異なるエネルギーを同時に持っています。

 |Ψn(x)|^2 と |an|^2 は区別されます。

 |Ψn(x)|^2 は、エネルギーがEnである粒子がxという位置に見出される確率

 |an|^2 は、観測の結果、粒子のエネルギーがEnと出る確率 a0はボーア半径

■ 無から有が出る

 ハイゼンベルクの行列力学。粒子の位置と運動量を掛け合わせる場合、掛ける順序=測定順序を逆にすると違った値が出てきます。

 xp≠px

 位置と運動量に関する「不確定性原理」が導かれます。

 振幅も波長も異なった多くの波を合成すると、合成波は集中し波束が形成されます。

 波長や振幅の違いが連続である場合、この「足し合わせ」はフーリエ積分となります。

 波束も直接観測することは不可能です。波束に測定器をあてては発見されるのは粒子です。

 不確定性原理 ΔxΔp≧ℏ Δx:位置の不確定さ Δp:運動量の不確定さ

 左辺は「長さ」と「運動量」の積。角運動量の単位を持ちます。ℏも角運動量の単位を持っています。

 波であるからこそ不確定性が出てきます。粒子が持つ位置とか運動量は、実際に測定してみて初めて意味が出るものです。

 量子力学においては、物体からこれ以上熱を取り去ることができない状態を絶対温度と言います。真空から熱を取り出すことはできないので、電磁波を含まない完全真空の温度は絶対零度となります。

 周囲の温度が絶対零度であっても、「波?」はじっとしていることはできず、運動エネルギーを持ちます(零点エネルギー)。この意味では「真空」は「真空」ではないと言えます。

 不確定性原理 ΔEΔt≧ℏ

 時間Δtの間、エネルギーは保存されません。Δtの時間の間だけ、真空からエネルギーが発生しても消滅してもよいことになります。

 電荷を持つ粒子が単独で無から現れることは決してありません(電荷保存の法則)。電荷には不確定性原理がないのです。

 エネルギー保存の法則を破って発生する粒子を観測することは不可能です。「仮想粒子」と呼ばれます。

 プランク定数は、電子や陽子のレベルに立つと、小さな値ではありません。

 中性子星の内部では、重力による圧縮があまりにも強いために電子は陽子の中にめり込んでしまい、中性子に変容しています。

 不確定性原理によって粒子の位置と運動量が決定できません。「初期条件」が決定できなくなります。電子がどこに到達するのか決定できない。未来は決定できません。

■ 私の方程式は私よりも賢い

 電子のスピンは「量子力学的なスピン」。自転しているイメージでは理解できません。電荷を持つ物体が自転すると磁石になります。

 ディラックは、量子力学を相対性理論に合致するように組み込むと電子のスピンが現れることを発見しました。電子のスピンはシュレーディンガーの波動方程式からは出てきません。

 電子がどのくらいの大きさなのかハッキリとは分っていません。点の面積も体積も零です。点は自転しません。電子がマイナスの電荷を持ち、永久磁石になっている事実の上に立ってか考えると、電子は自転していると考えざるを得ません。

 スピンによる角運動量=スピン角運動量のZ成分2つしかありません。Z軸に平行か反平行かのどちらかです。Z軸に平行なら「上向きスピン」、反平行なら「下向きスピン」。スピン角運動量を単にスピンと呼びます。「上向き」と「下向き」の2つの状態が同時に重なっています。この重なりがスピン波動関数によって表されます。

 スピン角運動量 S=ℏ√(s(s+1))

 Z成分(長さ) Sz=ℏms ms=±1/2

 ニュートリノもスピンしていますが、電荷を持っていません。スピン量子量数は電子と同じ1/2です。

 スピンの方向と運動量の方向が反平行になっている場合は、左巻きのスピンを持っていると言います。

 素粒子が光速度で走れるのは静止質量が零の場合です。

 全ての素粒子(内部構造の無い粒子)は、スピンを持っています。電荷とスピンを持つ粒子は磁石になっており、磁場と反応します。

 フェルミオン:スピン角運動量の値が半整数
 ボーズ粒子 :スピン角運動量の値が整数

 排他率はフェルミオンにだけ適用される法則です。

 2つの電子の物理状態をまとめた波動関数
 対称  Ψ(A,B)=+Ψ(B,A)
 反対称 Ψ(A,B)=−Ψ(B,A)

 全てのフェルミオンは、反対称です。2つの電子の物理状態が同じならば、同じ場所を占めることはできません(排他率)。

 2つのボソンの場合、波動関数の振幅は倍化され、2つのボソンはお互いに物理状態が同じであることを好むようになります。

 量子数の組は、エネルギー(量子数n)、軌道角運動雨量(量子数l)、Z成分角運動量(量子数m)、スピンの状態(量子数ms)。物理状態を完全に記述します。

 4つの力、強い力(色力)、電磁力、弱い力、重力は、全て粒子の交換によって生じます。交換される粒子(ボソン)は「ゲージ粒子」と呼ばれています。

 ヘリウムの2つの電子の合成スピンは零。ボソンとなります。

 光の測度=空間/時間=一定

 シュレーディンガーの波動方程式は、特殊相対性理論の要請を満足していません。ポール・ディラックは、相対論に合致する波動方程式を完成させました。空間座標についても時間座標についても波動関数が1回だけ微分される方程式を作り上げました。

 E=MC^2 に現れるmには速度によって増えた質量も含まれます。走っている粒子は運動量を持つので、全エネルギーの2乗は

 E^2=(pc)^2+(mc^2)^2

 ディラックは、4行4列の行列を使って「相対論的波動方程式」を導きました(ディラックの波動方程式)。自由電子に対するディラックの方程式のαとβは、4行4列の行列です。電子のスピンの数学的な表示が行列で示されることは、パウリ・スピン行列で分っていました。ディラックの方程式は、スピン量子数1/2を持つ電子に対する場の方程式です。

 mvrで表された角運動量とスピン運動量を合わせた全角運動量は時間とともに変化しない、保存されます。

 ディラックによると、無数のマイナス・エネルギーの電子が空間を埋めています。マイナス・エネルギーを持つ電子は、時間を逆行して走るとも解釈されています。

 マイナス・エネルギーの電子が叩き出された後にできる「穴」はプラスの電荷を持った粒子のように振舞います(電荷の符号がプラスの陽電子)。

 クライン=ゴルドン方程式は、相対論的エネルギー式[E^2=(pc)^2+(mc^2)^2]に基づいています。スピンを持たない粒子に対して成り立ちます。クライン=ゴルドンの方程式は、パウリの排他率に従わず、粒子の数に制限を受けません。

 光子のように電荷を持たない素粒子の反粒子は、粒子と区別がつきません。

 場の量子論は、波の振幅を量子化する理論です。電磁波を量子化すると光子が現れます。そして、粒子に対する波動関数(波)を量子化します。結局、量子化を2度することになります。波動関数の量子化は「第二の量子化」と言われます。

 場の量子化は、生滅演算子と生成演算子によって行われます。波動関数はその演算子となります。波動関数をフーリエ成分に分解し、その係数が生成演算子や消滅演算子になります。電子場を量子化すると、電子の生成及び消滅が起こるために「粒子性」が現れ、電磁波を量子化すると光子の生成と生滅によって「粒子性」が現れます。

 素粒子と素粒子の反応は波動関数同士の反応となります。その結果、新しい粒子が生成され、元の粒子は消滅します。Ψは「場」と解釈された方が的確です。素粒子を波動関数=「場」とみなして、その場の量子化によって素粒子反応を記述します。

■ トンネル効果?それがどうした!

 (粒子の)電子の運動エネルギーがポテンシャルの山を越えないと、戻されてしまいます。電子が波として振舞うと … 電子波は障壁ポテンシャルの山にぶつかると、一部は山に反射され、一部は障壁ポテンシャルの山の中に入り込みます。電子は山越えするだけのエネルギーを持っていなくても山の反対側に出てくる可能性があります(トンネル効果)。

■ 結局、誰も量子力学を理解できないのか

 波動関数の収縮は、シュレーディンガーの波動方程式やディラックの波動方程式を吟味しても出てきません。波動関数の収縮は、人間の意識が作り出すものなのでしょうか。波動関数の収縮は、「量子力学の解釈問題」。標準はコペンハーゲン解釈。

 波動関数は確率波。個々の電子がスクリーンにぶつかる確率は波動関数から計算されます。その位置に関する波動関数は、スクリーンにぶつかった時点で「点」に収縮します。

 観測結果が確率的であるということは「どのような原因でそのような結果になったのか」を説明できないということです。どのような過程を経てその結果に辿り着いたのかは分からず、観測結果は因果律に従っていない(原因がハッキリしていない)ことが分かります。

 EPRの思考実験。1個の電子核を固定します。この原子核から2個の素粒子が飛び出します。原子核は静止していたのですから、原子核の運動量は零です。素粒子が原子核から飛び出した後の全運動量も零でなければなりません。2個の素粒子はお互いに真反対方向に飛び出さなければなりません。どんなに距離が離れていても素粒子Aの運動方向が確定された瞬間に、素粒子Bの運動方向が確定します。

 関係が無いのにAの状態をBが知ると言うことは、AとBの間に何らかの信号伝達がある筈です。

 原子核から飛び出た電子のスピンの状態は、上向きと下向きが同時に重なっています。角運動量保存則に従い、2つの電子の総合スピンは零でなければなりません。電子Aに測定器を当てて上向きと確定されたとします。この瞬間、電子Bのスピンの向きは下向きになります。

 瞬時に伝わる遠隔作用は「非局所的」です。

 波は1ヶ所が振動すると、その振動が次の場所を振動させる原因になっています。波の伝わり方は局所的です。

 ジョン・ベルは「ベルの不等式」(隠れた変数がある)が成り立たない、つまり局所性を否定しました。

 1982年、アラン・アスペは、ベルの不等式を確かめる実験を行い、ベルの不等式が成り立たないことを検証しました。

 2つの素粒子は、最初から強い相関関係があります。分離不可能と相関関係から2つの粒子の間に何ら信号が伝わる必要は無いということにもなります。その中はホリスティックなのでしょうか?

*量子力学における「ホリスティック(holistic)」という概念
 ホリスティックとは「部分の総和以上のものとして全体を捉える」という意味を持ちます。
 エンタングルした粒子の状態は、たとえ空間的にどれほど離れていても相互に影響を及ぼします。これは「局所的な視点では説明できず、全体として一つのシステムとして扱うべきだ」というホリスティックな性質を示します。
 この相関は古典的な因果関係では説明できず、量子力学的な非局所性(ホリスティックな特性)を持つことが示されました。
 波動関数は物理空間の全体に広がり、その振る舞いは部分だけでなくシステム全体の相互作用によって決まるため、ホリスティックな性質を持ちます。単一の粒子が局所的な存在でありながら、全体の干渉パターンに影響を受けるホリスティックな特性を示しています。
 場の量子論では、素粒子は単独の点的な存在ではなく、量子場の励起として記述されるため、局所的な観点だけでは理解できません。全体的な場の性質や対称性が物理法則を決定するため、これもホリスティックな視点の一例です。
 量子力学におけるホリスティックな特徴とは、「部分を個別に見るのではなく、全体的な相互作用や非局所的なつながりを考慮しなければならない」という性質です。特に、量子もつれや波動関数の広がり、量子場の考え方がこの概念を強く示唆しています。

 シュレーディンガーの波動方程式やディラックの波動方程式は、厳密に導くことはできません。コレラの方程式は「粒子性」と「波動性」、あるいは想定性理論に合致するように、試行錯誤を繰り返しながら出来上がった方程式です。

 波動関数の収縮は人間の頭の中で起こるとも考えられます。人間の意識が現実を作り上げるというのは、あまりにも人間を中心にした考え方です。